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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第142回 [2024.4.3]

第二六巻 産が屋 葵桂の文 (4)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 うがやあおいかつらのあや (その4)
 産が屋 葵桂の文 https://gejirin.com/hotuma26.html
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 かめにのりゆく かこしまや
 そをたかちほの ひにいなむ あさはあさまの ひにむかふ
 ひむかふくにと ほつまくに

―――――――――――――――――――――――――――――
 カメに乗り行く カゴシマや
 ソヲ高千穂の 日に辞む 朝はアサマの 日に向ふ
 日向ふ国と ホツマ国

―――――――――――――――――――――――――――――

カメ(亀) ■カゴシマ (籠州・鹿児島)

ソヲ (曽於)
九州の最南部を指す地名で、おおよそ 「宮崎県南部+鹿児島県」 です。


■高千穂 (たかちほ)
タカチ(高ち)+ホ(穂) で、「高い山」 を意味する普通名詞です。
“ソヲ高千穂” は 霧島連山の 「高千穂峰」 をいうものと思います。

 ★高ち (たかち)
 形容詞 タカシ(高し) の名詞化です。
 形容詞の場合に多いのですが、語尾の ‘シ’ を ‘チ’ に変えて名詞化することがあります。
 “はやち”  “ただち”   “ひたち”  ”すなわち”・・・ など。


■日に辞む (ひにいなむ)
イナム(辞む・否む)は 「離れる・別れる・背を向ける」 などが原義です。
ここでは 「日と別れる」、つまり 「その一日を終える」 という意味かと思います。


■アサマの日 (あさまのひ)
「ホツマ国の方角に勢いよく昇る朝日」 という意です。

 “アサマの日” は 「勢いよく昇る日・旭日昇天」、つまりは 「朝日」 をいいます。 ▶アサマ
 またアサマは ホツマ国の象徴である ヰツアサマ峰ハラアサマ宮 の略でもあります。


■日向ふ国 (ひむかふくに)
「日(太陽)が向かってゆく方向の国=西の国」 という意で、ソヲカゴシマ の別称です。
後には ヒウガ(日向) と呼ばれるようになります。


ホツマ国 (ほつまくに)
「日が立ち上る方角の国=東の国」 を意味します。

 

【概意】
カメ船に乗り行くカゴシマであった。
ソヲ高千穂の夕日に一日を終え、朝は 東に勢いよく昇る朝日に向う。
日向ふ国とホツマ国。(西と東に別れる 夫婦=日と月 であった)

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ひめはあさまに いなむつき たかちねにいり かみとなる
 あさまのかみや こやすかみ
 かねてあうひの いつのかみ たかちほのねの かみとなる
 なるかみわけて つちいかす わけいかつちの すへらかみ

―――――――――――――――――――――――――――――
 姫はアサマに 辞む月 高千峰に入り 神となる
 “アサマの神” や “コヤス神”
 兼ねて合う日の 逸の尊 ”高千穂の峰の 神” となる
 鳴神別けて 土活かす “ワケイカツチの 皇神”

―――――――――――――――――――――――――――――

■姫 (ひめ)
ニニキネの内宮(=正妃)の アシツ姫 をいいます。別名がコノハナサクヤ姫です。

 アマテル─┐
      ├オシホミミ┐
 セオリツ姫┘     ├┬クシタマホノアカリ
            ││
 タカキネ──チチ姫──┘└ニニキネ  ┌ホノアカリ(斎名:ムメヒト)
                ├───┼ホノススミ(斎名:サクラギ)
 カグツミ───マウラ──┬アシツ姫  └ヒコホオデミ(斎名:ウツキネ)
             │
             └イワナガ


■アサマに辞む月 (あさまにいなむつき)
このアサマは ハラミ山頂の最高峰 「ヰツアサマ峰」 をいいます。
“辞む月” は 「別れる月・隠れる月・さよならする月」 という意です。

 ニニキネ&アシツ姫の皇夫婦は “日と月” ですから、
 すぐ次の “高千峰に入り神となる” ことを 「アサマ峰に隠れる月」 と喩えています。


■高千峰 (たかちね)
タカチ(高ち)ネ(峰・嶺・根)で、“タカチホ” の換言です。
この場合は 「ハラミ山の高峰」 をいい、やはり 「ヰツアサマ峰」 を指します。


神となる (かみとなる)

■アサマの神 (あさまのかみ)
アサマ峰の洞に入って神となったアシツ姫の贈り名です。 ▶贈り名
このアサマには 「高めて栄すこと」、つまり 「子を育て上げること」 の意が重なり、
“コヤス神” の別表現でもあります。 ▶アサマ

 富士山本宮浅間大社 (ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)
 本宮:静岡県富士宮市宮町1-1。 奥宮:富士山頂上。
 現在の祭神:木花之佐久夜毘売命 (別称 : 浅間大神)
 ・延喜式神名帳は 「浅間神社」 と記載。


■コヤス神 (こやすかみ:▽子養す神・肥やす神・子安神)
これも“子養すの尊” と称えられたアシツ姫の贈り名です。

 アシツ姫は オチツモの乳に頼らず、母乳のみで三つ子を育て上げました。
 それゆえに 「子を養う神」 あるいは 「(子を) 肥やす神」 です。
 その神霊(みたま)は 安産育児の 「子安神」 として信仰され、各地の “子安神社” に祀られます。

 母の乳を以て 養します “子養すの尊” ぞ 〈ホ24-6〉


■兼ねて合う日 (かねてあうひ)
“兼ねて合う” は “兼ね合ふ” と同じで、「つり合う・相応する・対になる」 などの意です。
ですから 「月と対になる日」 という意味です。
もちろん、月はアシツ姫を指し、日はニニキネを指します。


逸の尊 (いつのかみ・ゐつのかみ)

■高千穂の峰の神 (たかちほのねのかみ)
高千穂の峰の洞に入って神となったことを表す ニニキネの贈り名です。
また “高千穂の峰” は 「高き山の頂き・上の上の上・至高」 を意味しますので、
この贈り名は “イツ(逸・▽頂・▽至)の神” の換言でもあるのでしょう。

 霧島神宮 (きりしまじんぐう)
 鹿児島県霧島市霧島田口2608番地5号。 
 現在の祭神:天饒石國饒石天津日高彦火瓊瓊杵尊


■鳴神別けて土活かす (なるかみわけてつちいかす)
「雷を稲光(火)と雨(水)に分けて荒地を活かす」 という意で、
ワケイカツチ(別雷/別活土) の意味を説明するものです。

 雷別けて 神を生む これトコタチの 更の稜威 “ワケイカツチの 天君” と 〈ホ24ー9〉

 
■ワケイカツチの皇神 (わけいかつちのすべらかみ・わけいかつちのおほかみ)
これもニニキネの贈り名で、神となったワケイカツチの皇君を称えるものと考えます。

 賀茂別雷神社 (かもわけいかづちじんじゃ)
 京都府京都市北区上賀茂本山339。
 現在の祭神:賀茂別雷大神

 

【概意】
姫はアサマ峰に隠れる月。高千峰に入り神となる。
“アサマの神” また “コヤス神” ぞ。
月と兼ね合う日の、逸の尊は “高千穂の峰の神” となる。
鳴神を別けて土を活かす “ワケイカツチの皇神” ぞ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 きみにつくれは もにいりて いせにつけます
 ををんかみ かみことのりは 
 あわのかす へてもおぬきて まつりきく
 としめくるひは もにひとひ そのみはしらに まつるへし

―――――――――――――――――――――――――――――
 君に告ぐれば 喪に入りて イセに告げます
 大御神 神言宣は 
 「アワの数 経て喪を脱ぎて 政聞く
 年回る日は 喪に一日 その身柱に 纏るべし」

―――――――――――――――――――――――――――――

■君 (きみ)
ヒコホオデミ(斎名:ウツキネ)を指します。

  
■喪に入る (もにいる・もはにいる) ■喪入り (もはいり)
「葬送に入る・葬送の期間に入る」 という意です。 ▶喪


■イセ (▽妹背・伊勢)
「イセ宮に坐すイセの御神」 です。 ▶イセ宮 ▶イセの御神


■神言宣 (かみことのり)
「アマテル大御神の御言宣」 を他と区別して、こう呼ぶ場合があります。


■アワの数 (あわのかず)
「アワの神の数」 という意で、「48」 です。 ▶アワの神 

▶(参考) 四十九日


■喪を脱ぐ/抜く (もおぬぐ/ぬく)
“喪に入る” の逆です。
「葬送から抜けること・葬送の期間を終えること」 をいいます。


■政聞く (まつりきく)
「政務を執る・執政する」 という意です。 ▶まつり ▶聞く


■年回る日 (としめぐるひ)
「毎年めぐってくる同日」 の意で、「回忌命日」 をいいます。

 
■身柱 (みはしら) ■身丈柱 (みたけばしら)
「死者の生前の身丈と同じ長さにそろえた柱」 をいいます。
これを 神体依代 として神霊を纏ります (死者の神霊を招いて心を通わす)。 ▶纏る

 〈余談〉伊勢神宮の正殿の床下にはアマテルの身柱が立てられていて、
 心御柱(しんのみはしら)、天御柱(あまのみはしら)、天御量柱(あまのみはかりのはしら)
 などと呼ばれます。しかし現在その長さは5尺5寸(約167cm)であるといい、
 ホツマが伝えるアマテルの身長 1丈2尺5寸(約281cm)とは一致しません。

 

【概意】
ウツキネ君に告げれば喪に入りて、イセに告げます。
大御神の神言宣は、
「アワの神の数の48日を経たら 喪を抜けて政を執る。
毎年の命日には喪に1日を充て、その身柱に纏るべし。」

 

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 うけゑてのちの みゆきなる あまてらすかみ よろこひて
 みをやにつかふ あまきみと をしてたまわる

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 受け得て後の 御幸なる 和照らす神 喜びて
 “御祖に継がふ 天君” と ヲシテ賜わる

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■受け得る (うけゑる)
大御神の神言宣を 「受けてそれに合わす・受けてその通り行う」 という意です。
ヱル(得る・▽合る)は 「合わす」 が原義です。


和照らす神 (あまてらすかみ)

■御祖に継がふ天君 (みをやにつがふあまきみ)
アマテルがヒコホオデミ(斎名:ウツキネ)に賜った “天君” の称号です。 ▶天君
ニニキネに賜った “ワケイカツチの天君” に次ぐ2人目の天君です。

 ★御祖に継がふ (みをやにつがふ)
 「父ニニキネが着手した九州の開発事業を継いだこと」 をいうものと考えます。 ▶御祖 ▶継がふ


ヲシテ (押手)

 

【概意】
神言宣を受けて行い、その後 <イセに> 御幸なる。
和照らす神は喜びて、“御祖に継がふ天君” と称号を賜わる。

 

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 とよたまは わけつちやまに もはよそや
 としのまつりも みあえなす

―――――――――――――――――――――――――――――
 トヨタマは ワケツチ山に 喪 四十八
 年の纏りも みあえなす

―――――――――――――――――――――――――――――

■トヨタマ
いまだミヅハメの社に引きこもっているトヨタマ姫です。 ▶ミヅハメの社


■ワケツチ山 (わけつちやま:分土山)
賀茂別雷神社の御神体とされる 神山(かみやま・こうやま)を指します。
かつては 賀茂山(かもやま) また 分土山(わけつちやま) と呼ばれました。 ▶ワケツチ

 日本輿地通志畿内部 (五畿内志)
 賀茂山 上賀茂東 一名 分土山 また 神山


喪 (もは)

■四十八 (よそや)
アマテルが定めた 「喪に服す日数」 で、“アワの数” と同じです。


■年の纏り (としのまつり)
「年回る日に死者の神霊を身柱に纏ること」 をいいます。 ▶年回る日 ▶身柱
これもアマテルの御言宣によるものです。


みあえ (▽斎)
ここでは 「斎・敬い・礼」 の意です。 ▶斎

 

【概意】
トヨタマ姫はワケツチ山にて48日の喪に入り、
回忌の纏りも礼を尽くす。


 これを賀茂別雷神社の創始と見ていいように思います。

 

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 あまきみひめお たつぬれは こやねこたえて ためしあり
 みほつにとえは うたなせと
 かれうたよみて みほつめか まこいそよりお つかわせは

―――――――――――――――――――――――――――――
 天君 姫を 尋ぬれば コヤネ答えて 「例あり」
 ミホツに問えば 「歌なせ」 と
 故 歌詠みて ミホツ姫が 孫イソヨリを 遣わせば

―――――――――――――――――――――――――――――

■天君 (あまきみ)
御祖に継がふ天君” の略で、ヒコホオデミ(斎名ウツキネ)の称号です。


■例あり (ためしあり)
「先例がある」 という意です。
ニニキネが歌によってアシツ姫の恨みを解いたことをいってます。

 オキツモは 辺には寄れども さね融も 値わぬカモよ はまつチドリよ 〈ホ24ー6〉


コヤネ ■ミホツ・ミホツ姫 (みほつめ・みほつひめ)
ウツキネ中央政府の、左の臣はコヤネ、(右の臣はコモリ)、
宮内の治はミホツ姫が預かるよう、ニニキネが任命しています。


■イソヨリ
コモリの3女で、ヒコホオデミの内侍の1人です。 ▶内侍

 クシヒコ
   ├───コモリ
 ミホツ姫   ├────┬1.モト姫     ┌18.トヨリ姫
              │       ├2.タマネ姫    ├17.アワナリ姫
 アチハセ─シラタマ姫  ├3.イソヨリ姫   ├16.ワカネ姫
             ├4.ムレノ姫    ├15.ハザクラ姫
             ├5.ミハオリ姫   ├14.アサ姫
             ├6.スセリ姫    ├13.ムメチル姫
             ├7.ミタラシ姫   ├12.ハモミ姫
             ├8.ヤヱコ姫    ├11.ミチツル姫
             ├9.コユルキ姫   ├10.シモト姫
             └─────────┘

 

【概意】
天君がトヨタマ姫のことを尋ねると、
コヤネ答えて 「先例あり」。ミホツに問えば 「歌なせ」 と。
しかれば歌を詠みて、ミホツ姫の孫イソヨリを <ミヅハメの社に> 遣わせば、

 

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 ひめむかゆるお いそよりは たちてよむうた
 おきつとり かもつくしまに わかいねし
 いもはわすらし よのことことも

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 姫 迎ゆるを イソヨリは 立ちて詠む歌
 『息つ鳥 カモ着く島に 我が結ねし
 妹は忘らじ 夜の事々も』

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■立ちて詠む (たちてよむ)
「起立して詠む」 ということですが、“起立” という行為は
「心をきりっとさせる」 ことを目に見える形に表したものです。
ですから “立ちて詠む” は 「つつしんで詠む」 と同義となります。 ▶つつしむ


息つ鳥 (おきつとり)
「足を往き来させて泳ぐ鳥」、また 「往き来する鳥」 という意で、
「渡り鳥=千鳥」 を意味しますが、ここでは単に “カモ” を呼び出す枕詞であるようです。


■カモ着く島/州 (かもつくしま)
「カモ船が着いた区画」 という意味です。シホツツの先導で ウツキネを乗せたカモ船が着いた、
ツクシウマシの浜” の換言ですが、この場合は 「カゴシマ」 または 「九州」 をいうものと思います。

 宮崎市の青島を “鴨着く島” とも呼ぶのですが、これや 鵜戸 などは後世の付会と考えます。

 青島神社 (あおしまじんじゃ)
 宮崎県宮崎市青島2丁目13-1。 
 現在の祭神:天津日高彦火火出見命、豊玉姫命、塩筒大神
 ・青島は古くは淡島、しだの浮島とも鴨着く島とも呼ばれた。


■結ぬ (いぬ)
イフ/ユフ(結ふ) などの変態で、「合わす・結ぶ・交える・編む・織る」 などが原義です。
我が結ねし” は 「我が(妹と)結んだ・我が(妹と)共にした」 などの意となります。


妹 (いも)
この場合は 「男が女を親しんでいう呼び方」 で、妻や恋人に対して使います。


■忘らじ (わすらじ)
「忘れないだろう・忘れまい」 という意です。
‘じ’ は 否定の ‘ず’ に推量の意を添えたものです。


■夜の事々 (よのことごと)
「男女の夜の営み・性交渉」 をいいます。

 

【概意】
姫が迎えれば、イソヨリは謹んで詠む歌。
息つ鳥 カモ着く島に 我が結ねし 妹は忘らじ 夜の事々も

息つ鳥 カモ着く島 (鹿児島/九州)で 我らが共にした 妹は忘れまい 夜の事々も。

 

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 みうたうけ みほつはいかん いそよりか みほつのうたに
 いみといひ けかれおたつる ひのもとの かみのこころお
 しるひとそかみ

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 御歌受け 「ミホツは如何ん」 イソヨリが ミホツの歌に
 『忌と結 穢れを直つる 日の本の 尊の心を
 知る人ぞ尊』

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■忌と結 (いみといひ)
イミ(忌)は 「離れ/離し」、イヒは ユヒ(結)の変態で、「合い/合わせ」 が原義です。
陽陰の 「離別と結合」 をいい、これも “付く離る”  “合ふ失す”  “和る離る”  “合ふ離る” 
ツクバ/ツクマ” などの換言です。

 これは 「合と離」 を繰り返すことで、陽陰(男女)の関係がしっくりと落ち着いてゆき、
 最後には一つに融合することを意味し、「陽と陰のふるまいの本質」 を表すものです。


■穢れを直つる (けがれおたつる)
「曲り/ずれを調える・狂いを直す」 などが原義です。 ▶穢れ
タツル(直つる)は タツ(直つ)の連体形です。


日の本 (ひのもと)
ヤマト(和)の換言です。「和合・調和」 を原義とします。 ▶ヤマト(和)
“日の本の” は 「やまと」 にかかります。

 この歌では “穢れを直つる日の本” と “日の本の尊” の二股使用で、
 二股使用なしに書き換えると次のような歌になります。

  忌と結 穢れを直つる日の本(=和)の 日の本(=和)の尊の心を 知る人ぞ尊

 ★穢れを直つる日の本 (けがれおたつるひのもと)
 日の本=和 ですから、「曲り/ずれを調える和合・狂いを直す和合」 という意です。

 ★日の本の尊 (ひのもとのかみ)
 日の本=和 ですから、「和の尊」 の意となり、これは 「和つ日月」 の換言ですが、
 ここでは夫婦の 「夫・男」 の方をいいます。ですからいわば 「和つ日」 です。


■知る人ぞ尊 (しるひとぞかみ)
このカミ(尊・上)は 「和の尊」 の略で、やはり 「和つ日月」 の換言です。
この場合は夫婦の 「婦・女」 の方をいいます。ですからいわば 「和つ月」 です。

 

【概意】
御歌を受けて、「ミホツはいかに?」
イソヨリがミホツ姫の歌に、
忌と結 穢れを直つる 日の本の 尊の心を 知る人ぞ尊

離れたり付いたりして 狂いを直すのが 陰陽和合の本質。
<人生きを悟りて> 和の尊(=和つ日)の心を 知る人こそ尊(=和つ月)。 ▶人生き

 “日の本の尊”  “知る人ぞ尊” の尊(かみ)には、“三生きを知る神(かみ)” の意が重なります。

 いま一つ 葵桂の 妹背を得ば “人生き” 悟る
 三つ知れば 竜君如く 神(かみ)となる 〈ホ25-3〉

 

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 ときにひめ かえしはあおひ きみかつら
 かみにつつみて みひきくさ ふはこにおさめ たてまつる
 きみみつからに ゆひおとき そのうたよめは

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 時に姫 返しは葵 君 桂
 紙に包みて みひき草 文箱に収め 奉る
 君 自らに 結ひを解き その歌詠めば

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葵 (あおひ・あおい) ■桂 (かつら)
 
■みひき草 (みひきぐさ:見退き草・水引草)
ミヒキ(見退き)は ミ(‘見る’の連用形)+ヒク(引く・退く) の名詞形で、
「合と離・和合と離別」 を意味し、これまた “忌と結”  “付く離る”  “合ふ失す” 
和る離る”  “合ふ離る”  “ツクバ/ツクマ” などの換言です。

 これを象徴する草花が 「みひき草」 で、今は 水引(みずひき) と呼ばれます。
 一つの花弁の上側が赤く下側が白いことから、 ▶画像
 陽陰(男女)の 「付く離る・和合と離別」 を体現する草花として尊ばれたのでしょう。
 進物用の包紙などを結ぶ紅白の水引も この草に由来すると考えられます。 ▶画像


文箱 (ふばこ)

 

【概意】
時に姫の返しは、姫の葵葉と君の桂葉を
紙に包んでみひき草で結び、文箱に収めて奉る。
君みずからに結いを解いてその歌を詠めば、

 

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 おきつとり かもおをさむる きみならて
 よのことことお ゑやはふせかん

―――――――――――――――――――――――――――――
 『息つ鳥 上下を治むる 木実ならで
 夜の事々を えやは防がん』

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■息つ鳥 (おきつとり)
“おきつとり”  “かも”  “よのことごと” は、夫ウツキネの歌に合せています。
これを 「和し歌」 といいます。二尊の “天のアワ歌” はその典型です。

 「あなにゑや うまし女に 会いぬ (我結ぬ)」
 時 女尊応えて 「わなにやし うまし男に 会ひき (我引き)」とぞ 〈ホ3-2〉


■上下を治むる木実/君 (かもおをさむるきみ)
「陽陰を和合する木実・人生きを悟る木実」 という意味ですが、
これは 「夫婦が融和して一つとなった君」 をいいます。 ▶木実 ▶人生き

 カモ(▽上下)は ここでは 「陽陰・男女」 を意味します。
 ヲサム(治む) は 「足して調える・中和する・調和する」 などの意です。
 陽陰(日月・木実)を和合・融和して はじめて 和つ日月・和つ君 なのです。


■ならで
「〜でなくて・〜ならずして」 という意です。


■夜の事々・世の事々 (よのことごと)
この場合は、世の 「暗い事々・穢れた事々・病める事々」 などの意です。

 ★夜・世・▽穢 (よ)
 ヨル(▽弱る)の名詞形 ヨル(夜)の略で、「下るさま・劣るさま・衰えるさま」 を原義とし、
 「下・地・世」 また 「汚穢・暗・闇」を意味します。


えやは (ゑやは)

 

【概意】
息つ鳥 上下を治むる 君ならで 夜の事々を えやは防がん

息つ鳥 陽陰(日月)を和合する木実でなくて (=后のいない君が)、
世の病める事々をどうして防げましょうか。


 離れていたトヨタマ姫(和つ月)が、ウツキネ(和つ日)のもとに戻ることを表明する歌です。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 このうたお みたひになんた おちかかる ひさのあおひは
 もにしみて むかひのこしに とよたまの あゐみやいりと
 よろこひて あやにうつさせ おるにしき こあおひのみは

―――――――――――――――――――――――――――――
 この歌を 三度に涙 落ちかかる ひざの葵葉
 裳に染みて 迎ひの輿に トヨタマの 陽陰宮入りと
 喜びて 紋に写させ 織る錦 “小葵” の御衣

―――――――――――――――――――――――――――――
 
裳 (も・みも)
“ミモ” は ミナ(▽穢) の変態で、“ミモ” の略が “モ” です。
「下・末・隅」 が原義で、この場合は 「下半身にまとう衣」 をいいます。


■陽陰宮入り (あゐみやいり)
「陽陰 (夫婦・木実・日月) そろっての宮入り」 という意です。

 ★陽陰・合・相 (あゐ・あい・あひ)
 アヰは アワ(陽陰)の変態であり、同時に アヒ/アイ(合)の変態です。
 ここでは 「陽陰」 と 「和合」 の両意であることに注意を促すために、
 “アヒ/アイ” ではなく “アヰ” と記しているものと考えられます。


小葵 (こあおひ)
皇の祭礼用の衣裳の一つです。 ▶画像


御衣 (みは)

 

【概意】
この歌を三度詠めば涙が落ち、ひざの葵葉にかかって裳に染まる。
迎いの輿に帰るトヨタマの “陽陰そろいの宮入り“ と喜んで、
<裳に染まった絵柄を> 紋に写させて織る錦が “小葵” の御衣。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ここちりと やまはといろの みつのあや
 かみのよそひの みはもなるかな

―――――――――――――――――――――――――――――
 “菊散” と ”ヤマハ留色” の 三つの紋
 神の装ひの 御衣裳なるかな

―――――――――――――――――――――――――――――

■菊散 (ここちり)
「菊の花を散らした紋」 で、皇室の 「菊の紋」 の起源と考えますが、
ホツマはこの紋についてほとんど説明していないため不詳です。
ただアマテルが世を去る時に、“サヲシカの冠” と “菊散の御衣” を遺品として
カモヒトに授けていることから、きわめて重要な紋であったことは推測できます。

 カスガは君に 奉る 神のヲシテと 差使の 冠と衣裳は 菊散ぞ 〈ホ28〉


■ヤマハ留色 (やまはといろ)
「実った稲穂を留めた飾り」 という意です。
ヤマハは 「結んだ果実」 を意味します。トは 「留め・染め」 を意味し、
イロ(色)は ニシキ(錦)の換言です。 ▶ヤマハ ▶錦

 今日 “ヤマハ”  “ヤマハト" という名の紋は見当たりませんが、
 稲紋(いねもん) と呼ばれる紋の原形ではないかと考えています。


■神の装ひ (かみのよそひ)
ヨソヒ(装ひ)は 「纏わすこと/もの」 をいい、この場合は マツリ(纏り)の換言です。
ですから “神の装ひ” は 「神の纏り/祭り/祀り」 と同義です。


御衣裳 (みはも)

 

【概意】
<“小葵” と> “菊散” と “ヤマハ留色” の3つの紋は 神を祀る御衣裳であるかな。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

 

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