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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第37回 [2023.9.6]

第八巻 霊還しハタレ打つ文 (4)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 たまかえしはたれうつあや (その4)
 霊還しハタレ打つ文 https://gejirin.com/hotuma08.html
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 またはたれ いよのやまより きしゐくに
 わたりせむるお とつみやの つけにもろあい
 かみはかり かねてかなての みことのり

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 またハタレ 伊予の山より キシヰ国
 渡り迫むるを 凸宮の 告げに諸会い
 守諮り かねて奏の 御言宣

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伊予 (いよ) ■キシヰ国 (きしゐくに)

■迫むる (せむる)
セム(迫む・逼む) の連体形で、「狭まる/狭める」 を原義とし、
「近づく・せまる」 などの意を表します。


凸宮 (とつみや)
この場合は、この宮の主である ツキヨミ を指します。


■守諮りかねて (かみはかりかねて)
“諮り” は、2段構えで使われています。
すなわち 「守諮りしたけれども、諮りかねて」 という意味です。 ▶かぬ(兼ぬ)


■奏 (かなで)
カナヅ(奏づ) の名詞形で、「回し・振り・還し」 などが原義です。
多くの意味に使われますが、この場合は 「上に回すこと・君に振ること」、つまり 奏上 です。
また “諮りかねて” の ‘カネテ’ にしゃれています。

 ★奏づ (かなづ)
 カヌ(▽回ぬ)+ナヅ(撫づ) の短縮で、カヌは カフ(替ふ)カル(駆る) などの変態。
 両語とも 「回す・往き来させる・振る・還す」 などが原義です。

 

【概意】
またもやハタレが伊予の山より紀州に渡り、都に迫っていることを、
凸宮より通報を受け、諸守は集まって対応を諮るが、諮りかねて奏上すれば御言宣。



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 たけみかつちに ふとまかり たまえはいそき かなてんと
 たかのにいたる ゐつなみち よろのけものに はけかかる

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 タケミカツチに ふと環 賜えば 「急ぎ 奏でん」と
 タカノに到る ヰツナミチ 万の獣に 化け懸かる

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タケミカツチ

■ふと環・ふと巻かり (ふとまかり)
ヰツナミチの退治のために、アマテルがタケミカツチに授けた まじないの種 です。
「練った粉を環状にして油で揚げた菓子」、つまり今にいう ドーナツ で、
現在も マガリモチイ(環餅)ブト(伏兎) の名で残っています。 ▶画像

 フト(▽沸・▽悉)  は 「“ふつふつ”と沸くさま・沸騰」 をいい、この場合は
 「油で揚げること」 を意味します。マカリ は マカル(罷る・巻かる) の名詞形で、
 「巻いているさま・輪っか」 を意味します。

 ぶと【伏兎】〈広辞苑〉
 油で揚げた餅。平安時代の食品。〈和名抄一六〉


■奏でん (かなでん)
カナヅ(奏づ)+ン(意志・推量) で、カナヅ は 「回す・振る・還す」 などが原義。
ここでは 「一回転させる・完了する・かたづける・終らす」 などの意です。


■タカノ
高野山 の 「高野」 ですが、意味は 「高い野」 ではありません。
もう少し後にそのヒントが出てきます。


ヰツナミチ

■化け懸かる (ばけかかる)
「惑わして憑依する」 という意です。
バク(化く) は ここでは他動詞で、バカス(化かす・魅す) と同義。
霊/心/精神を 「逸らす・曲げる・惑わす・狂わす」などの意です。

 

【概意】
タケミカツチに “ふと環” が下されれば、
「急ぎ片付けましょう」 とタカノに到る。
ヰツナミチは万の獣を惑わして憑依していた。



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 みかつちゆけは はたれかみ すすみていわく
 さきふたり われにかえせよ かえさすは かみもとらんそ
 みかつちか わらいていわく わかちから よろにすくれて
 いかつちも なんちもひしく なわうけよ

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 ミカツチ行けば ハタレ頭 進みて曰く
 「さき二人 我に返せよ 返さずば 神も捕らんぞ」
 ミカツチが 笑いて曰く 「我が力 万に勝れて
 雷も 汝も拉ぐ 縄受けよ」

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ハタレ頭 (はたれかみ)

■さき二人 (さきふたり)
シムミチイソラミチ の軍勢を率いていた 2人のハタレ頭を指します。
それぞれカナサキとフツヌシに敗れ、ツツガに拘束されています。〈ホ8-2〉


■神 (かみ)
アマテル神 を指します。


■万に勝る・万に過ぐる (よろにすぐる)
これは 万引きの岩 (よろびきのいわ:1万人がかりでやっと引けるほどの大岩) も投げる、
という意味です。

 身の丈も 一丈六尺あり 力業 八尺の人らの 万引きの 岩をも投げて 〈ホ16-8〉

 
拉ぐ (ひしぐ・ひさぐ)
ヒス(▽歪す)+シク/サク(離く) の短縮で、「曲げる・折る・くじく・歪める」
などが原義ですが、この場合は 「凌ぐ・勝る」 の意を表します。

 この “雷も拉ぐ” という本人の言が、タケミカツチ の名の由来です。
 タケ(長)+ミカツチ(雷) で、「雷に長ける (勝る) 者」 という意です。
 ミカツチ は イカツチ の変態です。(ミ・ヒ・イ・ヰ は互いによく入れ替わる)
 これは実際に対決したわけではなくて、雷鳴が八方に響き渡るより広く、
 ミカツチの怪力の名声は広く轟いている、という意味であるようです。
 これなんかも ホツマツタエお得意の イメージ誘導 なのだと思います。

 

【概意】
ミカツチが行くと、ハタレ頭が進んで曰く、
「さきの二人を我に返せよ。返さねば神も捕らえようぞ。」
ミカツチが笑って曰く、
「我が力は1万人に勝りて、雷も汝をも凌ぐ。お縄を頂戴せよ。」



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 はたれいかりて たたかえは みかたのなくる ふとまかり
 むれむさほりて はたれまお うちおひつめて みなくくり
 ついにいつなも わらひなわ
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 ハタレ怒りて 戦えば 御方の投ぐる ふと環
 群れ貧りて ハタレマを 打ち追ひ詰めて みな括り
 ついにイツナも 蕨縄
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御方 (みかた)

■貪る (むさぼる)
むしゃぶりつく の “むしゃぶる” の変態で、
「執着する・執心する・夢中になる」 などの意です。


ハタレマ

■打ち追ひ詰めて (うちおひつめて)
ウツ(打つ) は 「合わす」 が原義で、この場合は “追ひ詰む” の意を補強します。 ▶打ち


■イツナ
ここでは イツナミチ の軍を率いる ハタレ頭 をいいます。


蕨縄 (わらびなわ)

 

【概意】
ハタレが怒って戦闘となると、御方の投げる “ふと環”。
群れ貧る間にハタレマを追ひ詰めてみな括り、ついにイツナも蕨縄に縛る。



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 ももひとつれに ゆひすへて ここちこももお つきしはり
 ひよとりくさの ことくなり みつからやまに ひきのほる
 みなくひしまり まかるもの やまにうつみて
 いきのこる ももささやまに つつかなす
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 百一連れに 結ひ統べて 九千九百を 継ぎ縛り
 ヒヨドリ草の 如くなり 自ら山に 曳き登る
 みな首締り 罷る者 山に埋みて
 生き残る 百 ササ山に ツツガなす

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■ヒヨドリ草 (ひよどりくさ)
今にいう 鵯花(ひよどりばな) だと思います。 ▶画像


罷る・▽巻かる (まかる)
ここでは 「天に還る」 の意です。


■山 (やま)
「高野山」 をいうように思いますが、はっきりしたことはわかりません。


■ササ山 (ささやま)
この名はもう少し後に出てくる 「サルサル沢」 の換言と思われます。

 

【概意】
100人ずつ一連ねに結い束ねて、9,900人をつないで縛れば、ひよどり草の如くなり。
ミカツチ自ら山に曳き登ると、みな首が締り、罷った者は山に埋めて、
生き残った100人はササ山に拘留する。



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 かなてからせる あやまちと もにつつしむお きこしめし
 みこのくすひに とわしむる
 とみあやまちて よろものま ひきからしけり
 またくすひ それはひとかや
 ことくなり

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 奏で枯らせる 誤ちと 喪に謹むを 聞こし召し
 御子のクスヒに 問わしむる
 「臣 誤ちて 万モノマ 曳き枯らしけり」
 またクスヒ 「それは人かや」
 「如くなり」

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過ち・誤ち (あやまち)

■奏で枯らせる (かなでからせる)
カナヅ(奏づ) は ここでは 「回す・往き来させる」 の意。
カラセル(枯らせる) は カラス(枯らす) の連体形です。
ですから 「曳き回して枯らす/殺す」 ということです。


■喪 (も・もは)
モ(喪) は モフ の名詞形 “モハ” の短縮で、モフ は マフ(舞ふ・▽回ふ) の変態です。
死者の 「回り/回し・還り/還し・送り・あがり」 を意味します。
ゆえに 喪(そう)=葬(そう)=送(そう) です。

 何をどこに還すかといえば、「肉体を土に、肉体に宿っていた神霊を天に」 です。
 命日やお盆に 「神霊を世に呼び戻すこと」 も やはり “喪” と呼びます。


つつしむ (慎む・謹む)
この場合は 「喪 (死者の帰還) に心を染める」 ということです。


■クスヒ
クマノクスヒ の略です。


臣 (とみ)

モノマ

 

【概意】
曳き回して殺してしまう誤ちと、喪に謹んでいることを
君はお聞きになり、御子のクスヒに問わしめる。 
「臣は誤って、万のモノマを曳き殺したのであります。」
またクスヒ 「それは人かや?」
「そのようでありましたが。」



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 かえことあれは ををんかみ つつやにいたり みたまへは
 かたちはまさる かほはいぬ そのもときけは
 むかしはは まさるにとつき よよおへて みなさることく

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 返言あれば 大御神 ツツ屋に到り 見給えば
 形は真猿 顔は犬 そのもと 聞けば
 「昔 母 真猿にとつぎ 代々を経て みな猿如く」

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■返言 (かえこと)
「返す言葉・返事・報告・復命・返礼の言葉」 などをいいます。


■ツツ屋 (つつや)
ツツ(▽綴)+ヤ(屋)で、ツツ は トヅ(綴づ・閉づ) の変態です。
「つなぎとめる屋・綴じ込める屋・拘置所・牢屋」 をいい、ツツガ の換言です。

 ★屋・家 (や)
 ヰル(居る) の変態 “ヰユ” の名詞形が ヰヤ(居屋・居家)、ヰヱ(家) で、
 ヰヤ の短縮が ヤ(屋・家) です。よって 「居場所」 が原義で、建物に限りません。


形 (かたち)
この場合は、顔の見た目に対して 「体つき・体形」 をいいます。


真猿 (まさる) ■猿 (まし・さる)
他の獣に 「増し勝るもの」 の意と思います。マシ(猿)・サル(猿) とも呼ばれます。


とつぐ

 

【概意】
返言を受けて大御神は拘置所に到り、ご覧になると、
姿は真猿、顔は犬。その原因を聞けば、
「昔 先祖の母が真猿ととつぎ、代々を経ると、みな猿の如くに。」



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 みことのり たまかえしせは ひとならん
 さきにまかるも をおときて ひとにうまるそ ときにもも
 ねかわくはかみ ひとになし たまわれとみな まかれけり

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 御言宣 「“霊還し” せば 人ならん
 さきに罷るも 緒を解きて 人に生まるぞ」 時に百
 「願わくは神 人になし 給われ」 と皆 罷れけり

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■霊還し (たまかえし)
人の(たま) は (たま)と (しゐ) の結合により出来ています。
魂 は 太陽を起源とする 陽霊。魄 は 月を起源とする 陰霊 です。
この魂と魄の結合を 霊の緒(たまのを) といいます。

人は死ぬと霊の緒が解けて、魂と魄はそれぞれ 陽元(=太陽) と 陰元(=月) に
還るのが正常なのですが、肉食により動物的な属性を帯びてしまった人や、
天寿を全うせず 世に未練を残して死んだ人などは、霊の緒が乱れて解けず、
魂と魄が陽元と陰元に還れずに迷う場合があります。

そうなると人に転生できないため (人以外の生き物に宿る可能性はある)、
乱れた霊の緒を解いて、魂と魄を陽元と陰元に還し、再び人に転生できる
ようにすることを “霊還し” といいます。

 
■緒を解く (をおとく) ■霊断ち (たまたち)
乱れて解けなくなった 「霊の緒を解く」 という意味で、
“霊断ち” ともいいますが、ようするに “霊還しをする” ということです。
なお 生きている人間や動物の霊の緒を解いた場合、その肉体生命は失われます。

 ★緒 (を)
 ウフ の名詞形 “ウホ” “ウオ” の短縮音で、ウフ は ウム(績む)ユフ(結ふ) の変態です。
 したがって ヲ(緒) は 「合わせ・結び・編み・つなぎ」 などが原義です。
 また ウフ/ウブ(初・産・生) の略でもあり、「初(うい)・始め・端・端緒」 の意もあります。


■願わく (ねがわく)
ネガフ(願う)+シク(如く) の連結から “シ” を省いた ク語法 で、
「願う如く・願うところ」 などの意です。


罷る (まかる)

けり

 

【概意】
御言宣。
「“霊還し” なせば人とならん。さきに罷る者も霊の緒を解けばまた人に生れるぞ。」
時にその100人は 「願わくは神よ 人にして下され」 と、皆 天に還るのであった。



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 ここすとのみち ををんかみ つはものぬしと ふつぬしと
 たけみかつちに たまかえし さるさるさわに おこるみちかな
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 ココストの道 大御神 ツハモノヌシと フツヌシと
 タケミカツチに “霊還し” 猿更る沢に 起る道かな

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■ココストの道 (ここすとのみち)
「天と地を往き来するシステム・輪廻転生の道」 をいい、
“往き来の道”  “還(こゑ)の道” などとも呼ばれます。

 ★ココスト・ココト (▽上下)
 ココ(九・▽究) は 「上・高み・至り」を意味し、これは 天地創造の過程 で、
 上昇して天となった 「陽」、また陽霊である 「魂」 を表します。
 スト/ト は シタ(下) の変態で、また “すとんと落ちる” の スト です。
 これは同過程で、下降して地となった 「陰」、また陰霊である 「魄」 を表します。
 ですから ココスト とは 「上下・天地・陽陰・魂魄」 の同義語です。

よって ココストの道 は 「天地の道・陽陰の道・魂魄の道」 などを原義とし、
「陽陰 (魂魄) が結合/分離して、天と地を輪廻するシステム」 をいいます。
広い意味では、アメノミチ(陽陰の道)アメナルミチ(陽陰和る道) の別名です。


ツハモノヌシ

フツヌシ

■猿更る沢 (さるさるさわ)
サル(更る) は 「一周りして元に返る・戻る・改まる」 などが原義です。
ここでは 「猿が人に改まる」 ことをいいます。
さきに出てきた ササ山 は、この “サルサル沢” の略で、高野山 の古名と考えます。

 ★沢 (さわ)
 2種類あります。
 (1) ソワ(岨) の変態で、「そびえる所・高み・峰・山」 を意味します。
 (2) サフ(障ふ・支ふ) の名詞形で、「塞き止め・水溜・池」 を意味します。

 

【概意】
輪廻転生の道。大御神は ツハモノヌシ、フツヌシ、タケミカツチに “霊還し” を命ず。
“猿更る沢” に起る道かな。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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