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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第123回 [2023.2.24]

第二三巻 衣定め 剣名の文 (6)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 みはさだめつるぎなのあや (その6)
 衣定め 剣名の文 https://gejirin.com/hotuma23.html
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 ときにまた おおものぬしか もうさくは
 むかしみたれす おこらぬお あらこおきては いつくんそ
 きみゑみいわく

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 時にまた オオモノヌシが 申さくは
 「昔 乱れず おごらぬを 粗衣を着ては いづくんぞ」
 君 笑み曰く

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■粗衣 (あらこ)
アラ(粗)+コ(籠) で、「粗末な衣・ぼろ着」 をいいます。
コ(籠)は コメ(籠め込め)の略で、「囲み・包み・繭・衣」 などをいいます。


いづくんぞ
いづこ(何処)にぞ” の音便で、後に続くべき “行く” が省かれてます。
〜したら 「どこへ(行く)?・どう(なる)?」 という原義で、“いづこえか” と同じです。

 

【概意】
時にまたオオモノヌシが申すには、
「<飾る心の無かった> 昔は人も乱れずおごらぬのなら、
今も粗末なボロ衣を着てはどうでしょう?」
君は笑み曰く、



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 なんちもと たたちおもえと のちのよに いやをさまれは
 うゑしらて おこるたのしの みつるとき
 うゑとしころは みのらすて まことにうゑる
 これかねて さたむるはのり かんかみそ これつつしめよ

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 汝 もと 直ち思えど 後の代に いや治まれば
 飢え知らで おごる楽しの 満つる時
 飢え遠し頃は 実らずて 真に飢える
 これ予て 定むる機法 鑑みぞ これつつしめよ

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もと (本・元・原・基・素)
ここでは 「はじめ・むかし・いにしえ」 などの意です。


■直ち (ただち)
タダシ(▽直し・正し)の名詞形で、「すぐなさま・一直線なさま・他にそれないさま」
が原義です。ここでは副詞として 「直接的に・短絡的に・単純に」 などの意を表します。


■いや治まる (いやをさまる)
ここでは 「しだいに治まる・どんどん治まる」 などの意です。
   
 ★いや・いよ (弥) ★いやいや・いよいよ (弥々) ★やや・よよ (弥々) ★や・よ (弥・余)
 イユク(い行く)の母動詞 “イユ” の名詞形で、「回り・巡り・循環・繰り返し」 などが原義です。
 「回転しながら成長発展していくさま・雪だるま式」 をいいます。
 イヤ・イヨを重ねて “いやいや・いよいよ”、その短縮が “やや・よよ”   “や・よ” です。


■楽し (たのし:名詞)
形容詞のタノシ(楽し)が名詞化したものです。ですから 「楽しさ・楽しみ」 です。


■飢え遠し頃 (うゑとしころ)
「飢えが (人の意識から) 遠ざかる頃・飢えを忘れた頃」 の意です。


 ★とし (▽遠し・▽外し)
 ウトシ(疎し) の短縮形で、「離れる如し・別れる如し・外れる如し」 などが原義です。


真 (まこと)

■機法・衣法 (はのり)
機の織法」 の換言です。
アマテルは 人々が 「身の程を忘れぬため・おごりを抑えるため」 に、
身分に応じて衣を作る機(反物)の幅を制限する、この法を定めました。

 我見るに 人意は変る おごりがち 謙りには固く 故 機の 織法定む 〈ホ23ー3〉


■鑑みぞ (かんがみぞ)
ここでは命令形で、「鑑みるのだぞ・映し見てくれよ」 という意です。 ▶鑑みる


■つつしむ (慎む・謹む)

 

【概意】
汝はすぐ大昔のことを考えてしまうが、後の時代に次第に治まって、
飢えを知らずにおごる楽しさが世に満ちた時、すなわち
飢えを忘れた時にこそ、実りが得られず本当に飢えるのである。
あらかじめ機法を定めたゆえは これに鑑みよ。<身の程を顧みておごりを抑えるためぞ>
このこと留意いたせよ。



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 むかしなる あおひとくさも そにふゑて
 みちおふれても とときかね こすゑやふるる もといかや
 ときほこふらは すみやかに とほらんものと つるきなす

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 むかし和る 青人草も そに増えて
 道を触れても 届きかね 後末破るる 基かや
 時 矛振らば 速やかに 通らんものと 剣 成す

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■和る (なる)
このナル(▽和る・平る・均る)は 「やわす・和合/調和する・素直である」 などの意で、
“むかし和る青人草” は 「むかしは素直だった民」 という意です。 ▶素直

 クニトコタチの 代にはまだ 矛なき故は 素直にて を守れば 矛 要らず 〈ホ23ー1〉


青人草 (あおひとくさ)

■そに (▽然に・其に)
「そんなに・それほどに・かくも・さように・このように」 などの意です。


■道 (みち)
「トの道・調和の道」、また それを通すための 「経(たて)・法」 をいいます。


後末 (こすゑ)

■破る・敗る (やぶる)
ヤフ+フル(狂る) の短縮で、ヤフは ヤム(病む)、ヤル(破る) の変態です。
両語とも 「曲る/曲げる・逸れる/逸らす・外れる/外す・不調異常になる/する・倒れる/倒す」
などが原義です。


■基 (もとい・もとゐ)
モツ(▽戻つ)+トユ(訪ゆ) の同義語短縮 “モトユ” の名詞形で、「回り・巡り・還り」
などが原義です。「回帰する所・起源・原点・基本・由来」 などの意を表します。
モトオリモト、モトウラ、モトラ などの換言です。


■矛振る (ほこふる)
フル(振る)は 「行き来させる・回す・配る」 などが原義で、
この場合は 矛を 「動かす・働かす・駆使する」 などの意を表します。 ▶矛


■速やか (すみやか)
スム+ヤカ(▽如・▽然) で、スムは ススム(進む)の母動詞です。
「滞りなく進行・進展するさま・ぐんぐん進むさま」 を意味します。

 

【概意】
昔は素直だった青人草も、かくも増えれば道を示しても届きかね、
将来の亡国の基かと思った時、矛の力を利用すれば
すみやかに道が通らんものと、剣を造ったのである。



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 そのときふれて かねりとお そたりにつるき つくらしむ
 なかにひとりは ひいてたり やひはするとく みつおわる
 このかねりとに みことのり なんちかやいは よくときそ
 しかれとまての いきかれお しらすをしえん しかときけ

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 その時触れて 金錬人を 十人に剣 造らしむ
 中に一人は 秀でたり 刃 鋭く 水を割る
 この金錬人に 御言宣 「汝が刃 よく鋭きぞ
 しかれど左右の 活き枯れを 知らず 教えん 確と聞け」

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金錬人 (かねりと)

■刃 (やいば・やひば)
ヤヒ+ハ(端) で、ヤヒは ヤヱ(栄え)の変態。
「高まるさま・盛んなさま・優れるさま・鋭いさま」 を意味します。
ですから 「鋭利な端(エッジ)」 という意です。


■鋭し (するどし)
スル(摩る・磨る)トシ(鋭し) の連結で、「磨いて光る如し・研ぎ澄まされる如し」 などの意です。


■水を割る (みづおわる)
“水” は 「水 (海・川) が隔てる区切り・越えがたい境界/領域」 を意味し、
“割る” は 「割り込む・分け入る」 などの意です。
ですから 「越えがたいレベルの領域に分け入る」 という意です。


■よく鋭きぞ (よくときぞ)
トキ(鋭き)は トシ(利し・鋭し)の連体形で、「すばらしく鋭利ぞ」 の意です。


左右 (まて)

 

【概意】
その時 触れを出して、10人の金錬人に剣を造らせる。
その内の一人は秀でており、その刃は超レベルの領域に入っていた。
この金錬人に御言宣。
「汝の刃はすばらしく鋭利ぞ。
しかれど “左右の活き枯れ” というものを理解していない。
教えよう。しかと聞け。」



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 たのめははるの いきるころ たのめおいれて ねるつるき
 いきみにちかく かれうとし もしあやまるや おそるなり
 かのめはあきの からすころ かのめおいれて ねるつるき
 かれみにちかく いきうとし

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 「‘立の目’ は春の 活きる頃 ‘左の眼’ を入れて 錬る剣
 活き身に近く 枯れ疎し もし誤るや 恐るなり
 ‘枯の目’ は秋の 枯らす頃 ‘右の眼’ を入れて 錬る剣
 枯れ身に近く 活き疎し」

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■立の目 (たのめ)
タは タチ(立ち)の短縮で、「始まり・起こり・生れ」 などを意味します。
メ(目)は マ(間)の変態で、「空間・時間・場・時」 などを意味します。

 ですから ‘立の目’ は 「始まりの時・生れの時・若々しい頃」 などの意で、
 次に続く “春”  “活きる頃” の換言です。
 そしてこれを タノメ(左の眼) に語呂合せしています。


■左の眼 (たのめ)
タ(▽左)は やはりタチ(立ち)の短縮で、この場合は 「日の立ち・日の出」 をいい、
日の立つ方向である 「東・左」 を意味します。


■疎し (うとし)
ウツ(棄つ・▽失つ)シ(▽如・▽然) で、
「離れる如し・別れる如し・外れる如し・遠ざかる如し」 などが原義です。


■枯の目 (かのめ)
カは カレ(枯れ)の短縮で、「落ち・衰え・沈み・没・死」 などを意味します。
メ(目)は やはりマ(間)の変態で、「空間・時間・場・時」 です。

 ですから 「落ち沈む時・衰える時・枯れる時・没する時」 などの意で、
 次に続く “秋”  “枯らす頃” の換言です。
 そしてこれを カノメ(右の眼) に語呂合せしています。


■右の眼 (かのめ)
カ(▽右)は やはりカレ(枯れ)の短縮で、この場合は 「日の枯れ・日暮れ」 をいい、
日の没する方向である 「西・右」 を意味します。

 

【概意】
「‘立(た)の目’ は春の活きる頃。ゆえに ‘左(た)の眼’ を入れて錬り鍛えた剣は
活き身に近く(=寄り)、枯れ身から遠い(=離れる)。もし誤れば恐ろしいことになる。
‘枯(か)の目’ は秋の枯らす頃。ゆえに ‘右(か)の眼’ を入れて錬り鍛えた剣は
枯れ身に近く(=寄り)、活き身から遠い(=離れる)。」



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 つみあるものお かれといふ なきはいきなり
 かのつるき かれみおこのみ いきおそる
 これそをさむる たからもの これうつへしと のたまえは

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 「罪ある者を ‘枯れ’ と言ふ 無きは ‘活き’ なり
 右の剣 枯れ身を好み 活き恐る
 これぞ治むる 宝物 これ打つべし」 と 宣給えば

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■罪ある者 (つみあるもの)
「曲りのある者・逸脱する者」 が原義です。 ▶罪


■枯れ (かれ)
カル(離る)の名詞形で、「離れ・逸れ・外れ・曲り」 が原義ですが、コースを外れると
たいていは脱落する結果となるため、「下げ・落ち・劣り・衰え・没」 の意味を含みます。
したがって原義的に、“罪” と “枯れ” は同義です。


宝物 (たからもの)


■打つ・▽現つ (うつ)
「合わす・結ぶ・凝り固める」 などが原義で、「形にする・世に現わす」 という意です。
この形容詞形が ウツシ(現し・顕し)です。

 

【概意】
「罪ある者を ‘枯れ’ と言う。無き者は ‘活き’ である。
右の眼を入れた剣は、枯れ身を好み、活き身を恐れる。
これぞ世を治める宝物。これを形にするべし」 と宣給えば、



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 おそれてももか ものいみし みきめひとつて ねるつるき
 やふりあくれは みことのり いまこのつるき むへによし
 わかみこころに よくかない みよのをさまる たからもの
 なもやゑかきの つるきとそ

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 畏れて百日 モノ忌みし 右眼一つで 錬る剣
 八振り上ぐれば 御言宣
 「今この剣 むべによし 我が実心に よく叶い
 世の治まる 宝物 名も “ヤヱ垣の 剣”」 とぞ

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■モノ忌み (ものいみ)
モノ+イミ(忌み)で、 イミは イム(忌む)の名詞形で、「遠ざけること」 をいいます。
ですから 「邪霊の遣らい・邪霊の除去」 という意で、今日の意味とは異なります。

 邪霊の類は “同類相求むの法則” により、「よこしまな心・曲った心」 に寄り付いてきます。
 ですから “モノ忌み” とは 具体的には 「心身の清め・みそぎ」 を意味します。 ▶みそぎ


■八振り (やふり)
フリ(振り)は 「刀剣を数えるのに用いる数詞」 です。ですから 「8本の剣」 ということです。


■むべによし
ムベ(宜)ニヨシ の同義語の連結で、「好ましく麗しい」 というような意です。


実心・真心・御心 (みこころ)

世 (みよ)

■ヤヱ垣の剣 (やゑがきのつるぎ)
このようにして三種宝の剣が誕生したわけです。 ▶三種宝
“やゑがき” にも複数の意味が重ねられており、これ以後 少しずつ紐解かれていきます。

 

【概意】
御言宣をかしこみて 100日のモノ忌みをなし、
右眼1つで錬り鍛えた剣を 8振り献上すれば 御言宣。
「今この剣 好ましく麗しい。我が本意によく叶い、
国家の治まる宝物なり。名も “ヤヱ垣の剣”」 とぞ、



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 かねりおほめて たまふなは あまめひとつの かみとなる
 のちにはたれか みたるとき かなさきおよひ むまさかみ
 つるきたまわり はたれうち やたみをさむる いきおひも

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 金錬りを褒めて 賜ふ名は “アマメヒトツ” の 尊となる
 後にハタレが 乱る時 カナサキおよび 六将守
 剣 賜わり ハタレ打ち 八民治むる 勢ひも

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■アマメヒトツ (▽零目一箇)
アマ(▽零)+メ(目・眼)+ヒトツ(一箇・一個) で、
アマは日の沈む 「西・右」 を意味します。ですから 「右目一つ」 という意です。
他文献では 天目一箇命・天麻比止都命 などと記されます。

 ★アマ・アメ (▽零・雨・尼)
 アムの名詞形で、このアムは アユ(零ゆ)オム(怖む)などの変態、
 「下げ・落ち・沈み・没」 などの意を表します。
 この場合は 「日没」 の意で、日が沈む 「西・右」 をいいます。


■ハタレが乱る時 (はたれかみたるとき)
六ハタレの騒乱」 をいいます。これについては 8アヤの講座 をお読みください。


カナサキ
六ハタレの平定において、カナサキは “禊司” に任じられています。 ▶禊司


■六将守 (むまさかみ)
六ハタレの平定を指揮した、フツヌシタケミカツチカダ
イブキヌシタチカラヲクマノクスヒ の6将軍をいいます。 ▶将(まさ)


■剣 (つるぎ)
アマメヒトツが献上した8振りの 「ヤヱ垣の剣」 です。


■勢ひ (いきおひ)
ここでは 「勢いの源・勢いを生む源泉・原動力」 の意に解しています。

 

【概意】
金錬りを褒めて “アマメヒトツ” と名を賜う。
後にハタレが乱れる時、カナサキおよび6将守が
この剣を賜ってハタレを打ち、八方の民を治める原動力も、



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 かれはからして いきおゑる
 たとゑははやし きりひらき たくにこたまの なきことく
 きるへきとかは きりつくす おもいのこらし

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 「‘枯れ’ は枯らして ‘活き’ を選る
 例えば林 切り開き 焚くに木霊の 無き如く
 斬るべき咎は 斬り尽す 思い残らじ

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   ここから再びアマテルの言葉が始まります。

■枯れ (かれ) ■活き (いき)
“枯れ” は 「罪(=曲り)ある者」、“活き” は 「罪(=曲り)なき者」 です。

 罪ある者を ‘枯れ’ と言ふ 無きは ‘活き’ なり 〈ホ23ー6〉


選る (ゑる・よる・すぐる)
「上げる」 が原義で、「上に置く・優先/優遇する・ピックアップする」 などの意を表します。


■木霊 (こたま)
「木に宿る霊魂・木の意識」 をいいます。 ▶木(こ) ▶霊(たま)


■思い残らじ (おもいのこらじ)
“思い” は 「意識・心・気持ち・感情」 などをいいます。
“残らじ” は 意識は抜け出て天に帰るため、亡骸には 「残らない」 という意です。

 

【概意】
「‘罪ある者‘ は枯らし、‘罪なき者’ を優遇するということである。
例えば林を切り開いて木を燃やしても、すでに木の霊はそこに無いように、
人の意識も亡骸には残らぬゆえ、切るべき咎は切り尽すべし。



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 つるきとは つはきのよはひ あにつきて かれるあのつそ
 るはしはの かわけはもゆる るきのほそ 
 きはきのかれて おもひなし かれにつるきと なつくなり

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 ツルギとは ‘ツ’ は木の齢 上に尽きて 枯れる上の尽ぞ
 ‘ル’ は柴の 乾けば燃ゆる 霊気の火ぞ
 ‘キ’ は木の枯れて 思ひ無し 故に “尽霊帰” と 名づくなり

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■上に尽く (あにつく)
ア(▽上) に ツク(尽く・着く) で、「上に行き着く・上限に達する」 という意です。


■上の尽 (あのつ)
“上に尽く” の名詞化で、「上限への到達・進展発展のきわまり」 という意です。


柴 (しば)
シヰバフ(しゐ生ふ)の名詞形 エ(しゐ生え) の略で、
「下に生えるさま・低く生えるもの」 が原義です。


■霊気の火 (るきのほ)
人によらない 「霊気による火・自然が起こす火」 をいうものと思います。 ▶霊(る) ▶気(き)


■思ひ無し (おもひなし)
思い残らじ” の換言です。


■尽霊帰 (つるき)
「(進展が) 尽きた霊を帰すもの」 という意で、これが ツルギ(剣) の原義のようです。

 キ(帰)は “ハンドルをきる” の キルの名詞形で、「回す」 を原義とします。
 一回りさせると元の位置に戻るため、「返す・還す・帰す」 の意を表します。

 

【概意】
ツルギ(剣)とは、
‘ツ’ は 木の齢が上限に達して枯れる 進展のぞ。
‘ル’ は 乾けば燃える柴の 気の火ぞ。
‘キ’ は 木が枯れればその霊は天にる。
ゆえに “尽霊帰” (つるき) と名づけたのである。



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 もしたみおこり みのほとも わすれてついに つるきうく
 うけさせしとて みのかきよ

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 もし民おごり 身の程も 忘れてついに 剣 受く
 受けさせじとて “身の垣” よ

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■身の垣 (みのかき)
ミ(身)は 「我が身・自身」 です。
カキ(垣) は 「囲い」 と同義で、「守り・防ぎ・防御・盾」 などの意です。
ここでは 「剣を我が身に受けることを防ぐための垣」 をいい、
それは何かといえば、「矛の法」、すなわち 「懲罰制度」 です。 ▶経矛法

 “剣の懲罰を怖れること” が、“おごりを戒めること” につながり、
 ひいては “我が身を守る垣” となるという意味です。
 つまり 「剣 (懲罰制度) の存在そのものが おごりの抑止力となる」 ということです。
 そして “おごり” こそが 「世の乱れの源」 であると アマテルは言います。

 “飾り” より “おごり” になりて 鋭き 謀る 果てはハタレの 国乱れ 〈ホ23ー4〉

 

【概意】
もし民がおごり、身の程も忘れれば、ついには剣の懲罰を受けるが、
それを受けさせまいとして立てた “身の垣” なのである。

(剣の懲罰を怖れておごりを抑えることが、彼らの身を守る垣となる。
これこそが 剣=懲罰制度 を制定した目的なのである。)



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 もしもつかさの おこりにて たみおからせは つみおおし
 よこへにさらに あらためて そのたみいかす
 とみことみ おこりしのひて みちまもれ
 わかみのための やゑかきはこれ

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 もしも司の おごりにて 民を枯らせば 罪 大し
 ヨコヘに更に 改めて その民 活かす
 臣・小臣 驕り忍びて 道 守れ
 我が身のための ヤヱガキはこれ

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司 (つかさ)
「民を束ねる者」 の意で、「臣・守・モノノベ」 の換言です。


大し (おおし)

ヨコベ (横侍)

■更に改む (さらにあらたむ)
「それまでのことを更(=ちゃら)にして改める」 という意で、今風には 「更改する」 です。


■小臣 (ことみ)
「下級の臣」 の意で、ベヲミ(辺臣)オト(小臣) とも呼ばれます。
具体的には 「県主より下級の臣」 をいうようです。 ▶小臣(しょうしん)


■忍ぶ (しのぶ)
「合わす・収める・抑える」 などが原義で、シナブ(匿ぶ)の変態です。
ここでは 「抑える・こらえる・辛抱する」 などの意です。


道 (みち)
 
■ヤヱ垣 (やゑがき:▽汚穢垣・八重垣)
ヤヱは ヲヱ(汚穢)の変態で、「曲り・逸れ・外れ・異常」 などを意味します。
ゆえに 「曲り・逸脱を防ぐ垣」 という意で、これがまず最初の “ヤヱガキ” の意味です。

 我が身のためのヤヱ は “身の垣” を詳しく表したものです。


■これ
「おごりを抑えること」 をいいます。

 

【概意】
もしも司のおごりによって民を枯らせば、その罪は重大である。
ヨコベに精査させ、新規に改めてその民を活かす。
臣・小臣たちよ。おごりを抑えてトの道を守れ。
我が身のためのヤヱガキ(=曲りの予防)は これ(=おごりの抑え)ぞ。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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