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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第131回 [2024.3.10]

第二四巻 コヱ国 ハラミ山の文 (6)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 こゑくにはらみやまのあや (その6)
 コヱ国 ハラミ山の文 https://gejirin.com/hotuma24.html
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 そふみちて みなつきはつひ みつこうむ
 そのゑなのあや むめさくら うはなとかわり
 あやしめは きみにつくれと かえなくて

―――――――――――――――――――――――――――――
 十二充ちて 六月初日 三つ子生む
 その胞衣の紋 梅・桜 卯木と変わり
 あやしめば 君に告ぐれど 返え無くて

―――――――――――――――――――――――――――――

■十二充つ (そふみつ)
「12か月(の妊娠期間)が充ちる」 という意で、“月満つ” ともいいます。
近代では妊娠期間は “十月十日” と言われますが、
ホツマにおいては、男児は12か月、女児は10か月が標準とされています。
(ただし時代が下ると 男児/女児の違いには言及されなくなります。)

 男の子は年に 女は十月 イキス良ければ 生むも安きぞ 〈ホ16ー5〉


■胞衣の紋 (ゑなのあや)
「胞衣に浮かび上がった模様」 です。 ▶胞衣 ▶紋


■梅 (むめ) ■桜 (さくら) ■卯木 (うはな)
ニニキネが八州巡幸中に、幸運のしるしとして髪に挿していた枝です。
越では “梅” 、高島では “桜” を、ウカワでは “卯木” を髪挿していました。

・「に三種の 門出も むめに輿得て この御饗」 あめのしるしと 折り髪挿し 〈ホ24ー2〉
・到るタカシマ 「ささなみの 
も好し」 と 折り髪挿し 〈ホ24ー2〉
・御孫喜び 
卯の木も また髪挿し行く 〈ホ24ー3〉


■あやしむ (怪しむ)
アヤシ(怪し)+シム(染む) の短縮で、形容詞のアヤシ(怪し)を動詞化した言葉です。
「疑う・疑問に思う・不思議に思う」 などの意となります。
ここでは “そのゑなのあや” の あやに語呂合せしているようです。

 ★怪し (あやし:形容詞)
 アユ(肖ゆ)シ(▽如・▽然) で、「合う如し・似る如し・紛う如し・疑わし」 などが原義です。


■返え (かえ)
「反応・返事・返言・返信」 をいいます。

 

【概意】
12か月が充ちて、6月初日に三つ子を生む。
その3つの胞衣の模様は、梅・桜・卯木とそれぞれ異なり、
不思議に思って君に告げるとも、返事は無く、



―――――――――――――――――――――――――――――
 ひめはすそのに うつむろし めくりにしはの かきなして
 ははこちかひて なかにあり あたたねならは ほろひんと
 ひおつけやけは あつかりて はひいてんとす

―――――――――――――――――――――――――――――
 姫は裾野に 埋室し 周りに柴の 垣 成して
 母子誓ひて 中にあり 「他胤ならば 滅びん」 と
 火を着け焼けば 熱がりて 這ひ出でんとす

―――――――――――――――――――――――――――――

■裾野 (すその)
「ハラミ山の裾野」 で、サカオリ宮 からさほど遠くない所と推察されます。
この場所を “産屋ヶ崎” と呼ぶようになったという説話もあるのですが、
あまり信頼の置ける伝承ではありません。


■埋室 (うつむろ)
ウツ(▽埋)+ムロ(室) で、ウツは ウヅム(埋む)の母動詞です。
「外部からの接触を断つこと・閉ざした空間」 をいい、イワムロ(▽結室) と同じです。


柴 (しば)

他胤 (あだたね)

 

【概意】
姫はハラミ山の裾野に室に閉じ籠り、周囲に柴の垣を成して母子は中にあり。
「もし他胤なら我らは滅びるであろう」 との誓いを掛け、火を着けて焼けば、
<三つ子は> 熱がって這い出ようとする。



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 みねのたつ みつはきかけて
 ひとりつつ みちひきみこお はひいたす
 もろとおとろき ひおけして ひめひきいたし
 みこしもて みやにおくりて いせにつく

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 峰の竜 水吐きかけて
 一人づつ 導き 御子を 這ひ出す 
 諸人驚き 火を消して 姫 引き出し
 御輿以て 宮に送りて イセに告ぐ

―――――――――――――――――――――――――――――

■峰の竜 (みねのたつ)
「ハラミ山頂に棲む竜」 をいいます。
ハラミ山頂の コノシロ池 には竜が棲むと信じられていました。

 タツタの神の 現れて コノシロ池の 竜の雨 〈ホ39〉

どうしてか? コノシロ は いずれも原義が 「高み・頂点・熟成」 です。
この原義の共通性から、“山頂の池には竜が棲む” という発想が自然に生じたと考えています。

 ★コノシロ (▽熟精・鮗)
 コノは コナル(熟る)の母動詞 “コヌ” の名詞形、シロは シラグ(精ぐ)の母動詞 “シル” の名詞形。
 「成熟精練して頂上に達するさま」 をいいます。出世魚のコノシロも おそらく同じで、
 シンコ → コハダ → ナカズミ と成長し、コノシロで頂点に達します。


■水吐く (みづはく)
竜は水の眷属で、水を操って火を消したり 高波を鎮めたりする能力を持ちます。
これはシナ国の伝説でも同じです。また炎も吐くのですが、この炎は水の気(=湿気)を
炎に変じたものだと シナ国の伝説はいいます。


■御輿 (みこし)
コシ(輿)の尊敬語で、「君の用いる輿」 をいいます。 ▶輿
これを用いてサカオリの宮に送ったということは、臣たちはアシツ姫と三つ子を
正統なニニキネの御后と御子として扱っていることがわかります。


■宮 (みや)
「サカオリ宮」 です。


■イセに告ぐ (いせにつぐ)
「イセに帰っているニニキネに告げる」 ということです。

 

【概意】
その時にハラミ山頂の峰の竜が現れて水を吐きかけ、
一人ずつ御子を導いて這い出させる。
諸人は驚いて火を消し、姫を引き出して
御輿を以てサカオリ宮に送り、イセのニニキネに告げる。



―――――――――――――――――――――――――――――
 しろこのさくら うまれひに さきてたえねは
 あめみまこ かもふねはやく とはさせて
 おきつにつけは きちとひて さかおりにつく

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 シロコの桜 生れ日に 咲きて絶えねば
 陽陰御孫 カモ船はやく とばさせて
 オキツに着けば 雉飛びて サカオリに告ぐ

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■シロコの桜 (しろこのさくら)
アシツ姫が “孕み子が他胤ならば木を枯らし、真胤ならば生む時に咲け” と
願掛けして、現在の鈴鹿市白子の地に植えた桜です。 ▶シロコ

 我が孕み 他胤ならば 木 萎め 真胤ならば 生む時に 咲け 〈ホ24-5〉

 この桜の木は 白子不断桜(しろこのふだんざくら) と呼ばれ、
 鈴鹿市寺家3丁目2-12 の 子安(こやす)観音寺の境内に現存します。 ▶画像
 (少し後に出てきますが “こやす神” はアシツ姫の贈り名です。)
 一年中 枝のどこかに花を咲かせている不思議な桜として古来有名で、
 大正12年に国の特別天然記念物に指定されています。


■生れ日 (うまれひ)
「三つ子の誕生日」 をいい、さきに示されているように 「6月初日」 です。
普通は桜の咲く時期ではありません。しかもこれは太陰暦での6月1日ですから、
太陽暦では7月の初旬〜中旬にあたります。


陽陰御孫 (あめみまご)

■カモ船 (かもふね:鴨船)
太古 オキツヒコが、鴨が足を前後に往き来させて泳ぐさまをヒントに
開発した船で、「櫂漕ぎ船」 をいいます。

 ★カモ (鴨・鳧)
 カヒ(櫂・梭)の変態で、「往き来」 を原義とし、2つの意味があります。
 (1) 足を前後に往き来させて泳ぐ鳥。
 (2) 行ったり来たりする鳥。つまり渡り鳥。


■オキツ (息津)
「(船の) 発着場」 を意味する普通名詞です。船津(ふなつ) ともいいます。 ▶津
このニニキネが着いたオキツが、後に “興津” という固有地名になったと考えられますが、
その場所については、今に言う興津とは少し違っていたのではないかと考えています。

 ★息 (おき)
 イキ(息)の変態で、「往き来・離れと寄り・出入り・発着」 などの意です。

雉 (きぢ・きじ)

 

【概意】
シロコの桜は三つ子が生れた日に花を咲かせ、
以後も花が絶えないことを知った陽陰御孫は カモ船をすっ飛ばさせ、
船津に着けば 雉が飛びサカオリ宮に告げる。



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 ひめうらみ ふすまかふりて こたえなし
 かえことすれは きみしはし おもひてわかの うたみそめ
 おきひこおして さおしかと

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 姫 恨み 衾 かぶりて 応え無し
 返言すれば 君しばし 思ひてワカの 歌見染め
 オキヒコをして 差使人

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衾・被 (ふすま)

■応え無し (こたえなし)
「反応なし・返事なし」 という意です。
これは 「ニニキネが姫の告げを無視したことに対する仕返し」 と考えていいでしょう。

 六月初日 三つ子生む その胞衣の紋 梅・桜 卯木と変わり
 あやしめば 君に告ぐれど 
返え無くて 〈ホ24ー6〉


歌見 (うたみ)

オキヒコ (息彦)・オキツヒコ (息つ彦)
オキヒコ・オキツヒコの名の意味は 「往き来の臣・離れと寄りの臣」 です。
これはオキツヒコが、妻といったん別れ (離れ)、再びとつぐ (寄る) という
経験を持つことに由来します。その経験のゆえに、離れてしまったニニキネと
アシツ姫の仲を再び結ぶための歌を届ける勅使に選ばれたのでしょう。

 カモ船の カモ(鴨)、伝令の キジ(雉)、また オキツ(息津) と オキヒコ(息彦)の
 “オキ” は いずれも 「往き来」 が原義であることに留意願います。


差使人 (さおしかど)

 

【概意】
姫は恨み、布団をかぶったまま返事せず。
それを報告すれば、君はしばし考えてワカの歌札を染め、
オキヒコを勅使として届けさせる。



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 ひめいたたきて
 おきつもは へにはよれとも
 さねとこも あたわぬかもよ はまつちとりよ

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 姫 頂きて
 『オキツモは 辺には寄れども
 さね融も 値わぬカモよ はまつチドリよ』

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頂く (いただく)
ニニキネが姫に直接手渡すのなら、叩き返すこともできるでしょうが、
差使人(=勅使)を間に立てられた以上、后といえども皇に対する礼儀を以て
対応しなければなりません。それゆえアシツ姫もその作法に則り、嫌々ながらも、
歌札を頂いて拝読せざるをえないわけです。ここはニニキネの智謀の “技あり” ですね。


■オキツモ
オキ(息)+ツ(格助詞)+モ(▽鳥) で、オキ(息)は 「往き来」 を意味します。
モは モモキ(鳥臓)の “モ” で、「鳥」 を意味します。

ですから 「行ったり来たりする鳥・離れたり寄ったりする鳥・渡り鳥」 を意味し、
オキツトリ(息つ鳥)の換言です。ですからやはり “カモ” にかかります。
これは 「一時は姫を離れながら、再びカモ船で寄ってきたニニキネ自身」 を表します。


■辺には寄れども (へにはよれども)
「そばに寄ってきたけれども」 という意です。


■さね融 (さねとこ)
サネは  サフ(障ふ・支ふ) の名詞形 サエ(障)の変態で、サフは ソフ(添ふ)の変態、
また サワル(触る)の母動詞です。「合い・添い・付き・交わり」 などを意味します。
トコは トク(融く)の変態で、「溶けて一つになること・融合」 をいいます。
ですから 「交わって融合すること」 をいい、トツギチナミマグハヒ などの換言です。


■値わぬ・適わぬ (あたわぬ)
アタフ(能う適う)+ヌ(否定) で、「値しない・ふさわしくない」 という意です。


■カモ (鴨)
“オキツモ” はこれにかかり、ニニキネ自身を 「渡り鳥の鴨」 に喩えます。
そしてこのカモは、次の “チドリ” と対となっています。


■はまつチドリ (浜つ千鳥)
「離れた渡り鳥・去っていった渡り鳥」 という意で、
これを 「ニニキネから心が離れたアシツ姫」 になぞらえています。
また同時に “渡り鳥だから、また戻ってくるかもしれない” という期待がこもります。

 ★はまつ (浜つ)
 ハマ+ツ(格助詞) で、「離れた・別れた・去った」 などの意です。
 ハマは ハル(遥) の変態で、「離れ・分れ・別れ」 などが原義。
 海岸を意味する “浜” も同じで、これは 「(陸と海の) 分れ目」 という意です。

 ★チドリ (千鳥)
 チドル+トリ(鳥) の短縮です。チドルは チドリアシ(千鳥足)のそれで、
 「行ったり来たりする」 という意の動詞です。
 ですから オキツモ・カモ と同じく 「往き来する鳥・渡り鳥」 をいいます。

 

【概意】
姫は歌札を頂いて、<拝読すれば>
オキツモは 辺には寄れども さね融も 値わぬカモよ はまつチドリよ

離れたり寄ったりの鳥は またそばに寄ってきたけれど
夫婦の交わりにも値しない鴨よ 去っていった渡り鳥よ (またもどって来てくれるだろうか?)



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 このうたに うらみのなんた とけおちて
 きもにこたえの かちはたし すそのはしりて おきつはま

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 この歌に 恨みの斜 解け落ちて
 肝に応えの 徒歩裸足 裾野走りて オキツ浜

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傾 (なんだ)

肝に応ふ (きもにこたふ)

■徒歩裸足 (かちはだし)
「乗り物を使わず徒歩で、しかも裸足で」 ということです。 ▶徒歩


■オキツ浜 (おきつはま)
「船着き場のある浜・船が碇泊する海岸」 という意です。

 サカオリ宮にいたアシツ姫が 裸足で走っていった所ということになると、
 (もちろんサカオリ宮の位置にもよるわけですが) 清水市の興津はちょっと
 遠すぎるように感じます。
 我が本心を明かしますと、今の田子の浦ではないかと考えています。
 これは この当時のハラミ山を、現在の富士山ではなく、愛鷹山だったと
 想定しての推理です。愛鷹山だったと考える方が、いろんな点で
 ホツマの記述に合うのです。

 

【概意】
この歌に恨みのねじけは解け落ちて、胸を打たれての徒歩裸足。
裾野を走って船の碇泊する浜へ。



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 きみよろこひて こしならへ ゆくおおみやは やますみの
 みちむかえして みところに すわかみあえは すはしりて
 さかおりみやに いりまして もろかみきけよ われさきに
 はなおかさして かけとほる これゑなのあや いみななす

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 君 喜びて 輿並べ 行く皇宮は ヤマズミの
 道迎えして 御所に スワ守 会えば すばしりて
 サカオリ宮に 入りまして 「諸守聞けよ 我 さきに
 木を髪挿して 駆け通る これ胞衣の紋 斎名生す」

―――――――――――――――――――――――――――――

■皇宮・大宮 (おおみや)
オオ(央・皇)+ミヤ(宮) で、「中央の宮・首都の宮」 をいい、この場合は サカオリ宮 を指します。

 “皇宮” と表現していることは、この時点でニニキネ朝廷の首都が、
 ニハリ宮からサカオリ宮に移転していることを示します。
 それゆえ以前、“思すことあり” と ニニキネがイセに上った目的は、
 この首都移転をアマテルに相談するためであったことが推測されます。

 時に君 思すことあり ・・・ ・・・ カツテして 海辺を上る 御幸触れ 〈ホ24ー5〉


■ヤマズミ
3代オオヤマズミのマウラです。
アシツ姫の父で、サカオリ宮の預り役を務めます。

 サクラウチ───カグツミ─┬カグヤマ──カゴヤマ
[初代ヤマズミ]   [2代]   ├カンタマ
              └マウラ──┬イワナガ
               [3代]   └アシツ姫


■道迎え (みちむかえ)
「道中に出迎えること」 をいうものと思います。


■御所 (みどころ)
ミ(御・▽上)+トコロ(所)で、「尊い所」 の意です。
今風に言えば ゴショ(御所) で、この場合は サカオリ宮の 「皇居」 をいいます。


■スワ守 (すわかみ)
「シナ野を治める県主たち」 をいいます。 ▶スワ(諏訪) ▶シナノ(信濃)


■会ふ (あふ)
ここでは 「会合する・集合する」 の意です。


■すばしる (▽趨走る)
スフ+ハシル(走る) の短縮で、スフは スフ()の母動詞、 また “速やか” の “スミ” の変態です。
「速やかに行く・急いで行く・趨走する」 などの意で、“すばしこい・すばやい・とばす” などと同源です。

 富士の登山道の一つが 須走 と名付けられていることは、このニニキネとアシツ姫の説話と
 無縁とは思えません。後代、孝霊天皇は “ハラミ山に登ってスバシリを下った” と記されます。
 もちろん、現在の須走ルートとは違うと思います。

 ・三月七日 ハラミ山へと 御幸なる ・・・ ・・・ 山 登り 下るスバシリ 裾 巡り 〈ホ32〉

 すばしりぐち【須走口】〈広辞苑〉
 静岡県北東部、駿東郡須走村(現在、小山おやま町)の、富士山の登山口。
 山路は火山砂より成り、下山の際には多く走り下る。


■駆け通る (かけとほる)
カク(駆く・掻く)とほる(通る) の連結で、両語とも 「往き来する・回る・巡る」 が原義です。
ですから 「あちこち巡回する」 という意となります。


胞衣の紋 (ゑなのあや)

■斎名生す (いみななす)
胞衣の紋が 「斎名を生む」 という意です。 ▶斎名

 

【概意】
君は喜び、二人で輿を並べて皇宮へ向かえば、
ヤマズミが道中に出迎え、御所にスワ守が集うと聞いて、
大急ぎでサカオリ宮に入ります。
「諸守聞けよ。さきに我は木の枝を髪に挿して各地を巡回していたが、
それが三つ子の胞衣の模様として現れ、斎名を生む。」


 この部分に関連して後のアヤに次のような記事があります。

  先に御子 三人生む時 シナ野より 四シナ県の 主 来たり
  アマテル神の 例あり 胞衣乞ふ時に 御言宣
  「ハニシナ主は “胞衣が岳” ハヱシナおよび サラシナと ツマシナ主ら
  この三胞衣 その尾に納め 守るべし」 〈ホ28〉

 スワ守(=四シナ県の主)たちは、アマテルの胞衣を恵那山に納めた前例にならって、
 シナノの峰に納めたいと、三つ子の胞衣を乞いに来たのです。
 ニニキネはその願いを受け入れて胞衣を授けますが、それが “この時” だったようです。



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 はつにてるなは ほのあかり いみなむめひと
 つきのこは なもほのすすみ さくらきそ
 すえはなもひこ ほおてみの いみなうつきね
 またひめは こおうむひより はなたえす
 ゆえにこのはな さくやひめ

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 「初に出る名は “ホノアカリ” 斎名ムメヒト
 次の子は 名も “ホノススミ” サクラギぞ
 末は名も “ヒコホオデミ” の 斎名ウツキネ
 また姫は 子を生む日より 花 絶えず
 ゆえに “コノハナサクヤ姫”」

―――――――――――――――――――――――――――――
  ここは五七調が少々いびつなため、言葉の区切りを調整しています

■初に出る名 (はつにでるな)
アシツ姫が火を着けた室から 「最初に這い出た子の名」 という意です。


■ホノアカリ (火の上かり) ■ムメヒト (梅人)
ホノアカリは 火事の発展過程における 「火の手の上がり」 の意と考えます。
この火の段階で(いち早く)這い出た子を長男とし、“ホノアカリ” と名付けます。

ムメヒトの ムメ(梅)は ニニキネが最初に髪挿していた木の枝です。
ヒト(人・仁)は 皇位継承予定者に付けられる 斎名の ノリ(和り) です。

 斎名には 親に代嗣に 名とノリと 合わせ四つなり
 和つ君 一より十までを 尽すゆえ “
ヒト” に乗ります
 “
キネ” と “ヒコ” “ウシ” もノリなり 〈ホ4-5〉


■ホノススミ (火の進み) ■サクラギ (桜木)
ホノススミは 火事の発展過程での 「火の勢いの進んだ段階」 と考えます。
この火の段階で這い出た子を次男とし、“ホノススミ” と名付けます。

サクラギの サクラ(桜)は ニニキネが2番目に髪挿していた木の枝です。
キは キネ(木根)の短縮形で、これも斎名のノリ(和り) の一種です。


■ヒコホオデミ (▽光火を出身) ■ウツキネ (卯木根)
ヒコホオデミは “ヒコホ(▽光火)をデミ(出身)” の意に解しています。
ヒコは ヒカ(▽光)・アカ(明)・イカ(▽怒)・オコ(▽怒) などの変態で、
「勢いづくさま・栄えるさま」 を意味します。ですからヒコホは 火事の
発展過程での 「燃え盛る段階・燃焼の最盛期」 をいうものと考えます。
ゆえにヒコホオデミは 「燃え盛る火から這い出た身」 という意になります。

ウツキネは ウツギ(卯木)+キネ(木根) の短縮です。
ウツギ(卯木)は ニニキネが3番目に髪挿していた木枝で、キネ(木根)は 斎名のノリ(和り)です。


■花 (はな)
シロコの桜 の咲かす “花” です。

 
■コノハナサクヤ姫 (このはなさくやひめ:子の花咲くや姫)
「子の花を咲かす姫」 という意で、アシツ姫 の別名です。

 コノハナは “子の花” で、「ニニキネの子の誕生を知らす花」 という意です。
 これはつまり “シロコ(▽知子)の桜” の換言です。
 サクヤは “さかやかす” の サカヤの変態で、「栄えさせること・咲かせること」 を意味します。

 

【概意】
「最初に這い出る子の名は “ホノアカリ”、斎名ムメヒト。
次の子は名も “ホノススミ”、斎名はサクラギぞ。
末は名も “ヒコホオデミ” の、斎名ウツキネ。
また姫は、子を生む日よりシロコの桜の花が絶えぬゆえ、“コノハナサクヤ姫”。」

 アマテル─┐
      ├オシホミミ┐
 セオリツ姫┘     ├┬クシタマホノアカリ
            ││
 タカキネ──チチ姫──┘└ニニキネ  ┌ホノアカリ(斎名ムメヒト)
                ├───┼ホノススミ(斎名サクラギ)
 カグツミ───マウラ──┬アシツ姫  └ヒコホオデミ(斎名ウツキネ)
             │
             └イワナガ



―――――――――――――――――――――――――――――
 みやつくりして おわします なつめのかみか うふきなす
 ははのちおもて ひたします こやすのかみそ

―――――――――――――――――――――――――――――
 宮造りして 御座します ナツメのカミが 産着生す
 母の乳を以て 養します “子養すの尊” ぞ

―――――――――――――――――――――――――――――

■宮造り (みやづくり)
ニニキネ朝廷の首都となったサカオリ宮に、晴れて皇后の身となった
アシツ姫が入るように “内宮” を誂えたということだと思います。 ▶内宮


ナツメのカミ (なつめのかみ)

■母の乳を以て養します (ははのちおもてひたします)
オチツモに頼らず、母乳のみで3人の子を育て上げたということです。 ▶オチツモ ▶養す


■子養すの尊・肥やすの尊 (こやすのかみ)
それゆえ 「子を養う尊」、「(子を)肥やす尊」 と称えます。

 その神霊(みたま)は 安産育児の 「子安神」 として信仰され、各地の “子安神社” に祀られます。

 

【概意】
宮造りして御座します。
ナツメのカミが産着を織り、母の乳を以て養しませば、
“子養すの尊/肥やすの尊” と称えます。



―――――――――――――――――――――――――――――
 ひとなりに さくらきかにの くさなせは
 すせりくさにて かにはきて くさかれいゆる なもすせり
 かれしらひけの すせりもて たみよみかえる まもりとて
 はたきてうくる みやゐこれかな

―――――――――――――――――――――――――――――
 人成りに サクラギ カニの 曲なせば
 スセリ草にて カニ掃きて 曲枯れ癒ゆる 名もスセリ
 故 白ひげの スセリ以て 民よみがえる 守りとて
 開きて受くる 宮居これかな

―――――――――――――――――――――――――――――

■人成りに (ひとなりに)
「成長の過程で」 という意です。


■カニの曲 (かにのくさ)
「混じり物(寄生虫)による異常/病」 という意味です。

 ★カニ
 カヌ(▽交ぬ・兼ぬ)の名詞形で、「合わせ・まじり・濁り・交差」 などが原義です。
 この場合は 「人体に混じるもの」 の意で、特に 「寄生虫」 をいいます。

 ★曲 (くさ)


■スセリ草 (すせりぐさ)・スセリ
今に言う セリ(芹) です。 ▶画像
スス(▽濯す)の連体形 スセルの名詞化で、「曲りを直すもの・汚穢を濯ぐもの」 の意です。
古くから食欲増進、健胃、便通を良くする薬草として使われました。


■曲枯れ (くさがれ)
「異常/病による衰弱」 という意です。


■名もスセリ (なもすせり)
スセリ草によって寄生虫による異常を癒したため、
サクラギ(=ホノススミ)は “スセリ” とも呼ばれます。


■白ひげのスセリ (しらひげのすせり)
スセリ(=芹)は 泥の中に白い匐枝(ふくし)を延ばして繁殖しますが、
“白ひげ” とはこれをいうのでしょう。それゆえスセリは “白ひげ” とも呼ばれます。
また白く長いひげは長寿の象徴でもあります。


開く (はだく)
ヒラク(開く)と同義で、この名詞形が ハダカ(裸) です。


宮居 (みやゐ)
「スセリ宮」 を指します。これは 「ウカワ宮」 の別名です。

 後のアヤで語られますが、ホノススミ(斎名サクラギ)は、アワ海の西岸の ウカワ宮 を賜ります。
 これはニニキネが八州巡幸の折、サルタから御饗を受けたウカワ仮屋の跡に新築された宮ですが、
 白ひげのスセリ草で寄生虫症を癒したホノススミがその主となったため、民を蘇生させる守りと
 なるようにと願いを込めて、スセリ宮 とも呼ばれました。
 ホノススミは14鈴(84万年)という長寿を得て、後に 白ひげ尊 という名を賜ることになります。

  故 永らえて 十四鈴の齢 ウカワの宮 褒めて “白ひげ尊” と名を賜ふ 〈ホ26〉

 高島市の鵜川に白鬚神社があり、祭神の 白鬚明神 はサルタヒコの別名とされていますが、
 本来は、白ひげ尊=スセリ/ホノススミ/サクラギ  だったと考えられます。

 白髭神社 (しらひげじんじゃ)
 滋賀県高島市鵜川215。
 現在の祭神:猿田彦命、白鬚明神

 

【概意】
サクラギは成長過程で寄生虫による病を患えば、
スセリ(芹)草で寄生虫を掃いて、病による衰弱を癒やす。
それゆえまたの名も “スセリ”。
されば白ひげのスセリを以て、民をよみがえらせる守りとし、
新たに開設して受けた宮も これ(スセリ宮)かな。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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