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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第130回 [2024.3.8]

第二四巻 コヱ国 ハラミ山の文 (5)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 こゑくにはらみやまのあや (その5)
 コヱ国 ハラミ山の文 https://gejirin.com/hotuma24.html
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 こやねかしまに としこゆる
 ものぬしひとり ひたかみの いせきなしなし ひすみまて
 ををちよろこひ そのちちか やまとのかみと なりてのち
 まこにあいたく としよると てつからみあえ

―――――――――――――――――――――――――――――
 コヤネ カシマに 年越ゆる
 モノヌシ一人 ヒタカミの 井堰 成し成し ヒスミまで
 祖父喜び 「その父が “ヤマトの神” と なりて後
 孫に会いたく 年寄る」 と 手づから御饗

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■カシマ (鹿島・▽和締)
タケミカツチ(=カシマ尊)が知行する 「ヒタチの国」 の別名です。
この時点でミカツチが存命かは不明ですが、娘の “ヒメ” を娶ったアマノコヤネは、
ヒメの待つ “イキス宮” に帰って年を越します。

         ┌フツヌシ
        ??┤
         └アサカ姫┐
              ├─アマノコヤネ─┐
 ツハヤムスビ─??─ヰチチ─┘        ├オシクモ─アメタネコ
                       │
                       ├ヒタチ
 トヨケ─??─ヲバシリ─タケミカツチ─ヒメ──┘


 息栖神社 (いきすじんじゃ)
 茨城県神栖市息栖2882。
 現在の祭神:久那戸神 (岐神)


■モノヌシ
3代オオモノヌシの コモリ(斎名ミホヒコ) をいいます。 ▶オオモノヌシ


ヒタカミ

井堰 (いせき)

ヒスミ (▽秘州・日隅)
コモリの祖父オホナムチは、カシマタチによりイヅモ国の領主の地位を剥奪されますが、
その後の忠義に対する温情から、あらためてヒスミの国の領主に任じられています。

 天振ゆを受くる オホナムチ あかるアソベの ウモト宮 ・・・
 現し地尊 オホナムチ ツカルウモトの 守となる 〈ホ10-5〉

 岩木山神社 (いわきやまじんじゃ)
 青森県弘前市百沢字寺沢27。  
 現在の祭神:顕国玉神 (うつしくにたまのかみ)
 <筆者注> 顕国玉神はオホナムチの贈り名です。


祖父 (ををぢ)
ヲヲは ヲユ(老ゆ)の名詞形で、チは チチ(父)の短縮です。
ここではコモリの祖父の 「オホナムチ」 を指します。


■その父 (そのちち)
「そちらの父・お前の父」 の意で、コモリの父の 「クシヒコ」 を指します。

     イサナギ ┌ソサノヲ─オホナムチ (初代モノヌシ)
       ├──-┤       ├───クシヒコ (2代モノヌシ)
    ┌イサナミ └アマテル──タケコ    │
    │                   ├──ミホヒコ (3代モノヌシ)
    │                   │
 トヨケ┴ヤソキネ──タカキネ───────ミホツ姫


■ヤマトの神 (やまとのかみ:和の神)
アマテルがクシヒコに賜った “ヤマトヲヲコノミタマ(和皇籠の御霊)” の尊名を
簡略して神名としたもので、ミモロ山の洞に入って神となった 「クシヒコの神霊」 をいいます。
オオクニタマ(大国魂)、ヤマトオオクニカミ(大和大国神)、オホヤマトクニタマノカミ(大和国魂神)
などとも呼ばれます。

 大和神社 (おおやまとじんじゃ) 
 大和国山辺郡 大和坐大国魂神社。奈良県天理市新泉町星山306。
 現在の祭神:日本大国魂大神 (やまとおおくにたまのおおかみ)
 ・延喜式神名帳には 大和国山辺郡鎮座 “大和坐大国魂神社” と記載。
 ・<筆者注> 日本大国魂は ヤマトヲヲコのミタマ の換言です。

 大國魂神社 (おおくにたまじんじゃ)
 東京都府中市宮町3-1。
 現在の祭神:大國魂大神 (おおくにたまのおおかみ)


■年寄る (としよる)
このヨルは “選る” の意で、「上がる・進む・熟す」 などが原義ですが、 ▶選る
トシヨリ(年寄)という言葉があるため、それに合わせています。


手づから (てづから)
「自身の手を使って」 という原義で、ミヅカラ(自ら)と同義です。
ツカラは ツガル(連る・鎖る)の名詞形で、ツガルは ツカフ(使ふ・仕ふ・支ふ)の変態です。


御饗 (みあえ)

 

【概意】
コヤネはカシマに帰って年を越す。
モノヌシは一人、ヒタカミ国に井堰を造りつつヒスミまで。
祖父(=オホナムチ)は喜び、
「その父が “ヤマトの神” となりて後、孫に会いたく年を重ねていた」 と、
手づからの祝宴。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ものぬしも よろこひいわく
 わかきみの やまおやふさの ゐゆきなす
 おおちおとろき われたとひ あらたなすとも これしらす
 きみはまことの てらすかみ よよのみをやそ まめなせと
 くにさかいまて おくりてそ なこりあるなり

―――――――――――――――――――――――――――――
 モノヌシも 喜び曰く
 「我が君の 山を八房の 居雪成す」
 祖父驚き 「我たとひ 新田成すとも これ知らず
 君は真の 照らす尊 よよの御祖ぞ 忠なせ」 と
 国境まで 送りてぞ 名残あるなり

―――――――――――――――――――――――――――――

■八房の居雪 (やふさのゐゆき)
八房計り” と称して、8湖を掘った土をハラミ山頂に積み上げて 8峰を造りましたが、
この 「8峰に積る雪」 をいいます。

 ★居雪 (ゐゆき)
 ヰ(居)+ユキ(雪) で、「居すわる雪・積った雪・積雪」 をいいます。 ▶雪


新田 (あらた)
 
■よよの御祖 (よよのみをや) ■よの御祖 (よのみをや)
「いよいよ、ゆくゆくを恵む太祖」 というような意味で、幾代の御祖” の換言です。 ▶よよ ▶御祖


忠 (まめ)

名残 (なごり)
ナグ(▽和ぐ)+コル(凝る) の短縮 “ナゴル” の名詞形で、
「付いて離れないさま・こびり付くさま・執着」 などが原義です。
ノコリ(残り)の変態ですが、「心情的な残り」 を “ナゴリ” と表すようです。

 

【概意】
モノヌシも喜び曰く、「我が君は 居雪の積る八房の山を成す。」
祖父は驚き、「我はたとえ新田を成すとも、これ知らず。
君は真の照らす尊、ゆくゆくの繁栄の御祖ぞ。忠なせ」 と、
国境まで送り行くも名残あるなり。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――
 ものぬしは うみへおにしに めくりつつ
 さしゑにあらた おこさしむ
 さとにわたりて あらたなす こしにもとりて いせきなすかな

―――――――――――――――――――――――――――――――
 モノヌシは 海辺を西に 巡りつつ
 指絵に新田 起こさしむ
 佐渡に渡りて 新田成す 越に戻りて 井堰成すかな

―――――――――――――――――――――――――――――――

■指絵 (さしゑ)
「設計図・計画書・作業指示図」 みたいなものでしょう。
ヱ(絵)は 「合わせ・写し・コピー」 が原義です。


■佐渡 (さど)
ソト(外)の変態ではないかと思案中です。
サト(里)ソデ(袖)サタ(狭田・佐太・佐田・佐陀) なども変態と考えます。


■越 (こし)
コシネクニ(越根国) → コシクニ(越国) → コシ(越) の簡略です。

 

【概意】
モノヌシは海辺を西に巡りながら、指絵を示して新田を開発させる。
佐渡に渡っては新田を成し、越に戻っては井堰を成すかな。

 

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 ときにきみ おほすことあり こやねして にはりにととめ
 かつてして うみへおのほる みゆきふれ
 おおやますみは ゐつさきの かりやにむかえ みあえなす

―――――――――――――――――――――――――――――
 時に君 思すことあり コヤネして ニハリに留め
 カツテして 海辺を上る 御幸触れ
 オオヤマズミは 伊豆前の 仮屋に迎え 御饗なす

―――――――――――――――――――――――――――――

上る (のぼる)
三種を受けて和つ君(=皇君)となったニニキネが、“上る” という場合、
この時点での国家君主であるオシホミミの座所か、アマテル大御神の座所以外にはありえません。
ここではアマテルが座す 「イセの宮(=イサワ宮)に詣でる」 ということです。


オオヤマズミ
サカオリの宮を預っている、3代オオヤマズミの 「マウラ」 です。


■伊豆前の仮屋 (ゐつさきのかりや)
ヰツサキは 「伊豆の手前」 の意に解しています。
“伊豆” は イツ(逸)の岬=伊豆半島 を指したのか、あるいは ヰツアサマ峰の麓地を
指したのかは判断できませんが、古く 伊豆国 と呼ばれた地域を指すと思われます。
だとすると現在の 「三島」 あたりが “伊豆前” に相当するかと考えてます。 ▶仮屋

 三島大社 (みしまたいしゃ)
 静岡県三島市大宮町2-1-5。
 現在の祭神:大山祇神、事代主神 (配祀) 阿波神、伊古奈比当ス、楊原神
 江戸時代の祭神:三島大明神
 ・延喜式神名帳は 伊豆三島神社 (名神大 月次/新甞) 伊豆国賀茂郡鎮座 と記載。
 <筆者考> 複雑な由緒を持つ謎多き神社ですが、元来は伊豆国の政庁で、
      そしてその大本は “伊豆前の仮屋” なのでは?と疑っています。

 

【概意】
時にニニキネ君は考える所があり、コヤネをニハリに留めて留守居役となし、
カツテをして 海辺を上って <イセに> 御幸することを伝えさせると、
オオヤマズミは伊豆前の仮屋に君を迎えて御饗をなす。

 

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 かしはなすとき あしつひめ いめはらめりと もうすゆえ
 いせにつけんと よそひなす
 ときにそのはは あねつれて かりやにいたり まみゑこふ

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 膳なす時 アシツ姫 「妹 孕めり」 と 申すゆえ
 「イセに告げん」 と 装ひなす
 時にその母 姉 連れて 仮屋に到り まみえ乞ふ

―――――――――――――――――――――――――――――

■膳なす (かしはなす)
「(膳を献上して) 敬意を表す・おもてなしする」 という意味です。 ▶カシハ(膳)


アシツ姫 (あしつひめ)

妹 (いめ)

■孕めり (はらめり)
“孕むなり” の短縮です。


■イセに告げん (いせにつげん)
「イセの大御神に知らせよう」 という意です。


■装ひなす (よそひなす)
ここでは 「支度する・準備する」 などの意です。 ▶装ひ

まみゑ (目見え)

 

【概意】
膳を捧げておもてなしする時、
アシツ姫が 「妹は孕むなり」 と申すゆえ、
「ではイセに告げよう」 と支度している時、
その母が姉を連れて仮屋に到り、目通りを乞う。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 めせはもうさく いもとさえ わかいつくしの あねありと
 ことはかされは ふたこころ
 あねいわなかお めせはその かたちするとく みめあしく
 かれにきもけし みやひかえ やはりあしつと のたまえは

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 召せば申さく 「妹さえ 我が慈しの 姉あり」 と
 言葉飾れば 二心
 姉イワナガを 召せばその 形 鋭く 見目悪しく
 故に肝消し ミヤビ変え やはりアシツと 宣給えば

―――――――――――――――――――――――――――――

召す (めす)
「合わす」 が原義で、「寄せる・呼ぶ」 などの意を表します。

 
■我が慈しの姉 (わがいつくしのあね)
イツクシ(慈し)イトホシ(愛おし)イトシ(愛し) と同義です。
ですから 「我がいとしの姉・我のかわいがる姉」 などの意です。


二心 (ふたごころ)
「別の思い・もう一つの考え・浮気心」 などをいいます。


■イワナガ (▽忌中)
オオヤマズミ(3代目マウラ)の娘で、アシツ姫の姉です。
磐長姫尊、石長比売、巖永姫命 などと記されます。


 サクラウチ───カグツミ─┬カグヤマ──カゴヤマ
[初代ヤマズミ]   [2代]   ├カンタマ
              └マウラ──┬イワナガ
               [3代]   └アシツ姫


 雲見浅間神社・雲見神社 (くもみせんげんじんじゃ)
 静岡県賀茂郡松崎町雲見386-2
 現在の祭神:磐長姫命
 <筆者考> 雲見(くもみ)は、おそらくイワナカ(忌中)の換言です。 ▶イワ(▽忌)


■形鋭し (かたちするどし)
「体形に女らしい柔らかさのない感じ」 をいうように思います。 ▶見目形


肝消す (きもけす)
“肝を潰す” と同義で、「非常に驚く」 という意です。


ミヤビ
ここでは「心・思い・心情」などを意味します。

 

【概意】
召して会う母が申すには、
「妹にさえ(寵愛を賜りましたが)、我が慈しの姉がおります」 と
言葉を飾れば、君も二心を起して姉のイワナガを召すと、
その形の鋭さ、顔だちの醜さに肝を潰して心変りし、
やはりアシツと宣給えば、

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ちちおとろきて つましかる かくあらんとて いたさぬお
 いそきかえれと おひやれは ははあねうらみ
 しもめして いもとおとさん あたまくら ついにいつわり

―――――――――――――――――――――――――――――
 父驚きて 妻叱る 「かくあらんとて 出さぬを
 急ぎ帰れ」 と 追いやれば 母・姉 恨み
 下侍して 妹 陥さん 他枕 ついにいつわり

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■父 (ちち)
3代オオヤマズミの 「マウラ」 です。


■下侍・下女 (しもめ)
「下働きとして仕える女」 をいいます。
男の場合は シモベ(下部・僕・▽下侍) と呼ぶようです。


■他枕 (あだまくら)
「別の相手と床を共にすること」 をいいます。 ▶枕

 ★他・異 (あだ)
 アッチ(彼方)の “アツ” の変態で、「離れるさま・異なるさま・別」 などが原義です。


■いつわる・いつはる (偽る・詐る)
イツ(▽逸つ)+ハル/ワル(▽遥る・割る) で、両語とも 「離す・そらす・外す・曲げる」 などが原義。
「事実を曲げる・歪曲する・うそをつく」 という意味です。

 

【概意】
父は驚いて妻を叱る。
「こうなるだろうと出さずにいたものを ・・・、急ぎ帰れ」 と追いやれば、
母と姉は恨み、妹を陥れる他枕の噂を 下侍をしてついに偽らせる。

 

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 しろこやて きみにきこゆる うたかひに たひやおよはに
 たちいてて いせにかえます ひめひとり ねさめてゆけは
 まつさかに せきとめられて しろこやに かえりちかつて

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 シロコ宿で 君に聞ゆる 疑ひに 旅屋を夜半に
 立ち出でて イセに帰えます 姫一人 寝覚めて行けば
 目つ前に 塞き止められて シロコ宿に 帰り誓つて

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■シロコ宿 (しろこや) ■旅屋・旅宿 (たびや)
シロコは地名で、現在の 三重県鈴鹿市白子町 にその名が残ります。
シロコの意味は少し後に判明しますが、「白子」 の意ではありません。

 ★宿・屋 (や)
 これは ヤド(屋戸・宿)の短縮で、「よどむ所・留まる所・滞在する所」 が原義です。
 ですから 屋戸 も 宿 も同じなのですが、普段滞在する所が “屋戸” 、旅先で滞在する所が
 “宿” と当てられたわけです。

 ★旅 (たび)
 タビ(旅)は タフの名詞形で、タフは トフ(訪ふ)タム(回む)の変態です。
 ですから 「往き来・回り・巡り」 が タビ(旅・度)の原義です。


夜半 (よは)
ヨワシ(弱し)の母動詞 “ヨフ” の名詞形で、ヨヒ(宵)の変態です。
「(陽の勢いが) 低まる時・衰える時」 をいい、ヨル(夜)ユフ(夕)ヨミ(黄泉) なども変態です。


寝覚む (ねざむ)
「ねむりから覚める」 の意で、今風には 「目覚める」 です。


■目つ前 (まつさか)
マ(目)+ツ(格助詞)+サカ(▽前) で、サカは サキ(前)の変態です。
ですから 「目の前・もくぜん・直前」 などの意です。辞書には “まさか” で載ります。

 この場合は 「イセの目前」 の意で、これが マツサカ(松阪) という地名の由来と考えられます。


■塞き止められる (せきとめられる)
何によって、またどういう理由で塞き止められたのかについては 惜しくも語られていません。

 

【概意】
シロコの宿場で その噂が君の耳にも入り、
疑いを持った君は 旅宿を夜のうちに立ち出でてイセに帰ります。
姫は一人寝覚めてイセに向かえば、その目前で塞き止められて、
やむなくシロコ宿に帰り、そこで誓いを立てる。

 

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 ねたまれの わかはちすすけ このさくら むかしひををち
 さくらうし このはなささく ををんかみ おうちにうえて
 いせのみち なるはなるるお はかります

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 「妬まれの 我が恥 濯げ この桜 昔 曾祖父
 サクラウシ この木捧ぐ 大御神 大内に植えて
 妹背の道 和る離るるを 計ります」

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■妬まれの我が恥 (ねたまれのわがはぢ)
16アヤでは『妬む妬まる みな咎ぞ』と説かれていますが、“同類相求む” の
法則により、妬まれる側も 妬む側と同じ匂いが付いていることをいいます。
アシツ姫は、母と姉に妬まれるのも “自分の咎” と感じているわけです。

 人を妬めば 日に三度 炎食らひて 身も痩する 妬む妬まる みな咎ぞ 〈ホ16-6〉


曾祖父 (ひををぢ)
 
サクラウシ・サクラウチ (▽刳大人/桜打ち)
初代のオオヤマズミです。古くはハラミの宮で大老翁として二尊に仕え、
後にはアマテルの右の臣となります。アマテルの内宮(皇后)のセオリツ姫、
内侍ワカサクラ姫、カグツミの父で、アシツ姫の曾祖父にあたります。


  サクラウチ─┬─カグツミ─┬カグヤマ──カゴヤマ
 [初代ヤマズミ]│  [2代]   ├カンタマ
        │      └マウラ──┬イワナガ
        │       [3代]   └アシツ姫
        │
        ├─ホノコ(セオリツ姫)
        │  ├──オシホミミ─┬クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
        │ アマテル      │
        │  │        └ニニキネ(斎名キヨヒト)
        └─ハナコ(若サクラ姫)


 サクラウチの名には2つの意味があります。
 一つは、サクラ(▽刳)+ウチ(大人・氏) です。サクラは サクル(決る・刳る)の名詞形で、
 エグリ(抉り・刳り)と同義です。つまり 「えぐられた場所」 を意味しますが、
 これはタニ(谷)と同じです。ですからサクラも 「相模国」 の換言の一つです。
 もう一つは、サクラ(桜)+ウチ(打ち) で、これは この人物がイサワの大内宮
 桜を植えたことによります。


■この木 (このはな)
“この” は this の意で、「桜の木」 を指します。 ▶木(はな)


大内 (おうち・をうち・ををうち・うおち)

妹背の道 (いせのみち・いもせのみち)

■和る離る (なるはなる)
陽陰の 「付きと離れ」 をいい、“合ふ失す” あるいは “ツクバ/ツクマ” の換言です。

 これは 「合と離」 を繰り返すことで、陽陰(男女)の関係がしっくりと落ち着いてゆき、
 最後には一つとなることを意味し、「陽と陰のふるまいの本質」 を表すものです。


■計る (はかる)
この場合は 「比べる・並べる・なぞらえる」 などの意です。

 桜の “咲く/散る” に、陽陰(男女)の “付く/離る” をなぞらえるということです。
 花の “咲く/散る” は、電灯のスイッチの “オン/オフ” みたいなものですから、
 咲く=オン=付く、散る=オフ=離れる です。

 

【概意】
「妬まれの我が恥を濯げ、この桜。
昔 曽祖父のサクラウシはこの木を大御神に捧げ、
大御神は大内宮の庭に植えて、妹背の道の “和る離る” になぞらえます。」

 

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 さくらいあらは わかはらみ あたたねならは はなしほめ
 まさたねならは うむときに さけとちかひて
 ここにうゑ さとにかえます

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 「桜 意あらば 我が孕み 他胤ならば 木 萎め
 真胤ならば 生む時に 咲け」 と誓ひて
 ここに植え 里に帰ます

―――――――――――――――――――――――――――――

■意 (い・ゐ)
「意思・意識・気・こころ」 などをいいます。 ▶気(い・き) ▶霊(ひ・い)

 
■他胤 (あだたね) ■真胤 (まさたね)
“他胤” は 「他人の子・ニニキネ以外の子」 を意味し、
“真胤” は 「真正の子・ニニキネの子」 を意味します。 ▶あだ(他・異) ▶まさ(真) ▶胤


■誓ふ (ちかふ)
チギル(契る)の変態で、「交える・結ぶ・縛る」 などを原義とし、
この場合は 「約束する・契約する・縛る」 などの意です。


■ここ ■里 (さと)
“ここ” は 「シロコ」 です。
“里” は この場合は 「出発点・故郷」 の意で、「ハラミ山の麓」 をいいます。 ▶里

 ★シロコ (▽知子・白子)
 シロ(▽知)+コ(子) で、シロは シル(知る)の名詞形です。
 ですから 「子を知る・子を知らせる」 という意です。
 つまり 「孕んだ子が他胤か真胤かを知らせる契りの桜を植えた所」、
 これが 三重県鈴鹿市の “白子” という地名の由来です。

 

【概意】
「桜よ、もし意思があるならば、我が孕み
他胤ならば木を枯らし、真胤ならば生む時に咲け」 と、
誓いをかけてここに植え、里に帰ります。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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