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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第145回 [2024.4.9]

第二七巻 御祖神 船霊の文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 みをやかみふなたまのあや (その3)
 御祖神 船霊の文 https://gejirin.com/hotuma27.html
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 みやこには きみむつましく やをかふり 
 つくしのそやと よそひよろ としへてをさむ
 あめひつき ゆつらんために みこおめす
 すへらをみこは をにふより みつほにみゆき まみゑすむ

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 都には 木実睦まじく 八百日経り
 ツクシの十八と 四十一万 年経て治む
 和日月 譲らんために 御子を召す
 皇太子は ヲニフより ミヅホに御幸 まみえ済む

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■木実睦まじく (きみむつまじく)
キミ(木実)は 「陽陰・日月・夫婦・上下・葵桂」 などの換言で、
ここでは 和つ日月 である ヒコホオデミ&トヨタマ姫の夫婦を指します。 ▶睦まじ

 君と姫とは 日と月と 睦まじなさん 〈ホ26ー3〉

 これは 陽陰が和合して一つになっている状態をいいます。これまでに “三生きを悟る” 
 “人生き悟る”  “葵桂の妹背を得る”  “上下を治むる” などと表現されてきたものです。
 「和つ日月が一体となってこそ 世は和して栄える」 ということ意味します。


■八百日・▽弥日 (やをか)
「いよいよ多くの日数・非常に長い歳月」 を意味する慣用表現と考えます。
 
 ★やを・やよ (八百・▽弥)
 ヤヤ(稍・漸)の変態で、イヤ(弥)・イヨ(弥) などと同じです。


■四十一万 (よそひよろ)
これは原文ヲシテには “ヨソヨロ” (四十五万) とあるのですが、
後段の “四十二鈴八百五十枝極年ネウト” から算出されるところと
大きく食い違うため 誤写と判断し、“ヨソヨロ” (四十一万) に修正しています。


■和日月 (あめひつき)
和つ日月和の日月 と同じです。

  
■皇太子 (すべらをみこ) ■皇御子 (すめみこ・すべらぎみこ)
スベラ(皇)+ヲミコ(親王・太子) で、「皇位を継承するべき上位の御子・代嗣御子」 を意味します。
今に言う 皇太子(こうたいし) で、この場合は ウガヤフキアワセズ(斎名カモヒト) を指します。


 アマテル─オシホミミ─ニニキネ┐
                ├ヒコホオデミ
   カグツミ─マウラ─アシツ姫┘  ├──ウガヤフキアワセズ(斎名カモヒト)
                   │
 カナサキ───??───ハテツミ─トヨタマ姫

 
 ★ヲミコ・アミコ (親王・太子)
 ヲ/ア(上・央・太)ミコ(御子) で、皇の御子の中で 「上位にある御子」 が原義です。
 1.皇太子(すべらをみこ) の略。
 2.親王(しんのう)


ヲニフ (遠敷・小丹生)
トヨタマ姫はこの地にカモヒトを捨てました。

 産屋出て ヲニフに到り 御子抱き 御面・御手 撫でて
 「母は今 恥ぢかえるなり まみゆ折 もがな」 と捨てて 〈ホ26-2〉

 トヨタマ姫がヲニフにカモヒトを捨てた後、トヨタマ姫は君と和解してミヅホの宮に
 戻ったわけですが、ここの “まみえ済む” という表現から、カモヒトはそのままヲニフで、
 両親から離れて育てられたような印象を持ちます。信じがたい話ではありますが …。
 もしそうなら ヲニフ(▽皇熟ふ) は 「皇の生育の所」 を意味するのかもしれません。

 

【概意】
都には木実が睦まじく長き歳月を経て、
九州での18万年と <即位後の> 41万年を治める和の日月を
譲らんために御子を召す。皇太子はヲニフよりミヅホに御幸して会見が済む。

 

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 ときにわかみや なかにます
 こやねはひたり みほひこは みきにはへれは
 あまきみは みはたのふみお みてつから をみこにゆつり

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 時に若宮 中に座す
 コヤネは左 ミホヒコは 右に侍れば
 天君は “機の文” を 身手づから 太子に譲り

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■コヤネは左 ミホヒコは右 (こやねはひだりみほひこはみぎ)
前政府に引き続き、アマノコヤネが 新政府の 左の臣(=鏡臣) に、
ミホヒコ(=コモリ)右の臣(=剣臣・モノヌシ) に就くことを意味します。


■天君 (あまきみ)
アマテルがヒコホオデミに賜った称号 「御祖に継がふ天君」 の略です。


■機の文 (みはたのふみ)
三種宝の第1である 「陽陰和る文」 の別名です。 ▶みはた(機)
これは 前皇から新皇に直接手渡されます。

 機の留の御文(みはたのとめのをんふみ)、機織留(みはたをりどめ)ともいい、また
 香の文(かぐのふみ)、香機(かぐみはた)、上祖百編(みをやもあみ) などとも呼ばれます。


身手づから (みてづから)

 

【概意】
時に若宮は中央に座す。
コヤネは左、ミホヒコは右に侍ると、
天君は “機の文” を身手づから太子に譲り、

 

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 まきさきは やたのかかみお ささけもち かすかにさつく
 おおすけは やゑかきのたち ささけもち こもりにあたふ
 きみととみ つつしみうくる

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 御后は ヤタの鏡を 捧げ持ち カスガに授く
 大典侍は ヤヱガキの太刀 捧げ持ち コモリに与ふ
 君と臣 つつしみ受くる

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御后 (まきさき・みきさき)
前皇の内宮である 「トヨタマ姫」 を指します。


ヤタの鏡 (やたのかがみ)
三種宝の第2です。
これは前皇の内宮(=御后)から、新皇の 左の臣(=鏡臣) に直接手渡されます。


■カスガ
カスガ尊(▽上下和み)の略で、これもアマノコヤネの尊名です。
語義は アマノコヤネ(▽陽陰の交和) と同じです。


大典侍 (おおすけ)
この場合は具体的に誰を指すのか不明です。


ヤヱガキの太刀 (やゑがきのたち)
三種宝の第3 ヤヱガキの剣(やゑがきのつるぎ) の換言です。 ▶ヤヱガキ ▶太刀
これは前皇の大典侍から、新皇の 右の臣(=剣臣・モノヌシ) に直接手渡されます。

 

【概意】
御后は “ヤタの鏡” を捧げ持ってカスガに授け、
大典侍は “ヤヱガキの太刀” を捧げ持ってコモリに与えば、
君と臣はつつしんで受ける。

 

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 あまきみと きさきもろとも
 しのみやに おりゐてここに かみとなる 
 ときよそふすす やもゐそゑ きわとしねうと はつきよか

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 天君と 后もろとも
 シノ宮に 下り居てここに 神となる
 時 四十二鈴 八百五十枝 極年ネウト 八月四日

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シノ宮 (しのみや)
かつてヒコホオデミがその主であった アワ海南岸の オオツシノ宮 です。
和つ日月をカモヒトに譲った天君は 后トヨタマと共にこの宮に隠居します。
先代の天君ニニキネもこの宮に隠居しています。


■下り居る (おりゐる・おりいる)
「皇位を下りて隠居する」 ことをいいます。 ▶下(り)居


■四十二鈴八百五十枝 (よそふすずやもゐそゑ) ▶数詞
真榊(=鈴木)による暦法で、1鈴=6万年、1枝=60年、1穂=1年 です。
ウビチニ&スヒヂの時代に植え継ぎが500回の限界に達し、累計年数が
一旦リセットされていますので、この暦の起点はその頃と考えられます。
ホツマに暦年の記載されている比較的最近の出来事を振り返ると、次の通りです。

・26鈴16枝41穂 テルヒコ大和国へ。 ・26鈴17枝23穂 ニニキネがニハリ宮を建てる。
・29鈴501枝38穂 ニニキネ三種を受け八州巡幸に出発。 ・ちょうど30鈴頃 地上ほつま出現。
・31鈴333枝頃 オシホミミ帰天。 ・32鈴900枝23穂 ミヅホ宮に遷都。
・36鈴34枝38穂 ヒコホオデミ即位。

 ヒコホオデミの即位から およそ6鈴816枝22穂 (40万8982年)が経過しています。


■極年ネウト (きわとしねうと)
キワトシ(極年・際年)は 「きわまる年・終りの年」 という意ですが、
これは 60年で一巡する干支の 「最終(60番目)の年」 をいい、それがネウトです。
ですから 「干支の最終ネウトの年」 という意味です。 ▶干支

 

【概意】
天君と后トヨタマ姫は 諸共にシノ宮に隠居し、ここに神となる。
42鈴850枝の極年ネウト(=60穂)の8月4日であった。

 

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 きみのもまつり よそやすみ みことにまかせ
 おもむろお いささわけみや けゐのかみ
 ゆえはをきなに けゐおゑて めくりひらける ちおゑたり
 かとてのけゐそ かしはては

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 君の喪纏り 四十八済み 御言に任せ
 骸を イササワケ宮 “契の神”
 ゆえは翁に 係を得て めぐり開ける 鉤を得たり
 門出の契ぞ 膳出は

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喪纏り (もまつり)

四十八 (よそや)

主室・▽骸 (おもむろ)

■イササワケ宮 (いささわけみや)
越国の都である キタノツ(北の都)の別名で、現在の 敦賀 をいいます。
この宮の跡が気比神宮です。 ▶イササワケ ▶越国

 気比神宮 (けひじんぐう)
 福井県敦賀市曙町11-68。
 現在の祭神:伊奢沙別命 (別名:気比大神)


■契の神・係の神 (けゐのかみ)
ヒコホオデミに捧げられた贈り名で、「縁の神」 という意です。 ▶贈り名
現在は 気比神、笥飯神、気比大神、笥飯大神 などと記されます。

 ★けゐ (▽交・▽係・▽契・▽経緯)
 カフ(交ふ)の変態 “ケフ” の名詞形で、「交わり・関わり・いきさつ・縁・きっかけ」 などの意です。
 経緯の臍布(けふのほそぬの)契更る(けふさる) の “ケフ” の変態です。

 すぐ次に出てくる “膳” という言葉に関連付けて、後世 ケヰは “笥飯” と当てられ、
 「器の飯・弁当」 の意に転じてしまったようです。


■翁 (をきな)
イササワケの浜で 兄の鉤を取られて浜でうなだれているウツキネに、
“君な憂ひそ計らん” と、解決の道に導いた シホツツの翁 をいいます。

 浜にうなだれ 憂ふ時 雁 罠に陥つ これを解く
 
シホツツの翁 故を問ふ ままに答ふる 曰く 「君な憂ひそ 計らん」 と 〈ホ25-3〉

 この人物との出会いが縁となって、ウツキネは鉤を取り返し、兄スセリを従え、
 九州の農地開発を進展させ、トヨタマ姫を娶り、ついには和つ君にまで上りつめるのです。
 ウツキネがシホツツと出会った浜、それが 笥飯の浦(けひのうら) なのでしょう。


■めぐり開ける (めぐりひらける)
メグリは 「巡り・回転・運び」 などが原義で、運(うん) と同じです。
ですから 「運が開ける・運命が展開する」 などの意です。


■門出の契 (かどでのけゐ)
「開運の縁」 という意です。 ▶門出


■膳出 (かしはで)
「膳を出すこと」 をいいます。 ▶膳(かしは)

 これは ヒコホオデミ(契の神) とは関係ないのですが、
 門出の時に膳を出すのは 「開運の縁を祈るモノザネぞ」 という意味です。 ▶モノザネ

 

【概意】
君(=カモヒト)が48日の喪纏りを終えると、
生前の御言のままに、骸をイササワケ宮に納め、“契の神” と贈り名する。
そのゆえは イササワケで出会ったシホツツの翁に縁を得て、運が開ける鉤を得たため。
門出に膳を出す意は、“開運の縁” ぞ。

 

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 ひめはおもむろ みつはみや
 むかしなきさに ちかいして みそろのたつの みたまゑて
 なもあゐそろの かみとなる

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 姫は骸 ミヅハ宮
 昔 渚に 誓いして “三揃の竜” の 神霊得て
 名も “陽陰揃の 神” となる

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ミヅハ宮 (みづはみや)
「水を治める自然神ミヅハメを纏る社」 で、後の貴船神社をいいます。 ▶ミヅハメ
皇宮を離れたトヨタマ姫は 長い間この宮に隠遁していました。

 貴船神社・貴布禰神社 (きふねじんじゃ)
 山城国愛宕郡。京都市左京区鞍馬貴船町180。
 現在の祭神:高龗神 (たかおかみのかみ)
 <筆者考> ・もとはミヅハメを纏る社、後に高龗神を合わせる。
      ・高龗神の “高” は 「猛」 と同じ、“龗” は 「三揃の竜」 を表す文字。
       オカミ(御上) は 「后」 を意味。よって 高龗神=トヨタマ姫の神霊 です。


■誓い (ちかい・ちかひ)
トヨタマ姫を乗せたカモが難破し、渚に落ちたトヨタマ姫が立てた誓いをいいます。
「孕む御子を生かすためならどんな事もいとわない」 という誓いをいうのでしょう。
これを “猛き心” とも表しています。その結果 姫は竜や蛟の支援を受けて泳ぎ切り、
九死に一生を得たのです。

 カモ破れて 姫もタケスミ ホタカミも 渚に落ちて 溺るるを
 
猛き心に 泳がせば 竜や蛟の 力得て 恙も和の 磯に着く 〈ホ26ー2〉


■三揃の竜 (みそろのたつ)
海・山・里 の 「三生きを揃える竜」 をいいます。 ▶三生き
これは “タツタの尊”  “コノシロの竜”  “竜君” などとも呼ばれます。

 竜の子は 千年に住み タツタ知る 千年に住み 立っ振ると
 千年
に住み “付く離る” 三生き悟りて 君となる 〈ホ26ー3〉

 ← これは 「三揃の竜」 を表す漢字と考えています。
 □は 「領域・区分」 を表し、“□□□” は 三生き を意味するのでしょう。
 “龍” は 水の眷属で、“雨” を降らせる能力を持ちます。 ▶竜/龍


■三揃の竜の神霊得る (みそろのたつのみたまゑる)
「三揃の竜のエッセンスを得る」 という意で、「人が三生きを悟ること」 をいいます。 ▶神霊
まず 地生き、次に 天生き、最後に 陰陽和合の人生き を悟って到達する、神の境地です。

 御胤思えば 猛心 なして泳ぎて 永らうる これ 地生き 知る
 宮に立ち 振りて嘲り 免るる これ
天生き 知る いま一つ
 葵桂の 妹背を得ば 
人生き 悟る 三つ知れば 竜君如く となる 〈ホ26ー3〉


■陽陰揃の神 (あゐそろのかみ)
三揃の竜の神霊を得て、陰陽和合の人生きを悟ったトヨタマ姫の贈り名です。 ▶陽陰(あゐ)
「陽陰を揃える神・葵桂の妹背を得る神」 という意です。 ▶葵桂の妹背

 

【概意】
トヨタマ姫の骸はミヅハ宮。
昔 渚に誓いして、“三揃の竜” の神霊を得て、名も “陽陰揃の神” となる。

 

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 たみつおまもり ふねおうむ きふねのかみは ふなたまか
 ふねはいにしゑ しまつひこ くちきにのれる うのとりの
 あつみかわゆく いかたのり さおさしおほえ ふねとなす

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 田水を守り 船を生む キフネの神は 船霊か
 船はいにしえ シマツヒコ 朽木に乗れる 鵜の鳥の
 アヅミ川行く イカダ乗り 棹さし覚え 船となす

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■キフネの神 (きふねのかみ)
キフネの社に纏られる神」 をいいます。元は “ミヅハメの社” と呼ばれましたが、
トヨタマ姫の骸をここに納め、その神霊をこの社に纏ってからは “キフネ” と呼ばれます。

 ★キフネ (生船・貴船・貴布禰)
 キ(生)フネ(船) は 「水と船」 を意味します。
 キ(生) は “澄みきる” の キル の名詞形で、「きわまり(極まり)」 が原義です。
 「上澄み・純粋・極限・透明」 などを意味し、この場合は 「水」 の換言です。


船霊 (ふなたま)
「船を造る神霊・船の神」 をいいます。


■シマツヒコ
太古 安曇川を流れる朽木に乗って羽を乾かす鵜を見て、
イカダ(筏)に乗って棹で操作することを考えた、船造りの始祖です。

 シマツヒコ─オキツヒコ─シガ─?─?─?─カナサキ─?─ハテツミ┬トヨツミヒコ
                                 ├トヨタマ姫
                                 ├タケツミヒコ
                                 └オトタマ姫

 シマツは シム(▽垂む・▽下む)+マツ(▽没つ) の名詞形です。
 両語とも 「下がる・没す・沈む・潜る」 などが原義で、この場合は 「水に潜るもの」 をいいます。
 これはつまり 「鵜」 の換言です。ですからシマツヒコは 「鵜の臣」 という意です。 ▶鵜

 
■アヅミ川 (あづみがわ・あしづみがわ:安曇川)
現在は 安曇川(あどがわ) と呼ばれます。京都の山に発し、滋賀の高島で琵琶湖に注ぐ川で、
アシヅミ川、クチキ川 とも呼ばれます。


イカダ (筏・桴)
イク(▽結く)+カツ(▽括つ) の同義語短縮 “イカツ” の名詞形で、「結び括ったもの」 が原義です。


棹さし (さおさし)
「棹を水底に突き刺してイカダを操縦すること」 をいいます。 ▶画像


 ★棹・竿 (さほ・さお)
 サフ(障ふ支ふ)の名詞形で、サフは ソフ(添ふ・沿ふ)の変態です。
 「まっすぐなさま・脇にそれないさま・一筋であるさま」 などが原義です。

 

【概意】
田水を守り船を生む キフネの神は船霊か。
船はいにしえシマツヒコ、朽木に乗る鵜の鳥が安曇川を行くのを見て、
イカダに乗り、棹を刺して操縦することを思い付き、これを船となす。

 

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 このおきつひこ かもおみて かいおつくれは
 まこのしか ほわになすなよ かなさきは おかめおつくる
 そのまこの はてかみのこの とよたまと
 みつはめとふね つくるかみ むつふなたまそ

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 子のオキツヒコ 鴨を見て 櫂を造れば
 孫のシガ 帆ワニ成す 七代 カナサキは オカメを造る
 その孫の ハテ守の子の トヨタマと
 ミヅハメと船 造る神 六船霊ぞ

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■オキツヒコ (息つ彦) ■鴨 (かも) ■櫂 (かい・かひ)
オキツヒコは シマツヒコの子で、カマド尊の オキツヒコ とは別人です。
“鴨” の泳ぎを見て “櫂” を考案し、カモ船を開発します。 ▶カモ船

 シマツヒコ─オキツヒコ─シガ─?─?─?─カナサキ─?─ハテツミ┬トヨツミヒコ
                                 ├トヨタマ姫
                                 ├タケツミヒコ
                                 └オトタマ姫

 オキツヒコの オキ(息)カモ(鴨)カイ(櫂・梭・回) は、どれも 「往き来」 を意味する同義語です。
 ですからオキツヒコは 「鴨の臣・櫂の臣」 という意です。

 
■シガ (志賀・滋賀) ■帆ワニ (ほわに:帆鰐)
シガは オキツヒコの子です。帆ワニ(=オオワニ)を開発します。 ▶帆

 シマツヒコ─オキツヒコ─シガ─?─?─?─カナサキ─?─ハテツミ┬トヨツミヒコ
                                 ├トヨタマ姫
                                 ├タケツミヒコ
                                 └オトタマ姫

 シガは シキシマ(直州)の シキ(直)の変態で、中国アワ国ヤス国ヤマト国 など
 と同様に 「近江国」 を表す別名の一つです。シガの名は世襲され九州にも移転しますが、
 もともとは 「近江国を知行する地守」 を表す名であったと考えます。

 
カナサキ ■オカメ
カナサキはシマツヒコの7世の孫で、オカメを開発します。

 シマツヒコ─オキツヒコ─シガ─?─?─?─カナサキ─?─ハテツミ┬トヨツミヒコ
                                 ├トヨタマ姫
                                 ├タケツミヒコ
                                 └オトタマ姫

 オカメは カメ(亀)と同じと考えています。オオカメとも呼ばれます。
 「亀に似せた比較的大型の櫂漕ぎ船」 と考えていますが、不詳です。


ハテ守 (はてかみ) ■トヨタマ

 シマツヒコ─オキツヒコ─シガ─?─?─?─カナサキ─?─ハテツミ┬トヨツミヒコ
                                 ├トヨタマ姫
                                 ├タケツミヒコ
                                 └オトタマ姫


■ミヅハメ (▽水侍)
「水に侍ること・水を守ること」 が原義です。 ▶侍る
この場合は 水を治める自然神の “ミヅハメ” をいうのではなく、
原義通り 「水の守り」 を意味するようです。

 

【概意】
子のオキツヒコ、鴨を見て櫂を造れば、孫のシガは帆ワニを造り、
7代のカナサキはオカメを造る。その孫のハテ守と、子のトヨタマ姫を合わせて、
水の守りと船造る神、“六船霊” ぞ。

 

本日は以上です。それではまた!

 

 

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