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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第9回 [2023.7.19]

第二巻 天七代 とこ酒の文 (4)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 あめななよとこみきのあや (その4)
 天七代 とこ酒の文 https://gejirin.com/hotuma02.html
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―――――――――――――――――――――――――――――
 あめのかみよの ななよめお つくいとくちは
 とこよかみ きのみひかしに うゑてうむ
 はこくにのかみ ひたかみの たかまにまつる みなかぬし
―――――――――――――――――――――――――――――
 天の尊節の 七代目を 継ぐ糸口は
 トコヨ尊 木の実 東に 植えて生む
 ハコ国の尊 ヒタカミの タカマに纏る ミナカヌシ
―――――――――――――――――――――――――――――

■天の尊節 (あめのかみよ) ■七代目 (ななよめ)
“天の尊節” は 「中央政府の君の治め」 という意味です。
“アメ” には非常に多くの意味がありますが、ここでは “タカマ” の換言で、
「高み・中心・中央政府」 を表します。カミ(尊)は ここでは「君」と同じです。
ヨ(節・代)は「まとめ・治め・範囲・区分・時代」 などを意味します。

 ★節・代 (よ)
 ミユ(見ゆ)の名詞形 “ミヨ” の略で、「合わせ・集まり・まとめ」 などを
 原義とし、「まとめ・まとまり・治め・範囲・節・区分」 などを表します。
 辞書は “節” を “世” と同源と説いていますが、これは同意しかねます。
 “世” は 「下・低・地」 が原義で、ヨ(夜) と同源です。


糸口・緒 (いとぐち)


■トコヨ尊 (とこよかみ)
トコヨ(▽疾代)は 「先行する時代・古き時代・いにしえ」 などを意味し、
トコヨ尊は 「クニトコタチ」 の別称です。この場合はおそらく 「クニサツチ」 を指します。

 ミナカヌシ─天の八尊─地の十一尊─クニサツチ─トヨクンヌ┐
 ←……… クニトコタチ  ………→            │
 ←………………  最広義のクニトコタチ …………… ……→│
       ┌―――――――――――――――――――――┘
       │
       └ウビチニ
          ├――――ツノクヰ
         スヒヂ     ├――――オモタル
               イククイ     ├ … (断絶) … イサナキ
                     カシコネ        │
                               イサナミ


■木の実 東に植えて生む (きのみひがしにうゑてうむ)
“東” は この場合 「ヒタカミの国」 を意味します。
“木の実を植えて生む” とは、文字通りの意味だと思います。
つまり モモヒナキ&モモヒナミ の出生の方法と同じです。

 木の実を以て 生れませば 庭に植えおく 三年後 三月の三日に 花も実も
 百成るゆえに 百の木  二尊の名も 百雛木 百雛実なり    〈ホ2-2〉


■ハコ国の尊 (はこくにのかみ)
ハコクニは 「分けた国・分国」 の意で、これもヒタカミ国を指します。
ですからハコクニの尊とは「ヒタカミ国の君」という意です。
日本書紀には 葉木国野尊(はこくにののみこと) と記され、豊斟渟尊の別名とされます。

 ★ハコ (箱・▽吐・▽分・▽別)
 ハク(吐く・捌く・掃く・剥ぐ)の名詞形で、ハクは ワク(分く)の変態です。
 ですから 「分け・分離・派生」 などが原義です。


■ヒタカミ (日高み)
ヒ(日)+タカミ(高み) で、タカミは タカム(高む) の名詞形です。
「日の高まり・日の昇り」 が原義で、日の昇る方角の 「東」 を意味します。
ヒタカミの国は おおよそ今の 「青森県を除いた東北地方」 に当たり、
塩竈付近を都としました。


■タカマ (高ま・高天)
これも タカム(高む) の名詞形で、「高み・頂き・中心」 などが原義です。
ここでは 「都・中央政府」 を表します。


■纏る (まつる)
マトフ(纏う)マトム(纏む)マツム(集む・纏む) などの変態で、
「合わす・まとめる・処置する・手当する・ケアする・調える」 などの意を表します。
この場合は ヒタカミのタカマに 「神をまとわす・鎮座させる」 という意です。

マツル(祭る・祀る) や マツラフ(服ふ・順ふ)も 原義はこれで、
“祭る・祀る” は 「神を世にまとわす」 また 「心を神にまとわす」 の意。
“服ふ・順ふ” は 「まとい付く・懐く」 ことをいいます。

 マツルは 後世大きく意味が変わった言葉の一つです。早くも神武天皇の頃から
 「上げる・敬う・まつり上げる・あがめる・崇拝する」 という意味合いが強くなっています。


■ミナカヌシ (真中主・御中主)
地球に現れた最初の人間で、クニトコタチの元祖です。
記紀では “天御中主” と記されます。ミナカは マナカ(真中)の変態です。
“アウワ現るミナカヌシ” とありますから、ミナカヌシは 創造神アメミヲヤの
直接の顕現と考えられていたようです。

 空 動きて 風となる 風 火となれば 地もまた 水 埴となる
 この五つ 交わり生れる 神人は 
アウワ現る ミナカヌシ 〈ミ6〉
 
 ★アメミヲヤ/アメノミヲヤ (▽陽陰の上祖) ★アウワ (▽陽結陰・▽陽融陰)
 大宇宙 (霊界を含む) の創造神で、フトマニ図の中心に坐す “アウワ” の神 です。
 アは 「陽」、ワは 「陰」 を、ウは 「結・融」 を表します。
 アウワ(陽結陰) は 「陽と陰の融合する状態・陽陰の区別がない混沌状態」 を表すものです。
 その神霊が 陽と陰に分離することで大宇宙は開闢しました。ゆえに “陽陰の上祖” です。

元祖クニトコタチであるミナカヌシをヒタカミの都に纏るということは、ヒタカミの地も、
かつてクニトコタチが建てた国々(トコヨ国)に仲間入りすることを意味するようです。

 

【概意】
<二尊が> 中央政府の君の治めの7代目を継ぐ端緒は、
トコヨ尊が木の実をヒタカミに植えて生むハコクニの尊。
この尊はヒタカミの都にミナカヌシを纏る。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 たちはなうゑて うむみこの
 たかみむすひお もろたたゆ きのとこたちや
―――――――――――――――――――――――――――――
 タチバナ植えて 生む御子の
 タカミムスビを 諸 称ゆ 「東のトコタチや」
―――――――――――――――――――――――――――――

■タチバナ (▽立木・橘)
「香り立つ木」 の意で、柑橘類の総称です。香(かぐ)とも呼ばれます。
太古クニトコタチが “国を立つモノザネとして植えた木です。
そのためタチバナはまた トコヨの木(とこよのはな) とも呼ばれます。 ▶木(はな)


タカミムスビ (高み結び)


■東のトコタチ (きのとこたち)
ハコクニの尊の子で、初代のタカミムスビです。
キ(東)はヒタカミを表します。トコタチ(▽疾立ち)は 「先発者・先達」 の意です。

 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)   
 │          │           
 │          └アメヨロツ┬アワナキ──イサナキ
 │          (養子)↑  └サクナキ    │
 │             └─────┐     │
 ├ハコクニ東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ  │
 │      (初代)  │             │
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ─イサナミ
               (2〜4代)   (5代)

 

【概意】
 橘を植えて生んだ御子は、タカミムスビとなり、
 諸が 「東のトコタチや」 と称える。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 そのみこは あめかかみかみ つくしたす
 うひちにもうく このみこは あめよろつかみ
 そあさたし あわさくうめは
―――――――――――――――――――――――――――――
 その御子は アメカガミ尊 ツクシ治す
 ウビチニ儲く この御子は アメヨロツ尊
 ソアサ治し アワ・サク生めば
―――――――――――――――――――――――――――――

■アメカガミ尊 (あめかがみかみ)
東のトコタチの御子で、筑紫を治めたという記述しかありません。
日本書紀には 天鏡尊(あまのかがみのみこと) と記されます。

 アメ(陽陰)+カガミ(屈み) で、「日月が屈む所=ツクシ」 と考えます。


■ツクシ (▽尽州・▽究州・筑紫)
「九州」 の古名で、ツキスミ(▽尽州)とも呼ばれます。
ツクは “尽く”、シは シイ/シヰ(州)の短縮で、「締め・区分・区画」 を意味します。
ですから 「(日月の)尽きる区画=西の州」 という意です。


■儲く (もうく・もふく)
「めぐってくる」 が原義で、そこから 「恵まれる・もらう・おこぼれにあずかる」
などの意になります。


■アメヨロツ尊 (あめよろつかみ)
アメカカミ尊の御子ですが、ウビチニの養子となってソアサ(四国)を治め、
アワナギとサクナギを生みます。
日本書紀には 天萬尊(あまよろずのみこと) と記されます。

 アメ(陽陰・和)+ヨロツ で、アメは アワ(陽陰・和・阿波)の換言、
 ヨロツは ヨロス(寄ろす)の変態で、「寄せる・まとめる・治める」 の意と考えます。


■ソアサ
語義は未解決ですが、これも “四国” の古名の一つです。
四国も別名の多い所で、ソアサ・イヨ・アワ とすでに3つ出てきました。
まだ他にもあります。


■アワ・サク
これは “アワナギ” と “サクナギ” の略です。アワナギについては
次段で説明されますので、サクナギについて少し書きます。

サクナギは、父アメヨロツ尊を継いで、四国を治めたようです。
そしてイヨツヒコを生み、イヨツヒコも父を継いで四国を治めて、
イヨツ姫を生みます。
後にアマテルの弟のツキヨミが、この姫を娶って四国を治めます。
サクナギは他文献には登場しないようです。

 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)   
 │          │           
 │          └アメヨロツ┬アワナキ──イサナキ
 │          (養子)↑  └サクナキ    │
 │             └─────┐     │
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミアメヨロツ  │
 │      (初代)  │             │
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ─イサナミ
               (2〜4代)   (5代)

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 あわなきは ねのしらやまと ちたるまて のりもとほれは
 うむみこの いみなたかひと かみろきや
―――――――――――――――――――――――――――――
 アワナキは 北の白山麓 チタルまで 法も通れば
 生む御子の 斎名タカヒト カミロキや
―――――――――――――――――――――――――――――

■アワナキ
語義は未解決です。
記紀では 沫那芸神/沫蕩尊 と記されます。


■白山麓 (しらやまと)
シラヤマ(白山)+ト(下・麓・本・元) で、
シラヤマは現在の 「白山」、トは モト(下/本・元)の略です。
“白山麓” は 「根の国」 の換言です。


■チタル
ホソホコチタル の略です。


■法も通る (のりもとほる)
「法が通って治まる」 という意です。

 ★法・則・典・範 (のり)
 ノル(乗る)の名詞形で、「乗るもの・則るもの」 が原義です。
 “法・則・典・範・矩” みな同じで、「道・システム・制」 と同義です。


斎名 (いみな)

 
■タカヒト ■カミロキ
タカヒトはイサナキの斎名です。
カミロキはイサナキを指す別名であるのは確かですが、
どういう名なのか、またどういう意味なのかは不明です。
大祓詞に 「神漏岐」 と記されます。

 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)   
 │          │           
 │          └アメヨロツ┬アワナキ──イサナキ
 │          (養子)↑  └サクナキ    │
 │             └─────┐     │
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ  │
 │      (初代)  │             │
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ─イサナミ
               (2〜4代)   (5代)

 

【概意】
アワナキは 北の白山麓からホソホコチタル国まで、法を通して平定する。
そして生む御子の斎名はタカヒト、カミロキや。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 たかみむすひの ゐつよかみ
 いみなたまきね とようけの ひめのいさこと
 うきはしお はやたまのをか わたしても とけぬおもむき
 ときむすふ ことさかのをそ
―――――――――――――――――――――――――――――
 タカミムスビの 五代尊
 斎名タマキネ トヨウケの 姫のイサコと
 うきはしを ハヤタマノヲが 渡しても 融けぬ趣き
 融き結ぶ コトサカノヲぞ
―――――――――――――――――――――――――――――

■タマキネ ■トヨウケ
タマキネは 5代タカミムスビの斎名です。トヨウケは トヨ(響)+ウケ(受け)で、
「中央政府を受け継いだこと」 を表す称え名です。トヨケまたはトユケと略されます。
現在は “豊受大神” として知られ、アマテル神と同様に女神とされていますが、男性です。

 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)   
 │          │           
 │          └アメヨロツ┬アワナキ──イサナキ
 │          (養子)↑  └サクナキ    │
 │             └─────┐     │
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ  │
 │      (初代)  │             │
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケイサナミ
               (2〜4代)   (5代)

 
 真名井神社 (まないじんじゃ)

 京都府宮津市江尻、籠神社奥宮。
 現在の祭神:豊受大神

 豊受大神宮 (とようけだいじんぐう)
 三重県伊勢市豊川町279番地。
 現在の祭神:豊受大御神


■イサコ
トヨウケの娘イサナミの斎名です。


■うきはし
ウク(受く・請く)+ハス(▽合す・▽和す) の名詞形で、
ウケアイ(請合い)ウケイ(誓約) と同じです。「約束・契約・協力」 を意味し、
この場合は 「タカヒトとイサコの 男女の結び/契り」 をいいます。


■ハヤタマノヲ
タカヒトとイサコの最初の結び役となりますが、失敗します。
イサナミと一緒に祀られることが多く、日本書紀には 速玉男命 と記されます。
名の意味は 「早すぎたタマノヲ (霊の結:陽陰の結び)」 と考えています。

 ★タマノヲ (▽霊の結・霊の緒)
 「タマ(魂)とシヰ(魄)の結合」 を タマノヲ(▽霊の結・霊の緒) といいますが、
 魂は陽霊、魄は陰霊であるため、「陽陰の結び・男女の結び」の意に解せます。


■主向き・趣 (おもむき)
オモ(主)+ムキ(向き) で、「主に向く方・主なる方向性」 を原義とし、
「主旨・表向き・ようす」 などの意を表します。
オモ(主)を 人の本質/主体=心 とすれば、
「心の向き・心が向かうさま・おもしろみ・趣」 の意になります。


■融き結ぶ (ときむすぶ)
「融かして一つに結ぶ・融合させる」 という意味です。


■コトサカノヲ
タカヒトとイサコの結びに成功した人物です。
やはりイサナミと一緒に祀られることが多く、日本書紀には 泉津事解之男 と記されます。
コト(事)+サカ(咲・栄) の ヲ(▽結・緒) で、「事を咲かせた結び役」 の意と考えています。

 

【概意】
タカミムスビの5代目の尊で、斎名はタマキネというトヨウケの
姫イサコとの契りを、ハヤタマノヲが仲介しても融けないようす。
それを融き結ぶコトサカノヲぞ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 けたつほの つさのつくはの いさみやに
 うなつきあみて いさなきと いさなみとなる
―――――――――――――――――――――――――――――
 方壺の 西南の筑波の イサ宮に
 うなずき編みて イサナキと イサナミとなる
―――――――――――――――――――――――――――――

■方壺 (けたつぼ)
「ヒタカミ国の都」 の名で、場所は今の塩釜市付近と考えてます。
イサナミは父のトヨケと共に ここに住んでいたはずです。
方壺の語義は 「地方の都・地方の都市」 で、カタタケミヤ(方丈宮)ともいいます。

 志波彦神社 (しわひこじんじゃ)・鹽竈神社(しおがまじんじゃ)
 宮城県塩竈市森山1番1号。
 現在の祭神:志波彦神社 志波彦大神
       鹽竈神社  塩土老翁神、武甕槌神、経津主神
 ・志波彦神社は式内名神大社、鹽竈神社は陸奥国一宮。

 
■ツクバのイサ宮 (つくばのいさみや)
「イサ川端なる宮」 とも記されています。現在筑波山の麓を桜川が流れていますが、
桜川は古くは 筑波川、伊佐々川(いさざがわ)と呼ばれました。 ▶桜川
たぶんこれがイサ川でしょう。イサ宮は 「結びの宮」 の意と思います。

 ★イサ (▽結)
 イサは イス(▽結す)という動詞の名詞形です。イスは ユスフ(結ふ)
 母動詞 ユスの変態で、「合わす・寄す・結ぶ・つなぐ」 などの意です。
 ゆえにイサは イセ・イサワの同義語です。


■うなずき編む (うなづきあむ)
「受けて交わる」 という意ですが、これは “編むと和し” を表すものと考えます。
これについては非常に長くなるので、ミカサのアワ歌のアヤを読んで下さい。


■イサナキ ■イサナミ
タカヒトとイサコは、とつぎの後は それぞれイサナキ/イサナミと名のります。
イサは 「結」、ナは 「の」 と同じ、キは 「木」、ミは 「実」 です。
ですからイサナキは 「結の男」、イサナミは 「結の女」 という意味です。
「結」 はこの場合、「一つに結んだ男女・融合一体化した夫婦」という意味です。

 

【概意】
方壺の西南にある筑波山麓のイサ宮にて、
タカヒトとイサコはうなずき編みて、イサナキとイサナミとなる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ふたかみの ましわるときに とこみきや
 とこはとほこに こおもとむ
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 二尊の 交わる時に 融酒や
 融は経矛に 子を求む
―――――――――――――――――――――――――――――

■融の酒・融酒 (とこのみき・とこみき)
トコはトク(溶く・融く)の名詞形で、「(女男を) 融和する酒」という意です。
トコサカヅキ(床盃)ともいいますが、奥にある意味はこれです。


■融は経矛に子を求む (とこはとほこにこおもとむ)
トコ(融)は 「融和」、トホコ(経矛)は 「法と戒め」 を表します。
コ(子)はここでは「繁栄・繁茂」を意味します。モトム(求む)は ここでは
マトム(纏む)
マトフ(纏ふ)の変態で、「合わす・寄す・呼ぶ・招く」 などの意です。
ですから「融和は法と戒めを得て繁栄を招く」というような意となります。

 

【概意】
二尊が交わる時に融酒や。
融和は法と戒めを得て繁栄を招く。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ささけはとこよ ゐのくちの すくなみかみの たけかふに
 すすめかもみお いるおみて みきつくりそめ すすめけり
―――――――――――――――――――――――――――――
 ササケはトコヨ 井の口の スクナミ守の 竹株に
 雀が籾を 入るを見て 酒造り初め 進めけり
―――――――――――――――――――――――――――――

■ササケ (篠笥・笹笥/捧げ)
サケ(酒)・ミキ(酒)の別名です。
この名の由来についてはすぐ後に説明されますが、ササケ(篠笥) と ササゲ(捧げ)の意味を持ち、
さらにササゲ(捧げ)は 「上げ・高め・熟成」 の意と、「進上・献上」 の意が重なります。


■トコヨ (▽疾代)
トコヨ(▽疾代)は 「先行する時代・古き時代・いにしえ」 などが
原義ですが、「クニトコタチの時代」 を特にこう呼びます。
クニトコタチの時代とはまだ男女に性別が分れていない時代であり、
それはつまりウビチニ&スヒヂが生れる前の時代です。


■井の口 (ゐのくち)
ヰ(井)は イケ(埋け・池)の略で、「溜め・埋め」 を原義とし、
「水たまり・池・海」 などをいいます。この場合は琵琶湖をいい、
琵琶湖に注ぐ河口付近が “井の口” です。

さらに具体的には沙沙貴神社付近と考えられます。
近くの繖山(きぬがさやま)は 猪口山(いのくちやま)とも呼ばれ、
またこの一帯は 篠笥庄(ササケのしょう)と呼ばれていました。

 
■スクナミ ■スクナミ守 (すくなみかみ)
“スクナミ” は “井の口” の別名で、その地を領する守が “スクナミ守” と考えます。
古事記には “少名御神”とあります。また日本書紀の神功皇后の段には次のように。

 この御酒は 吾が御酒ならず 神酒の司 常世に坐す 
 いはたたす 
少名御神の 豊寿き … …


■竹株 (たけかぶ)
タケカブ(竹株)は、別の言い方をすれば、ササケです。ササ(笹・篠・小竹)ケ(笥)


■雀 (すずめ) ■進めけり (すすめけり)
が籾を入るを見て 酒造り初め進めけり” と、スズメ(雀)とススメ(進め)を
掛けているわけですが、このススム(進む)は 「進上する・献上する」 という意で、
捧ぐ” と同じです。

 つまりササケは、「ササケ(笹笥)で ササゲて(熟成して) ササゲた(献上した)物」
 という、3重の意味を持つわけです。

 ★けり
 シクアリ(如くあり) → シカリ(然り)ケリ と変化したもので、
 「しかり・そうである・相違ない」 など、断定・確認の意を添えます。
 ケリは また “キ” にも転じます。

 

【概意】
ササケはトコヨに、井の口を治めるスクナミ守が、
スズメが籾を竹株(=ささけ)に入れるのを見て、初めて酒を造ってささげたのである。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 ももひなきより ささなみと なおたまふより なもささけ
 そのかみいまに ささけやま
―――――――――――――――――――――――――――――
 百雛木より ササナミと 名を賜ふより 名もササケ
 その神 今に ササケ山
―――――――――――――――――――――――――――――

■ササナミ
ササ(酒)+ナミ(▽熟み)で、「酒を熟成する者」 の意です。
ナミは ナム(▽熟む)の名詞形で、ナムは ナル(熟る) の変態です。

 ★酒 (ささ) ★酒 (さけ)
 どちらも ササケ の略と考えていいと思います。

この名を賜ったことにより、スクナミと呼ばれていた琵琶湖沿岸の地は、
ササナミ(細波・小波・漣)と呼ばれるようになったと考えています。


■ササケ
ササナミは 竹株(=ささけ) に熟成して(=ささげて) 酒を造りました。
このため酒は “ササケ” とも呼ばれるようになります。


■ササケ山 (ささけやま)
ささけ(=竹株) の山」 また「(酒を)ささげた(熟成した)山」という意でしょう。
篠笥庄の沙沙貴神社付近の山で、おそらく繖山/猪口山の古名かと思います。
地元では現在も “神乃滴(かみのしずく)” という、沙沙貴神社の神饌田で御田植祭・
抜穂祭を行った酒米で造られた酒があり、沙沙貴神社の御神酒となっているそうです。

 沙沙貴神社 (ささきじんじゃ)
 滋賀県近江八幡市安土町常楽寺1。
 現在の祭神:少彦名命
 ・<筆者注> 祭神はもともとは少彦名命ではなく、スクナミ守(少名御神)だった
  ように思います。少彦名命もこの地に関係ありなのですが、それは後の話です。

 

【概意】
百雛木がスクナミ守に “ササナミ” と名を賜ってより、
酒はササケとも呼ばれるようになり、その神霊を今ササケ山に纏る。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――
 ここのくみとは やよいみか
 さかつきうめる かみのなも ひなかたけとそ たたゆなりける
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 九の酌度は 三月三日
 さかつき生める 尊の名も 雛が岳とぞ 称ゆなりける
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■九の酌度は三月三日 (ここのくみとはやよいみか)
九の酌度とは、いわゆる 「三三九度」 をいいます。
これは百雛木と百雛実が初めて交わった三月三日に由来します。

 三月三日 酒 造り初め 奉る 桃下に酌める 酒に月 映り進むる
 女尊まず 飲みて進むる 後 男尊 飲みて交わる “融の酒” 〈ホ2-2〉


■さかつき (杯・盃)
2つの意味が重なります。
まずは “酒注ぎ” で、「酒を注ぐ器」 です。
また “逆月” で、「器に注いだ酒に映る逆さの月」 をいいます。


■尊の名・上の名 (かみのな)
「尊名・称え名」 をいいます。


■雛が岳 (ひながたけ)
越国のヒナルの岳」 に付けられた尊名です。“雛” は百雛木と百雛実を指します。

 “ひながたけ” は多くの歌人に詠まれています。

 ・あすの月 雨占わん ひなが岳  〈松尾芭蕉〉
 ・雲はれて 仰ぐも高き
日永嶽 みどり匂へる 春日影かな 〈松平春嶽〉


■ける〈けり〉
ホツマ・ミカサでは係り結びは厳密には行われてません。ですからこれは
係り結びによる活用変化というわけではなく、ケリの古形なのかもしれません。
ナリ(断定)+ケリ(確認) は “なりき” と同じです。

 

【概意】
九の酌度は三月三日に由来する。
三三九度の酒注ぎと逆月を生んだヒナルの岳を、
“雛が岳” の尊名を添えて称えるのであった。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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