⇦前の講座          目次           次の講座⇨ 

 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第67回 [2023.10.24]

第十三巻 ワカヒコ 妹背すずかの文 (7)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 わかひこいせすずかのあや (その7)
 ワカヒコ 妹背すずかの文 https://gejirin.com/hotuma13.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

―――――――――――――――――――――――――――――
 ときにしほかま こなきとて とえはかすかの をしゑには
―――――――――――――――――――――――――――――
 時にシホカマ 子無きとて 問えばカスガの 教えには
―――――――――――――――――――――――――――――

シホカマ
ヒタカミ国のシホカマ(塩竈)の地域の知行者です。 ▶ヒタカミ

 

【概意】
時にシホカマが、子が無いことを問うと、
カスガの教えには、

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 あゆきわすきの まつりぬし たのみてそれの たまかえし
 なさはくるしむ たまのをも とけてむねかみ みなもとえ
 たましゐわけて かみとなる たふときひとの ことうまる
 なれとゆきすき たまゆらそ

―――――――――――――――――――――――――――――
 アユキ・ワスキの 纏り主 頼みてそれの 霊還し
 なさば苦しむ 霊の緒も 解けてムネカミ ミナモトへ
 魂・魄 分けて 神となる 尊き人の 子と生まる
 なれどユキ・スキ たまゆらぞ

―――――――――――――――――――――――――――――
 
■アユキ (▽陽結き) ■ワスキ (▽陰挿き)
アメノマツリ(陽陰の纏り) の換言で、「日月の神霊を招き寄せること」 をいいます。

 ユキ・スキの “アワ” は アメ(陽陰・日月)の換言です。
 ユキは ユイ(結い)と同義、スキは スク(好く・挿ぐ)の名詞形で、どちらも
 「合わせ・寄せ・まとわせ・招き」 の意を表し、マツリ(纏り)と同じです。

 注意:この アユキ・ワスキは、大嘗祭で設置する 「アユキ・ワスキの宮」 とは別物です。


■纏り主・祭主・祀主 (まつりぬし)
「神を纏る主」 の意で、「神を招き寄せる担当主任」 をいいます。
具体的にどういう人を指すのかは不詳です。 ▶祭主

 ★纏る・祀る・祭る (まつる)


■それの霊還し (それのたまかえし)
子供が生まれてこない理由は、生まれ来るべき子の 霊の緒 が解けず、
“魂と魄が 陽元と陰元 に還れずにいる” ということです。
ですから “それ” とは、「生まれてくる予定の子供の霊」 を指します。 ▶霊還し


■苦しむ霊の緒 (くるしむたまのを)
「異常な状態にある霊の緒」 という意です。 ▶苦しむ


■ムネカミ (棟上・▽陽上)・ムナモト(棟元・▽陽元)
ムネ(棟)は 「上・高み」 を表し、天地創造の過程で 上昇して天となった 「陽」 を意味します。
カミ(上)は 「上流・源流」 を表します。ですから 「陽の源」 という意で、「太陽=日」 の別名です。
ムナモト(棟元)、ムネホ(棟穂) などとも呼ばれ、霊の緒が解けて分れた “魂” はここへ還ります。


■ミナモト (▽穢元・▽陰元)・ミナカミ (▽穢上・▽陰上)
ミナ(▽穢・▽陰)は 「下・末」 を表し、天地創造の過程で 下降して地となった 「陰」 を意味します。
モト(元)は 「上流・源流」 を表します。ですから 「陰の源」 という意で、「太陰=月」 の別名です。
ミナカミ(穢上) とも呼ばれ、霊の緒が解けて分れた “魄” はここへ還ります。

 ★ミナ・メ・ミ (▽穢・▽鄙)


■神となる (かみとなる)
「霊が魂と魄に分離して天 (陽元と陰元) に還る」 ことをいいます。
カミ(神)の原義は 「上」 で、「人の上位の存在形態・人の本質・人の本来」 を意味します。
ですから 「肉体に宿る状態から 本来の霊の状態に戻る」 という意味です。

 人と神の違いは、形(物質)となっているかいないか、
 形而下(有形)か 形而上(無形)か、ということだけです。


■尊き人の子と生まる (たふときひとのことうまる)
これは 「獣ではなく、尊き霊長である人間の子に生まれる」 という意です。


■ユキ・スキ (▽結き・▽挿き)
アユキ・ワスキの略です。ここでは 「日月の神霊を招き寄せて、その力を借りること」 をいいます。


たまゆら (▽偶揺)
タム(回む)ユル(揺る) の連結の名詞形で、両語とも 「巡り来るさま・往き来・揺れ・振れ」
などが原義です。この場合は 思いと現実に 「ぶれがあるさま・思いがけないさま」 を表し、
「あたりはずれがある・常に当たるとは限らない」 などの意となります。

 副詞としても用いられ、「偶然・たまたま・稀に」 などの意を表します。

 

【概意】
アユキ・ワスキの纏り主に頼んで、誕生予定者の霊還しをすれば、
苦しむ霊の緒も解けて、陽元と陰元へ還る。
そうすれば魂と魄が分れて神となり、尊き “人の子” として生まれる。
されど日月の神の纏りにも あたりはずれがあるぞ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――
 すゑおをもひて むつましく わさおつとむる いせのみちかな
 このみちお まなふところは かんかせの いせのくになり

―――――――――――――――――――――――――――――――
 末を重ひて 睦まじく 業を務むる 妹背の道かな
 この道を 学ぶ所は カンカセの 妹背の国なり

―――――――――――――――――――――――――――――――

■末 (すゑ)
スヱは 「先・後・末・将来」 などを表し、ここでは 「次の人生・来世」 を意味します。
先に出てきた コスヱ(▽後末) と同じです。


■をもふ (重ふ)
「重んじる・重視する・尊ぶ」 などの意です。
突き詰めて意味を考えれば オモフ(思ふ) と同じという気もしますが、
ヲと表記を代えていることもありますので、“重ふ” と当ててみました。


睦まじ (むつまじ)
「睦む如し」という意の形容詞で、ムツムはムスブ(結ぶ)の変態です。
人や物事に「直結/一体化しているさま・一筋なさま」を表しますが、ほとんどの場合、
「男女が融合一体化し、そうして一筋に業に努める」 と、2つの意味が重ねられます。

 ウビチニ&スヒヂ以降の人間は、「男と女が融合一体化してはじめて
 陽陰の偏りのない一人前となるぞ」 と、“睦まじ” という言葉は諭しているように思えます。
 (アマテルは生まれつき陽陰が融合一体化しています。)


■業を務む (わざおつとむ)
ワザ(業)は「なす事・する事・仕事・役目」などの意です。
ツトム(努む・務む・勤む)は ツツ(▽付つ)+トム(留む) の短縮で、
「(何かに) 付いて留まる・付いて離れず」 が原義です。


妹背の道 (いせのみち)
「陽陰とその和合の道」 です。言葉を換えれば 「対極にあるものを中和する道」 で、
つまり 「極端に偏っている状態を直す道・中庸の道」です。

 “スズカの道” も ”始め終りの慎まやかの道” も、つきつめれば結局 「妹背の道・陽陰和る道」
 であり、それを説明するための表現だったということです。


■カンカセ (▽神和・▽神交・▽神形)
いくつかの意がありますが、ここでは 「神の風」 という意味ではありません。
カン/カミ(神)は 「上」 が原義で、「上位の存在形態・本源・本質」 を意味し、
この場合は 万物の本源・本質である 「陽と陰」 をいいます。
カセは カス(和す・▽交す)の名詞形で、「合わせ・和合・調和」 の意です。
したがってカンカセも 「陽陰の和合」 を表し、そのゆえに カンカセの(神風の)
イセ(妹背・伊勢) にかかります。

 また、陽と陰が和合すると、物質化して目に見える形となるため、
 「本質/真髄/神 の現れ」 などの意にも用いられます。


■妹背の国 (いせのくに)
“イセの国” といえば、誰もが 「伊勢の国」 と考えるでしょうが、
“カンカセのイセの国” と言う場合は 「陰陽和合の国・和の国」 という意で、
ヤマト(和)の国、すなわち日本全土を指します。

 

【概意】
来世を重んじ、夫婦が融合一体化して一筋に業に努める。
これが “妹背の道”であるかな。
またこの道を学ぶ所は、カンカセ(=陰陽和合)の “妹背の国” なり。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ちちひめも のちにはいせの をんかみに つかゑすすかの
 みちおゑて いせとあわちの なかのほら

―――――――――――――――――――――――――――――
 チチ姫も 後には妹背の 御神に 仕え スズカの
 道を得て イセとアワ州の 中の洞

―――――――――――――――――――――――――――――

チチ姫 (ちちひめ)

■妹背の御神 (いせのをんかみ)
「陰陽を和合する大いなる神」 という意です。 ▶妹背 ▶御神
これは日と月の神霊が融合して世に顕現する アマテル(斎名ワカヒト) の別名です。
アマテルの場合は、生まれつき陽霊と陰霊は融合して一つとなっていて、
霊の緒を介しての結合ではないようです。そのことは17アヤで暗示されます。

 イセノカミ(妹背の神)、ヰモヲセカミ(妹背神)、アマテル神(陽陰連る神)、
 イサワノヲヲンカミ(結合の大御神)、アマネキカミ(遍き神) など 多くの換言があります。


仕ゆ (つかゆ)
後にオシホミミは箱根の洞にて神となりますが、その遺言により、
チチ姫はイサワの宮に来て、アマテルに仕えて晩年の日々を送ります。

・先にタラチヲ ひたる時 ハコネの洞に 入りますを 母チチ姫は
 言ありて イセに到りて 御神に 朝夕仕え 奉らしむ 〈ホ25〉
・母チチ姫は 後の代を イセに侍れば 大御神 居を同じくす 〈ホ27〉


■イセとアワ方 (いせとあわち)
“イセ” は イサワ宮 の地 (現在の伊勢) をいいます。
“アワ方” は アワ国 をいい、これは近江の国と同じです。
イセも アワも その語義は 「陽陰とその和合」 です。

 ★チ・ヂ (方・地・道・路)
 アチコチ(彼方此方) のチ(方)で、「分けたものの1つ・区分・区画」 が原義です。
 テ(手)の変態で、後世は 「路・道」 と当てられることも多いです。
 また “中央・都” に対して、「地方・僻地」 の意を表す場合もあります。


■中の洞 (なかのほら)
伊勢と近江の中間にある洞に、チチ姫(斎名:スズカ) は葬られました。
その場所は現在も鈴鹿峠と呼ばれています。箱根峠と共に東海道屈指の通行難所です。
イセ・アワ・スズカ は みんな 「合・和・」 の意味を持ちます。それゆえ “の洞” です。

 片山神社 (かたやまじんじゃ)
 三重県亀山市関町坂下636。
 現在の祭神:倭比賣命
 ・江戸時代は「鈴鹿大明神・鈴鹿御前・鈴鹿権現」と称した。
  応永31年(1424年)の『室町殿伊勢参宮記』に “鈴鹿姫と申す小社” と。

 

【概意】
チチ姫も後には妹背の御神に仕え、スズカの道を得て、
イセとアワ方の中の洞に隠れる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 すすかのかみと はこねかみ むかふいもをせ
 ほしおさる すすかのをしゑ ををいなるかな

―――――――――――――――――――――――――――――
 スズカの神と ハコネ神 向ふ妹背
 欲を去る スズカの教え 大いなるかな

―――――――――――――――――――――――――――――

■スズカの神 (すずかのかみ)
タクハタチチ姫の贈り名です。スズカの斎名を持ち、
後にはアマテルに仕えてスズカの道を得たことからの名のようです。
葬られた地もまた鈴鹿峠と呼ばれるようになります。


■ハコネ神 (はこねかみ)
オシホミミの贈り名です。(ハコネの意味は24アヤで説明します。)
馬尻の坂に掘った洞に入って神となり、その坂は後に箱根峠と呼ばれるようになります。

 箱根神社 (はこねじんじゃ)
 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根80-1。 
 現在の祭神:箱根大神


■向ふ妹背 (むかふいもをせ)
妹背(=夫婦)が別の場所に葬られる場合、互いに向かい合うように埋葬するのが
慣例だったようです。幾つかの事例がホツマに現れます。

 

【概意】
妹背は “スズカの神” と “ハコネ神” となって向かい合う。
欲を離れるスズカの教え、大いなるかな。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

⇦前の講座          目次           次の講座⇨