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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第81回 [2023.11.28]

第十六巻 孕み謹む帯の文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 はらみつつしむおびのあや (その2)
 孕み謹む帯の文 https://gejirin.com/hotuma16.html
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 いつしかひめも はらむよし あめにつくれは みことのり
 こもりにこれお とはしむる ひめきみあひて みたねうむ
 みはたおこえは こもりたも みめのいろせに ならひきと

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 いつしかヒメも 孕む由 陽陰に告ぐれば 御言宣
 コモリにこれを 訪わしむる ヒメ君会ひて 御胤生む
 機を乞えば 「コモリだも 御姫の愛背に 習ひき」 と

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■ヒメ
アマノコヤネの妻となったタケミカツチの一人姫の通称です。


由 (よし)
ヨス(寄す)の名詞形で、「寄り・寄せ」 と同じです。多くの意味に使われますが、
この場合は、ある物事を引き寄せた 「経緯・次第・由来・由緒・理由・いわれ」 などを表します。


陽陰 (あめ)

コモリ (子守)


■御胤・神胤 (みたね)
ミ(御)は カミ(上・神)の略形、タネ(胤)は 「続き・連なり・後継・末裔」 を意味します。
ですから 「尊き子孫・神の末裔」 などの意ですが、この場合は 「人間の子」 をいいます。
すべての人間は アメミヲヤの分け身であるためです。 ▶胤

・万の齢の 尊・彦 やや千節保つ 民も皆 クニトコタチの 後末なり
 その元ふつく アメミヲヤ 〈ホ14-2〉
・青人草の 悉く アメノミヲヤの 賜物と 守らぬは無し  〈ホ17〉


■機 (みはた)
ミ(‘見る’の連用形)+ハツ(▽合つ)の同義語短縮 “ミハツ” の名詞形で、ハタ(機)と同じです。
「合わせ・編み・交わり」 が原義で、「経と緯(陽と陰)の交わりがつくるもの」 をいい、
ここでは 「経緯(けいい)・いきさつ・仕組み」 などを意味します。
14アヤでは ヨツギノアヤ(代嗣の綾)ヨツギノハタ(代嗣の機) と呼ばれています。

・時にアマテル 大御神 代嗣の綾を 織らんとす 〈ホ14-2〉
代嗣の機を 織らんとて 杼投ぐる数の 代嗣子を 〈ホ14-6〉


だも

■御姫 (みめ)
ミ(御)は カミ(上・神)の略形で、メ(姫・女)の敬語です。よって “姫君” の換言です。


■愛背 (いろせ)
ここでは 「夫」 をいいます。 ▶せ(背・夫)

 ★いろ (▽愛)
 イロは イル(入る)の名詞形で、イルは ヨル(寄る)の変態です。
 「心を寄せるさま・寄り添うさま・親しいさま」 を表します。
 “愛” は筆者の宛字です。

 

【概意】
いつしかヒメも孕み、その次第をアマテル神に告げれば、
御言宣ありて、コモリにこれを往診させる。
ヒメ君はコモリに会って、御胤を生む経緯を乞うと、
「コモリだって御姫の夫君に習ったのであるよ」 と。

 

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 ひめはかえして いといなや いろせにとはは あちもまた
 よそにとわんと おもふなり こころまよえは をしゑこふ
 ここにこもりの みたねふみ

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 姫は返して 「いといなや 愛背に問わば 彼方もまた
 “よそに問わんと 思ふなり 心迷えば 教え乞ふ”」
 ここにコモリの 御胤文

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■いといなや
「とても変だわ・たいそうおかしいわ」 などの意です。

 イトは 「とても・たいそう・はなはだ」 などの意です。
 イナヤは イナ(否・辞・異な)+ヤ(終助詞) で、イナは イヌ(往ぬ去ぬ)の名詞形。
 「離れる・逸れる・外れる・曲る・異る」 などが原義です。


彼方 (あち)
「あっち・あちら」 です。ここでは 愛背=コヤネ を指します。


■御胤文 (みたねふみ)
「神の末裔を生む伝え・人の子を生む教え」 というような意です。

 ★文 (ふみ)
 フミ(文)は フム(▽振む)の名詞形です。フムはフル(振る)の変態で、
 「回す・めぐらす・伝える」 などの意です。
 ですからフミは 「伝え・何かを伝えるもの」 という意です。

 

【概意】
「それはとても変だわ。夫に問いましたら、あちらもまた
“他の人に尋ねようと思うのだ。心迷うゆえ教えを乞う”
と申しておりました」 と 姫が言葉を返せば、
ここにコモリの御胤文。

 

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 あめつちいまた わかさるに ういのひといき まとかにて
 みつにあふらの めをわかれ をまつのほりて あめとなり
 めはのちくたり くにとろの はにみつわけて はにはやま
 みつはうみなり をのうつほ かせとうこきて ほとはける

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 天地いまだ 分かざるに 初の一息 まどかにて
 水に油の 陰陽分かれ 陽まず上りて 天となり
 陰は後下り 地泥の 埴・水 分けて 埴は山
 水は海なり 陽の空 風と動きて 火と化ける

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   ホツマ・ミカサの7か所に記されている天地創造説話の一つです。

天地 (あめつち)

初の一息 (ういのひといき)

■まどかにて (円かにて)
マドカ(円か)は マツ(全つ)+カ で、カは シク(如く)の名詞形 “シカ” の略です。
「(太陽や満月のように) 欠けのないさま・完全なさま・円満」 を意味します。
“まどかにて” は 今風に言えば、「まるで」 です。


■水に油の陰陽分かる (みづにあぶらのめをわかる)
「(まるで)水と油のように陰と陽が分かれる」 という意で、
「陰は重く、陽は軽い」 ことを示しています。


■地泥 (くにどろ)
クニ(地)の泥」 の意で、ドロ(泥)は 「水と埴の混合」 をいいます。

 ★どろ (泥)
 タル(垂る)の変態 “トル” の名詞形で、「ゆるむさま・たるむさま」 が原義です。
 “とろい”  “とろみ”、また “とろとろ煮込む” などのトロです。


埴 (はに) ■水 (みづ) ■空 (うつほ) ■風 (かぜ) ■火 (ほ・ひ)

 

【概意】
天も地も いまだ区別のない頃に、
アメミヲヤの初の一息が、まるで水と油のように陰と陽とに分かれ、
陽が先ず上昇して天となり、陰は後に下降して地となる。
地の泥は 埴と水に分かれ、埴は山となり、水は海となる。
陽の空は 風となって巡り、また火と化ける。

 

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 をせのむなもと ひとまろめ あちかくめくり をにくはる
 いものみなもと つきとこる はにちかきゆえ めにくはり

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 背の棟元 日と丸め 天近く巡り 陽に配る
 妹の穢元 月と凝る 地に近きゆえ 陰に配り

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背の棟元 (をせのむなもと)
ムナモト/ムネカミ と同じです。


■天近く巡る (あちかくめぐる)
「天の近くを巡る」 という意で、“日(太陽)が中節の外側の軌道を回る” ことをいいます。

・日の道は 中節の外 月は内 〈ホ13-2〉


■陽に配る (をにくばる)
これは 日(太陽)が、日の潤を 「陽 (空・風・火・男) に供給する」 ことをいいます。


妹の穢元 (いものみなもと・いめのみなもと)
ミナモト/ミナカミ と同じです。


■地に近きゆえ (はにちかきゆえ)
「地の近くを巡るゆえに」 という意で、“月(太陰)が中節の内側の軌道を回る” ことをいいます。


■陰に配る (めにくばる)
これは 月(太陰)が、月の潤を 「陰 (水・埴・女) に供給する」 ことをいいます。

 

【概意】
陽の極みを “日” と丸め、天近くを巡り、陽にエネルギーを配る。
陰の極みは “月” と凝り、地の近くを巡るゆえ、陰にエネルギーを配る。

 

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 うつほかせほと みつはにの ゐつましわりて ひととなる
 のちはいもをせ とつきうむ

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 空・風・火と 水・埴の 五つ交わりて 人となる
 後は妹背 とつぎ生む

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■後は (のちは)
ウビチニ&スヒヂ以前は 人に男女の別がありませんので、
“後は” といっても、「人が男女に分かれた後は」 という意味になります。


■妹背 (いもをせ)
イモセイセと同じです。ここでは人間の 「女男・夫婦」 をいいます。


とつぐ

 

【概意】
空・風・火 と 水・埴 の5つが交わり人となる。
後は 人の女男は交合して子を生む。

 

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 をははにむかひ とつくとき かりのししなみ ほねあふら
 めはあにむかい ましわりの かねのにしなき とわたなす

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 男は地に向ひ とつぐ時 カリの繁波 髄油
 女は天に向い 交りの 兼ねの和霊 和ぎ とわたなす

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■カリの繁波 (かりのしじなみ)
背の潤波(をせのうるなみ)父の波(ちちのなみ) などの換言です。
「陽の活発なエネルギー」 というような意味です。

 ★カリ
 カル(▽上る) の名詞形で、陽陰の分離過程で、先に上昇した 「陽」 を意味します。

 ★繁 (しじ)
 チチ(千々)の変態です。「盛るさま・活発なさま」 が原義で、これは陽の性質を表します。

 ★波 (なみ)
 “固体” の反対の概念で、「動的なさま」 を表し、この場合は 「霊・精・エネルギー」 をいいます。


■髄油 (ほねあぶら)
「陽の油・陽のエネルギー」 などの意です。
“カリのシジ波” の物質的な現れで、「精液」 をいいます。

 ★ホネ (骨・▽髄・▽本)
 ホヌ(▽秀ぬ)の名詞形で、「高み/中央にあるさま・精髄・本質」 が原義です。
 ホネ(骨・▽髄)と シシ(肉)は 「先にある骨組みと、後にそれに付く物」 であり、
 両者は 「先と後・主と副・元と末」 の関係にあります。
 陽陰の分離過程で、陽はに上って天となり、陰はに下って地となることから、
 肉に先立つ “骨” は 「陽」 の意味を持ちます。

 ★アブラ (油)


■兼ね (かね)
カヌ(兼ぬ)の名詞形で、「合わせ」 を原義とし、この場合は 「相方・対・ペア」 などの意です。


■和霊 (にし・にち)
妹が霊(いもがち)母の和霊(ははのあかち) などの換言です。


■和ぐ (なぐ)
やわす」 と同義です。
このヤワスは 「陽(男)からの働きかけに、陰(女)が協力的に応ずる」 ことをいい、
陰(女)に固有の性質です。ヰココロ(▽妹心)、ヰミチ(▽妹道) などと呼ばれます。

 また 上の “兼ね” がこれにかかって、“兼ね合ふ” の意になります。


■とわた (▽迸た)
“トハツ” の名詞形で、トハツは トバス(飛ばす)の変態です。「飛ばし・放出」 が原義で、
トバシリ(迸り)
ホトバシリ(迸り)ツバ(唾) などの同義語です。
この場合は いわゆる 「愛液」 をいうのでしょう。

 

【概意】
男が地に向って交合する時、背の潤波は精液となり、
女は天に向えば、相方の和霊が応じて交わりの液を放出する。

 

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 ちちのかりなみ たましまえ しはするときに ちなみあひ
 ひるはにうえに ひたのほり よるはしうえに みきくたり

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 チチのカリ波 玉島へ 締する時に 因み合ひ
 昼は “和” 上に 左昇り 夜は “繁” 上に 右降り

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■チチのカリ波 (ちちのかりなみ)
カリの繁波 の換言です。つまり 「背の潤波日の潤日の神霊」 です。


■玉島 (たましま)
ここでは “玉島川の内宮” をいうものと思います。


■締する (しはする)
シハスの連体形です。シハスは シフ(▽締ふ)+ハス(▽合す) の短縮で、
「締まる・攻める・押し迫る・近づく」 などの意を表します。

 ★シハス・シワス (十二月・師走)
 シハス(▽締す)の名詞形が 陰暦12月の別名 「師走」 で、
 「締めの月・押し迫る月」 という意です。

 
因み合ふ/霊波合ふ (ちなみあふ)

 以後、受精日を1月1日と仮定して妊娠過程が説明されます。
 陰暦1月は 「睦む(むつむ)月」 という意で、ムツキ(睦月) と呼ばれますが、
 これは 「繁波と和霊が睦む(=因み合う)月」 という意と考えます。


■和 (に) ■繁 (し)
和(に)は ニシ(霊)の略、繁(し)は シジナミ(波)の略です。


■左昇る (ひだのぼる) ■右降る (みぎくだる)
これは 「東から昇って西に降る」 と同意で、日月の巡る方向に、
“繁波” と “和霊” が 二つ巴となって 「回転する」 ことをいいます。
この回転が胞衣を形成しつつ 精骨(=胎芽)を育成します。

 

【概意】
チチのカリ波が玉島の奥に迫る時に和霊と因み合い、
昼は和霊が上に昇り、夜は繁波が上に昇るため、
時計まわりに1回転する。


 14アヤでは次のように語っています。
 父の波 母の和霊と 因み合ひ 昼は霊上り 夜は波の 上る日月の 一回り 〈ホ14-3〉

 

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 あすふためくり みめくりと みそかにはみそ
 みそひふみ みかたりゆるむ たらむとて ははのつつしみ

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 翌日二巡り 三巡りと 三十日には三十
 三十一・二・三 三日弛り緩む “タラム” とて 母のつつしみ

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■三十一・二・三 (みそひふみ)
「31日目・32日目・33日目」 ということです。元日を受精日としますと、
これはおおよそ 2月1日・2日・3日 にあたります。


■弛り緩む (たりゆるむ)
タル(垂る・▽弛る・▽怠る・▽惰る)+ユルム(緩む) の同義語連結で、
「たるんで緩む」 の意です。これは 2月1日〜3日 の3日間は
「回転数が増えない」 ことをいうように思います。


■タラム
上の 「弛り緩む時期」 を表す名称のようです。
今風に言えば “たるみ” とか “たゆみ” でしょうか。


■つつしみ (慎み謹み)
ツツシム(慎む・謹む)の名詞形で、現在の意味とは少し異なり、
「心すること・留意・配慮・注意・調え・正し」 などの意を表します。

 

【概意】
翌日には2回、翌々日は3回と巡り増し、
30日目には30回転となる。
31日目、32日目、33日目 の3日は たるんでゆるむ。
これは “タラム” と呼ばれ、母の注意を要する時である。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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