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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第64回 [2023.10.20]

第十三巻 ワカヒコ 妹背すずかの文 (4)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 わかひこいせすずかのあや (その4)
 ワカヒコ 妹背すずかの文 https://gejirin.com/hotuma13.html
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 ちちひめは たれよりいてて わかひこに いまきくすすか
 わかゐみな きみたまわれと わけしらす またときたまえ

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 チチ姫は 垂より出でて ワカヒコに 「今聞く “スズカ”
 我が斎名 君 賜われど 訳知らず また説き給え」

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チチ姫 (ちちひめ)

■垂 (たれ)
貴人の座所の前に垂れ下がる 「御簾」 をいいます。 ▶画像


ワカヒコ

スズカ

斎名 (いみな)

■君 (きみ)
君主オシホミミを指します。


訳 (わけ)
ワク(▽和く)の名詞形で、「合わせ・結び付き・交わり・関わり」 などが原義です。
これはヨス(寄す)の名詞形の ヨシ(由)と同義です。

 

【概意】
チチ姫は垂より出でて、ワカヒコに 
「今聞く “スズカ” は 我が斎名。君が賜れど意味を知らず。また説き給え。」

 

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 こたえとく すすはまさかき ほすゑのひ
 としにきなかの むよろほき 
 ほしゐおされは すすかなり たからほしきは すゑきゆる

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 応え説く 「鈴は真榊 穂末伸び
 年に寸半の 六万穂木
 欲気を去れば 鈴明なり 財欲しきは 末消ゆる」

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■鈴・▽寿 (すず)
スズは ススム(進む)の母動詞 スス(▽進す) の名詞形で、「巡り・進み・運び・回転」
などを原義とし、「進展・経過・熟成・老い・齢・寿命」 などを意味します。
また マサカキ(真榊)、コヨミ(暦) の別名でもあります。


真榊 (まさかき)

■寸半 (きなか)
「1寸の半分」 という意で、「半寸・0.5寸」 を意味します。

 ★寸 (き) ★指 (ゆび)
 キ(寸)という名は 「1尺を10等分に切(キ)った長さ」 から来ています。
 当時の尺寸は後代とは異なり、1尺=約22.5cm、1寸=約2.25cm です。
 ユビ(指)とも呼ばれ、「中指の1番太い所の幅」 に相当します。英語でも
 “フィンガー(finger)” と呼ばれます。


■六万穂木・六万寿 (むよろほぎ)
「6万年の寿命の木」 という意味です。ホギには 「寿」 の意もかけてます。

 ★穂・▽年 (ほ)
 「真榊の枝の半寸の伸び」 をいいますが、これには1年を要するため、1穂=1年 です。 ▶真榊


■欲意 (ほしゐ)
「欲する心・欲する気持ち」 です。

 ★意・気・霊 (ゐ・い)
 「心・情・霊・たましい」 などの、「目に見えないもの・形なきもの」 をいいます。
 霊(み・ひ・ひる・ゐ)と同源です。

 

【概意】
応えて説く。
「人の進展は真榊の穂末の伸びと同じ。
1年にたった半寸しか伸びないが、6万年の寿を得る。
欲する心を離れれば未来は明るい。財を欲する者は未来を失う。」

 

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 ときにかるきみ すすみいふ
 なんそとかむや わかたから ひとたたゆるそ
 このこたゑ ひとのさいわひ わかまよひ まかりくるしむ

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 時にカル君 進み言ふ
 「何ぞ咎むや 我が財 人 称ゆるぞ」
 この応え 「他人の幸ひ 我が迷ひ 曲り苦しむ」

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カル君 (かるきみ)

何ぞ (なんぞ)
ここでは 「なんで・なぜ・どうして」 の意です。


咎む (とがむ)

財 (たから)

幸ひ (さいわひ・さいわい)
サユ(冴ゆ)はふ(映ふ・栄ふ) の連結サイハフ(幸ふ)の名詞形です。


■迷ひ (まよひ)
「往き来するさま・揺れるさま」、また 「それるさま・外れるさま」 をいいます。

 マフ/マユ(▽回ふ・舞ふ)+ヨフ(▽揺ふ) の連結マヨフ(迷ふ)の名詞形で、
 ヨフは ヨル(揺る)の変態。「回る・行き来する・揺れる」 などが原義です。


■苦しむ (くるしむ)
形容詞のクルシ(苦し)を動詞化した言葉です。
クルシは 「曲る如し・狂う如し・異常なる如し」 などが原義です。
よってクルシムは 「曲る・逸れる・狂う・外れる・異常となる」 などが原義となります。

 

【概意】
この時カル君が進み出て言う。
「どうして財に反対するや。人は我が財を称えるぞ。」
これに応えて、
「人の幸いは我が迷いとなり、曲がり狂う。」
(他人の幸運に対する羨みや妬みが、自分の心を曲げて狂わす。)

 

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 またいわく たのしくおらは
 かすかまた ういおしれるや あめにうけ あめにかえるそ

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 また曰く 「楽しく居らば」
 カスガまた 「初を知れるや 陽陰に受け 陽陰に還るぞ」

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初 (うい・うひ・うゐ)
ウミ(生み)の変態で、ここでは 「初め・もともと・本来・元来」 などの意です。


知れる (しれる)
シル(知る)+ル(自発) で、今風には 「知ってる・わかってる」 に近いかと思います。


■陽陰に受け陽陰に還る (あめにうけあめにかえる)
人は陽霊であるタマ(魂)と 陰霊であるシヰ(魄)を、タマノヲ(霊の緒)
結ぶことで世での生命を得ます。そして人生を終えると この結びは解け、
タマとシヰはそれぞれ陽元と陰元に帰りますが、このことを言ってます。

 

【概意】
また曰く、
<財を持っても曲り狂うことなく> 「楽しく暮らしておれば?」
カスガはまた、
「人の本来を知れるや? 陽陰(=魂魄)の結びに生を受け、終れば陽陰に還るぞ。」
<人の本質にとって、束の間の一人生における財が何になろう。>

 

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 かすかまた きみにてもほし たみはなお
 すすかのふみお みさるかや をきなうなつき
 くしひこか いさめのすすか いまとけり くるしみはなに

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 カスガまた 「君にても欲し 民はなお
 “スズカの文” を 見ざるかや」 翁 頷き
 「クシヒコが 諌めのスズカ 今 解けり 苦しみは何」

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■スズカの文 (すずかのふみ)
カシマ直ちの際、御上への対応を相談してきたオホナムチに、クシヒコが返した文をいいます。
「父も自分のように心をスズカになされよ」 という諌めのメッセージだったようです。

 「我 スズカにて」 タラチネに『ホロロ泣けども 鉤の鯛ぞ 肴と切るも 愚かなり
 タカマは民の 笑す尊 いとかけまくぞ 御言宣 我が父退らば 諸共』〈ホ10-4〉


苦しみ (くるしみ)
苦しむ” の名詞形で、「曲り・狂い・逸れ・外れ・異常」 などが原義です。

 

【概意】
カスガまた、
「カル君でさえ欲しいのだから、民はなおのこと。<他人の財を羨む>。
“スズカの文” を見ざるかや?」 
翁は頷いて、
「あれはクシヒコのスズカの諌めだったと、今やっとわかった。
他人を羨み妬む者の苦しみ (狂い・異常) とはどんなものか?」


 ここからまたしばらくカスガの語りが続きます。

 

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 かすかとく むかしとよけの みことのり
 われみよおしる はつのよは くにとこたちそ
 あめにゆき みるもとあけの もりさため

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 カスガ説く 昔 トヨケの 御言宣
 「我 三世を知る 初の世は クニトコタチぞ
 天に逝き 回る元明の 守 定め」

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トヨケ・トヨウケ・タマキネ

■三世 (みよ)
「3度のこの世・3回の人生・3回の転生」 という意です。


クニトコタチ
トヨケの神霊の、最初の人生は クニトコタチだったようです。


■天に逝く (あめにゆく)
人生を終えて 「天 (天界) に還る」 という意です。 ▶ゆく

 アメは 「天空」 を意味しますが、当時の思想では、それは 「天界・霊界」 とイコールです。
 ユク(往く・行く・逝く)は 「回る・めぐる・回帰する・帰還する」 などが原義です。


■回る元明 (みるもとあけ)
「北極星の位置に重なる “アウワ” を中心に回転する48神」 という意です。 ▶イメージ

 ★回る・廻る (みる)

 ★元明 (もとあけ)

ミナカヌシと それに続く48神は、地上人生を終えて天に還ると、
アメミヲヤにより星となされます。〈ミ6-4〉
ミナカヌシは北極星(北辰)となり、後に妙見さまと習合しますが、
その他の神はどの星となったか不明です。


■守 (もり)
「49神の守」 の意で、野球で言う 「守備のポジションとその役目」 というところでしょう。

 

【概意】
カスガは説く。昔トヨケの御言宣、
「我は三世を知る。初の世はクニトコタチであった。
天に還っては、ミヲヤを軸に回る元明の配置を定める。」

 

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 ふたよむすひの もよろほき ゆきてたまのを なすおきく
 いまたまきねも やよろとし ほしにむさほる こころなく
 ゆききのみちも おほゑしる

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 「二世 ムスビの 百万寿 逝きて霊の緒 なすを聞く」
 「今タマキネも 八万歳 欲に貪る 心無く
 往き来の道も 覚え知る」

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■ムスビ
タカミムスビの略です。この場合は初代の 東のトコタチ を指すものと思います。


■百万寿 (もよろほぎ)
「100万年の寿命」 の意です。


■霊の緒なすを聞く(たまのをなすおきく)
人の魂・魄に 「霊の緒を加えることを執る」 という意で、つまり
人の魂と魄を 「霊の緒を介して結ぶことを執行する」 ということです。 ▶霊の緒

 ★なす (▽和す・生す・成す・為す)
 ノス(乗す・載す)などの変態で、「合わす・添える・加える」 などが原義です。

 ★聞く (きく)
 カク(掛く・嗅ぐ)などの変態で、「(我が身に) 合わす・寄す・交える」 などが原義です。

ウビチニ・スヒヂより前の人間は、魂と魄(陽霊と陰霊)が一つに融合していましたが、
その後は、魂と魄を タマノヲ(霊の緒)を介して結ぶようになります。その結果、
陽霊と陰霊はつながってはいるものの、融合一体化しなくなりました。これにより
人は男/女どちらかの性別となって現れます。


貪る (むさぼる)

■往き来の道 (ゆききのみち)
「この世とあの世を往き来する法則」、つまり 「輪廻転生の法」 です。
通常この世の人間は、輪廻転生のことを忘れているわけですが、
タマキネは人として生きている間に、これを悟っていたということです。

 

【概意】
「2回目の世は、タカミムスビとしての百万年であった。
天に還っては、人の魂と魄を霊の緒で結ぶことを執行した。」
「そして今世のタマキネも8万歳。すでに貪欲の心は無く、輪廻転生の法も知覚する。」

 

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 めをおむすひて ひとこころ よにかえるとき すくなれは
 またよくうまれ よこほしは あゑかえらぬそ

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 陰陽を結びて 人心 世に還る時 直ぐなれば
 また良く生まれ 邪欲は あえ還らぬぞ

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■陰陽を結ぶ (めをおむすぶ)
メヲはここでは 「陰霊と陽霊」、すなわち人の 「魄と魂」 をいいます。
繰り返しになりますが、魂と魄の結合が 肉体生命と人の心を生みます。
そしてその結合を仲立ちするのがタマノヲ(霊の緒)です。


■世に還る (よにかえる)
“往き来の道”(=輪廻転生の法則)により、「世に再転生する」 ということです。


■良く生まる (よくうまる)
この場合は 「(他の生き物ではなく) 人間として生まれる」 という意です。


■邪欲 (よこほし)
「よこしまな欲・曲った欲」 という意です。 ▶よこしま

 では、よこしまでない欲があるのかというと、次のように語られています。

 ・欲も濯げば 味直り 妹背(調和)の道 成る 〈ホ17〉
 ・色欲も 道もてなせば 誤たず 〈ホ17〉


■あえ還らぬ (あゑかえらぬ)
アエは打消の語を伴いますと、「〜できない」 の意を主動詞に添えます。
“ヱ(得・能) 〜ズ“ と同じです。ここでは 「循環/輪廻できない」 の意です。
これは人の “往き来の道” (=輪廻転生の道) から外れることを言ってます。

 人は一生を終えると、タマノヲ(霊の緒)が解けて魂・魄は分離し、それぞれ
 陽元と陰元に還ります。還った魂・魄は再び結合して、人として転生するの
 ですが、邪欲に染まった霊の緒は乱れて解けなくなり、魂・魄は分離できず
 陽元と陰元に還れません。ゆえに人として転生することもできなくなります。

 

【概意】
陰陽(魂と魄)を結んで人の心とし、それが世に還る間 直ぐならば、
(天に還った後に) また人に転生するが、邪欲に染まっていたのでは、
人として輪廻することができぬぞ。

 カル君の 「苦しみ (狂い・異常) は何?」 に対する答えが、
 この 「人間として輪廻転生することができなくなる」 です。


 カスガの語りは一旦ここで終ります。

 

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 またとわく
 ひはをにかえり みつはめに ひとはひとみに かえらんか

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 また問わく
 「火は陽に還り 水は陰に 人は人実に 還らんか」

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■火は陽に還り 水は陰に (ひはをにかえりみづはめに)
陽から生じた “火” は陽に、陰から生じたた “水” は陰に、
いつかは還元されることをいいます。これも 陽陰和る道 です。 ▶天地創造の過程


■人実 (ひとみ)
「人の本質・人の根本」 という意で、「魂(陽霊) と 魄(陰霊)」 をいいます。

 

【概意】
またカル君が問うには、
「火は陽に還り、水は陰に還る。人は人の根本に還らぬのか。」

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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