⇦前の講座          目次           次の講座⇨ 

 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

一から学ぶ ほつまつたえ講座 第54回 [2023.9.30]

第十巻 カシマ直ち 連り鯛の文 (6)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 かしまたちつりたいのあや (その6)
 カシマ直ち 連り鯛の文 https://gejirin.com/hotuma10.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

―――――――――――――――――――――――――――――
 たかみむすひの おをんこと なんちものぬし くしひこよ
 くにつめとらは うとからん わかみほつひめ つまとして
 やそよろかみお つかさとり みまこおまもり たてまつれ

―――――――――――――――――――――――――――――
 タカミムスビの 大御言 「汝モノヌシ クシヒコよ
 地つ女取らば 疎からん 我がミホツ姫 妻として
 八十万守を 司り 御孫を守り 奉れ」

―――――――――――――――――――――――――――――

タカミムスビ

■大御言 (おをんこと)
「言・言宣」 の最上級の尊敬語で、御言御言宣 との区別が必要な場合に用いられます。
例えば 非常に高位の人物が2人登場する場合に、一方の言葉を “御言宣” とした時、もう
一方の言葉は “大御言” と表現したりします。どちらが上なのかは一概には言えません。

通常はタカミムスビの言葉を “大御言” とは言いませんが、この場合は 国君オシホミミの
代の殿
としての言葉であるためと考えられます。

 ★大御・皇大 (ををん・をおん・おをん・おおん)
 漢字を当てるとみんな “大御” となりますが、オオン/オヲン/ヲオン/ヲヲン の
 異なる表記が存在します。明確な基準があるわけでなく、またホツマとミカサとでも
 違うのですが、ヲ = オオ ですから、オオン < オヲン < ヲオン < ヲヲン の順で、
 その尊敬度の序列をいちおう考慮しているようには見えます。


モノヌシ
この場面は、オオモノヌシ を辞任した オホナムチ の後継に、
その長男で、コトシロヌシ を務める クシヒコ を、2代目のオオモノヌシに任命しているところです。

  ソサノヲ┐      
      ├──オホナムチ──┐┌─クシヒコ
  イナタ姫┘ (オオモノヌシ) ││(コトシロヌシ)
                ├┤
  アマテル┐         │├─タカコ
      ├──タケコ────┘├─タカヒコネ
  ハヤコ─┘          ├─タケミナカタ
                 ├─シマツウシ
                 └─ 他176名


■地つ女 (くにつめ)
「地方の女・地元の女・いなか女」 をいいます。


■疎からん (うとからん)
ウトシ(疎し) の未然形 “ウトカラ” + 推量の “ン” で、今風には 「疎かろう」 になります。
ウトシ は 「離れている・遠い」 が原義ですが、ここでは 「鈍い・気が利かない」 などの意でしょう。


■ミホツ姫 (みほつひめ・みほつめ)・ミホ姫 (みほひめ)
代の殿タカキネの娘で、オモヒカネ、タクハタチチ姫 (オシホミミの皇后) らの姉妹です。
クシヒコ の妻となり、コモリ(斎名:ミホヒコ) を生みます。
日本書紀には 三穂津姫 と記されます。

 この “ミホ” は 「中央・中央政府・御上」 の意で、この場合は 代の殿 を指します。
 ですから ミホツ姫は 「代の殿の姫」、ミホヒコは 「代の殿の孫」 の意と考えています。 ▶ひこ


 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)    ┌クラキネ
 │          │           ├ココリ姫
 │          └アメヨロツ┬アワナキ─┴イサナキ┐
 │          (養子)↑  └サクナキ   (VII) ├ヒルコ
 │             └─────┐       ├アマテル
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ    ├ツキヨミ
 │      (初代)  │               ├ソサノヲ─ヲオナムチ─クシヒコ
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ┬イサナミ┘
               (2〜4代)   (5代)├ヤソキネ─タカキネ┬オモヒカネ
                        │ (6代)   (7代) ├ヨロマロ
                        ├カンサヒ     ├フトタマ
                        └ツハモノヌシ   ├タクハタチチ姫
                                  └ミホツ姫
     イサナギ ┌ソサノヲ─オホナムチ (初代モノヌシ)
       ├──-┤       ├───クシヒコ (2代モノヌシ)
    ┌イサナミ └アマテル──タケコ    │
    │                   ├──ミホヒコ (3代モノヌシ)
    │                   │
 トヨケ┴ヤソキネ──タカキネ───────ミホツ姫


■八十万守 (やそよろかみ)
ヤソヨロ(八十万) は 「非常に数が多いさま」 を表し、
この場合は 「オオモノヌシが司るモノノベの総数」 をいうのでしょう。


■御孫 (みまご)
ミ(▽上・御)+マゴ(孫) は 「尊き孫」 の意で、アマテルの血を引く孫の内、
上位にある (皇となる予定の) 孫をいいます。すなわち オシホミミ の子の、
クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ) と ニニキネ(斎名キヨヒト) を指します。

 アマテル(斎名ワカヒト)
     ├─────オシホミミ(斎名オシヒト)
 セオリツ姫(斎名ホノコ)  ├────クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
              ├────ニニキネ(斎名キヨヒト)
 タカキネ──────タクハタチチ姫(斎名スズカ)


 
守る (まもる・もる)
見張る と同義で、単に 「危険から守る」 ことに限らず、子守 をするように、
「常に注意して世話をする・仕えて支える」 ことをいいます。


奉る (たてまつる)
タツ(立つ)+マツル(▽詣つる) の連結で、両語とも 「上げる・至らす」 などが原義です。
単独では 「献上・奉納する」 の意を表しますが、他の動詞に付いた場合は謙譲の意を添えます。
ここでは後者で、「お守り申し上げる・お世話申し上げる」 という意になります。

 ★まつる (▽詣つる・奉る献る)
 マツ(▽詣つ)+ツル(吊る) の短縮で、マツ は マデ(詣で) の母動詞。
 両語とも 「上がる/上げる・至る/至らす」 などが原義です。

 

【概意】
タカミムスビの大御言。
「汝はモノヌシのクシヒコよ。田舎女を娶れば どん臭かろう。
我がミホツ姫を妻として、80万のモノノベを司り、御孫をお世話申し上げよ。」



―――――――――――――――――――――――――――――
 たまふよろきは なめことの ちくさよろきの なおたたす
 このみやしれは よよのため やめるおいやす みちおわけ
 よつきはひとり よろきまろ

―――――――――――――――――――――――――――――
 賜ふヨロギは 嘗事の 千草・万木の 名をただす
 この宮 領れば ヨヨのため 病めるを癒やす 道を分け
 代嗣は一人 ヨロギマロ

―――――――――――――――――――――――――――――

■ヨロギ (万木)
新たなオオモノヌシとなったクシヒコに賜った知行地です。ヨロギの名は
千草・万木の名を明らかにしたしたことに由来し、別名が オオクニ(央国) です。
それゆえクシヒコは オオクンヌシ(央国主) とも呼ばれます。場所は時の中央政府がある
多賀周辺と思われ、クシヒコはここに多様な植物を植えて、薬草の研究をしたようです。

 近江の高島に 與呂伎(よろぎ)神社 があり、西万木という地名も残りますが、
 こちらの ヨロギ の由来はまた別です。それについては24アヤで述べます。


嘗事 (なめごと・なゑごと)
この “嘗事” は 「身体の治め・ヘルスケア」、つまり 「医療・薬事」 をいいます。


■名をただす (なおただす)
「名を明らかにする」 という意で、これはつまりクシヒコが
千草・万木に それぞれの名を付けたということでしょう。 ▶ただす


■この宮 (このみや)
“ヨロギの国を治める政庁” をいい、後に “オオクニ宮” という名で出てきます。

 オオモノヌシは アワ海の オオクニ宮を 造り替え 〈ホ30-1〉


領る・知る (しる)
「領する・知行する・主となる・我がものとする」 などの意です。


■ヨヨ
よよむ” の母動詞 ヨユ の名詞形で、また “よぼよぼ” の ヨボ の変態です。
「曲り・逸れ・外れ・不調/異常」 などが原義で、汚穢 と同義です。
ここでは 「不調な人・病人」 をいいます。


■道を分く (みちおわく)
ワク(分く・別く) は アク(▽散く・開く) の変態で、ここでは 「あける・ひらく」 の意です。


■ヨロギマロ (万木麻呂)
クシヒコ と ミホツ姫 が生んだ男子の 幼名 です。

 

【概意】
クシヒコに賜うヨロギは、医薬事の千草・万木の名を明らかにする。
この宮の主となれば、病に苦しむ人を癒やす道を開き、
代嗣は一粒種のヨロギマロ。



―――――――――――――――――――――――――――――
 みほひこのつま すゑつみか いくたまよりめ そやこうむ
 こしあちはせの しらたまめ そやのひめうむ みそむたり
 ゆたねひたせは みことのり たまふをしては こもりかみ

―――――――――――――――――――――――――――――
 ミホヒコの妻 スヱツミが イクタマヨリ姫 十八子生む
 越アチハセの シラタマ姫 十八の姫生む 三十六人
 委ね養せば 御言宣 賜ふヲシテは “コモリ尊”

―――――――――――――――――――――――――――――

■ミホヒコ
ヨロギマロの 斎名 です。ミホヒコは父クシヒコの後を継いで、3代オオモノヌシとなります。
この “ミホ” は 「中央・中央政府・御上」 の意で、この場合は 「代の殿」 を指します。
よって ミホヒコ は 「代の殿の孫」 の意と考えています。 ▶ひこ

     イサナギ ┌ソサノヲ─オホナムチ (初代モノヌシ)
       ├──-┤       ├───クシヒコ (2代モノヌシ)
    ┌イサナミ └アマテル──タケコ    │
    │                   ├──ミホヒコ (3代モノヌシ)
    │                   │
 トヨケ┴ヤソキネ──タカキネ───────ミホツ姫

 
■スヱツミ・スエスミ
「スヱの地を統べる地守」 で、“スヱ” は後代 チヌ(茅渟) とも呼ばれるようになります。
記紀には 陶津耳 と記されます。 ▶ツミ・スミ

 ★スヱ・スエ (▽粋)
 スフ/スユ の名詞形で、スフ/スユ は スム(澄む) の変態。
 スヒ(水・粋・髄・瑞) の変態で、「至り・極み・上澄み・純粋・精髄」 などを意味します。


■イクタマヨリ姫 (いくたまよりめ)
スヱツミの娘で、ミホヒコの妻の1人となり、男子のみ18人を生みます。
記紀には 活玉依毘賣/活玉依媛 と記されます。

 イクタマ(活霊) は 「活発なエネルギー」 の意で、これは 「陽の霊」 を表します。
 ですから イクタマヨリ姫 は 「陽の霊が寄る姫」 つまり 「男子を生む姫」 を意味します。

 大川上美良布神社 (おおかわかみびらふじんじゃ)
 土佐国香美郡。高知県香美市香北町韮生野243-イ。
 現在の祭神:大田々祢古命
    合祀:大物主命、陶津耳命、活玉依比賣命、ほか


■越アチハセ (こしあちはせ)
コシ(越) は コシネノクニ(越根の国) の略です。
アチハセ は ココリ姫(=白山姫) の孫で、当時の越国を治める地守です。

 阿治波世神社 (あちはせじんじゃ)
 越前国坂井郡。福井県坂井市丸岡町与河。
 祭神:阿治波世神
 <筆者注> この神社は現在は消失しています。


■シラタマ姫 (しらたまめ)
アチハセの娘で、ミホヒコのもう1人の妻となり、女子のみ18人生みます。
シラタマ(白霊) は ツキミタマ(月神霊) の別名で、月は 「陰/女の本源」 です。
ですから 「女子を生む姫」 の意を表します。


■委ね養す (ゆだねひたす)
ユダヌ(委ぬ) ユヅル(譲る) の変態で、この場合は 「それぞれに分け配る」 という意です。
つまり 「男子と女子をイクタマヨリ姫とシタタマ姫に配分して生ませる」 ということです。
ヒタス(養す)
は 「世話する・育てる」 などの意です。


ヲシテ・オシテ (押手)
ヲシテは 「文字・言葉・文書・称号・証書・璽」 などを表しますが、
ここでは 「称号・尊名」 の意です。


■コモリ尊 (こもりかみ:子守尊)
ミホヒコ がアマテルより賜った尊名で、これは 一人の妻に男子のみ18人を、
もう一人の妻には女子のみ18人を、みごとに生み分けて育てたミホヒコの
医学的な知識と技術を称えた名です。医者の元祖と言っていいでしょう。

 コモリ尊の神霊(みたま)は、子守神・子守明神・水分神(みくまりかみ) の名で
 多くの神社に祭られています。ミクマリ(水分) は ミコモリ(御子守) の転でしょう。

 吉野水分神社 (よしのみくまりじんじゃ)
 大和国吉野郡。奈良県吉野郡吉野町吉野山字子守。
 現在の祭神:天之水分神
 ・天之水分大神は俗に子守明神とも申されます。古くより子守宮と伝え、
  世人はこの神社を出生・育養、すなわち幼児守護の神として崇拝しました。

 

【概意】
ミホヒコの妻、スヱツミの娘のイクタマヨリ姫は、18男子を生む。
もう一人の妻、越国アチハセの娘のシラタマ姫は、18姫子を生む。
36人を二妻に振り分けて生み育てれば、アマテル神の御言宣。
賜う称号は “子守尊”。



―――――――――――――――――――――――――――――
 せみのおかわに みそきして ちのわにたたす みなつきや
 たみなからふる はらいなりけり

―――――――――――――――――――――――――――――
 清みの小川に 禊して 茅の輪に正す 六月や
 民 永らふる 祓なりけり

―――――――――――――――――――――――――――――
  
■清みの小川 (せみのおがわ)
セミ は セム の名詞形で、セム は スム(澄む清む) の変態。
ですから 「調え・直し・きよめ・浄化」 などを意味します。
よって 「きよめの小川・禊の小川」 という意です。

 後に 瀬見の小川 と当て字され、下賀茂神社境内の糺の森を流れる
 細流の名となっていますが、本来は特定の小川を指すものではなく、
 禊に使う小川の総称だったと考えます。


禊 (みそぎ)

茅の輪 (ちのわ)
チ(千) の ワ(環・輪) で、チ(千) は 「高まり・勢い・栄え・活発」 などの意。
ワ(環・輪) は 「まわり・返り・還り・回復」 などの意です。「元気の回復」 を意味し、
「茅を編んで造った大きな輪」 をくぐることを その モノザネ とします。 ▶画像


正す・糺す・質す・▽直す (ただす)

六月・水無月 (みなつき)
陰暦6月の別称です。語源の1つは、妊婦の 「羊水が乾いて減る月」 であるようです。

 三つの因みの 液あふれ 六月乾き 臍の緒へ 霊汁通れば 〈ホ14-4〉

また この時期は暑く乾き、人に ミナ(穢) が付きやすい季節であるため、
ミナツキ(穢付き・穢月) という意味もあります。
その穢を祓うために、ミナツキの祓 が行われるのですが、そのゆえに
六月はまた “セミナ月” とも呼ばれます。セミナ は セム(▽清む)+ミナ(穢) の短縮です。

 秘刀 せん方無くも 袖内に 隠し 諌めの せみな月 〈ホ35-2〉


■民永らふる祓 (たみながらふるはらい)
「民を長生きさせる祓」 という意です。
六月の晦日に行われるこの祓いの行事は、六月の禊(みなつきのみそぎ)、
夏越の祓(なごしのはらえ)、また 大祓(おおはらえ) などと呼ばれます。

 ★祓 (はらい・はらひ・はらゐ)
 ハラフ(祓ふ) の名詞形で、セミ(▽清み)・ミソギ(禊)・ソソギ(濯ぎ)・イスギ(濯ぎ)
 などの換言です。


■なりけり
ナリ(断定)ケリ(確認:=しかり) です。
“にけり”  “なりき”  “にき” などと簡略されます。

 

【概意】
清みの小川に禊して、茅の輪に癒やす六月や。
民を長生きさせる祓なりけり。


 この祓の方法はミホヒコが考案したということでしょうか。
 さもないと、この一節はそれまでの記事との関連が見えず、かなり唐突です。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

⇦前の講座          目次           次の講座⇨