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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第107回 [2024.1.7]

第二〇巻 皇御孫十種得る文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 すめみまごとくさゑるあや (その3)
 皇御孫十種得る文 https://gejirin.com/hotuma20.html
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 ひたかみおてて かしまみや そのみちたみの いてむかひ
 たかやしかくと きこしめし いせにはんへる みこのおと
 きよひとにかみ みことのり

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 ヒタカミを出て カシマ宮 その道 民の 出迎ひ
 耕し欠くと 聞し召し イセに侍る 御子の弟
 キヨヒトに神 御言宣

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カシマ宮・カシマの宮 (かしまみや・かしまのみや)
カシマの国(=ヒタチの国)を治める政庁宮で、今の鹿島神宮です。
この国は中国の太平洋沿岸部であるホツマ国の最北・最東部に位置し、
ヒタカミ国と境を接しています。 ▶中国 ▶ホツマ国 ▶ヒタカミ国


聞し召す (きこしめす)
ここでは 「心に留める・考える・慮る」 などの意の尊敬表現となります。


イセ (▽妹背・伊勢)
この場合は イセ宮イサワの宮 をいいます。


御子 (みこ)
オシホミミの長男 クシタマホノアカリ(斎名:テルヒコ) を指します。


■キヨヒト
クシタマホノアカリの弟、ニニキネの斎名です。

 ヤソキネ─タカキネ─タクハタチチ姫┐
                  ├クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
 サクラウチ─セオリツ姫┐     │
            │     ├ニニキネ(斎名キヨヒト)
            ├オシホミミ┘
 イサナギ┐      │
     ├─アマテル─┘
 イサナミ┘


■神 (かみ)
アマテルを指します。

 

【概意】
ヒタカミを出てカシマ宮。その道には民の出迎え。
「それでは田畑の耕しを欠く」 と心に留められ、
イセに侍る御子の弟キヨヒトに 神は御言宣。

 

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 なれとちからと はやふねに ゆきていわふね すすむへし
 よりてみまこと たちからを わにふねにのり かんふさの
 つくもにつきて かとりみや かんことのれは

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 「汝とチカラと 速船に 行きてイワ船 奨むべし」
 よりて御孫と タチカラヲ ワニ船に乗り 上総の
 ツクモに着きて カトリ宮 神言宣れば

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汝 (なれ)
ナンヂ(汝)と同じです。


■チカラ
タチカラヲの略です。この頃はイサワの宮で日夜見(ひよみ)を務めています。
“日夜見” とは 「陽陰/日月を見て暦を作ること/者」 をいい、後世にいう “陰陽師” です。


■イワ船 (いわふね:▽斎船・▽祝船)
イワクス船と同じで、「御幸の船・巡幸の船」 を意味します。


■ワニ船 (わにふね:鰐船) ■ワニ (鰐)
ワニ(鰐)は 古くはサメ(鮫)のことをいいますから、鮫が水面に背びれを出して泳ぐさまに
似た船をいうものと考えます。つまり 「帆船」 でしょう。
“速船に行け” という要請に応えて 「ワニ船」 の選択です。

 ★船・舟・槽 (ふね)
 語源は未解決ですが、「槽」 つまり 「容器」 が原義なのだろうと思います。
 ホツマには一般的な船として、ワニ、カモ、カメ の3種が登場しますが、
 ワニが最も速く、次いでカモ、カメはやはり一番遅いようです。
 対馬では今でも ワニ・カモ という船の呼び名が残っているそうです。


御孫 (みまご)
ニニキネを指します。


■上総 (かんふさ)
カンは カミ(上)の音便変化で、この場合は 「中心・都に近い側」 をいいます。
フサ(房・総)は、その垂れた乳房のような地形から 「房総半島」 を指します。
その根っこ側が 上総(かんふさ・かづさ)、さきっぽ側が 安房(あわ)です。

 この時代には下総はまだ無いようで、上総の北はすぐ常陸(ひたち)となります。


■ツクモ (九十九)
現在の千葉県の九十九里浜だとしても それほど不都合はないのですが、
もとは 香取海 の 「船の発着場」 を “ツクモ” と呼び、中でもカトリ宮は
非常に重要な発着場 (港湾都市) だったと考えています。 ▶図解

 ツクモは ツクマ(▽付離・▽着分)の変態と考えます。この場合は 「発着」 の意です。
 “九十九” と当て字するのは 「継ぐ百・次ぐ百」 の意からと考えられます。


カトリ宮 (かとりみや)

■神言 (かんこと)
「神の言葉」 という意です。この場合、神はアマテルです。

 

【概意】
「汝とチカラと速船で行って、イワ船での御幸を奨めるべし。」
これにより御孫とタチカラヲは ワニ船に乗って上総のツクモに着き、
カトリ宮にて神言を宣れば、

 

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 ほのあかり まうらおめして うらとえは まうらふとまに
 あきにとる こちにひもとけ つみのかる いまはるなれは
 にしのそら たみつかれなし よしよしと みことさたまる

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 ホノアカリ マウラを召して 占問えば マウラ フトマニ
 “アキニ” 採る 「“東風に冷も融け 弊 逃る” 今 春なれば
 西の空 民 疲れ無し よしよし」 と 御言定まる

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マウラ

占問ふ (うらとふ)

フトマニ (太兆)
フトマニは占いの方法としても使われます。特定の事柄を象徴する音を、
“ア・イ・フ・ヘ・モ・ヲ・ス・シ” の8種と “ヤマ・ハラ・キニ・チリ・ヌウ・ムク・エテ・
セネ・コケ・オレ・ヨロ・ソノ・ユン・ツル・ヰサ・ナワ” の16種を組合せた3音から選び、
その3音から意味を導き出して、事柄の本質を読み解きます。

 アマテルは八百万の守に御言宣して、このフトマニをモトウラ(基)とする
 歌を詠ませ、自らが編者となって添削し、128歌を選んで占いの基盤とします。
 これを “モトラツタエ(基伝え)の文” といいますが、それ以後はこの文に記される
 歌を以てフトマニと呼ぶようにもなります。

 “モトラツタエの文” の128歌は、アーヤマ、アーハラ、アーキニ ・・・、・・・、・・・、
 シーヰサ、シーナワ の各々に、その3音をテーマとする歌が当てられており、
 占おうとする者は 128種の組み合わせの内から3音を選び、その歌によって
 事柄の本質を得て、その状況下における行動指針とします。


■アキニ
マウラが選んだ128種の中の3音です。
“アキニ” に当てられている モトラツタエの歌の全文はこうです。

 アキニとは 東風に冷も融け 弊逃る 噤み心の 張ぞ来にける 〈フ-3〉


■東風に冷も融け弊逃る (こちにひもとけつみのがる)
コチは語源不明ですが、辞書は 東風 と当てて 「春の東風」 と説きます。
“ヒ(冷・氷)も融く” は 「冬の厳しい寒さが緩む」 ということでしょう。
ツミは ツエ(費・潰)の変態で、ツイエ(費え・弊え・潰え)と同義です。
「費え・消耗・疲弊・損失」 などを表します。
ですから 「春の東風に冬の寒さによる疲弊を逃れる」 という意です。


■西の空 (にしのそら)
“西” は 「コチ(東風)が吹き込んで冷を融く方角」 です。
またテルヒコ一行が これから向かおうとしている方角でもあります。
“空” は この場合は 「天の下・人が住む空間」 を意味します。 ▶空(そら)

 

【概意】
ホノアカリはマウラを召して占うと、マウラはフトマニの “アキニ” を採る。
「“東風に冷も融け弊逃る” 今は春なれば西の空の下は <東風が吹き込み> 民の疲れも無し。
<ゆえにその東風に乗る帆船で西に向うは> 吉々」 と、御言宣が定まる。

 

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 ににきねと たちからとゆく ひたかみの
 きみおをかみて よしおつけ
 のちにみまこと たちからと いさわにかえり かえことす

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 ニニキネと タチカラと行く ヒタカミの
 君を拝みて 由を告げ
 後に御孫と タチカラと イサワに帰り 返言す

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■ヒタカミの君 (ひたかみのきみ)
クシタマホノアカリとニニキネの父 「オシホミミ」 を指します。
この時点での国家君主で、ヒタカミのタカノコフを都としています。 ▶タカノコフ


由 (よし)

イサワ

返言 (かえこと)

 

【概意】
ニニキネとタチカラヲはその足でヒタカミに行き、
ヒタカミのオシホミミ君に拝謁して事情を告げた後、
御孫とタチカラはイサワに帰って神に報告する。

 

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 ときにすめみこ いわくすの ふねおもふけて
 まらかおち あまつははらお ふなおさに
 まらはかちとり あかうらお ふなこつかさに
 あかまろと あかほしものお そえかこに まうらはかせみ

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 時に皇御子 斎奇の 船を設けて
 マラが叔父 アマツハハラを 船長に
 マラは舵取り アカウラを 船子司に
 アカマロと アカホシ モノを 添え水手に マウラは風見

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■皇御子 (すめみこ)
「皇となる予定の御子」 の意で、今風に言えば 「皇太子」 です。
クシタマホノアカリ(斎名:テルヒコ)を指します。


イワクスの船 (いわくすのふね)
イワ船 と同じです。


■マラ
アマツマラ の略です。


■アマツハハラ
アマツマラの叔父で、旧事記には 天津羽原 と記されます。


アカウラ

■船子司 (ふなこつかさ)
「船員の司・船長(ふなをさ)・船頭」 です。 ▶ふなこ


アカマロ

アカホシ

■モノを添え (ものおそえ)
「モノノベを添えて」、つまり 「人夫を増員して」 という意です。 ▶モノ


水手・水夫 (かこ)
「船の漕ぎ手」 をいいます。
カコは カク(掻く)の名詞形で、“掻く” は “漕ぐ” の変態です。


■風見 (かぜみ)
「風の向きや強さを見る者」 をいうのでしょう。

 

【概意】
時に皇御子はイワクスの船(=巡幸用の船)を設けて、
アマツマラの叔父のアマツハハラを船長に、マラを舵取り、アカウラを船子司に、
アカマロとアカホシは モノノベを添えて漕ぎ手とし、マウラは風見とす。

 

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 つくもより いつのみさきに ほおあけて おきはしるめは
 おほそらお はるかにかけり みくまのの みやゐおかみて

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 ツクモより 逸の岬に 帆を上げて 沖走る目は
 大空を 遥かに駆けり 御隈野の 宮居拝みて

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■逸の岬・伊豆の岬 (いつのみさき)
イツ(厳・稜威・逸)は ここでは 「並外れるさま・抜きん出るさま」 をいいます。
ミサキ(岬)は 「突出・突起」 を意味します。
ですから 「並外れて大きな 陸の突出」 である 「伊豆半島」 をいいます。

 ★岬・崎・碕 (みさき)
 ミス+サク(離く・放く) の同義語短縮 “ミサク” の名詞形で、
 両語とも 「離れるさま・放つさま・突き出すさま」 を意味します。
 ミスは ミステル(見捨てる)ミサカイ(見境い) などの母動詞ですが、
 “見” を当て字するため、今は意味が少し変わっています。


■帆 (ほ)
ホフという動詞の名詞形の短縮で、ホフは オフ(覆ふ)の変態です。
「覆い・包み・含み・ふくらみ」 などが原義です。


■沖走る目 (おきはしるめ)
船が 「沖を走る見た目・姿・様子」 をいいます。
“走る” は この場合は 「まわる・めぐる・行く」 の意です。 ▶走る

 ★沖・奥 (おき)
 オクの名詞形で、オクは アク(空く)・ワク(分く・別く) などの変態です。
 「間隔が空いている所・遠く離れる所・奥深い所」 を意味します。


大空・▽覆空 (おほぞら・おおぞら)
オホ(▽覆)+ソラ(空) で、オホは オフ(覆ふ)の名詞形です。
「地を覆う空間・地にかぶさる空間」 の意です。

 ★空 (そら)
 ソル(剃る・逸る)の名詞形で、「離れ・空き・からっぽ」 などが原義です。
 アキ(空き)、ウツホ/ウツロ(空・虚)、カラ(空)、スキ(空き・隙) などと同義です。


■駆けり (かけり)
カク(駆く)+ナリ(断定) の短縮です。

 ★駆く掻く (かく)
 コク(漕ぐ)の変態で、「行き来する/させる・回る/回す・巡る/巡らす」 が原義です。
 ですから ハシル(走る) の換言です。


■御隈野の宮居 (みくまののみやゐ)
「隈の神を祀る宮」 をいい、かつて二尊が紀州を都とした時の宮の跡と思います。 ▶隈の神
場所は現在の和歌山県新宮市の神倉山周辺と考えます。 ▶御隈野 ▶宮居

 神倉神社 (かみくらじんじゃ)
 和歌山県新宮市神倉1-13-8。 
 現在の祭神:高倉下命
 ・神倉山は熊野権現の降臨地とされる。
  神倉神社は熊野速玉大社奥院といわれ、熊野根本神蔵権現とも称された。

 

【概意】
ツクモより伊豆の岬に帆を上げて、沖を走る姿は大空を遥かに駆けるようであった。
御隈野の宮居を <海上より> 拝みて、

 

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 なみはより かもにていたる いかるかの みねよりとりの
 しらにはに あまのいわふね おほそらお かけりめくりて
 このさとの なおもそらみつ やまとくに

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 浪速より カモにて到る イカルカの 峰より ‘とり’ の
 領庭に 和のイワ船 大空を 駆けり巡りて
 この里の 名をも “空みつ 和国”

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■浪速 (なみは・なみはや)
ナミ(波・浪)+ハヱ(栄え) の意で、「波が高く激しい海域」 をいいます。

 後世 海の水位が下がって陸が現れると、
 ナニワ(難波・浪速・浪花)・ナンバ(難波)・ナダ(灘) などの地名となります。


■カモ (鴨)
これは “カモ船” をいいます。鴨が足を前後に掻いて泳ぐさまを見て造った船で、
「櫂漕ぎ船」 をいうと考えられます。

 テルヒコ一行は ツクモからワニ船 (帆船) で浪速まで来て、ここからは
 カモ船 (櫂漕ぎ船) に乗り換え、淀川をさかのぼって大和国を目指します。


■イカルカの峰 (いかるかのみね)
「宮/都の峰・宮/都の山」 という意です。
そしてこれは 「生駒山」 をいうと考えますが、その理由は次回に述べます。

 ★イカルカ・イカルガ (斑鳩)
 イカル(怒る)+カ(処) で、“怒る” は 「高まる」 が原義です。
 したがって 「高い所・頂・中心」 を表し、これは タカマ(高天) の換言です。
 ゆえにイカルカは 「中央政府・朝廷・都」 などを意味すると考えられます。


■とり
これは “本日のとりを務める” と言う場合の “とり” で、トリ(▽踊り)と同源です。
「1巡/1周の完了・あがり」 が原義で、この場合は 「終点・ゴール・最終到達地」 を意味します。

 じつはこのトリには、もう1つ別の意味が掛けられているのですが、
 それは次回の講座でお話します。


■領庭 (しらには・しらにわ)
シラ(▽領)は シル(領る)の名詞形で、「知行・治め」 の意。ニハ(庭)は 「場」 と同じです。
ですから 「治めの場所・政所」 をいい、つまり 「朝廷」 です。

 これはシラス(領州)の換言で、またイカルカの換言でもあります。
 そのため “イカルカの峰” は シラニハヤマ(領庭山) とも呼ばれます。


■和のイワ船 (あまのいわふね)
「和して恵る船・ほどよく調えて恵む船」 という意で、「巡幸の船・御幸の船」 をいい、
イワ船イワクスの船 と同じです。 ▶和して恵る ▶和照らす

 
■駆けり恵る (かけりめぐる)・駆け恵る (かけめぐる)
カケル(駆ける)メグル(恵る) の連結で、両語とも 「回る/回す・めぐる/めぐらす」 が原義です。
この場合は 「巡って恵む・御幸する・巡行する」 の意となります。
“駆ける” は “駆く” の連体形から派生した動詞です。


里 (さと)
「イカルカの峰の麓・裾野」 をいいます。

■空みつ和国 (そらみつやまとくに)
場所は大和国 (現在の奈良県) をいうわけですが、多くの意味が重なります。
総合すると、「空を巡って、天が下を恵みつつ来た、皇太子が満たす、中央の和の国」
というような意味となります。

 ★そらみつ (空回つ/空見つ・空満つ)
 1.を巡る。 2.天が下を恵る。 3.空つ彦が満たす。

 ★和国 (やまとくに)   ▶ヤマト
 1.調和の国。 2.中央。中国おのころ

 

【概意】
浪速よりカモ船にてイカルカの峰に到り、それより終点の領庭に。
和のイワ船が大空を駆け恵って来たれば、この里の名をも “空みつ和国” と。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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