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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第9回 [2023.7.19]

第二巻 天七代 とこ酒の文 (4)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 あめななよとこみきのあや (その4)
 天七代 とこ酒の文 https://gejirin.com/hotuma02.html
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 あめのかみよの ななよめお つくいとくちは
 とこよかみ きのみひかしに うゑてうむ はこくにのかみ
 ひたかみの たかまにまつる みなかぬし
―――――――――――――――――――――――――――――
 天の尊節の 七代目を 継ぐ糸口は
 トコヨ尊 木の実 東に 植えて生む ハコ国の尊
 ヒタカミの タカマに纏る ミナカヌシ
―――――――――――――――――――――――――――――

■天の尊節 (あめのかみよ) ■七代目 (ななよめ)
“天の尊節” は 「中央政府の君の治め」 という意味です。
“アメ” には非常に多くの意味がありますが、この場合は タカマ の換言で、
「高み・中心・中央政府」 を表します。カミ(尊) は ここでは「君」と同じです。
ヨ(節・代) は「まとめ・治め・まとまり・範囲・区分・時代」 などを意味します。

 ★ (よ)
 ミユ(見ゆ) の名詞形 “ミヨ” の略で、「合わせ・集まり・まとめ」 などを原義とし、
 「まとめ・まとまり・治め・範囲・節・区分」 などを表します。
 辞書は “節・代” を “世” と同源と説いていますが、これは同意できません。
 “世” は 「下・低・地」 が原義で、ヨ(夜) と同源です。


糸口・緒 (いとぐち)

■トコヨ尊 (とこよかみ)
クニトコタチ の別称です。 ▶トコヨ ▶尊(かみ)
この場合は おそらく クニサツチ を指します。


 ミナカヌシ─天の八尊─地の十一尊─クニサツチ─トヨクンヌ┐
 ←……… クニトコタチ  ………→            │
 ←………………  最広義のクニトコタチ …………… ……→│
       ┌―――――――――――――――――――――┘
       │
       └ウビチニ
          ├――――ツノクヰ
         スヒヂ     ├――――オモタル
               イククイ     ├ … (断絶) … イサナキ
                     カシコネ        │
                               イサナミ


■木の実 東に植えて生む (きのみひがしにうゑてうむ)
“東” は この場合 「後にヒタカミの国となる地」 を意味します。
“木の実を植えて生む” とは、文字通りの意味だと思います。
つまり モモヒナキ&モモヒナミ の出生の方法と同じです。

 木の実を以て 生れませば 庭に植えおく 三年後 三月の三日に
 花も実も 百成るゆえに
 “百の木” 二尊の名も “百雛木”  “百雛実” なり 
〈ホ2-2〉


■ハコ国の尊 (はこくにのかみ)
ハコクニは 「分けた国・分国」 の意で、これも ヒタカミ国 を指します。
ですから ハコクニの尊 とは「ヒタカミ国の君」という意です。
日本書紀には 葉木国野尊(はこくにののみこと) と記され、豊斟渟尊の別名とされます。

 ★ハコ (箱・▽吐・▽分・▽別)
 ハク(吐く・捌く・掃く・剥ぐ) の名詞形で、ハクは ワク(分く) の変態です。
 ですから 「分け・分離・派生」 などが原義です。


■ヒタカミ (日高み)
ヒ(日)+タカミ(高み) で、タカミは タカム(高む) の名詞形です。
「日の高まり・日の昇り」 が原義で、日(太陽)が昇る方角である 「東」 を意味します。
ヒタカミの国は おおよそ今の 「青森県を除いた東北地方」 に当たり、塩竈付近を都としました。


■タカマ (高ま・高天)
これも タカム(高む) の名詞形で、「上・高み・中心・中枢」 などが原義です。
ここでは 「都・中央政府」 を表します。


■纏る (まつる)
マトフ(纏う)マトム(纏む)マツム(集む・纏む) などの変態で、
「合わす・とりまとめる・処置する・手当する・ケアする・調える」 などの意を表します。
この場合は、ヒタカミの都に 「神をまとわす・鎮座させる」 という意です。

 マツル(祭る・祀る) や マツラフ(服ふ・順ふ) も 原義はこれで、
 “祭る・祀る” は 「神を世にまとわす」 また 「心を神にまとわす」 の意。
 “服ふ・順ふ” は 「まとい付く・懐く」 ことをいいます。

 マツルは 後世大きく意味が変わった言葉の一つです。早くも神武天皇の頃から
 「上げる・敬う・まつり上げる・あがめる・崇拝する」 という意味合いが強くなっています。


■ミナカヌシ (真中主・御中主)
地球に現れた最初の人間の名で、クニトコタチ の元祖です。
記紀では 天御中主(あめのみなかぬし) と記されます。ミナカ は マナカ(真中) の変態です。
“アウワ 現るミナカヌシ” とありますから、ミナカヌシは 創造神 アメミヲヤ の直接の顕現と
考えられていたようです。

 空 動きて 風となる 風 火となれば 地もまた 水 埴となる
 この五つ 交わり生れる 神人は 
アウワ 現る ミナカヌシ
 〈ミ6-3〉
 
 ★アメミヲヤ・アメノミヲヤ (▽陽陰の上祖) ★アウワ (▽陽結陰・▽陽融陰)
 大宇宙 (霊界を含む) の創造神で、フトマニ図 の真中に坐す “アウワ” の神 です。
 ア は 「陽」、ワ は 「陰」 を、ウ は 「結・融」 を表します。
 アウワ(陽結陰) は 「陽と陰の融合する状態・陽陰の区別がない混沌状態」 を表すものです。
 その神霊が 陽と陰に分離することで大宇宙は開闢しました。ゆえに “陽陰の上祖” です。

クニトコタチの元祖であるミナカヌシを ヒタカミの都に纏るということは、ヒタカミの地も、
かつてクニトコタチが建てた国々(=トコヨ国) に仲間入りすることを意味するようです。

 

【概意】
<二尊が> 中央政府の君の治めの7代目を継ぐ端緒は、
トコヨ尊が木の実をヒタカミに植えて生むハコ国の尊。
この尊はヒタカミの都にミナカヌシを纏る。



―――――――――――――――――――――――――――――
 たちはなうゑて うむみこの
 たかみむすひお もろたたゆ きのとこたちや
―――――――――――――――――――――――――――――
 タチバナ植えて 生む御子の
 タカミムスビを 諸 称ゆ 「東のトコタチや」
―――――――――――――――――――――――――――――

■タチバナ (▽立木・橘)
「香り立つ木」 の意で、柑橘類の総称です。香(かぐ) とも呼ばれます。
太古、クニトコタチ が “国を立つ” のモノザネとして植えた木です。 ▶モノザネ
そのため “トコヨの木” (とこよのはな) とも呼ばれます。 ▶トコヨ ▶木(はな)


タカミムスビ (高み結び)

■東のトコタチ (きのとこたち)
ハコ国の尊 の子で、初代のタカミムスビです。
キ(東)ヒタカミ(日高み) の換言、トコタチ(▽疾立ち) は 「先発者・先達」 の意です。


 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)   
 │          │           
 │          └アメヨロツ┬アワナキ──イサナキ
 │          (養子)↑  └サクナキ    │
 │             └─────┐     │
 ├ハコクニ東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ  │
 │      (初代)  │             │
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ─イサナミ
               (2〜4代)   (5代)

 

【概意】
 橘を植えて生んだ御子は、タカミムスビとなり、
 諸が 「東のトコタチや」 と称える。



―――――――――――――――――――――――――――――
 そのみこは あめかかみかみ つくしたす
 うひちにもうく このみこは あめよろつかみ
 そあさたし あわさくうめは
―――――――――――――――――――――――――――――
 その御子は アメカガミ尊 ツクシ治す
 ウビチニ儲く この御子は アメヨロツ尊
 ソアサ治し アワ・サク生めば
―――――――――――――――――――――――――――――

■アメカガミ尊 (あめかがみかみ)
東のトコタチの御子で、筑紫を治めたという記述しかありません。
日本書紀には 天鏡尊(あまのかがみのみこと) と記されます。

 アメ(陽陰)+カガミ(屈み) で、「日月が屈む所=ツクシ」 と考えます。


■ツクシ (▽尽州・▽究州・筑紫)
「九州」 の古名で、ツキスミ(▽尽州) とも呼ばれます。
「(日月が) 尽きる地方」 つまり 「西の州」 という意です。

 ツク は ツク(尽く・着く) の名詞形で、「行き着いて果てるさま・終着・ゴール」 などの意。
 シ は シイ/シヰ(州) の短縮で、「締め・区切り・区分・区画」 を意味します。


儲く (もうく・もふく)
「まわってくる・めぐってくる」 が原義で、
「恵まれる・もらう・おこぼれにあずかる」 などの意になります。

 モフ+ウク の短縮で、モフ は マフ(舞ふ) の変態、ウク は ウゴク(動く) の母動詞。
 両語とも 「回る・めぐる・往き来する」 などが原義です。


■アメヨロツ尊 (あめよろつかみ)
アメカカミ尊 の子ですが、ウビチニの養子となって ソアサ(四国) を治め、
アワナギ と サクナギ を生みます。
日本書紀には 天萬尊(あまよろずのみこと) と記されます。

 アメ(陽陰・和)+ヨロツ で、アメ は アワ(陽陰・和・阿波) の換言。 ▶阿波
 ヨロツ は ヨロス(▽寄ろす) の名詞形で、「寄せる・まとめる・治める」 の意と考えます。


■ソアサ
語義は不明ですが、これも 四国(しこく) の古名の1つです。
四国も別名の多い所で、ソアサ・イヨ・アワ とすでに3つ出てきました。
まだ他にもあります。

 
■アワ・サク
“アワナキ” と “サクナキ” の略です。アワナキ については次段で説明されますので、
他文献には登場しない サクナキ について少し書きます。

サクナキはアメヨロツ尊の子で、父の後を継いで四国を治めたようです。
そしてイヨツヒコを生み、イヨツヒコも父を継いで四国を治め、イヨツ姫を生みます。
後にこの姫を、アマテルの弟のツキヨミが娶って四国を治めます。


 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)   
 │          │           
 │          └アメヨロツ┬アワナキ──イサナキ
 │          (養子)↑  └サクナキ    │
 │             └─────┐     │
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミアメヨロツ  │
 │      (初代)  │             │
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ─イサナミ
               (2〜4代)   (5代)



―――――――――――――――――――――――――――――
 あわなきは ねのしらやまと ちたるまて のりもとほれは
 うむみこの いみなたかひと かみろきや
―――――――――――――――――――――――――――――
 アワナキは 北の白山麓 チタルまで 法も通れば
 生む御子の 斎名タカヒト カミロキや
―――――――――――――――――――――――――――――

■アワナキ
アメヨロツ尊の子です。記紀では 沫那芸神/沫蕩尊 と記されます。


■北・寝・根 (ね)
“北” は 太陽の巡回の 「根」、つまり 「根源・始発/終着点・寝静まる方向」 が原義です。
▶キ・ツ・サ・ネ

・夜は寝るゆえ 北は ” ぞ 〈ホ1-3〉
・会わねば北よ 会ふば日手 帰る北 
北/寝より来たりて 北/寝に返る 〈ホ1-3〉
・木は春 若葉 夏 青葉 秋 煮え紅葉 冬 落葉 ・・・ 
根は北に 萌す東や 〈ホ1-3〉


■白山麓 (しらやまと)
シラヤマ(白山)+ト(下・麓・本・元) で、“シラヤマ” は 現在の 白山(はくさん)
“ト” は モト(下/本・元) の略です。これは 「根の国」 を換言したものです。 ▶根の国


■チタル
ホソホコチタル の略です。


■法も通る (のりもとほる)
「法が通って治まる」 という意です。

 ★法・則・典・範 (のり)
 ノル(乗る) の名詞形で、「乗るもの・則る(のっとる)もの」 が原義です。
 法・則・典・範・矩 みな同じで、「道・システム・制」 などを意味します。


斎名 (いみな)

 
■タカヒト ■カミロキ
タカヒト は イサナキ の斎名です。
カミロキ は イサナキを指す別名であるのは確かですが、
どういう名なのか、またどういう意味なのかは不明です。
大祓詞に 神漏岐 と記されます。

 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)   
 │          │           
 │          └アメヨロツ┬アワナキ──イサナキ
 │          (養子)↑  └サクナキ    │
 │             └─────┐     │
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ  │
 │      (初代)  │             │
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ─イサナミ
               (2〜4代)   (5代)

 

【概意】
アワナキは 北の白山麓からホソホコチタル国まで、法を通して平定する。
生む御子の斎名はタカヒト、カミロキや。



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 たかみむすひの ゐつよかみ
 いみなたまきね とようけの ひめのいさこと
 うきはしお はやたまのをか わたしても とけぬおもむき
 ときむすふ ことさかのをそ
―――――――――――――――――――――――――――――
 タカミムスビの 五代尊
 斎名タマキネ トヨウケの 姫のイサコと
 うきはしを ハヤタマノヲが 渡しても 融けぬ趣き
 融き結ぶ コトサカノヲぞ
―――――――――――――――――――――――――――――

■タマキネ ■トヨウケ・トヨケ・トユケ
タマキネ は 5代タカミムスビの斎名です。 ▶タカミムスビ
トヨウケ は トヨ(響)+ウケ(受け)で、「中央政府を受け継いだこと」 を表す称え名です。
トヨケ または トユケ と略されます。現在は 豊受大神 として知られ、
アマテル神と同様に女神と信じられていますが、男性です。


 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)   
 │          │           
 │          └アメヨロツ┬アワナキ──イサナキ
 │          (養子)↑  └サクナキ    │
 │             └─────┐     │
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ  │
 │      (初代)  │             │
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケイサナミ
               (2〜4代)   (5代)

 
 真名井神社 (まないじんじゃ)

 丹後国与謝郡。京都府宮津市江尻、籠神社奥宮。
 現在の祭神:豊受大神

 豊受大神宮 (とようけだいじんぐう)
 伊勢国度会郡。三重県伊勢市豊川町279番地。
 現在の祭神:豊受大御神


■イサコ
トヨウケの娘 イサナミ の斎名です。 ▶斎名


■うきはし
ウク(受く・請く)+ハス(▽合す・▽和す) の名詞形で、
ウケアイ(請合い)
ウケイ(誓ひ) と同義です。「約束・契約・協力」 を意味し、
この場合は 「タカヒトとイサコの 男女の結び/契り」 をいいます。


■ハヤタマノヲ
タカヒトとイサコの最初の結び役となりますが、失敗します。
イサナミと一緒に祀られることが多く、日本書紀には 速玉男命 と記されます。
名の意味は 「早すぎたタマノヲ (霊の結:陽陰の結び)」 と考えています。

 ★タマノヲ (▽霊の結・霊の緒)
 「タマ(魂)とシヰ(魄) の結合」 を タマノヲ(▽霊の結・霊の緒) といいますが、
 魂は陽霊、魄は陰霊であるため、「陽陰の結び・男女の結び」の意に解せます。


■主向き・趣 (おもむき)
オモ(主)+ムキ(向き) で、「主に向く方・主なる方向性」 を原義とし、
「主旨・表向き・ようす」 などの意を表します。
オモ(主) を 人の本質/主体=心 とすれば、
「心の向き・心が向かうさま・おもしろみ・趣」 の意になります。


■融き結ぶ (ときむすぶ)
「融かして一つに結ぶ・融和させる」 という意味です。


■コトサカノヲ
タカヒトとイサコの結びに成功した人物です。
やはりイサナミと一緒に祀られることが多く、日本書紀には 泉津事解之男 と記されます。
コト(事)+サカ(咲・栄) の ヲ(▽結・緒) で、「事を咲かせた結び役」 の意と考えています。

 

【概意】
タカミムスビの5代尊、斎名タマキネ、トヨウケの 姫イサコとの契りを、
ハヤタマノヲが仲介しても融和しないようす。融き結ぶ コトサカノヲ ぞ。



―――――――――――――――――――――――――――――
 けたつほの つさのつくはの いさみやに
 うなつきあみて いさなきと いさなみとなる
―――――――――――――――――――――――――――――
 ケタツボの 西南のツクバの イサ宮に
 頷き編みて イサナキと イサナミとなる
―――――――――――――――――――――――――――――

■ケタツボ (方壺)
ヒタカミ国の中枢都市・ヒタカミの都(みやこ) の名です。
今の 塩釜市付近 と思われ、イサナミは 父のトヨケと共に ここに住んでいたはずです。
ケタ(方) カタ(方・片) の変態で、「地方の都市・片田舎の都」 を意味します。 ▶ツボ(壺)

 志波彦神社 (しわひこじんじゃ)・鹽竈神社(しおがまじんじゃ)
 陸奥国宮城郡。宮城県塩竈市森山1番1号。
 現在の祭神:志波彦神社 志波彦大神
       鹽竈神社  塩土老翁神、武甕槌神、経津主神
 ・志波彦神社は式内名神大社、鹽竈神社は陸奥国一宮。

 
■ツクバのイサ宮 (つくばのいさみや)
「ツクバ山麓の結びの宮」 の意で、タカヒトとイサコが結ばれた宮をいいます。

 28アヤには 「イサ川端なる宮」 と記されています。現在、筑波山の麓を桜川が
 流れていますが、桜川は古くは 筑波川、伊佐々川(いさざがわ) と呼ばれました。 ▶桜川
 伊佐々川(いさざがわ) は “イサ川” が変化したものと考えられます。

 ★イサ (▽結)
 イサは イス(▽結す) という動詞の名詞形です。イスは ユスフ(結ふ)
 母動詞 “ユス” の変態で、「合わす・寄す・結ぶ・つなぐ」 などが原義です。
 したがって イサ は “イセ・イサワ” の換言です。


■頷き編む (うなづきあむ)
“頷く” は ここでは 「合う/合わす」 の表示で、“編む” は 「交わる」 と同じです。
ですから 「合い交わる・交じり合う・とつぐ・交合する」 という意です。 ▶とつぐ
つまり タカヒトとイサコ が交合して、一つに融合することをいいます。

 非常に難解なので追々説明しますが、“頷き編む” には奥なる意味があり、
 “編む” は 「陽の能動性」 を、“頷く” は 「陰の受動性」 を表します。
 これは 「陽の働きかけを和(やわ)すように陰が対応する」 ことを意味し、
 “合ふ失す” “編むと和し”  “付離(つくば)” など、多くの換言があります。

 基つ音の アムとヤワシの 付離根を 結びまします アメミヲヤ
 いま二尊も なぞらえて “
付離の神” と 称え給ひき 
ミ10-2


■イサナキ ■イサナミ
タカヒトイサコ は、とつぎの後は イサナキ / イサナミ と名のります。
イサ は 「結」 の意、ナ は 「の」 と同じ、キ は 「木」、ミ は 「実」 です。
イサ(▽結) は この場合、「一つに結んだ男女・融合一体化した夫婦」を意味します。
ですから イサナキ は 「夫婦の男」、イサナミ は 「夫婦の女」 という意です。

 

【概意】
方壺の西南にある筑波山麓のイサ宮にて、
タカヒトとイサコは うなずき編みて、イサナキとイサナミとなる。



―――――――――――――――――――――――――――――
 ふたかみの ましわるときに とこみきや
 とこはとほこに こおもとむ
―――――――――――――――――――――――――――――
 二尊の 交わる時に 融酒や
 融は経矛に 子を求む
―――――――――――――――――――――――――――――
 
融酒 (とこみき)

■融は経矛に子を求む (とこはとほこにこおもとむ)
「融和は法と戒めを得て繁栄を招く」というような意です。

 トコ(融) は 「融和」、トホコ(経矛) は 「法と戒め」 を表します。
 コ(子) は 「繁栄・繁茂」 を意味します。
 モトム(求む) は この場合は マトム(纏む)マトフ(纏ふ) の変態で、
 「合わす・寄す・呼ぶ・招く」 などの意です。

 

【概意】
二尊が交わる時に融酒や。
融和は法と戒めを得て繁栄を招く。



―――――――――――――――――――――――――――――
 ささけはとこよ ゐのくちの すくなみかみの たけかふに
 すすめかもみお いるおみて みきつくりそめ すすめけり
―――――――――――――――――――――――――――――
 ササケはトコヨ 井の口の スクナミ守の 竹株に
 雀が籾を 入るを見て 酒造り初め 進めけり
―――――――――――――――――――――――――――――

■ササケ (篠笥/捧げ)
サケ(酒)・ミキ(酒) の別名です。
この名の由来についてはすぐ後に説明されますが、ササケ(篠笥) と ササゲ(捧げ) の意味を持ち、
さらに ササゲ(捧げ) は 「上げ・高め・熟成・醸成」 の意と、「進上・献上」 の意が重なります。


■トコヨ (▽疾代)
トコ(▽疾)+ヨ(代) で、トコ は トク(疾く) の名詞形。
「早き時代・先行する時代・古き時代・いにしえ」 などが原義ですが、
「クニトコタチの時代」 を特に  “トコヨ” と呼びます。 ▶クニトコタチ

 クニトコタチの時代とは まだ男女に性別が分れていない時代であり、
 それはつまり ウビチニ&スヒヂ が生れる前の時代をいいます。

  
■井の口 (ゐのくち)
ヰ(井)は イケ(埋け・池) の略で、イケは イク(埋く) の名詞形です。
「溜め・埋め」 を原義とし、「水たまり・池・海」 などをいいます。
この場合 ヰ(井) は 琵琶湖を指し、琵琶湖に注ぎこむ川の河口付近が “井の口” です。

 さらに具体的には、近江八幡市 の 沙沙貴神社付近 と考えられます。
 近くにある 繖山 (きぬがさやま) は 猪口山 (いのくちやま) とも呼ばれ、
 またこの一帯は 篠笥庄 (ささけのしょう) と呼ばれていました。


■スクナミ守 (すくなみかみ)
「志賀の国を治める守・近江国を知行する司」 の意です。 ▶守
記紀には 少名御神/少御神(すくなみかみ) と記され、スクナヒコナ と混同されています。

 ★スクナミ (▽直な廻・少名御・少御・周玖那彌)
 スク(直)+ナ(=の)+ミ(回・廻) で、スク/スグ(直) は  シキ/ジキ(直) の変態、
 ミ(回・廻)
は 「めぐり・周辺」 の意です。これは シキシマ(直州・敷島) の換言で、
 この場合は シガ(志賀) の国を指すものと考えます。つまり ヲウミ(近江) です。


■竹株 (たけかぶ) ■篠笥・笹笥 (ささけ)
タケカブ(竹株) は 換言すれば ササケ です。ササ(笹・篠・小竹)ケ(笥)


■雀 (すずめ) ■進めけり (すすめけり)
が籾を入るを見て 酒造り初め進めけり” と、スズメ(雀) と ススメ(進め・勧め) を
掛けているわけですが、さらに ススム(進む・勧む) は 「進上する・献上する」 という意で、
ササグ(捧ぐ) の換言です。

 つまりササケは、「ササケ(篠笥) で ササゲて(醸して) ササゲた(献上した) 物」
 という、3重の意味を持つわけです。

 ★けり
 シク+アリ(如くあり) → シカリ(然り) → ケリ と変化したもので、
 「しかり・そうである・相違ない」 など、断定・確認の意を添えます。
 ケリ はまた “キ” にも転じます。

 

【概意】
ササケはトコヨに、井の口を治めるスクナミ守が、
スズメが籾を竹株(=ささけ)に入れるのを見て、初めて酒を醸して、ささげたのである。



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 ももひなきより ささなみと なおたまふより なもささけ
 そのかみいまに ささけやま
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 百雛木より ササナミと 名を賜ふより 名もササケ
 その神 今に ササケ山
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百雛木 (ももひなき)

■ササナミ
ササ(▽捧)+ナ(=の)+ミ(回・廻) で、「中心部・中央部」 を意味し、スクナミ の換言です。
これに ササ(酒)+ナミ(▽和み・▽綯み)で、「酒を造る者・醸造者」 の意をかけます。
なお 琵琶湖南西岸の地は、ササナミ(細波・小波・漣) とも呼ばれてきました。

 ★捧 (ささ) ★酒 (ささ)
 ササグ(捧ぐ) の母動詞 “サス” の名詞形で、「上げ・高み・中心・熟成」 などを意味します。
 この サスは 「傘をさす」 の “さす” と同じです。
 この場合、ササ(▽捧) は 「中心・中央」 を、ササ(酒) は 「醸成したもの」 を意味します。
 
 ★ナミ (▽和み・▽綯み) ★ナム (▽和む・▽綯む・舐む・嘗む)
 このナミは、ナフ(綯ふ)・ヌフ(縫ふ) などの変態 “ナム” の名詞形です。
 「合う/合わす」 が原義で、「付ける・結ぶ・造る・まとめる」 など多様な意を表します。


■ササケ
ササナミは 篠笥(=ささけ) に 醸して(=ささげて) 酒を献上(=ささげ) ました。
このため酒は “ササケ” とも呼ばれるようになります。


■ササケ山 (ささけやま)
ささけ(=篠笥) の山」 また「(酒を)ささげた(醸した)山」という意でしょう。
篠笥庄の沙沙貴神社付近の山で、おそらく 繖山/猪口山 の古名と思います。
この山に スクナミ守=ササナミ の神霊を纏ります。 ▶纏る

 地元には現在も 神乃滴(かみのしずく) という、沙沙貴神社の神饌田で御田植祭・
 抜穂祭を行った酒米で造られた酒があり、沙沙貴神社の御神酒となっているそうです。

 沙沙貴神社 (ささきじんじゃ)
 近江国蒲生郡。滋賀県近江八幡市安土町常楽寺1。
 現在の祭神:少彦名命 (すくなひこな)
 <筆者注> 祭神はもとは少彦名命ではなく、スクナミ守(少名御神)だったように思います。
      スクナヒコナもこの地に関係ありなのですが、それは後の話です。

 

【概意】
百雛木がスクナミ守に “ササナミ” と名を賜ってより、
酒はササケとも呼ばれるようになり、その神霊を今ササケ山に纏る。



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 ここのくみとは やよいみか
 さかつきうめる かみのなも ひなかたけとそ たたゆなりける
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 九の酌み度は 三月三日
 さかつき生める 尊の名も 雛が岳とぞ 称ゆなりける
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■九の酌み度は三月三日 (ここのくみとはやよいみか)
“九の酌み度” とは、いわゆる 「三三九度」 をいいます。 ▶三三九度
これは 百雛木と百雛実 が初めて交わった三月三日に由来します。 ▶やよい

 三月三日 酒 造り初め 奉る 桃下に酌める 酒に月 映り進むる
 女尊まず 飲みて進むる 後 男尊 飲みて交わる “融の酒” 
ホ2-2

 
★度 (と・ど)
 トヒ(訪ひ) の短縮で、トヒは タビ(度・旅) の変態です。
 「回ること・往き来・回転・循環・繰り返し」 などが原義です。


■さかつき (杯・盃)
2つの意味が重なります。
まずは “酒注ぎ” で、「酒を注ぐ器」 です。
また “逆月” で、「器に注いだ酒に映る逆さの月」 をいいます。

 
■尊の名・上の名 (かみのな) ■尊名・上名 (かみな)
「尊名・称え名」 をいいます。 ▶かみ(上・尊)


■雛が岳 (ひながたけ)
越国のヒナルの岳 に付けられた尊名です。“雛” は 百雛木&百雛実 を意味します。

 “ひながたけ” は多くの歌人に詠まれています。

 ・あすの月 雨占わん ひなが岳  〈松尾芭蕉〉
 ・雲はれて 仰ぐも高き 
日永嶽 みどり匂へる 春日影かな 〈松平春嶽〉

 
■称ゆ (たたゆ)
辞書には タタフ(称ふ) で載っていますが、語尾の ‘ふ’ は ‘ゆ’ と互換と考えてください。
つまり ‘ふ’ で終わるすべての動詞は、辞書には無くとも ‘ゆ’ で終わる異形を持ちます。
タタフ/タタユは 「立てて上げる」 が原義で、 タットブ(尊ぶ) の変態です。


■ける〈けり〉
ホツマ・ミカサでは “係結び” は厳密には行われてません。 ▶係結び
ゆえにこれは 係結びによる活用変化というわけではなく、ケリの古形なのかもしれません。
ナリ(断定)+ケリ(確認) は “なりき” と同じです。

 

【概意】
九の酌み度は三月三日に由来する。
三三九度の酒注ぎと逆月を生んだヒナルの岳を、
“雛が岳” の尊名を添えて称えるのであった。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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