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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第14回 [2023.7.25]

第四巻 日の神の瑞御名の文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 ひのかみのみづみなのあや (その2)
 日の神の瑞御名の文 https://gejirin.com/hotuma04.html
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 ひたかみの みやにかえれは
 いさなみの ちちにもふして よつきこも かなとおほせは
 うらなひて つきかつらきの いとりやま
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 ヒタカミの 宮に帰れば
 イサナミの 父に詣して 「代嗣子もがな」 と 仰せば
 占ひて “尽き桂来の 霊鳥山”

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  ここは五七調が少々いびつなため言葉の区切りを調整しています

■ヒタカミの宮 (ひたかみのみや)
「ヒタカミの都」 です。この宮の主がトヨケです。 ▶ヒタカミ ▶宮
ケタツボ(方壺) または カタタケミヤ(方丈宮) の名で呼ばれました。

 
申す/設す/詣す (もふす・まふす・もうす・まうす・ます)
3種類あります。
1. 申す : マワス(回す) の変態。 往き来させる。伝える。言う。
2.▽設す : マフス(塗す) の変態。 世にまぶす。設置する。
3.▽詣す・申す : マフツ(詣づ) の変態。 @上がる/上げる。A相手への尊敬 (自分への謙譲)。

 この場合は3-@の意味で、上位者のもとへ 「上がる・詣でる・参ずる」 の意となります。


もがな
モグ+カナ(哉) の短縮ではないかと思います。モグは マグ(覓ぐ・求ぐ) の変態です。
モガナ が略されて  “もが”  や  “がな”  ともなり、
また モグ+カモ が縮まって、“もがも” とも言います。


仰す (おほす)
“言う” の尊敬語です。


■占ふ (うらなふ)
ウラ(心・裏)+ナフ(▽和ふ・綯ふ) で、「本質を見る」 という原義です。
ウラは 「奥に潜む所/もの」 をいい、「本質・本源・原理」などを意味します。

 万象の本源を フトマニ といい、それはすなわち アワの48神 (日本語の48音) です。
 ですからウラナフは、具体的には 「言葉を見る」、あるいは 「語呂を合わす」 ということです。
 またその方法は不明ですが、物事が起こる方位を知ることができるといいます。


■尽き桂来の (つきかつらきの)
ツキ(尽き) は 「行き着くさま・至り・極み・究極」 を意味します。
カツラ(桂・鬘) は カツ(▽上つ・勝つ)+ラ(場所を表す) で、「上・高み・頭」 を意味し、
カシラ(頭) の変態です。ゆえに ツキカツラ は 「上位の極み・至上・究極のヘッド」 などの
意となり、これは アメミヲヤ を指します。キ(来) は クル(来る) の名詞形です。
よって 「究極のヘッドが来た〇〇・アメミヲヤが来た○○」 という意味になります。


■霊鳥山・斎鳥山 (いとりやま)
「神聖な鳥が現れる山」 という意です。この話は16アヤを待たねばなりませんが、
この山は現在 鳥海山 と呼ばれ、イトリ(霊鳥・斎鳥) は 後には 鳳凰 と呼ばれます。

 なぜ 高御座(たかみくら)神輿(みこし) の上に
 鳳凰が乗っているか知ってますか? ぜひ知ってください! ▶画像1 ▶画像2

 

【概意】
ヒタカミの宮に帰れば、
イサナミが父に詣でて 「代嗣子ほしいな」 と仰せば、
トヨケは占って “尽き桂来の霊鳥山”。



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 よつきやしろの いろしては あめのみをやに いのらんと
 とよけみつから みそきして やちくらちきり
 ぬきんつる いつちかみのり とほりてそ

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 代嗣社の 色垂は アメノミヲヤに 祈らんと
 トヨケ自ら 禊して 八千回契り
 抜きんつる厳霊 神祈り通りてぞ

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  ここは五七調が少々いびつなため言葉の区切りを調整しています

■代嗣社 (よつぎやしろ)
代嗣子を得るため、トヨケが “尽き桂来の霊鳥山” に建てた社です。

記事が少なくて不詳なのですが、代嗣子が生れないのは、邪霊の障りが
原因と考えられていました。そこで、代嗣として生れてくる予定の神霊を
代嗣社に収容保護した上で、代嗣文(よつぎふみ) と呼ばれる文の言霊で、
邪霊の障りを祓います。これもトヨケの考案で この時が最初の試みだったようです。

 妬み煩ふ 胸の火が 折霊と生りて 子種噛む 障り除かん 代嗣文 〈ホ16-6〉


■色垂 (いろしで)
八響旗(やとよはた)、八元旗(やもとはた)、八色旗(やいろはた) などとも呼ばれます。 ▶画像
これは中心の アメミヲヤ(=アウワの神) を守る 八元神(ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ)
表すものと考えられます。 ▶フトマニ図
ということは、トヨケは アメノミヲヤの神霊 を代嗣社に招き入れようとしていることが窺えます。

 ★色 (いろ)
 ヨル(揺る) の変態 “イル” の名詞形で、「揺れ動くさま」 を原義とし、
 「多種多様・いろいろあるさま・たくさんあるさま」 を意味します。ヨロ(万) の変態です。

 ★垂 (しで)
 シヅ(垂づ) の名詞形で、「垂れ下がるもの」 が原義です。 ▶画像


■祈る (いのる・ゐのる)
イヌ(▽結ぬ)+ノル(▽和る・乗る) の同義語短縮で、
「(思いを) 結び付ける・フォーカスする・交える・通じさせる」 などが原義です。

 
禊 (みそぎ) ■モノ忌み (ものいみ・物忌)
ミソギは 「曲りを直して調和すること・汚穢を祓うこと」 が原義ですが、 ▶汚穢 ▶祓ふ
この場合は 「障る邪霊を祓うこと」 を意味します。
邪霊の祓いは 物忌(ものいみ) とも呼ばれます。(今は意味が変わってます)

 大物忌神社 (おおものいみじんじゃ)
 出羽国飽海郡。山形県飽海郡遊佐町。  
 現在の祭神:大物忌大神
 <筆者注> 大物忌大神は8千回の禊(=物忌)を行ったトヨケを指します。

 ★モノ (物)
 物の怪 の “物” で、「見えないけれど存在する何か」 をいう代名詞です。
 「霊」 を意味しますが、モノは、神(かみ)・霊(たま)・神霊(みたま) に比して、
 「低レベルな霊・下級霊・邪霊」 などに対して用います。
 本講座では 「霊」 を意味する “もの” については、通常カタカナで表記しています。
 
 ★斎む (いむ・ゐむ)・忌む (いむ・ゐむ) ★斎・忌 (いみ・ゐみ・いん・ゐん)
 「合わす・直す・調える」 などを原義とし、第一義的には
 「心を添える・大切にする・尊ぶ・曲りを直す・清める」 などの意〈斎む〉を表します。
 またそのために 「(曲り・不浄の原因を) 離す・避ける・除く」 の意〈忌む〉が派生します。


■回・転 (くら)
「度数・回数」 を表す単位です。

 クラ は “くるくる回る” の クル(▽転る) の名詞形で、コロ(転) の変態です。
 「回転・くりかえし」 を原義とし、カイ(回)・タビ(度) と同義です。
 “回・転” は筆者の当て字です。

 
■契る (ちぎる) ■契り (ちぎり)
「交差する/させる・たがいちがいに交わす」 などが原義で、
「約束する・契約する」 の意を表し、チカフ(誓ふ) の変態です。

 チグ+キル(切る) の短縮で、チグは “ちぐはぐ” のチグ、
 キルは “横切る” のキルで、「それる/そらす」 の意です。


■抜きんつる (ぬきんつる)
抜き出づる” の音便変化で、「あらわれ出る・出現する」 という意です。


■厳霊 (いつち)
イツ(厳・稜威)チ(霊) で、「おごそかなる神霊(みたま)」 の意です。
これは 「アメミヲヤの神霊」 をいいます。 ▶アメミヲヤ

 

【概意】
アメノミヲヤに思いを通じさせんと、代嗣社に八色の旗を立て、
トヨケ自ら障る邪霊を祓い、8千回契れば、
ついに現れ出る厳霊。神への祈りが通ってぞ。



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 あめのみをやの まなこより もるるひつきと
 あもとかみ みそふのかみの まもるゆえ
 こたねなること おほゑます
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 アメノミヲヤの 眼より 漏るる日月と
 天元神 三十二の神の 守るゆえ
 子種生ること 覚えます
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■漏るる日月 (もるるひつき)
アメノミヲヤ (=アウワ) の、ア(陽・日)ワ(陰・月) が漏れ出ることをいいます。


■天元神 (あもとかみ)
「天の元座の神」 という意味で、フトマニ図の、中心宮アウワの
すぐ外側の輪に座す 「ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ の8神」 の総称です。
八元神(やもとかみ)、元元(もともと) とも呼ばれます。


三十二の神 (みそふのかみ)

 

【概意】
トヨケはアメノミヲヤの両眼より日と月が漏れ出ることを、
また天元神と三十二の神の守りにより、子種が生ることを心に覚えます。



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 このころきみは はらみやま のほりていわく
 もろともに くにくにめくり たみおたし
 ひめみこうめと つきこなく たのしなきとて いけみつに
 たのめおあらひ ひるにのり かのめおあらひ つきにのり
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 この頃キミは ハラミ山 登りて曰く
 「諸共に 国々恵り 民を治し
 姫御子生めど 嗣子なく 楽しなき」 とて 池水に
 左の目を洗ひ 日に祈り 右の目を洗ひ 月に祈り
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キミ (木実)

ハラミ山 (はらみやま:孕み山)

恵る (めぐる)

■池水 (いけみづ)
この池は、ハラミ山頂の コノシロ池 をいうものと思います。

 
■左 (た) ■右 (か)
タ(左) は 「日が ツ(立つ) 方向」 で 「東」 と同義です。
また 「朝・明」 を表し、太陽に対応します。
カ(右) は 「日が ル(枯る) 方向」 で 「西」 と同義です。
また 「暮・暗」 を表し、月に対応します。


■洗ふ (あらふ)
なぜ目を洗うかというと、日月の霊は目から入ってくるからです。
このことは14アヤで説明されます。


■日・昼 (ひる)
ヒル(▽秀る) の名詞形で、「上るさま」 が原義です。天地創造 の際に上に昇った 「陽」、
また陽の極みである 「日・太陽」 を表します。ヒルの略形が ヒ(陽/日) です。


■祈る (のる)
イノル の母動詞であるため “祈る” と当て字しています。

 

【概意】
その頃イサナキとイサナミの木実は、ハラミ山に登って曰く、
「夫婦もろとも国々を巡って恵み、民を足らし助けて、
姫御子は生んだものの、嗣子がなくては楽しみがない」 と、
池水に左目を洗って日に祈り、右目を洗って月に祈る。



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 いしこりとめか ますかかみ いつくりすすむ
 いさなきは あめおしらする うつのこお うまんおもひの
 ますかかみ まてにひるつき なつらえて
 かみなりいてん ことおこひ くひめくるまに あくりこふ
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 イシコリトメが マス鏡 鋳造り進む
 イサナキは 陽陰を領らする 現の子を 生まん思ひの
 マス鏡 両手に日・月 なづらえて
 神生り出でん 事を乞ひ 首回る間に あくり乞ふ
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■イシコリトメ
イシコリ は イ(‘鋳る’の連用形)+シコル(痼る・凝る) の名詞形で、
「溶かして固めること・鋳造」 を意味します。
トメ は 「留」 で、「まとめる者・束ねる者・司」 をいいます。
ですから イシコリトメ は「鋳造の司」という意です。鏡造(かがみつこ) とも呼ばれます。
日本書紀には 石凝姥命 と記されます。

 しこる【痼る・凝る】〈広辞苑〉
 ・固まる。一団となる。
 ・筋肉などがこってかたくなる。

 
 ★トベ・トメ (戸畔・留)
 トメ(留)・トモ(伴・供)・トミ(臣)・ツマ(妻・夫) などの変態で、
 「まとう者・まとめる者・束ねる者」 をいい、「妻・后」 や 「臣・守・司」 の換言です。


■マス鏡 (ますかがみ:増鏡)
合せ鏡」 のことで、ここではそれに使う 「2枚1組の鏡」 をいいます。
この2枚の円鏡を 日と月 になぞらえます。

 マス は マス(増す) の名詞形で、「合わせ・足すこと・プラス」 が原義です。
 他文献では マスカガミ(真澄鏡・十寸鏡)、マソカガミ(真澄鏡・真十鏡)
 などと記されます。


■進む (すすむ)
ここでは 「進上する・献上する」 の意です。


■陽陰を領らす (あめおしらす)
「陽陰を我が物とする」 の意で、“陽陰の道得る” の換言です。 ▶アメ ▶領らす ▶陽陰の道

 陽陰の道 得て 人草の 嘆きを和す 尊あらず あらねば道も 尽きんかと 〈ホ4-1〉


■現の子 (うつのこ)
「現世の子・地に生きる子・肉体を持つ子」 の意です。

 ★現 (うつ)
 ウツ という動詞がそのまま名詞になったもので、このウツは オツ(落つ) の変態です。
 天地創造の過程における 陰の動き (重くて下って凝り固まる) を表し、
 「下・地・凝固・この世」 などを意味します。ウツムク(俯く) の ウツ です。


左右・両手 (まて)
 
なづらふ・なぞらふ (準ふ・准ふ・擬ふ)
ナヅル/ナゾル+アフ(合ふ) の短縮で、「なぞって合わす・ぴったり合わす」 の意。
ナヅル は ナヅ(撫づ) の連体形、ナゾルナスル(擦る) の変態で、
どちらも 「合わす・付ける・じかに付ける・ぴたっと/ぺたっと合わす」 などが原義。


■首・頭 (くび・こふ・こう・かふ)
このクビは カブ(頭)カホ(顔)クブ(頭)コウベ(首・頭) の コウ などの変態で、
「上部・高部・頭部・頂部」 を意味します。
この場合は 「ハラミ山頂」 をいいます。


■あくり (明くり)
アクル(明くる) の名詞形です。これは オクリ(送り) や メクリ(巡り・捲り) の変態で、
「回転」 を原義とし、「物事の回転・事態の改善/進展・停滞の打開」 などの意を表します。
けっこう現代語に翻訳しにくい言葉ですが、“テコ入れ” と訳そうと思います。

 

【概意】
イシコリトメがマス鏡を鋳造して進めれば、
イサナキは 陽陰(和)を我が物とする現世の子を生まん思いで、
マス鏡を両手に持ち、日月になづらえて、神の生れ出ることを乞い、
山頂をめぐる間にテコ入れを願う。



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 かくひおつみて みたまいる かとはちりけの あやところ
 おこなひちかに なるころは しらはきそみて さくらいろ
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 かく日を積みて 神霊入る 門は身柱の あや所
 行ひ千日に なる頃は 白脛染みて 桜色

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■身柱 (ちりけ)
背骨・脊柱」 をいいます。


■あや所 (あやどころ)
「交わる所・合せ目・連結部」 の意で、この場合は 「背骨の関節」 をいいます。 ▶あや

 

【概意】
このように日を積みて神霊が入る。その入口は背首の骨の関節。
行いが千日になる頃には、白脛が桜色に染まる。



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 あるひをかみか をゑとえは ひめのこたえは
 つきのをえ なかれととまり
 みかののち みのきよけれは ひまちすと

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 ある日男尊が 汚穢問えば 姫の答えは
 「月の汚穢 流れ止まり
 三日の後 身の清ければ 日待す」 と

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■月の汚穢 (つきのをえ)
「月ごとにやってくる女性の不調/異常」 をいいます。 ▶汚穢
女 と 陰 は 共に “め” と呼ばれ、基本的に両者に区別はありません。
そして 月(太陰) は 陰の本源ですから、30日周期で満ち欠けする月が、
女性の生理を支配していると考えられたようです。


日待 (ひまち)
朝日の潤(あさひのうる) を得ようと、「日の出を待つこと」 をいいます。
「朝日の潤」 とは 朝日が放射するエネルギーをいいます。14アヤで説かれますが、
これを目から取り入れることは、代嗣の男子を得るための あくり です。

・我が上は 日月の潤を 下すゆえ 代嗣生まんと 思ふ時
 目の垢濯ぎ 
朝日祈り 目より月日の 潤を得て 
 とつげば男背の 潤波が 玉島川の 妹が霊と 孕む精髄 
〈ホ14-3〉
・代嗣子を 授くる妹背の 
あくりには 「朝日を受けて 暖まる 時にとつげば
 子を孕み イキス・声・見目 備え生む」 
〈ホ14-6〉

 

【概意】
ある日男尊が汚穢について尋ねると、姫の答えは
「月の出血の流れが止まって三日、身が清いので “日待” する」 と。



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 をかみもゑみて もろともに おかむひのわの とひくたり
 ふたかみのまえ おちととむ おもわすいたく ゆめここち
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 男尊も笑みて 諸共に 拝む日輪の 飛び下り
 二尊の前 落ち留む 思わず抱く 夢心地
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■拝む (おがむ・をがむ)
「上げる・上に置く・尊ぶ・敬う」 などが原義ですが、
その意を表すために 「身を低めて仰ぎ見る」 ことをいいます。


■陽の環・日輪 (ひのわ)
「陽の回帰する所・陽の根源」 などが原義で、「太陽・日」 の別名です。

 ★輪・環・回 (わ)
 ワ は ウア の短縮音です。ウアは ウフ の名詞形で、ウフは ウル(売る) の変態。
 「往き来する/させる・回る/回す・還る/還す」 などが原義です。
 ですから ワ は 「回るさま・円・丸」、また 「回帰する所・根源」 などを意味します。


夢心地 (ゆめごこち)

 

【概意】
男尊も笑みて、諸共に日輪を拝むと、
日輪が飛び下って、二尊の前に落ちて留まるという、
夢のような心地を思わず抱く。


 これはハラミ山の山頂での出来事です。
 これによりイサナミは日月の神霊を孕みます。そのゆえに 「孕み山」 です。
 これは神霊レベルでの “孕み” で、この後 人間レベルの “孕み” があります。



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 さめてうるほひ こころよく みやにかえれは
 やますみか ささみきすすむ
 かれをかみ とこみきしるや
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 覚めて潤ひ 快く 宮に帰れば
 ヤマスミが ささ酒進む
 故 男尊 「床酒知るや」
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■宮 (みや)
ハラミの宮 と呼ばれる ホツマ国 の都です。ハラミ山の麓にあります。
この時期の二尊は ここで国家の政を執っていました。
ここで人間レベルの “孕み” が発生したため、“孕みの宮” と呼ばれます。


■ヤマズミ
オオヤマズミ の略です。
このヤマズミは サクラウチ という名の、初代のオオヤマズミです。

  サクラウチ─┬─カグツミ─┬カグヤマ──カゴヤマ
 [初代ヤマズミ]│  [2代]   ├カンタマ
        │      └マウラ [3代]
        ├─ホノコ
        │  ├──オシホミミ┬クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
        │ アマテル     │
        │  │       └ニニキネ(斎名キヨヒト)
        └─ハナコ


■ささ酒 (ささみき)
ササ は サス(差す) の名詞形で、「合わせ・添え・付け」 などの意です。
よって 「男女を合わす酒」 という意で、トコミキ(▽融酒) の換言です。


故 (かれ)
シカレバ(然れば) の略です。シカレバは シク(如く)+アレバ が縮まったものです。

 

【概意】
夢心地から覚めると心身が潤って、快く宮に帰れば、
オオヤマズミがささ酒を進める。
しかれば男尊は 「トコ酒を知るや?」



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 めのこたえ ことさかのをか みちきけは
 とこみきはまつ めかのみて のちをにすすむ
 とこいりの めはことあけす をのよそい めかしりとつく
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 女の答え 「コトサカノヲが 道 聞けば
 トコ酒はまず 女が飲みて 後 男に進む
 床入りの 女は言挙げず 男の装い 女が知りとつぐ」
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コトサカノヲ

床入り (とこいり)
男女が床に入ることをいいますが、これも本来は “融入り” で、
「男女が融けて入り交じること・男女の融合」 という意味と思います。


■言挙ぐ (ことあぐ)
「言葉を発する」 という意味です。声を上げることです。
言立つ(ことたつ) ともいいます。

 
■装い (よそい・よそひ・よそおひ)
ヨソフ(装ふ) の名詞形で、「装備・支度・準備・ふり・外見」 などを意味します。
ここでは 「外見・態度・様子」 などをいいます。

 ★装ふ (よそふ・よそおふ)
 ヨス(寄す)+ソフ(添ふ) の短縮が ヨソフ(装ふ) で、
 ヨス(寄す)+オフ(負ふ・帯ぶ) の連結が ヨソオフ(装ふ) です。
 「身に付ける・支度をする・準備する・ふりをする」 などの意です。


■とつぐ
トツ(閉づ・綴づ)+ツク(付く・接ぐ) の短縮で、「交わる・結ぶ・交合する」
などが原義です。チナム(因む)ともいいます。
辞書では “嫁ぐ” と当てられますが、これだと 女が男の家に入るという
イメージしか湧かないため、ひらがなを使ってます。

 

【概意】
女尊は応えて、「コトサカノヲより聞いた作法では、
トコ酒はまず女が飲み、後に男に進める。
床入りの際は女は言を発せず、男の様子を女が察知して交わる。」



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 したつゆお すえはたかひに うちとけて
 たましまかわの うちみやに やとるこたねの とつきのり
 こおととのふる とこみきは くにうむみちの をしゑそと
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 「垂液を 吸えば互ひに 打ち融けて
 玉島川の 内宮に 宿る子種の とつぎ法
 子を調ふる トコ酒は 国生む道の 教えぞと」
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■垂液 (したつゆ)
シタ(▽垂) は シツ(垂づ) の名詞形で、「垂らすもの」 をいい、つまり 「唾液」 です。

 ★液・汁 (つゆ)
 
ツユ(潰ゆ) の名詞形で、「下るもの・落ちるもの・垂れるもの」 を原義とし、
 シル(汁)、タレ(垂れ) と同義です。


■打ち融く (うちとく)
ウツ(打つ) は 「合う/合わす」 が原義です。
ですから 「合って溶ける・融合/融和する」 という意となります。


■玉島川の内宮 (たましまがわのうちみや)
タマシマ(玉島) は 「こんもり盛り上がった区画」 の意で、「恥丘」 をいいます。
カワ(川) は 「裂け目・割れ目」 が原義です。
ウチミヤ(内宮) は ここでは 「内部にある容器」 の意です。
ですから 「子宮」 をいいます。


■調ふる (ととのふる)
トトノフ(調ふ) の連体形で、今風には “調える” になります。
ここでは 「備える・調達する」 などの意です。


■国生む道 (くにうむみち)
二尊は 天のアワ歌 を歌って国を生みましたが、アワは 「陽陰とその和合」 を意味します。
それゆえ 「男女を融和するトコ酒も国を生む道」 ということです。
融和が国を生むという意味ですから、融は経矛に子を求む と同じことを言ってます。

・二尊の 天のアワ歌に 国を生み 地のアワ歌に 音声和る 〈ミ1-4〉
・和してアワを 胞衣として ヤマト秋津洲 淡路島
 伊予阿波二名 隠岐三子 筑紫 吉備の児 佐渡 大島
 〈ホ3-2〉

 

【概意】
「また垂露を吸えば互いに打ち融けて、
玉島川の内宮に宿る子種のとつぎ法。
子(繁栄)を調える融酒は、国生む道の教えぞ」 と。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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