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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第143回 [2024.4.5]

第二七巻 御祖神 船霊の文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 みをやかみふなたまのあや (その1)
 御祖神 船霊の文 https://gejirin.com/hotuma27.html
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―――――――――――――――――――――――――――――
 みをやかみふなたまのあや
 このときに みつほのみやは とよたまの ふたたひのほる
 よろこひそ あまのこやねと ものぬしと まてにはへりて
 みちものへ やもよろくさも をさめしむ

―――――――――――――――――――――――――――――
 御祖神 船霊の文
 この時に ミヅホの宮は トヨタマの 再び上る
 喜びぞ アマノコヤネと モノヌシと 左右に侍りて
 三千モノベ 八百万草も 治めしむ

―――――――――――――――――――――――――――――

■御祖神 (みをやかみ) ■船霊 (ふなたま)
本文中で説明します。


ミヅホの宮 (みづほのみや)
時の国家首都です。


トヨタマ・トヨタマ姫 (とよたまひめ)
九州のソヲ(曽於)を治めるハテツミの姫で、ヒコホオデミ(斎名ウツキネ)の正妃です。
ウガヤフキアワセズ(斎名カモヒト)を生みますが、ウツキネに産屋を覗かれたことを恥じて、
ミヅハメの社に長らく隠遁していました。


上る (のぼる)
「高み・中心に近づく」 ことをいい、
この場合は 「内宮に入る・入内する」 という意です。 ▶内宮 ▶入内


アマノコヤネ ■モノヌシ

■左右に侍る (まてにはべる)
左の臣右の臣として仕える」 という意です。 ▶侍る


■三千モノベ (みちものべ)・三千モノノベ (みちもののべ)
ヤス国(=中国)の 全1500村の民を治める3000人のモノノベ」 を起源とし、
中央政府国(=中国)が所管するモノノベをいう場合の慣用的な表現です。
三千臣彦(みちとみひこ)三千の守(みちのかみ)、三千彦(みちひこ)、三千司(みちつかさ)
などとも呼ばれ、モノヌシがこれを従えます。

 そのヤス国の 千五百村 みな頭あり 今これを 合せて三千の 守 治む 〈ホ23-3〉


■八百万草 (やもよろくさ)
ヤモヨロ(八百万)+クサ(草) で、 クサ(草)は アオヒトクサ(青人種) の略です。
この場合は 「すべての民・全領民」 を表すと考えていいと思います。

 

【概意】
御祖神 船霊の文
この時にミヅホの宮はトヨタマ姫の再び上る喜びぞ。
アマノコヤネとモノヌシ(=コモリ)と左右に侍りて、
3千モノベをして八百万民も治めしむ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 さきにつみはと たけふつと いふきのみやに
 ふそよかた してをさめしむ 
 ほつまちは かしまおしくも ひたかひこ みしまみそくい
 はらみやに ももゑあかたの もののへと ゆたかにをさむ

―――――――――――――――――――――――――――――
 先にツミハと タケフツと イブキの宮に
 二十四県 して治めしむ
 ホツマ方は カシマオシクモ ヒタカヒコ ミシマミゾクイ
 ハラ宮に 百枝県の モノノベと 豊かに治む

―――――――――――――――――――――――――――――

■ツミハ
コモリの2男です。オオモノヌシ3代コモリのコトシロヌシを務めます。 ▶コトシロヌシ
他文献では 積羽八重事代主命・都味歯八重事代主神 などと記されます。

 コモリ尊 副モノノベは トマミなり コトシロヌシは ツミハなり 〈ホ23-8〉

               ┌─────────┐
               ├9.タケフツ    ├10.チシロ
               ├8.ヤサカヒコ   ├11.ミノシマ(ミゾクイ)
               ├7.ナラヒコ    ├12.オオタ
               ├6.コセツヒコ   ├13.イワクラ
               ├5.チハヤヒ    ├14.ウタミワケ
               ├4.ヨテヒコ    ├15.ミコモリ
               ├3.ヨシノミコモリ ├16.サギス
 スヱツミ─イクタマヨリ姫  ├2.ツミハ     ├17.クワウチ
        ├──────┴1.カンタチ    └18.オトマロ
 クシヒコ──コモリ


■タケフツ
コモリの9男です。(系図はツミハを参照)

 建布都神社 (たけふつじんじゃ)
 徳島県阿波市市場町香美郷社本18。 
 現在の祭神:建布都神、経津主命、大山祇命、事代主命
 ・阿波で最も古くから知られる社。


■イブキの宮 (いぶきのみや)
「四国24県を総括する政庁宮」 です。この名はツキヨミが 「気吹を上げた宮」 という意で、
イブキト(気吹凸)宮、ト(凸)の宮、トツ(凸)宮 とも呼ばれます。
また阿波の国にあるため 阿波宮、またコトシロヌシのツミハが この宮の主となったため、
コトシロが館
とも呼ばれます。
この宮の痕跡が金刀比羅宮で、“ことひら” はコトシロの転訛と考えます。

 金刀比羅宮 (ことひらぐう)
 香川県仲多度郡琴平町字川西892番地1。 
 現在の祭神:大物主神
 境内社 事知神社(ことしりじんじゃ):積羽八重事代主神


■二十四県 (ふそよがた)
「四国を構成する24県」 をいいます。 ▶県


■して
‘シ’ は スル(為る) の連用形ですが、これはスル(刷る)と同源で、
「合わす・付ける・添える」 が原義です。
この場合は 「24県を合せて、24県を一括りに」 という意になります。

 四国の24県は、4つの国に分割されたことを暗示する記述がありましたが、
 ここで再び統合し、一つの国として統治することを示しているように思います。

 八岐県を モチタカに 賜えば阿波の イブキ守 〈ホ9ー4〉


■ホツマ方 (ほつまぢ)
「ホツマ国の方・東方面」 の意です。 ▶ホツマ ▶方

 
■カシマオシクモ・アマノオシクモ ■オヰヱ
アマノコヤネの代嗣子です。アマノオシクモとも、またオヰヱとも呼ばれます。
新撰姓氏録に 天押雲命 と記されます。
カシマは 「和合」 を意味し、アマ/アメ(▽陽陰・▽和)と同義です。 ▶カシマ
オシクモは オス(▽治す)+クモ(雲・▽隈) で、「汚穢隈の治め」 を意味します。

         ┌フツヌシ
        ??┤
         └アサカ姫┐
              ├──アマノコヤネ
 ツハヤムスビ─??─ヰチチ─┘     ├──オシクモ
                    ├──ヒタカヒコ(ヒタチ)
 トヨケ─??─ヲバシリ─タケミカツチ─ヒメ


 春日大社 境内 若宮社 (かすがたいしゃ・わかみやしゃ)
 奈良県奈良市春日野町160。
 現在の祭神:天押雲根命

 
■ヒタカヒコ (日高彦)・ヒタチ (日立)
オシクモの弟です。(系図はカシマオシクモを参照)
この名は 「日の高まる所の臣」 の意で、そのためヒタチ(日立)とも呼ばれます。


■ミシマミゾクイ
コモリ11男のミシマと、その愛称であるミゾクイを合せた名です。 ▶ミシマ ▶ミゾクイ

               ┌─────────┐
               ├9.タケフツ    ├10.チシロ
               ├8.ヤサカヒコ   ├11.ミノシマ(ミゾクイ)
               ├7.ナラヒコ    ├12.オオタ
               ├6.コセツヒコ   ├13.イワクラ
               ├5.チハヤヒ    ├14.ウタミワケ
               ├4.ヨテヒコ    ├15.ミコモリ
               ├3.ヨシノミコモリ ├16.サギス
 スヱツミ─イクタマヨリ姫  ├2.ツミハ     ├17.クワウチ
        ├──────┴1.カンタチ    └18.オトマロ
 クシヒコ──コモリ


ハラ宮 (はらみや:▽孕宮)

 

【概意】
これに先立って、ツミハとタケフツをイブキの宮に遣り、24県を一括りに治めさせる。
ホツマ方は カシマオシクモ、ヒタカヒコ、ミシマミゾクイをハラ宮に遣り、
百の枝県のモノノベらと共に豊かに治める。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 つくしより しかとこふゆえ かんたちお ものぬしとして
 はてつみと ともにみそふお をさめしむ
 かれにつみはお ことしろと あすかのみやに はへらしむ

―――――――――――――――――――――――――――――
 ツクシより 使人乞ふゆえ カンタチを モノヌシとして
 ハテツミと 共に三十二を 治めしむ
 故にツミハを コトシロと アスカの宮に 侍らしむ

―――――――――――――――――――――――――――――

ツクシ (▽尽州・▽究州・筑紫)
 
使人 (しかど) ■ツクシ御使 (つくしをしか)
この場合は 「九州を統治する大使」 で、特に “ツクシ御使” と呼ばれます。
九州は都から遠く、まして中央政府直接ではなく スミヨシの枝姓の ツツヲ族・アヅミ族・
ワタツミ族を介在させての統治であったため、常に反乱が絶えなかったようです。
それゆえニニキネに “御子御下り” を請願したのを初めとして、以後も九州はたびたび
中央政府に大使の派遣を要請してきています。

 時にツクシの 治まらで 御子御下りを 乞ふ故に
 君 聞こし召し シノ宮を “ツクシ皇君” と 御言宣 〈ホ25ー2〉


■カンタチ
コモリの長男です。(系図はミシマミゾクイを参照)
テルヒコの32人の重臣の一人として大和国に随行し、アスカの宮に仕えます。
先代旧事本紀には 天神立命 と記されます。


■モノヌシ
「モノノベの主」 という意です。 ▶モノノベ
この場合は 「九州を治めるモノノベを司る主」 をいい、
オオモノヌシ (中央政府のモノノベの主) にしたということではありません。
(カンタチはコモリの長男ですので、その資格は持っています。)


ハテツミ・ハテスミ (▽果て統み)
「果ての国を統べる者」 という意で、九州の曽於国を治める国守です。 ▶曽於
トヨタマ姫の父で、この時点においては 九州で最も有力な地守だったと考えられます。

 カナサキ─??─ハテツミ┬トヨツミヒコ
            ├トヨタマ姫───┐
            ├タケツミヒコ  │
            └オトタマ姫   ├ウガヤフキアワセズ
                     │ (斎名カモヒト)
 オシホミミ─ニニキネ─ヒコホオデミ───┘
            (斎名ウツキネ)


■三十二 (みそふ)
「三十二県」 の略で、32県からなる 「ツクシ=九州」 の別名です。 ▶ツクシ


コトシロ (▽事知・▽事領)


■アスカの宮 (あすかのみや)
ニニキネの兄 クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)が、
大和国のアスカを都として建てた朝廷(=政府)をいいます。

 

【概意】
九州から大使の要請を受けたため、カンタチをモノヌシとして派遣し、
現地のハテツミと共に九州の32県を治めさせる。
ゆえにツミハをそのコトシロとして、アスカの宮にも侍らせる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ふつきゆみはり いせむすひ かもたけすみに みことのり
 きさきおつまに たまふへし こふにまかせん
 たけつみは こふはおそるる あめのまま

―――――――――――――――――――――――――――――
 七月七日 妹背結び カモタケスミに 御言宣
 「后を妻に 賜ふべし 乞ふに任せん」
 タケツミは 「乞ふは畏るる 天の随」

―――――――――――――――――――――――――――――

七月・文月 (ふつき・ふみつき・あふみつき)
アフミ月” の略です。


■七日・弓張 (ゆみはり)
弓張月” の略で、「上弦の月」 をいい、「毎月7日」 をこう呼びます。
下弦の月の日(毎月23日)は “末の弓張・下つ弓張” などと呼びます。


■妹背結び (いせむすび)
「女男の結び」 という意で、「結婚・縁談」 などをいいます。 ▶妹背を結ぶ


■カモタケスミ ■タケスミ・タケツミ ■タケツミヒコ
ハテツミの子で、トヨタマ姫の弟です。(系図はハテツミを参照)
トヨタマ姫の供として九州から上京し、姫の宮落ちにも随行しました。
また ミヅハメの社での隠遁にもずっと付き添っていました。
ニニキネから “トヨタマを養え” と、川間(=河合)の地を賜っています。

 太君笑みて タケスミに 「トヨタマ養せ」 と 川間の 地賜わりて 〈ホ26ー3〉

 このたびの “妹背結び” は、御后トヨタマ姫を守り続けてくれた功に報いる
 褒賞と考えてよさそうです。“カモタケスミ” の語義については、少し後に述べます。


后・妃 (きさき)
この場合は 局(=側室)の1人をいいます。 ▶局

 

【概意】
7月7日 妹背結び。カモタケスミに御言宣。
「局を汝の妻として賜うべし。人選は望むに任せよう。」
タケツミは 「望むのは畏れ多いゆえ、天君の意の随に。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 みほつめもふす そふつほね あれとわかまこ すけもとめ
 うちめいそより しいおりの なかにいそより しるひとそ
 ちちにたつねは うなつきて これたけつみに たまわれは
 かあひのたちそ

―――――――――――――――――――――――――――――
 ミホツ姫申す 「十二局 あれど我が孫 典侍モト姫
 内侍イソヨリ しいおりの 中にイソヨリ 知る人ぞ」
 父に尋ねば 頷きて これタケツミに 賜われば
 “河合” の建ちぞ

―――――――――――――――――――――――――――――

ミホツ姫 (みほつめ・みほつひめ)
なぜこの場面に出てくるかと言うと、ミホツ姫はニニキネの遺言により、
宮内の治” を預かる立場にあるからです。

 纏り事 コヤネ・モノヌシ 共に治せ 宮内の治は ミホ姫と 〈ホ26ー3〉


十二局 (そふつぼね) ■典侍 (すけ) ■内侍 (うちめ)

■モト姫 (もとめ)
コモリの長女で、ヒコホオデミの典侍の1人です。

 クシヒコ
   ├───コモリ
 ミホツ姫   ├────┬1.モト姫     ┌18.トヨリ姫
              │       ├2.タマネ姫    ├17.アワナリ姫
 アチハセ─シラタマ姫  ├3.イソヨリ姫   ├16.ワカネ姫
             ├4.ムレノ姫    ├15.ハザクラ姫
             ├5.ミハオリ姫   ├14.アサ姫
             ├6.スセリ姫    ├13.ムメチル姫
             ├7.ミタラシ姫   ├12.ハモミ姫
             ├8.ヤヱコ姫    ├11.ミチツル姫
             ├9.コユルキ姫   ├10.シモト姫
             └─────────┘


イソヨリ

■しいおり (▽集居り・▽衆居り)
「たくさん居ること」 を意味します。

 シイは シフの名詞形で、シフは シム(染む)の変態です。
 「合わせ・集まり・群れ・数」 などが原義ですが、これはシュウ(集・衆・聚)の変態です。
 オリは オル(居る)の名詞形です。


■イソヨリ知る人ぞ (いそよりしるひと)
「イソヨリは汝の知る人ぞよ」 という意です。

 イソヨリはミヅハメの社に隠遁するトヨタマ姫へ、君の歌を運ぶ使者を務めたため、
 同社でトヨタマ姫に付き添っていたタケツミと面識があります。

 故 歌詠みて ミホツ姫が 孫イソヨリを 遣わせば 〈ホ26ー4〉


■父 (ちち)
イソヨリの父のコモリを指します。


■河合の建ち (かあひのたち)
「河合(=賀茂)の、県としての創立」 という意です。 ▶河合

 トヨタマ姫を養うための扶持として、ニニキネがタケスミに賜った “川間の地” を、
 山背の国の “河合(=賀茂)県” として創立し、天君の内侍イソヨリを妻に娶った
 タケスミを、その県主としたということです。ゆえに カモタケスミ(賀茂タケスミ)です。

 ★カモタケスミ
 カモ(賀茂)+タケ(▽違)+スミ(▽統み) で、「賀茂の県を統べる者」 という意です。

  ★カモ (賀茂)
  カム(擤む)の名詞形で、カムは カル(離る・刈る)の変態です。
  「離す・分ける・区切る」 などが原義で、この場合は 「(川に) 区切られるさま」 をいい、
  ワケツチ(分土)カワアイ(川間・川合)、カワヒ(河合) の換言です。

  ★タケ (▽違)
  タガフ(違ふ)の母動詞 “タク” の名詞形で、「離れ・分れ・別れ・異なり」 などが原義です。
  この場合は 「分割・区切り・区画」 を表し、アガタ(県)カタ/ガタ(方・▽県) の換言です。

 

【概意】
ミホツ姫は申す。
「12人の局があれど、我が孫の典侍モトメ、内侍イソヨリ …
たくさんいる中でもイソヨリは汝の知る人ぞ。」
父のコモリに尋ねれば うなづいたため、
イソヨリをタケツミに賜って “河合(=賀茂)の県” の建ちぞ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 うかわみや めとるすせりめ みこおうむ いみなうつひこ
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウカワ宮 娶るスセリ姫 御子を生む 斎名ウツヒコ
―――――――――――――――――――――――――――――
  
ウカワ宮 (うかわみや)
ウカワ宮の主となっているホノススミ (斎名:サクラギ 通称:スセリ) を指します。

 アマテル─┐
      ├オシホミミ┐
 セオリツ姫┘     ├┬クシタマホノアカリ
            ││
 タカキネ──チチ姫──┘└ニニキネ  ┌ホノアカリ(斎名ムメヒト)
                ├───┼ホノススミ(斎名サクラギ)
 カグツミ───マウラ──┬アシツ姫  └ヒコホオデミ(斎名ウツキネ)
             │
             └イワナガ


■スセリ姫 (すせりめ・すせりひめ)
コモリの6女です。ホノススミの妻に召され、ウツヒコを生みます。

 クシヒコ
   ├───コモリ
 ミホツ姫   ├────┬1.モト姫     ┌18.トヨリ姫
              │       ├2.タマネ姫    ├17.アワナリ姫
 アチハセ─シラタマ姫  ├3.イソヨリ姫   ├16.ワカネ姫
             ├4.ムレノ姫    ├15.ハザクラ姫
             ├5.ミハオリ姫   ├14.アサ姫
             ├6.スセリ姫    ├13.ムメチル姫
             ├7.ミタラシ姫   ├12.ハモミ姫
             ├8.ヤヱコ姫    ├11.ミチツル姫
             ├9.コユルキ姫   ├10.シモト姫
             └─────────┘


■ウツヒコ
ホノススミ (斎名:サクラギ 通称:スセリ) とスセリ姫の子です。
斎名が記されるのみで、その事績には触れられていません。
しかし斎名が示されるということは 相当な重要人物であるはずです。 ▶斎名

 アマテル─オシホミミ─ニニキネ┐
                ├ホノススミ┐
 カグツミ──マウラ──アシツ姫┘     ├ウツヒコ
                      │
 オホナムチ─クシヒコ─コモリ──スセリ姫─┘
                  (6女)

 後代、神武天皇の東征の途上、速吸門で御船に寄って来て、東征への参加を望む
 九州の地守が現れ、シイネツヒコの名を賜りますが、はじめはウツヒコと名乗っています。
 ここにいうウツヒコと同一人物の可能性があります。

 御船の到る 速吸門 寄る海人小船 アヒワケが 問えば地守 ウツヒコぞ … …
 船に引き入れ 名を賜ふ 
シイネツヒコの 率く船の 〈ホ29〉

 

【概意】
ウカワ宮は <コモリ6女の> スセリ姫を娶り、斎名ウツヒコの御子を生む。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 これのさき あねたまねひめ はらをきみ きさきになして
 みそくいか いくたまはすけ いくよりは うちめとなれと
 たまねひめ くにてるみやと たけてると うめはなつめか
 うふきなす

―――――――――――――――――――――――――――――
 これの先 姉タマネ姫 ハラ皇君 后になして
 ミゾクイが イクタマは典侍 イクヨリは 内侍となれど
 タマネ姫 クニテル宮と タケテルと 生めばナツメが
 産着成す

―――――――――――――――――――――――――――――

■タマネ姫 (たまねひめ)
コモリの2女です。(系図はスセリ姫を参照)
ハラ皇君ムメヒトの御后となります。


ハラ皇君 (はらをきみ)
2代目ハラ皇君の ホノアカリ(斎名ムメヒト) を指します。

 もとはアマテルがニニキネに授けた称号でしたが、ニニキネがミヅホに
 国家首都を移した時、ハラ皇君の地位を長男のホノアカリに譲っています。

 アマテル─┐
      ├オシホミミ┐
 セオリツ姫┘     ├┬クシタマホノアカリ
            ││
 タカキネ──チチ姫──┘└ニニキネ  ┌ホノアカリ(斎名ムメヒト)
                ├───┼ホノススミ(斎名サクラギ)
 カグツミ───マウラ──┬アシツ姫  └ヒコホオデミ(斎名ウツキネ)
             │
             └イワナガ


■イクタマ ■イクヨリ
どちらもミゾクイの娘で、イクタマ姫はムメヒトの典侍に、
イクヨリ姫はムメヒトの内侍に召されています。 ▶典侍 ▶内侍

 アマテル─オシホミミ─ニニキネ┐
                ├ホノアカリ(斎名ムメヒト)
 カグツミ──マウラ──アシツ姫┘      ┃
                       ┃
 オホナムチ─クシヒコ─コモリ─ミゾクイイクタマ姫
                 (11男) │  ┃
                    └イクヨリ姫

 
■クニテル ■タケテル
ハラ皇君ムメヒトとタマネ姫が生んだ2人の男子です。
クニテルとタケテルは どちらも斎名だと思います。

 アマテル─オシホミミ─ニニキネ┐
                ├ホノアカリ┐
 カグツミ──マウラ──アシツ姫┘     ├クニテル
                      ├タケテル
 オホナムチ─クシヒコ─コモリ──タマネ姫─┘
                  (2女)


ナツメ

 

【概意】
これに先立ち、その姉のタマネ姫をハラ皇君は后となして、
ミゾクイのイクタマ姫とイクヨリ姫も それぞれ典侍と内侍となるが、
タマネ姫はクニテル宮とタケテル宮を生み、ナツメが産着を成す。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 さいわひひしは むかしこの うつむろかこむ たけこけて
 すつれはおえる またらたけ あやにうつして みはのなも
 さいあいへしと いせのみは うふきにもちゆ もとおりそ
 ほそのをきれる たけもこれ

―――――――――――――――――――――――――――――
 幸菱は 昔この 埋室囲む 竹焦げて
 捨つれば生える 斑竹 紋に写して 御衣の名も 
 “最愛へし” と 妹背の衣 産着に用ゆ もとおりぞ
 臍の緒切れる 竹もこれ

―――――――――――――――――――――――――――――

幸菱 (さいわひびし)
婚礼衣装や産着に用いる紋です。 ▶画像

 ★菱 (ひし)
 ヒシグ(拉ぐ)の母動詞 “ヒス” の名詞形で、「押しつぶれた形」 をいいます。


■昔この (むかしこの)
“この” は 五七調を整えるためのもので、特に意味はありません。


埋室 (うつむろ)
アシツ姫が身の潔白を示そうと、「三つ子と共に籠った室」 をいいます。
姫は “他胤ならば滅びますように” と願掛けして、この室に火を着けます。

 姫は裾野に 埋室し 周りに柴の 垣 成して 母子誓ひて 中にあり
 「他胤ならば 滅びん」 と 火を着け焼けば 〈ホ24-6〉


斑竹 (まだらだけ)
火を着けた埋室の周りを囲んでいた竹を捨てたら、
新たに生えてきたという 「まだら模様の竹」 をいいます。


■最愛へし (さいあいへし)
「最愛合わせ・男女の結びの寄せ」 を意味します。 ▶最愛
そして語呂合せにより、このモノザネとして サイワヒヒシ(幸菱)の紋を使うというわけです。

 ★へし (圧し)
 ヘス(圧す)の名詞形で、「合わせ・寄せ・付け」 などが原義です。

 ★最愛 (さいあひ・さいあい) ★幸ひ (さいわひ・さいわい)
 最愛(さいあひ)と幸ひ(さいわひ)は 発音が似ていますが、語義は異なります。
 しかしホツマの思想においては 「陰陽(男女)の和合は繁栄(子)の礎」 ですから、
 両者は切っても切り離せない関係にあります。


■妹背の衣 (いせのみは)
「女男和合の着物」 という意で、「婚礼衣装」 をいいます。 ▶妹背 ▶衣


■臍の緒切れる竹 (ほぞのをきれるたけ)
“切れる” は “切る” の連体形で、「臍の緒を切る時の竹」 という意です。
それにも 「斑竹」 を使うということです。 ▶臍の緒
辞書にも 「臍の緒を切るのには竹刀を用いた」 との記述が見えます。 ▶竹刀


もとおり (回り・廻り)

 

【概意】
“幸菱” は、むかし埋室を囲む竹が焦げて、捨てれば生えるまだら竹。
紋に写して、衣の名も “最愛へし” (最愛合わせ) と名づく。
婚礼衣装や産着の紋に用いる由来ぞ。臍の緒を切る時の竹もこれ。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

 

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