⇦前の講座          目次           次の講座⇨ 

 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第77回 [2023.11.23]

第十五巻 食よろづ生り初めの文 (4)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 みけよろづなりそめのあや (その4)
 食よろづ生り初めの文 https://gejirin.com/hotuma15.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

―――――――――――――――――――――――――――――
 おもたるの すえにほほそと なるゆえに つきよみやりて
 うるそたね ゑんといたれは まるやにて くににむかえは
 つきおけの くちよりよねの いゐかしく

―――――――――――――――――――――――――――――
 オモタルの 末に穂細と なる故に ツキヨミ遣りて
 潤稲種 得んと到れば まる屋にて 地に迎えば
 継ぎ桶の 口より米の 飯炊ぐ

―――――――――――――――――――――――――――――

オモタル&カシコネ
日本国家を治める6代目の君主はオモタルとカシコネの夫婦尊でした。
近江の安曇を都として、その治めは東はヒタカミから西は筑紫にまで及び、
ほぼ日本全土を統一しますが、代嗣が生まれることなく、クニトコタチに
始まる皇統はここに断絶します。そのため統治システムが崩壊して秩序が
失われ、国家は退廃への道を歩み出します。

 ミナカヌシ─天の八尊─地の十一尊─クニサツチ─トヨクンヌ┐
 ←……… クニトコタチ  ………→            │
 ←………………  最広義のクニトコタチ …………… ……→│
       ┌―――――――――――――――――――――┘
       │
       └ウビチニ
          ├――――ツノクヰ
         スヒヂ     ├――――オモタル
               イククイ     ├ … (断絶) … イサナキ
                     カシコネ        │
                               イサナミ


■穂細 (ほほそ)
「伸びが小さくなるさま・成長不良」 をいいます。

 ★穂・秀・火・▽峰 (ほ)
 ウホ(▽上)の短音であり、またホツ(▽秀つ)の名詞形です。
 「上・高まるさま・突き出るさま・伸び」 などが原義です。


ツキヨミ
四国はイヨツヒコ (またの名アワツヒコ) が統治していましたが、うまく治まらないため、
アマテルは弟ツキヨミを四国に派遣します。ツキヨミは イブキを上げ、凸の宮で四国を
治め、イヨツヒコの娘のイヨツ姫を娶って、イブキヌシを生みます。

           ┌ヒルコ
 アワナギ─イザナギ┐├アマテル
          ├┼ツキヨミ──┐
 トヨケ──イザナミ┘└ソサノヲ  ├イブキヌシ
                  │
 サクナギ─イヨツヒコ─イヨツ姫──┘


■潤稲種・潤稲の種 (うるそたね・うるそのたね)
潤の稲の種」 で、「日の潤に生える稲のタネ」 をいいます。
潤稲の種は、昔ウケモチが天に願って下されたものです。


■まる屋 (まるや)
不詳ですが、「粗末な屋」 をいうようです。 ▶丸屋(まろや)
マルを マロブ(転ぶ)の母動詞と見れば、「倒れそうな屋・転びそうな屋」。
放る屋」 の意だとすれば、主屋に対して 「はなれ」、「厠」 をいうのかもしれません。


■継ぎ桶 (つぎおけ)
肥を運ぶために 「2つの肥桶を天秤棒で継いだもの」 をいうのではないでしょうか。[画像]

 ★桶 (おけ)
 ウケ(槽)イケ(池・埋け)ユキ(靫) などの変態で、「入れ物・容器」 をいいます。


■米 (よね)
イネ(稲)の変態です。ただし現在と同様の区別はあり、
イネ(稲)は 「(実を)結ぶもの」、ヨネ(米)は 「結んだ実」 をいうようです。

 ★稲 (いね・ゐね・いな) ★米 (よね)
 ユフ(結ふ)の変態 イヌ(▽結ぬ)の名詞形と、ヨル(寄る)の変態 ヨヌ(▽結ぬ)の名詞形で、
 どちらも 「結び・結ぶもの・結んだもの・実」 などが原義です。


飯 (いゐ)

炊ぐ (かしぐ)
カス(▽上す・▽活す)+シク(頻く・▽繁ぐ・▽優ぐ) の短縮で、
「高める・勢いづける・栄す」 などが原義です。

 

【概意】
オモタル時代の末頃から収穫が細っていたため、
潤稲の種を得んと、ツキヨミをウケモチの国に派遣する。
ヤマシロに到れば、粗末な屋に迎えたうえ、肥桶の口から水を汲んで米の飯を炊く。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 そのにむかえは こゑかくる てこにいれきて
 すすなしる ももたくはえて みあえなす

―――――――――――――――――――――――――――――
 園に迎えば 肥かくる 手籠に入れ来て
 スズ菜汁 百々たくはえて 御饗なす

―――――――――――――――――――――――――――――

園・圃・苑 (その)
(1) ソナエ(具え)の短縮 “ソナ” の変態で、「植える所・田畑・田園」 などの意。
(2) シナ(品・科)産土の “スナ” の変態で、「締め・括り・区画」 などの意。

 この場合は (1) です。


■肥かくる (こゑかくる)
カクルは カク(掛く・懸く) の連体形で、「肥のかかる・糞尿が付着する」 という意です。

 ★肥 (こゑ・こえ)
 コユ(肥ゆ・越ゆ・超ゆ)の名詞形で、「上げ・高め・勢いづけ・栄し」 などが原義です。
 「肥やし」 と同じです。


■手籠 (てこ)
「手に持つカゴ・手籠(てかご)」 です。コ(籠)は 「囲み」 が原義です。


■スズ菜汁 (すずなじる)
スズナ(菘・鈴菜) を具とした汁物です。


百々 (もも)
ここでは 「うんとこさ・たくさん・たんまり」 などの意です。


たくはふ (蓄ふ・貯ふ)
タグフ(類ふ)の母動詞タク+クハフ(加ふ) の同義語連結で、
「合わす・つくる・構える」 などの意です。


御饗・▽斎・▽祝 ・▽敬・▽礼 (みあえ・みあゑ)
イワヒ(斎・祝)の変態で、「敬い・礼・祝賀・もてなし」 などが原義です。
通例 「膳の提供・宴会」 を伴います。この場合は 「歓迎の祝宴」 です。

 

【概意】
田園に迎えれば、肥の付いた手籠に入れてきた
スズ菜の汁をたんまりつくって歓迎の祝宴を行う。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 つきよみいかり いやしきの つははくけかれ かわんやと
 つるきおぬきて うちころし かえことなせは ををんかみ
 なんちさかなし あひみすと まつりはなれて よるきます

―――――――――――――――――――――――――――――
 ツキヨミ怒り 「卑しきの 唾吐く穢れ 交わんや」 と
 剣を抜きて 打ち殺し 返言なせば 大御神
 「汝 清汚無し 相見ず」 と 政 離れて 揺るぎます

―――――――――――――――――――――――――――――

■卑しき (いやしき)
イヤシ(卑し)の連体形で、ここでは名詞化して 「卑しい者」 を意味します。
これは皇族であるツキヨミから見て 「身分の低い者」 ということです。


■唾吐く穢れ (つばはくけがれ)
「はずかしめ・蔑み・見下し・侮辱」 などの意を表します。 ▶唾吐き
ケガレ(穢れ)ハヂ(恥・辱) の原義は同じです。


■交わんや (かわんや)
カフ(交ふ)+ン(推量・意志)+ヤ で、カフ(交ふ)は 「合う・交わる・受ける」 などの意。
ヤは反語です。ですから 「どうして卑賤の者の蔑みを受けようか」 という意となります。


■打ち殺す (うちころす)
誰を打ち殺したのかといえば、この時のヤマシロの地守です。
それは 「先代のウケモチ」、つまり 「カダの父」 に当たります。

 クニトコタチ─クニサツチ┬トヨクンヌ
             ├ハコクニ
             └ウケモチ・・・・・─カダパパ─カダ(8代ウケモチ)


■清汚無し (さがなし)
サカ(▽直曲・▽清汚)+ナシ(無し) で、「直も曲もない」 が原義です。
つまり 「善悪・正邪の見境がない」 ということです。


■相見ず (あひみず)
アヒミル(相見る)の打消で、この場合は 「関係を断つ・絶交/絶縁する」 などの意となります。


■政離る (まつりはなる)
マツリ(纏り・政)は ここでは 「国や民のまとめ・束ね・治め」 を意味します。
ですから “政を離れる” とは、「臣としての任を解かれる」 ということです。


■揺るぐ (よるぐ)
ユルグ(揺るぐ)ユラグ(揺らぐ)の変態で、ヨロケル(蹌踉ける)と同義です。
「揺れる・行き来する・転ぶ・倒れる」 などの意を表します。

 

【概意】
ツキヨミは怒り、「どうして卑賤の者の蔑みを受けようか」 と、
剣を抜いてウケモチを打ち殺し、帰って報告すれば、大御神は
「汝はやって良いことと悪いことの見境もない。縁を切る」 と。
ツキヨミは臣の任を解かれて転落します。


 これ事件以降、ツキヨミはホツマの歴史から姿を消し、
 その名を語られることも ほとんどなくなります。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 あめくまやれは すてにさり かたかうるその たねささく
 くまとかえれは をさかたに うゆるそのあき
 やつかほの なれはくにとみ こころよく

―――――――――――――――――――――――――――――
 アメクマ遣れば すでに更り カダが潤繁の 種捧ぐ
 配人帰れば 治県に 植ゆるその秋
 八束穂の 成れば国富み 快く

―――――――――――――――――――――――――――――

■アメクマ (▽天配)・クマト(▽配人)
アメクマトの略です。アメ(天)は ここでは 「御上・中央政府」 を表し、
クマトは “くまる人” の意で、「配る人・派遣する人」 を意味します。
ですからこの名は 「中央政府の派遣使」 という意です。日本書紀には 天熊人 と記されます。

 愛宕神社 (あたごじんじゃ)
 京都府京都市右京区嵯峨愛宕町1。
 現在の祭神:伊弉冉尊、埴山姫神、天熊人命、稚産霊神、豊受姫命


更る (さる)
この場合は 「ヤマシロ国の知行者が改まる」 という意に解しています。


カダ (荷田・葛)
ツキヨミに打ち殺されたウケモチの代嗣子で、8代目のウケモチです。


潤稲の種 (うるそのたね)


■治県 (をさがた)
ヲス(▽治す・食す)+カタ(方・▽県) で、「領する区画・治める県」 などの意です。
ここでは 「中央政府の直轄領地」 をいうものと思います。

 ★方・片・▽県 (かた・がた)
 カツ(▽割つ)の名詞形で、「分割・区分・区画」 が原義です。
 アガタ(県)の原義も同じです。


■八束穂 (やつかほ)
「こぶし8掴み分の長さの稲穂」 という意です。
ヤツカ(八束)は 「大きく育った稲」 を象徴する長さなのでしょう。


■快し (こころよし)
ココロは ココル(▽回転る)の名詞形で、「回転・運転」 などを意味します。
ですから 「回転が良い・滞りなくスムーズである」 などが原義です。

 ココル(▽回転る)は コク(漕ぐ)+コル(▽転る) の短縮で、
 両語とも 「回る/回す・動く/動かす・運ぶ」 などの意です。

 

【概意】
アメクマを遣れば、すでに地守は更新し、<8代ウケモチとなった>
カダが潤稲の種を献上する。クマトが戻り、朝廷領に種を植えた
その秋には八束穂が実り、国は豊かに快く。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 またまゆふくみ いとぬきて こかゐのみちも をしゆれは
 かたのみことは よよのたみ まもりつかさそ

―――――――――――――――――――――――――――――
 また繭ふくみ  糸抜きて 籠交いの道も 教ゆれば
 カダの尊は 代々の民 守り司ぞ

―――――――――――――――――――――――――――――

■繭ふくむ (まゆふくむ)
フクム(含む)は 「何かを吸わせてふくらます」 という意で、ここでは 「ふわっとさせる」、
つまり 「煮ほぐす・煮繭する」 ことをいうと考えられます。 ▶動画

 
 ★マユ (繭) ★キヌ (衣/絹)
 マユは マフ/マユ(▽回ふ・舞ふ)の名詞形で、「まわり・めぐり・周囲」 を原義とし、
 「囲み(かこみ)・垣(かき)・籠(かご)・くるみ(包み)・衣(ころむ)」 などを意味します。
 つまり マユ(繭)=コロモ(衣)=コ(籠)コ(蚕) です。
 また 衣(きぬ)を織る糸だから 絹糸(きぬいと)で、その別名がケンシ(絹糸繭糸) で、
 キヌ(衣)は キル(着る)の変態 “キヌ” の名詞形、‘ケン’ は ‘キヌ’ の変態です。


■籠交い (こかゐ・こかい・こかひ)
コ(籠)は 「繭」 をいいます。カヰ(交ゐ)は 「まじえること」をいい、この場合は 「紡ぎ」 です。
よってここでは 「絹糸の紡績」 という意です。(コカイには微妙に違う多くの意味があります。)


■司 (つかさ)
ツカス(▽束す)の名詞形で、「束ね・束ねる者・要」 を意味します。
これは中央政府内でカダが務める ウケモチ大臣 (≒農業大臣)のことをいいます。

 

【概意】
また繭を煮ほぐし、糸を引き抜いて、絹糸を紡ぐ道も教ゆれば
カダの尊は代々の民の生活を守る司ぞ。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

⇦前の講座          目次           次の講座⇨