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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第3回 [2023.7.7]

第一巻 東西の名と蝕虫去る文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 きつのなとほむしさるあや (その3)
 東西の名と蝕虫去る文 https://gejirin.com/hotuma01.html
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 みなみむき あさきおうけて なかいきの
 みやのうしろお きたといふ よるはねるゆゑ きたはねそ
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 南向き 朝気を受けて 長生きの
 宮の後ろを 北といふ 夜は寝るゆえ 北は “ネ” ぞ
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■南向き (みなみむき)
これは “皆見る南” と同じ理由で、宮(=都市)そのものも、
その中に建設される宮殿や民家も、南向きに建てたことをいいます。


■朝気 (あさき)
朝日の放出するエネルギーをいいます。“日の出の勢い” という言葉が
あるように、朝の日光は 若さのエネルギーを秘めていると考えられて
尊ばれました。朝日の潤(あさひのうる)、若日の霊(わかひるのる)、
青き霊(あおきたま)などとも呼ばれます。

 ★気 (き・け・い)
 キ(気)は「目には見えないが存在する何か」を表し、ケ(気)・イ(気・意)・
 ヒ(霊)・ミ(霊)・チ(霊)・ル(霊)・タマ(霊)・ミタマ(神霊) なども同じです。
 今風に言えば “エネルギー” ですが、ガス(気体)や思念なども含みます。


■宮の後ろ (みやのうしろ)
「宮の奥・宮の裏」 という意味で、後宮(こうきゅう)内裏(だいり) をいいます。
宮(=都市)の正門が南側ですので、後宮/内裏は最も北に位置することになります。

 ★ウシロ (後ろ)
 ウス(失す)+シル(▽退る) の同義語短縮 ”ウシル” の名詞形で、
 「遠ざかる所・退いた所」  を意味し、これは オシリ(お尻) の変態です。


■北 (きた)
キツという動詞の名詞形で、キツは クツ(朽つ) の変態です。
「低まる・衰える・勢いを失う・静まる」 などの意で、これはネル(寝る)の同義語です。
つまり 北(きた/ね) は 太陽も人も 「寝静まる方角」 ということです。

 

【概意】
南を向き朝日の気を受けて、住む人が長生きの宮の、
うしろ側をキタ(北)というが、夜はそこで寝るゆえ
北は “ネ(寝)” ぞ。

 

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 もしひときたり ことわけん あわねはきたよ あふはひて
 みなみにことお わきまえて おちつくはにし かえるきた
 ねよりきたりて ねにかえる
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 もし人来たり 応わけん 会わねば北よ 会ふば日手
 皆見/南に事を わきまえて 落ち着くは西 帰る北
 北/寝より来たりて 北/寝に返る
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■応わけん (ことわけん)
コトワクは コトフ(▽応ふ)+ハク/ワク(▽判く・▽計く・▽捌く) の短縮で、
「応えてはかる・応じてさばく・対応/対処する」 などの意です。
‘ん’ は 推量/意志の意を表し、後代は ‘’ と表記するようになります。

 
■日手 (ひて)
“日の手” で、「日(太陽)に向かう側」をいいます。
手は “山の手” のそれで、「方向・区分」 を表します。
建物は正面を南に向けるため、日手は 「南側」 となり、
同時にそれが 「表」 です。

 少し余談です。
 宮や城の正門を大手門(おおてもん)といい、
 門前の町を大手町(おおてまち)とか呼びますが、
 オオテ(大手)は オモテ(▽主手・表)の変態です。


■皆見/南に事をわきまふ (みなみにことをわきまふ)
「皆から見える所/お天道様が見てる所 (=表・南) で物事をはかる」 という意で、
これは 「裏でコソコソせず、公明正大に行うべし」 ということです。

 ★ワキマフ (弁ふ)
 ワク(▽判く・▽計く)+マフ(▽塗ふ) の短縮で、
 両語とも 「合わす・比べる・はかるおもんばかる」 などが原義です。

 
■落ち着くは西 (おちつくはにし)
日(太陽)が落ち着くのが西なのはわかりますが、
ここまで人と家屋の話だったわけですから、どういう意味なのでしょう?!
当時は落ち着くための場所が西側にあったということでしょうか。
もしかすると平安京の 清涼殿 などはその名残なのかもしれません。

 

【概意】
もし人がやって来たとして、どう対応するだろう。
会わないなら北(奥)に留まるし、会うなら表側に出る。
皆が見ている表側で物事をはかり、落ち着くは西、帰る北。
<お天道様も人も> 北(寝)より発して北(寝)に帰る。

 

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 きははるわかは なつあおは あきにゑもみち ふゆおちは
 これもおなしく ねはきたに きさすひかしや
 さにさかゑ つはにしつくる
 をはきみの くにをさむれは きつをさね よもとなかなり
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 木は春 若葉 夏 青葉 秋 煮え紅葉 冬 落葉
 これも同じく 根は北に 萌す東や
 サ(南)に栄え ツは西尽くる
 ヲ(央)は君の 国治むれば キツヲサネ 四方と中なり
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■煮え紅葉 (にゑもみぢ)
ニヱ(煮ゑ)は 「煮えたさま・熟成したさま」 を表します。
ですから 「真っ赤に熟した紅葉」 のような意味になるかと思います。

 ★紅葉 (もみぢ)
 モム(揉む)+ミツ(満つ) の短縮 “モミツ” の名詞形で、
 両語とも 「上がる・高まる・熟す・至る・極まる」 などが原義です。
 モム(揉む)は モル(盛る)・モユ(燃ゆ) などの変態です。

 
■根は北に (ねはきたに)
「木の根は北に伸びる」 の意で、それゆえ “北” をともいう、ということです。
さきほどの 「寝」 に加えて、「根」 の意味もあることになります。

 “ネより来たりてネに帰る” と語られているように、
 ネ(寝・北)は 「根源である」 ということでしょう。
 北は太陽の巡回の出発点であり、同時に終点です。
 人は目覚めて一日が始まり、寝入って一日の終りです。

 
■萌す東 (きざすひがし)
木の芽が萌す(ザス)方向ゆえ、“東” をともいう、ということです。
キザス(萌す・兆す)は キス(▽起す)+サス(差す) の同義語短縮で、
「出る・放つ・発す・生ずる」 などが原義です。


■サ(南)に栄え (さにさかゑ)
南の方向にカエル(栄える)ゆえ、“南” をともいう、という意味です。


■ツは西尽くる (つはにしつくる)
(西を) と呼ぶのは、日(太陽)が西にキル(尽きる)からである、ということです。

 ツクル(尽くる)は ツキル(尽きる)の古形で、もともとは ツク(尽く)の連体形です。
 「行き着く・達する・極まる」 などが原義で、ここでは 「無くなる・枯渇する」 の
 意味はありません。


■ヲ (央)
これは漢字を宛てると “央・王・皇” などになります。
「中心・中心となる者」 を表し、「中央政府の君」 がこれに当たります。
“央” という漢字も 「中の人」 を表すものと考えます。


■キツヲサネ (東西央南北)
キツサネ(東西南北)の四方に、ヲ(央)を加えた言い方です。
これは 「中央の君が統べ治める東西南北」 を表します。
おもしろいことに、東西南北の四方を “口” という形で表して、
その中に “王=玉” を置くと、“国” という文字になります。

 

【概意】
木は春は若葉、夏は青葉、秋は熟した紅葉、冬には落葉となる。
これもやはり 根()は北に伸び、芽が萌す(ザス)のは東。
南に栄え(カエ)、ツは日が西に尽きる(キル)ゆえ。
央()は 君が中心となって国を統べ治めるゆえ、キツヲサネ(東西央南北)。
四方と中なり。

 

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 きはひかし はなはもみなみ このみにし
 みおわけおふる きのみゆゑ きみはをめかみ
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 起は東 華栄 南 熟み西
 身を分け生ふる 木の実ゆえ 木実は男女尊
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■起/(き)
”口火をきる” “スタートをきる”  などと言う場合の キル の名詞形で、
「起こり・発生・出現・始め」 などの意を表します。これがキ(東)の原義です。


■華栄 (はなはも)
ハナは 「花・華」、ハモは ハムの名詞形で、ハムはハユ(生ゆ・栄ゆ)の変態です。
ですから 「繁栄・繁茂・栄華」 などの意です。“華栄” は筆者の当て字です。

 
■熟み (このみ)
コナレ(熟れ)の変態で、「成熟・熟成」 の意と考えます。“熟み” は筆者の当て字です。
木の実(このみ)も、本来は 「熟み」 だったのではないかと考えてます。


■キミ (君・公)
キム(決む・極む)の名詞形で、「極み・頂点・中心」を原義とし、「組織・セクションの長」 を
意味します。したがって一口に君といっても、さまざまなレベルの君がいるわけですが、
ここでは国家の首長である 「国君・国家君主・中央政府の君」 をいいます。


■男女尊・夫婦尊 (をめかみ) ■木実 (きみ)
「夫婦一対の君主」、今風には 「天皇+皇后・両陛下」 をいいます。

 国家君主をいう場合の “キミ” は 「君」 の他にもう一つ、「木・実」 の意を持ち、
 これは 「男女一対の君主・夫婦の君・両陛下」 を表します。男が “木”、女が “実” です。
 例えば イサナとイサナの夫婦、モモヒナとモモヒナの夫婦がそれです。

 “木実” が男女(夫婦・陽陰)を表すのは、天地創造の時、陽は先に上って天となり、
 陰は後に下って地となりましたが、それと同じく、“木” は に立つもので、
 “実” は に木に付くものだからです。

 つまり国家君主をいう場合のキミは、「君」 であると同時に 「木実」 であり、
 本来的には夫婦二人を合せて キミ と呼ぶわけです

 

【概意】
起こりは東、栄えは南、熟す西。
木()が その身を分けて結ぶ 実()であるゆえ、
キミ(君)とは 一体化して不可分となった夫婦の尊をいうのである。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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