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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第2回 [2023.6.30]

第一巻 東西の名と蝕虫去る文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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次に進む前に、ホツマ・ミカサが伝える天地創造の説話について、
ここで先取りしてお話します。これから先、これを知らないと
説明するにも理解するにも、何かと不便だからです。


 天地人も 分かざるに 初の一息 動く時
 東上りて 西下り 虚空に回り
 泡・泥の 回れる中の 実柱に 裂けて陰陽生る 

 陽は清く 軽く回りて 天と成り
 陰は中に凝り 地と成る 水・埴 分かれ
 陽の空 風生む 風も 火を生みて
 陽は三つとなり 陰は二つ
 背のムナモト 日と丸め 妹のミナモト 月と凝り
 空・風・火と 水・埴の 五つ交わりて 人と成る
 アメナカヌシの 尊はこれ           
 〈ホツマ14アヤ〉


【概意】
天も地も人も、まだその区別がない頃、
アメミヲヤ(創造神)の初の一息が動くと、
東より上って西に下る回転運動が虚空に生ずる。
混沌たる泡泥が、中心の柱を回るうちに分離して、が生ずる。
陽は澄み、軽く動いてとなり、
陰は凝縮してとなり、が分れ出る。
陽はとなり、空はを生む。 風もまたを生んで、
陽は三つとなり、陰は二つとなる。
背のムナモト(陽の極)をと丸め 妹のミナモト(陰の極)はと凝る。
空・風・火と水・埴の五つが交わりと成る。
アメナカヌシ(=ミナカヌシ)の尊はこれ。


天地創造については、この他にも6箇所に記述があるのですが、
整理してまとめると、おおよそ次の通りです。

1.泡泥の如く渾然一体だったアメノミヲヤが “初の一息” を発す。
2.泡泥は回転運動を始め、 に分離する。
3.軽い陽は先に上って に、重い陰は後に下って となる。
4.陽の極は と丸まり、陰の極は に凝る。
5.陽は を生み、陰は を生む。
6.空・風・火・水・埴 の5つが交わって、地にが生まれる。

ここで重要なのは、
って天・日となり、って地・月となった
ということで、つまり 「すべて陽と陰の変化したもの」 という理論です。
このため ホツマやミカサの解釈においては、
 を同義語と考え、また
 を同義語と考えるべき場合があります。
すなわち ほぼ次の等式が成り立つのです。

   陽陰(あわ・あめ)=男女(をめ)=陰陽(めを)=女男(めを)=父母(たら)
  =天地(あわ・あめ・あめつち)=日月(ひつき)=上下(かも・ゑと・うす)
  =前後(まえうしろ)=後先(あとさき)=経緯/縦横(たてよこ)=木実(きみ)


また、陽陰 アメ また アワ と呼ぶことについてですが、
アメは アム(編む)の名詞形で、「和合・調和」 などが原義です。
アムは アフ(合ふ)の変態で、アフの名詞形が アワ です。このことから、
互いに結び付く (和合する) 性質を持つ正反対の二つ (陽と陰) についても
アメ(陽陰)、あるいは アワ(陽陰) と呼ぶようになったと推察しています。

「あめ=天」 の 固定観念は捨てるべきです。

 

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 きつのなとほむしさるあや (その2)
 東西の名と蝕虫去る文 https://gejirin.com/hotuma01.html
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 ことはおなおす あわうたお つねにをしゑて
 あかはなま いきひにみうく ふぬむえけ へねめおこほの
 もとろそよ をてれせゑつる すゆんちり しゐたらさやわ
―――――――――――――――――――――――――――――
 言葉を直す “アワ歌” を 常に教えて
 あかはなま いきひにみうく ふぬむえけ へねめおこほの
 もとろそよ をてれせゑつる すゆんちり しゐたらさやわ
―――――――――――――――――――――――――――――

■アワ歌 (あわうた:▽陽陰歌/▽和歌)
イサナキとイサナミが民の言葉の乱れを直すために考案した歌で、
から始まってで終わる 日本語の48音を重複なく綴った歌をいいます。
この48音はそれぞれが神の名でもあるため、“アワの神” とも呼ばれます。

 

【概意】
言葉を直す “アワ歌” を常に教えて、
あかはなま いきひにみうく ふぬむえけ へねめおこほの
もとろそよ をてれせゑつる すゆんちり しゐたらさやわ

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 あわのうた かたかきうちて ひきうたふ
 おのつとこゑも あきらかに ゐくらむわたを ねこゑわけ
 ふそよにかよひ よそやこゑ これみのうちの めくりよく
 やまひあらねは なからえり すみゑのをきな これおしる
―――――――――――――――――――――――――――――
 和の歌 カダカキ打ちて 引き歌ふ
 自ずと声も あきらかに 五臟六腑・緒 根隅分け
 二十四に通ひ 四十八声 これ身の内の 巡り良く
 病あらねば 永らえり スミヱの翁 これを知る
―――――――――――――――――――――――――――――

■和の歌 (あわのうた)
上記の “アワ歌” と同じ歌ですが、ここでは 「和して調える歌・直す歌」 の
意であるため、あえて “和の歌” と当て字しています。

 ★アワ (▽陽陰・▽和)
 先に示したように、“アワ” は、ア(陽・天・上) と ワ(陰・地・下) であり、
 同時に アフ(合ふ・和ふ) の名詞形でもあります。
 ですから アワ歌は 「陽陰和合の歌」、また 「偏りを中和して調える歌
 という意味です。それゆえ乱れた言葉を “直す” わけです。


■カダカキ (葛掻き)
本来は、宮の垣にからまるカダ(葛)を、イトススキが引っ掻いて音を出すさまに
ヒントを得て、イサナギが造った三弦琴の名ですが、これが琴の元祖であるため、
ここでは 「琴類の総称」 として “カダカキ” の名が使われています。
アワ歌を教えるのに実際に使った琴は五弦の琴です。


■引き歌ふ (ひきうたふ)
「民を導いて歌う・民をリードして歌う」 という意です。


■五臟六腑・緒 (ゐくらむわた・を)
“五臟六腑” は人の内臓をいいますが、この場合は 「中心部・内」 を意味します。
“緒” は ここでは 「端・末・外」 の意で、中心部に対して 「周辺部・外」 を意味します。


■根隅 (ねこゑ・ねこえ)
「元と末・中と隅・内と外」 の意です。
ですから “五臟六腑・緒” と同じことを言ってます。

 “根隅” は筆者の宛字で、“こえ” を くう(隅)変態と仮定しています。

 
■二十四に通ふ (ふそよにかよふ)
“24” はアワ歌 (=アワの神48柱) のちょうど半分です。
“通ふ” はここでは 「行き来する・往復する・折り返す」 などの意です。
民にアワ歌を教える時には、上の24声をイザナギが歌い、
下の24声をイザナミが歌ったと記されています。

 二尊の オキツボに居て 国生めど
 民の言葉の 悉曇り これ直さんと 考えて
 五音七字道の アワ歌を 上二十四声 イサナキと 下二十四声 イサナミと
 歌ひ連ねて 教ゆれば 歌に音声の 道 開け 民の言葉の 調えば 〈ホ5〉

 
■巡り (めぐり)
「体内の循環」 をいいます。

 
■永らえり (ながらえり)
ナガラフ(存ふ永らふ)ナリ(断定) の短縮で、
「永らえるなり・長生きするのである」 という意です。


■スミヱの翁 (すみゑのをきな)
スミヱは 「ツキスミせ」 という意で、スミヨシ(ツキスミ寄せ)と同じです。
“スミノヱ” とも呼ばれます。いずれもカナサキの別名です。

 ★翁 (をきな)
 ヲキ(大き)+ナ で、「大きなる者・大いなる者」 を原義とし、
 「老熟の者・老練の者」 を表します。反意語が オサナ(幼) です。

 ★ヲキ・オオキ・オホキ (大き・多き)
 ヲシ/オオシ(大し)の連体形です。オオキの音便が オオイ(大い) です。

 ★ナ (▽形・▽態)
 ナル(生る・成る)の名詞形 “ナリ(形・態)” の略で、「〜なるさま・〜なるもの」 を意味します。
 

 

【概意】
和の歌をカダカキを弾きながら
導き歌えば、自ずと声もあきらかになる。
内臓と外殻の 元・末を分け、24声で折り返す48声。
これは身の内の循環が良く、病のあらねば長生きする。
スミヱの翁はこれを知る。

 

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 わかひめさとく かなさきに きつさねのなの ゆゑおこふ
 をきなのいわく
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 ワカ姫 聡く カナサキに 東西南北の名の 故を請ふ
 翁の曰く
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■東西南北 (きつさね)
現在は失われていますが、“ヒガシ・ニシ・ミナミ・キタ” の他に、
“キ・ツ・サ・ネ” という言い方がありました。
そのいわれをワカ姫がカナサキに尋ねています。

 

【概意】
ワカ姫は敏感に、カナサキに東西南北の名のいわれを請ふ。
翁の曰く、

 

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 ひのいつる かしらはひかし たけのほる
 みなみるみなみ
 ひのおつる にしはにしつむ
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 日の出づる 頭は東 猛昇る
 皆見る南
 日の落つる 西は熟沈む
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■日の出づる頭は東 (ひのいづるかしらはひがし)
カシラ(頭) と ヒガシ(東)の カシ/ガシ は
ともに カス(▽上す・▽高す・▽活す) という動詞の名詞形で、
「上にあるさま・先にあるさま・勢いあるさま」 などが原義です。
カシラ(頭)は カシ(▽上し)+ラ(場所を表す) で、「上の部分・上る所」、
ヒガシ(東)は ヒ(日)+カシ(▽上し) で、「日の上り」 の意です。

 
■猛昇る (たけのぼる)
「勢いよく上昇する」 の意で、“日の出の勢い” というやつです。


■皆見る南 (みなみるみなみ)
皆(ミナ)が見(ミ)るから ミナミ(南) です。
南は日(太陽)が最も高くなり、明るく熱くなる方向であることから、
「高み・栄え」 を表す方角です。人も木草もそれを追い求めるため、
“皆見る” です。家屋も正面が南を向くように建てました。


■西は煮沈む (にしはにしづむ)
日が煮沈む(にしづむ)から ニシ(西) ということです。
“煮沈む” は、太陽が 「真っ赤に熟して沈む」 ことをいいます。
またその色も ニ(丹) と呼びます。

 ニシヅム(煮沈む) の “ニ(煮)” は ニユ(煮る)の連用形(上一段)です。
 現在は他動詞の意味しかないのですが、この場合は自動詞で、
 「煮える」と同じです。
 赤い夕日の色を ニ(▽熟・丹) といいますが、クレナヒ(紅)も同じ色を
 表します。クレナヒは クレノヒ(暮れの日)という意味です。

 

【概意】
日の出の その上る所は “東”。
<“日活し”のゆえに> 猛昇る。
皆が見るから “南”。
日の落ちる “西“ は、日が煮えて沈むゆえ。

 

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 よねとみつ かまにかしくは ひかしらや
 にゑはなみなみ にゑしつむ
 ゑかひとたひの みけはこれ
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 米と水 釜に炊ぐは 火頭や
 煮え花 皆見 煮え静む
 回日一度の 食はこれ
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■炊ぐ (かしぐ)
カス(▽上す・▽高す・▽活す)+シク(頻く) の同義語短縮で、
どちらも 「上げる・高める・勢いづける・活発にする」 などの意です。

 
■火頭 (ひがしら)
「火の上の所」 という意です。

 
■煮え花 (にゑばな)
煮えてぶくぶくと 「盛んに泡を噴くさま」 をいいます。
おもしろいので皆が見ます。

 
■煮え静む (にゑしづむ)
さらに煮えて、「水分が減って静かになる」 ことをいいます。


■回日 (ゑか)
「回って来る日」 の意で、「日々・毎日」 と同義です。

 

【概意】
米と水を釜に炊くのは火の頭よ。
煮え花を皆見て、煮え静む。
日々一度の食はこれ。



 この記述と “東南西北” との関わりについてですが、
 東南西北は、日が 起きる方角・栄える方角・熟す方角・寝る方角 ですから、
 東南西北は “起・栄・熟・滅” と言い換えることができます。
 ここで釜を火にかけることは 「起」 にあたります。
 盛んに煮え花を噴くのは 「栄」、煮え静むのは 「熟」 で、
 炊けて食べられてしまうのは 「滅」 ということです。
 なおこの意味においては、”春夏秋冬” も 東南西北 と全く同じです。

 

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 ふるとしふより
 つきみけの ひとはもよろに つきむけの ひとはふそよろ
 いまのよは たたふよろとし いきなるる
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 経る年 古より
 月三食の 人は百万に 月六食の 人は二十万
 今の代は ただ二万年 生き均るる
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■経る年 (ふるとし)
“この世で経る年” という意味で、「寿命・永らえ・齢」 に同じです。


■古より (ふより)
「昔から・古来」 の意です。
フ(▽古)は フル(経る)の名詞形で、フルはヘル(経る歴る)の変態です。

 

【概意】
寿命は古来、月に3食の人は100万年永らえ、
月に6食の人は20万年と言われる。
今の時代は平均でたった2万年しか生きない。

 

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 みけかさなれは よわひなし
 ゆえにをんかみ つきにみけ にかきはほなや
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 食 重なれば 齢なし
 ゆえに御神 月に三食 苦きハホ菜や
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■食重なる (みけかさなる)
“日々一度の食” ではなく、一日に何度も 「食を重ねる」 という意でしょう。


 ★食 (みけ)
 ミケはイケ(生け・活け)の変態で、「活かし・活かす物」 を意味します。
 ‘ミ’ は ‘イ’ と交換される場合が多いです。(例:ミカツチ ⇔ イカツチ)
 ウケミタマ/ウカノミタマ(宇迦御魂)の ウケ/ウカも ミケやイケの変態です。


■齢 (よわひ・よはひ)
ヨフ(▽熟ふ)+ハフ(▽栄ふ・生ふ) の短縮 “ヨハフ” の名詞形で、
ヨフはヲフ(老ふ)の変態です。「進展・熟成・老熟・成り行き」 などを原義とし、
ここでは 「永らえ・寿命」 を意味します。

 多食が寿命を縮めることは、他所でも語られています。
 ・人草の食 繁るゆえ 生れ賢しく
  永らえも 千齢は百齢と 萎り枯れて         〈ホ27-7〉
 ・人草の 日々食べ増すを 謹めと 子の永らえを 思すゆえ 〈ミ4〉


■御神 (をんかみ)
“をん” は 「大の・大いなる」 の短縮で、「アマテル神」 を指します。

 他文献にいう 天照大神 ですが、ホツマ・ミカサが伝えるアマテル神は、
 他とはまったく異なります。
 ホツマ・ミカサは アマテル神の教えを正確に伝えるために編纂された書です。


■ハホ菜・ハオ菜 (はほな・はおな)
ホツマには チヨミグサ(千代見草・千節見草)と呼ばれる、寿命を延ばす薬草のことが
書かれています。3種類あって、ハホ菜はその一つです。並外れて苦かったといいます。
他に 「ラハ菜」 と 「身草(みくさ)」 の2草があります。

 ハオ菜を食めば 千齢を得る ワカ菜も同じ にがけれど
 ハオ菜は百の 増し苦く 千齢を延ぶれど 民 食わず
 根は人の態 葉は嫁菜 花 八重顔よ 〈ホ24〉

 

【概意】
食が重なれば寿命無し。
ゆえに御神の月の3食は 苦きハホ菜や。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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