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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第132回 [2024.3.12]

第二四巻 コヱ国 ハラミ山の文 (7)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 こゑくにはらみやまのあや (その7)
 コヱ国 ハラミ山の文 https://gejirin.com/hotuma24.html
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 そののちに きみこのやまに のほりみて なかこやすめり
 やつみねに ゐゆきたえねは よよのなも とよゐゆきやま

―――――――――――――――――――――――――――――
 その後に 君 “熟山” に 登りみて 中子 安めり
 八峰に 居雪絶えねば よよの名も 響居雪山

―――――――――――――――――――――――――――――

■熟山 (このやま)
「こなれた山・熟した山・優れ至る山・洗練された山」 などが原義で、
これも ハラミ山(=富士山) の別名の1つです。

 ★コノ (▽熟)
 コナル(熟る)の母動詞 “コヌ” の名詞形で、「熟練・洗練・精練・精緻・優秀」 などを意味します。
 コノシロの “コノ” もこれです。 ▶コノシロ


中子 (なかご)

■安めり・▽和めり (やすめり)
やすむ+なり の短縮形です。 ▶やすむ


八峰 (やつみね・やみね)

居雪 (ゐゆき)

■よよの名 (よよのな)
「さらなる名・積み重なる名・またまたの名」 などの意です。 ▶よよ


■響居雪山 (とよゐゆきやま)
これもハラミ山の別名の1つで、「山頂の9峰に積雪が絶えない山」 という意です。

 トヨ(▽響) は 「中心から八方に響き渡るさま」 を表し、
 この場合は 中心=中峰、八方=8峰 です。

 

【概意】
その後に君が “熟山” に登ってみると、中子が安らぐのであった。
山頂の9峰には積雪が絶えねば、さらなる名も “響居雪山” である。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 このしろの たつのたつたの かみのこと
 このしろいけの みやことり らはななくれは たはむれる
 とりたすきとて はにゐます こもりゑになす
 ちよみくさ みはもにしみて さまうつす

―――――――――――――――――――――――――――――
 コノシロの竜の “タツタの尊” の如
 コノシロ池の 都鳥 ラハ菜投ぐれば 束群れる
 “鳥襷” とて 機に結ます コモリ絵になす
 千代見草 御衣裳に染みて 様 写す

―――――――――――――――――――――――――――――
  ここは五七調が少々いびつなため、言葉の区切りを調整しています
 
■コノシロの竜 (このしろのたつ) ■タツタの尊 (たったのかみ)
この2つは同じものを言葉を換えて言ってます。‘コノシロ’ の意味を説明するためです。
“コノシロの竜” は 「至り極まった竜・頂上の竜」 という意です。 ▶コノシロ ▶竜
“タツタの尊” は 「竜の尊・竜の極み・竜の君」 という意です。 ▶タツタ ▶カミ(上・尊)

 魚のコノシロ(鮗)と同じように 竜も出世する生き物で、はじめ (みづち) と呼ばれる竜の子が
 竜
となり、その後 海に千年、山に千年、里に千年住むと、“三生き” を悟って竜の君 となるといい、
 これを “コノシロの竜”  “タッタの尊”  “竜君”  “三揃の竜” などと呼びます。〈ホ26〉

 またシナ国の伝説『述異記』には、
  泥水で育った(まむし)は五百年にして(雨竜)となり、蛟は千年にして(成竜)となり、
 竜は五百年にして角竜(かくりゅう)となり、角竜は千年にして応竜になり、年老いた応竜は
 黄竜と呼ばれる と記されます。


■コノシロ池 (このしろいけ)
「頂上の池」 という意で、「ハラミ山頂の池」 をいいます。 ▶コノシロ
そしてこの池には 峰の竜 (=コノシロの竜・タッタの尊) が棲んでいるというわけです。


■都鳥 (みやこどり)
元来は 「君臣民が形作る国家を喩えた架空の鳥=かの鳥」 が “都鳥” です。

 かの鳥の 形はヤタミ 頭は君 鏡は左羽 剣 右羽 モノノベは足 〈ホ24ー1〉

しかしここではその名を付けられた実際の鳥です。
国家の都となったサカオリ宮は ハラミ山の麓に位置するため、
“都鳥” とは文字通り 「都の鳥」 という意と考えます。

 具体的な鳥の種類は不明ですが、すぐ後に語られるように、機の紋の “鳥襷” に描かれる鳥で、
 それは現在 「尾長鳥」 と解釈されています。また後のアヤには 「鴨」 を暗示する記述もあります。
 そしてまた 辞書には別の複数の説が載ります。
 ですから特定の鳥を指す名ではなく、その時々において都を象徴する鳥を “都鳥” と呼ぶようです。


■ラハ菜 (らはな:▽老菜)
ハラミ山に生える チヨミグサ(千代見草・千節見草) の1種です。
これを食せば 寿命を千年延ばすといいます。


■束群れる (たばむれる)
投げたラハ菜に 「束になって群れる」 という意です。


鳥襷 (とりだすき)
「都鳥の束群れ」 という意で、機の紋の1種です。 ▶画像

 トリ(鳥) は 「都鳥」 をいいます。
 タスキ(襷) は タス(足す)+スク(結く・挿ぐ) の短縮 タスク(助く) の名詞形で、
 「合わせ・束ね・結い・群れ・まとめ」 などが原義です。


■機に結ます (はにゐます)
「(紋として) 機に織り込む」 という意味です。 ▶機(は) ▶結ます(ゐます)


千代見草・千節見草 (ちよみぐさ)

■御衣裳・御衣装 (みはも)
ハモ(▽衣裳)の尊敬語で、今風に言えば 御衣裳(ごいしょう) です。
この場合は 「ニニキネが着ている衣裳」 をいいます。

 ★衣裳・衣装 (はも)
 ハム(食む)の名詞形で、「合わせ・召し・付け・着け」 などが原義です。
 「身に付けるもの・召すもの・着るもの」 をいいます。


■染む (しむ)
ソム(染む) の変態で、「染める・書く・描く」 などの意です。

 

【概意】
“竜の極み” を “コノシロの竜” と呼ぶ如く、<‘コノシロ’ は頂上を意味するが>
熟山のコノシロ池(=頂上の池)に棲む都鳥に、ラハ菜を投げれば束になって群れ寄る。
それを “鳥襷” と名づけ、機の紋に織り込まんとコモリは絵に描く。
千代見草も君の御衣裳に染めてそのさまを写す。

 

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 ままにまつりお きこしめす
 このあきみつほ ちからなす かれやまはとの みはとなす
 あやにはおとめ おるにしき おおなめまつる みははこれ

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 随に纏りを 聞し召す
 この秋 瑞穂 力なす 故 ヤマハ留の 御衣となす
 紋に果を留め 織る錦 大嘗祭る 御衣はこれ

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■随に (ままに)
ここでは 「思うがままに・自在に」 という意です。


■纏り (まつり)
万の機の纏り事” をいいます。


聞し召す (きこしめす)

■瑞穂力なす (みづほちからなす)
「収穫力が増す・生産力が上がる」 などの意です。 ▶瑞穂(みづほ) ▶力(ちから)
ナス(▽和す)は ここでは 「合わす・添う・付ける・加える」 などの意です。

 
■ヤマハ留 (やまはと)
「ヤマハ (実った稲) を留めたもの」 という意で、これも機の紋の1種です。
今日 “ヤマハ”  “ヤマハト" という名の紋は見当たりませんが、
稲紋(いねもん) と呼ばれる紋の原形ではないかと考えています。

 ★ヤマハ ★ヤマハ留 (やまはと)
 ヤマ(▽和・▽結)+ハ(果) で、ヤマは ヤムの名詞形、ヤムは ウム(▽結む・績む)、
 ユフ(結ふ)の変態です。「結び・実り」 を意味します。
 ハ(▽果)は ハツ(果つ)の名詞形で、これも 「結び・実り・結果・成果」 を意味します。
 ですからヤマハは 「結んだ果実・実った稲」 などの意です。
 ト(留)は トメ(留)の略です。


御衣 (みは)


■紋に果を留む (あやにはおとむ)
「文様として実った稲を留める」 という意です。


■錦・丹白黄 (にしき)
錦織(にしきおり・にしこり)の略です。
ニシキは 「丹・白・黄」 の意で、カシキ(赤白黄)の換言です。
そのためニシキ(錦)は イロ(色) とも呼ばれます。


大嘗 (おおなめ)

 錦織は ユキ・スキ宮の 大嘗の 会の時の衣ぞ 〈ホ23ー4〉

 

【概意】
思うままに政をお執りになれば、この秋 収穫が力を付ける。
しかればそれを “ヤマハ留” の御衣に織り込んで形にした。
紋に実った稲を留めて織る錦織で、大嘗を祭る時の御衣はこれ。

 

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 はおなおはめは ちよおうる わかなもおなし にかけれと
 はおなはももの ましにかく ちよおのふれと たみくわす
 ねはひとのなり ははよめな はなやゑかおよ
 らははくは もくさかふろは ちおまして をいもわかやく

―――――――――――――――――――――――――――――
 ハオ菜を食めば 千代を得る ワカ菜も同じ 苦けれど
 ハオ菜は百の 増し苦く 千代を延ぶれど 民 食わず
 根は人の態 葉は嫁菜 花 八重顔よ
 ラハ・ハク葉 もぐさ・禿葉 精を増して 老いも若やぐ

―――――――――――――――――――――――――――――

ハオ菜 (はおな)・ハホ菜 (はほな)
ハホ/ハオは ハフ(生ふ・栄ふ) の名詞形と思われます。
アマテルは月に3回だけ食事をしますが、その時に食べるのがこれです。

 食重なれば 齢なし ゆえに御神 月に三食 苦きハホ菜や 〈ホ1ー2〉


千代・千節 (ちよ)

■ワカ菜 (わかな)
これは不詳です。これも薬草の1種なのだろうと思います。


■根は人の態 (ねはひとのなり)
朝鮮人参マンドレイクみたいな根」 をいうものと思います。 ▶態(なり)


■嫁菜 (よめな)
同一のものかわかりませんが、この名は辞書にあります。 ▶画像


■八重顔 (やゑがお)
「八重咲きの花」 をいうようです。 ▶八重咲き ▶画像


■ラハ ■ハク葉 (はくば)
ラハは ラハ菜 と同じだと思います。ハク葉は不明ですが、ハクは ワカの変態ですから、
ハク葉=ワカ菜 なのかもしれません。 ▶菜・葉


もぐさ (艾)
ヨモギ(蓬・艾)の異称です。若葉を餅に入れ、成長した葉は “灸” に用います。 ▶画像
モク+クサ(草) の短縮で、モクは “もくもく” の 「けむり」 をいうものと考えます。 ▶キウ


■禿葉 (かぶろば)
これも不詳ですが、「禿笹」 をいうのかもしれません。 ▶画像


精・霊・血 (ち)

 

【概意】
ハオ菜を食めば千代を得る。ワカ菜も同じく苦けれど、
ハオ菜はそれより百倍も苦く、千代を延ばせど民食わず。
その根は人の態、葉は嫁菜、花は八重顔よ。
ラハ、ハク葉、もぐさ、禿葉は 精を増して、老いも若やぐ。

 

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 わかむすひ このこおくわに いとなせは
 ここりひめゑて みはささく こゑねのくにそ

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 ワカムスビ 籠の子を桑に 糸なせば
 ココリ姫 結て 衣ささぐ “籠結根の国” ぞ

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ワカムスビ
「衣食を結ぶ神霊」 で、ウケミタマ(宇迦御魂・稲魂)アカヒコ(赤日子) などとも呼ばれます。
アカヒコが カヒコ(蚕) 縮まったのではないかと推測しています。

・カグツチと ハニヤスが生む ワカムスビ 首は蚕桑に 臍はソロ これウケミタマ 〈ホ5-2〉
アカヒコ 桑に 引く糸を ナツメが織りて 生絹の御衣奉る 〈ホ4ー4〉


■籠の子 (このこ)
コ(籠)は 「囲い・包み・かご・衣」 などが原意で、マユ(繭)の換言です。
“籠の子” は 「繭の子」 という意で、コノコの略が 蚕(こ) なのでしょう。


ココリ姫 (ここりひめ・ここりめ)

■結る (ゑる)
ヱル(得る)と原義は同じですが、この場合は 「結う・織る」 の意のため、“結る” と当てています。
「籠の子の繭から引いた糸を紡ぐ」、また 「その糸で機を織る」 ということです。


機・衣 (みは)

ささぐ (捧ぐ)
「上げる」 が原義で、ここでは 「仕上げる・完成する」 などの意です。


■籠結根の国 (こゑねのくに)
「絹紡績の根源の国・絹織物発祥の国」 という意です。

 コ(籠)は 「繭」 で、ここでは 「繭から引いた糸・絹糸」 をいいます。
 ヱ(▽結)は “結る” の名詞形で、「結い・織り」 の意。ネ(根)は 「根源」 を意味します。

 これまで コヱネノクニ(越根の国) は、「太陽の巡回の始点の国」 の意と
 説明してきましたが、実はそれだけでなく、「絹織の根の国」 という
 もう1つ別の意が重なっていたわけです。どちらも 「北陸」 を指します。

 

【概意】
ワカムスビの籠の子が桑に糸を引けば、ココリ姫は織って機に仕上げる。
それゆえ “籠結根の国” ぞ。

 

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 ものぬしは きたよりめくり こゑにきて かのゑおすすむ
 ここりひめ あやにおりなす とりたすき
 あめにささけて またにしの ははかみやけと よにのこる

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 モノヌシは 北より巡り 越に来て かの絵を進む
 ココリ姫 紋に織り成す “鳥襷”
 天に捧げて また西の 母が土産と 世に遺る

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■モノヌシ
3代オオモノヌシのコモリです。


■越・▽還 (こゑ)
コヱネノクニ(越根の国・▽還根の国)の略です。


■かの絵 (かのゑ)
ラハ菜を投げると 「都鳥が束になって群れ寄るさまを描いた絵」 です。

 コノシロ池の 都鳥 ラハ菜投ぐれば 束群れる
 “鳥襷” とて 機に結ます コモリ絵になす 〈ホ24-7〉


西の母 (にしのはは)
西王母」 のことで、ウケステ姫 とも呼ばれます。
越根の国に来て タマキネ(トヨケの斎名) によく仕え、感銘を受けたタマキネは
ココリ姫と姉妹の契りを結ばせて、“和の道奥” を伝授します。
以来、たびたびココリ姫のもとを訪れています。

 ウケステ姫 根の国に来て タマキネに よく仕ふれば 実に応え
 ココリの妹と 結ばせて “和の道奥” 授けます 〈ホ15-6〉

 

【概意】
モノヌシは北より巡って越国に来て、かの絵を進上し、
ココリ姫がそれを紋に織り成す “鳥襷”。
御上に献上し、また西の母の土産として世に遺る。

 

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 たかにいたれは つえかつま あさひめむかふ
 ものぬしは くわよきおみて あさひめに こかひきぬおる
 たちぬひの みちをしゆれは

―――――――――――――――――――――――――――――
 タガに到れば ツエが妻 アサ姫迎ふ
 モノヌシは 桑良きを見て アサ姫に 籠交ひ衣織る
 経緯の 道 教ゆれば

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■ツエ
この時にタガの国を治めている地守です。 ▶タガ ▶地守
タガは オオクニ(央国)ヨロギ(万木) とも呼ばれます。


■アサ姫 (あさひめ)
コモリの14女で、ツエの妻です。

 クシヒコ──コモリ
        ├──────┬1.モト姫     ┌18.トヨリ姫
 アチハセ─シラタマ姫    ├2.タマネ姫    ├17.アワナリ姫
               ├3.イソヨリ姫   ├16.ワカネ姫
               ├4.ムレノ姫    ├15.ハザクラ姫
               ├5.ミハオリ姫   ├14.アサ姫
               ├6.スセリ姫    ├13.ムメチル姫
               ├7.ミタラシ姫   ├12.ハモミ姫
               ├8.ヤヱコ姫    ├11.ミチツル姫
               ├9.コユルキ姫   ├10.シモト姫
               └─────────┘


■籠交ひ衣織る (こかひきぬおる)
コ(籠)は 「繭」 の換言で、ここでは 「繭から造った糸・絹糸」 をいいます。
カフ(交ふ)は 「交える・交差させる・組む」 などの意で、キヌ(衣)は 「機・着物」 です。
ですから 「絹糸を交差させて機を織る」 という意です。


■経緯 (たちぬひ)
タテヌキ(経緯)の音便で、「経糸に緯糸を交差させて通すこと」 をいいます。
つまり 「機織り」 であり、これは “籠交ひ” の換言です。

 タチ(経)は タツ(立つ)の名詞形で、タテ(縦・経)と同じです。
 ヌヒ(縫)は ヌキ(貫・緯)の音便で、「貫き通すこと」 をいいます。

 

【概意】
その後タガに到れば、ツエの妻のアサ姫が迎える。
モノヌシは桑の良きを見てアサ姫に、絹糸を交えて機を織る、経緯の道を教えれば、

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 をこたまの かみおまつりて ゐくらたし みはさしつくり
 たちぬひの みちをしゆれは やもとほり こゑくにのかみ
 をこのさと こかひゑるなり

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 ヲコタマの 神を纏りて 五座治し 機 差し造り
 経縫の 道 教ゆれば 八方通り “籠結国の神”
 ヲコの里 籠交ひ得るなり

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■ヲコタマの神を纏る (をこたまのかみおまつる)
ヲコタマ(皇籠霊)は ヤマトヲヲコノミタマ(和皇籠の御霊)の略です。
“神を纏る” とは 「クシヒコの神霊を地にまとわす」 ということです。 ▶纏る
その依代として建てられた社が 都恵神社 だと考えられます。 ▶依代

 都恵神社 (つえじんじゃ)
 滋賀県彦根市竹ヶ鼻町256。
 現在の祭神:大国主神 配 事代主神
 <筆者注> 大国主神と事代主神は どちらもクシヒコを指します。


■五座治す (ゐくらたす)
ヰクラ(五座)は 「東西央南北の5方」 を意味しますが、
この場合は 四角い機(織物)の 「四辺と中央・四処一内」 をいいます。
“五座を治す” というのは、「四辺と中心を正しく調えて全体を治めよ」 という
機の織り方を、国の纏り方になぞらえた教えです。 ▶治す

 そしてミカサフミによれば、この教えを唱えたのは ヲコタマ=クシヒコ だったといいます。
 それゆえコモリの父でありアサ姫の祖父であるヲコタマを、機の神として纏ったのでしょう。

ヲコヌの尊の この四つを 陽陰 人に知れる 人の身の “四つを謹む 機の道”  ・・・ ・・・
 故に今説く “四処の機” 慕えば諾に 身を治む 〈ミ1-2〉
・ムネ・ミナモトの 経・緯の 四筋正しく ‘身’ を治む 八民治むる 四方の業
  ・・・ ・・・
 
四処一内の 型を用いて ‘身’ を治む 〈ミ1-8〉


■差し造る (さしつくる)
サス(差す・挿す・刺す)は 「通す・貫く」 と同義で、
「経糸に緯糸を交差させる」、つまり 「織る」 ということです。


■籠結国の神 (こゑくにのかみ)
“籠結国” は 「絹を結う国・絹織の国」 という意で、絹織が普及浸透して発展した
タガ=オオクニ に付けられた新名です。コヱ(籠結)は “籠結根の国” の コヱと同義です。
“籠結国の神” とは ヲコタマの神のことで、「籠結国の繁栄を生む神」 というような意です。


■ヲコの里 (をこのさと)
「かつてヲコタマの治めた領地」 という意で、タガ=オオクニ の換言です。 ▶里


■籠交ひ (こかひ)
「絹織り」 という意です。
コ(籠)は 「繭」 で、「繭から造った糸・絹糸」 をいい、
カヒ(交ひ)は 「交え・交差・編み・織り」 などの意です。

 

【概意】
ヲコタマの神霊を纏って四処一内の五座を治め、
機を差し造って民に経緯の道を教えれば、八方に普及浸透する。
こうしてヲコタマは “絹織の国の神” となり、
かつてヲコタマの治めた里は 絹織を得たのであった。

 

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 あめみまこ またやまめくり ねにひゑて はらいたむとき
 こもりその みくさすすめて これおたす
 みとはましわる ひとみくさ ねはこねうすき
 くきひとり よゑゐはひとみ こしろはな

―――――――――――――――――――――――――――――
 陽陰御孫 また山巡り 根に冷えて 腹痛む時
 コモリ直の “身草” 進めて これを治す
 幹と派交わる 人身草 根 箱根空木
 茎一垂り 四枝五葉 人身 小白花

―――――――――――――――――――――――――――――

■陽陰御孫 (あめみまご)

■根に冷ゆ (ねにひゆ)
「体の芯まで冷える・底冷えする」 の意に解しています。


■直の (その)
これは “この”  “その”  “あの”  という場合の、 “その” なのですが、
原義は 「そばの・近くの・直近の」 です。
ここでは原意通りの意味であるため、“直の” と宛てています。


■身草 (みくさ)・人身草 (ひとみぐさ)
「人の身のような草」 という意で、これも千代見草の一つです。 ▶千代見草
これで3種のチヨミ草 (1)ハホ菜 (2)ラハ菜 (3)身草 すべて登場しました。


■幹と派交わる人身草 (みとはまじわるひとみぐさ)
ミは 「実」 の意で、「主体・胴・幹・茎」 を表しますが、
「果実」 と誤解されないように、“幹” と宛てています。
ハ(派)は 「派生・枝分かれ」 の意で、「幹から分れ出る枝」 をいいます。
ですから 「人体の胴と手足のように幹と枝が交わる草」 という意です。

 余談ですが、ニンジン(人参)は “人身(ひとみ)” の音読みだと思います。 ▶画像


■箱根空木 (はこねうすぎ)
これは ハコネウツギ(箱根空木) と同じと思います。 ▶画像


■一垂り (ひとり)
トリは タリ(垂り)の変態で、「1本」 という意です。


■四枝五葉人身 (よゑゐはひとみ)
“四枝五葉” は 「4本の枝の先にそれぞれ5枚の葉」 という意で、
それは 「4本の手足の先にそれぞれ5本の指を持つ人の身と同じ」 ということです。

 

【概意】
陽陰御孫は ある時また山を巡り、底冷えして腹痛む時、
コモリは近くに生える “身草” を進めてこれを治す。
幹と枝が人の身のように交わるゆえに “人身草”。
根は箱根空木のようで、1本の幹に人の身と同じ4枝5葉。小さく白い花を咲かす。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 あきみはあつき あまにかく よこしうるほひ むねおたす
 ももくさあれと はらみのみ ことまさるゆえ
 みくさほめ はらみやまなり

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 秋 実は小豆 甘苦く ヨコシ潤ひ 宗を養す
 百草あれど ハ・ラ・ミの三 こと優るゆえ
 三草褒め “ハラミ” 山 なり

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ヨコシ (脾)

■宗・旨 (むね)
「中心・核・源」 などを原義とし、この場合は ムムネ(六宗) をいいます。
これは “心派の六端”  “魄の根”  “根の六臓” などの換言です。


■ハ・ラ・ミの三 (はらみのみ)
“ハ・ラ・ミ” は 「オ菜・ハ菜・草」 の頭文字をつなげたものです。
ですから 「ハオ菜・ラハ菜・身草 の3草」 という意です。


■ハラミ山 (はらみやま)
この場合は 「ハオ菜・ラハ菜・身草 が生える山」 という意です。

 ハラミ山は 「二尊が日月の神霊を孕む山」 という意ですが、
 これにも もう1つ別の意味があったというわけです。

 

【概意】
秋にアヅキのような実を結び、甘苦くて、脾臓を潤し六宗を養す。
あまた薬草はあれど、ハオ菜・ラハ菜・身草の3草は殊に優れるゆえ、
この3草を称えて “ハラミ” 山なり。


 ところで “ハラミ山” は 略して “ハラ山” ともいいますが、
 “ハラ” は後の世に ホウライ(蓬莱) と呼ばれるものと同一のようです。

  ほうらい【蓬莱】
  ・中国の神仙思想に説かれる三神山の一。山東半島の東方海上にあり、
   不老不死の薬を持つ仙人が住む山と考えられていた。蓬莱山。蓬莱島。よもぎがしま。
  ・富士・熊野・熱田など霊山・仙境の称。

  上に言う “蓬莱山” は 「ハラ山」 で、“不老不死の薬” とは 「千代見草」 をいうのでしょう。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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