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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第19回 [2023.7.31]

第五巻 和の枕言葉の文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 わかのまくらことばのあや (その2)
 和の枕言葉の文 https://gejirin.com/hotuma05.html
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 はなのもと うたおをしゑて こおうめは
 なもはなきねの ひとなりは いさちおたけひ しきまきや
 よのくまなせは ははのみに すてところなき よのくまお
 わかみにうけて もろたみの かけおつくなふ
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 木の下 歌を教えて 子を生めば
 名もハナキネの 人態は いさち・おたけび しきまきや
 世の隈なせば 母の穢に 捨て所なき 世の隈を
 我が身に受けて 諸民の 欠けを償ふ 
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■木の下 (はなのもと)
この場合は 「トコヨの木の下・タチバナの下」 という意です。 ▶トコヨの木
タチバナはトコヨ (クニトコタチの時代) のシンボルであり、
二尊は トコヨの道 (調和の道) が復活した地に、この木を植えました。
したがって “トコヨの木の下” とは 「調和・平和の下に」 という意味になります。


■歌 (うた)
アワ歌 です。二尊は キシヰの地でもアワ歌を教えて民の言葉を調えます。


ハナキネ

■人態・人形 (ひとなり)
「人のなり・人としての有様」 をいいます。 ▶なり


■いさち ■おたけび
いずれも 「いきりたつ・いきまく・激昂する・憤怒する」 などの意で、
その感情を外に噴出する行動 (叫ぶ・わめく・騒ぐ・暴れる) を含みます。
▶いさちる ▶おたけび


■しきまき
いきまき(息巻き) と同義です。これも “いさち”  “おたけび” の類義語で、
「いきりたつ・荒れ狂う・激昂する・憤慨する」 ことをいいます。

 日本書紀は “重播・頻播” と当てており、
 「穀物の種子をいったんまいた上に、またまいて、その生長を妨げること」
 と解釈されていますが、それは誤解と考えます。


■世の隈 (よのくま)
「世の災厄・社会の弊害・世間の迷惑」 などの意です。
クマ(曲・隈・阿) は ケガレ(穢れ) や ヲヱ(汚穢) の同義語で、
「曲り・逸れ・外れ・不調/異常」 などが原義です。


■母の穢 (ははのみ)
ミ(穢)ヲヱ(汚穢) の同義語です。母の穢(ははのみ) というのは、
陽陰の循環
が乱れる時に 子 (ソサノヲ) を孕んでしまった誤ちをいいます。

陽陰の巡りの 蝕みを 見るマサカニの 中濁りて
 生むソサノヲは 霊乱れ 国の隈 生す 誤ちぞ 
〈ホ7-7〉
・誤りて 
穢るる時に 孕む子は 必ず粗るる 〈ホ7-7〉

 

【概意】
調和の下、民にアワ歌を教えている頃、子を生み、ハナキネと名づける。
その人としての有様は、常にいきり立って激昂、息巻くの態で、世の災厄となった。
もとは母の汚穢に起因する 捨て所のない世の災厄を、
イサナミは我が身に受けて、諸民の損害を償う。



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 みくまのの みやまきやくお のそかんと
 うむほのかみの かくつちに やかれてまさに おわるまに
 うむつちのかみ はにやすと みつみつはめそ
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 御隈野の 御山木 焼くを 除かんと
 生む火の神の カグツチに 焼かれてまさに 終る間に
 生む土の神 ハニヤスと 水 ミヅハメぞ
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■御隈野・神隈野 (みくまの)
クマノ(隈野) は 「曲り・穢れの地」 という意の普通名詞で、他所にもありますが、
ミクマノ(御隈野) は 「紀州の熊野」 を指す固有地名です。
ミ(御) は 死後 クマノカミ(隈の神) と贈り名される、イサナミに対する敬意を表します。
場所は 神倉山の麓、ほぼ今の新宮市と考えています。

 和歌山県神社庁のHP
 「熊野という地名は “隈の処” という語源から発しているといわれている」
 と書いています。


■御山 (みやま)
この 御(み) は、キシヰの宮 が置かれた山に対する尊敬を表すのでしょう。
現在の 神倉山(かみくらやま) と考えます。


■カグツチ
「火を治める自然神」 です。記紀には 迦具土神/軻遇突智 と記されます。
イサナミは火の神のカグツチを生み、向い火 を放つことで、火の勢いを
弱めようとしたものと思います。

 ★カグ・カク (迦具・▽輝・▽篝・香・香具)
 この場合は 「火・光・熱・燃焼」 などを意味します。
 
 ★ツチ・ツツ (▽治・土・筒)
 ツツム(包む)・ツヅル(綴る) などの母動詞 “ツツ” の名詞形で、
 「統べ・まとめ・治め」 などの意を表します。


■終る間 (おわるま)
「世を終える間・死の間際・臨終の時」 などの意です。

 
■ハニヤス・ハニヤス姫 (はにやすめ)
「埴(土)を治める自然神」 です。記紀には 波邇夜須/埴安神 と記されます。
“埴” は陰の属性であるため、“ハニヤス姫” とも呼ばれます。

 ハニ(埴)+ヤス(▽和) で、ヤス は 「合わせ・まとめ・調え・治め」 などの意です。


■ミヅハメ
「水を治める自然神」 で、記紀には 弥都波能売/罔象女神 と記されます。

 ミヅ(水)+ハメ(▽侍) で、ハメ は ハベ(侍) の変態。
 「合わせ・守り・世話・支え・治め」 などの意です。

 

【概意】
御隈野の御山の木を焼くのを除こうと、生んだ火神のカグツチに
逆に焼かれて、まさに終ろうとする間際に生む、
土の神ハニヤスと、水の神ミヅハメぞ。


 ここではイサナミが カグツチ・ハニヤス・ミヅハメを生んだように
 書かれていますが、別の説明もあり、それは21・22アヤに現れます。



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 かくつちと はにやすかうむ わかむすひ
 くひはこくわに ほそはそろ これうけみたま
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 カグツチと ハニヤスが生む ワカムスビ
 首は蚕桑に 臍はソロ これウケミタマ
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■ワカムスビ
「衣食を結ぶ神霊」 です。記紀には 和久産巣日神/稚産霊 と記されます。
ウケミタマ(宇迦御魂・稲魂)アカヒコ(赤日子) などとも呼ばれます。

 ワカは、アカ・ウカ・ウケ・ミケ・イカ・イケ などの変態で、
 イケ(生け・活け) を原義とし、「生け活かすもの・生活の支え」 を意味します。


首・頭 (くび・こふ・こう・かふ)

■蚕桑 (こくわ)
「蚕と その餌の桑」 で、つまり 「絹織物を作る材料」 です。 ▶蚕(こ) ▶桑(くわ)
コ(蚕) は コノコ(籠の子) の略で、コ(籠) は 「囲み・包み・衣」 が原義です。
ですから 「繭に籠る子」 をいいます。 ▶籠(こ) ▶繭(まゆ)


臍・蔕・枘 (ほぞ)
ヘス(圧す) の変態 “ホス” の名詞形で、「合わせ・結び・つなぎ・連結」 などが原義。
ホダ(絆)ヘソ(臍)ヘタ(蔕) などの変態です。


■ソロ (▽揃・▽繁)
ソロフ(揃ふ) の母動詞 “ソル” の名詞形で、「備わるさま・充足・実り」 などを原義とし、
ここでは 「農作物」 また特に 「稲」 をいいます。


ウケミタマ・ウケノミタマ (宇迦御魂・倉稲魂・稲魂)
ウケ(▽活)+ミタマ(神霊)で、「生け活かす神霊・生活を支える神霊」 の意です。
これはつまり 「衣食をもたらす神霊」 であり、ワカムスビ の別名です。
ウケカミ(▽活神)、イナルカミ(稲荷神) などとも呼ばれます。

 ★神霊・御霊 (みたま) ★霊 (たま)
 ミ(上・神・御)+タマ(霊) の連結で、両語とも 「上位存在・上澄み・本質・精髄・エッセンス」
 などを原義とし、「神・霊・心・意識・中子・たましい」 などの同義語です。

  ミ は カミ(上・神) の略形です。タマ(▽尊・霊・珠・魂) は タム の名詞形で、
  タム は タフトム(尊む) の タフ の変態。やはり 「上にあるさま・貴いさま」 を表します。

 

【概意】
そのカグツチとハニヤスはワカムスビを生み、
その頭は蚕と桑となり、臍は稲に。
これがウケミタマである。



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 いさなみは ありまにおさむ はなとほの ときにまつりて
 ここりひめ やからにつくる いさなきは おひゆきみまく
 ここりひめ きみこれなみそ なおきかす
 かなしむゆえに きたるとて
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 イサナミは アリマに納む 花と火の 伽に纏りて
 ココリ姫 族に告ぐる イサナギは 追ひ行き見まく
 ココリ姫 「君これな見そ」 なお聞かず
 「悲しむゆえに 来たる」 とて

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■アリマ (有馬)
この アリマ は、“オワリマ” (終り間) の短縮だと思います。
さきほど出てきた オワルマ(終る間) は 「終りの時」 を意味しましたが、
この オワリマ はイサナミの 「終りの場・葬られた場所」 を表します。
現在の 三重県熊野市有馬町 です。

 花窟神社 (はなのいわやじんじゃ)
 紀伊国牟婁郡。三重県熊野市有馬町上地130番地。 
 現在の祭神 :伊弉冉尊 配 軻遇突智命
 ・この窟は、伊弉冊尊が軻遇突智尊を産み、灼かれて亡くなった後に葬られた御陵。
  この窟の南に岩があり、軻遇突智神の神霊を祀る。


納む (おさむ)
この オサム は 「結ぶ・閉まる/閉める・仕舞う・終る/終らす」 などの意です。
この場合は 「葬る・埋葬する」 の意になります。


■花と火の伽 (はなとほのとぎ)
「花と火の添え物・花と火のお供え」 の意に解釈しています。
花と火は、ハナキネが山林に放ったを、イサナミがその身に
受け止めたことを表すモノザネと考えます。 ▶モノザネ

 トギ(伽・) は トク(着く) の名詞形で、トク は ツク(着く・付く) の変態です。

 とく【着く】〈広辞苑〉
 (ツクの転) 到着する。つく。

[花の窟公式HPより]
祭日毎年二月二日、十月二日両度なり。寛文記に 昔の祭日には 
紅の縄、錦の幡、金銀にてを作り散らし、の祭と云ひしとあり。


纏る (まつる)
これは 「喪纏り」 をいいます。

 ★喪纏り (もまつり)
 モ(喪)は モフ(▽回ふ・▽舞ふ) の名詞形 “モハ” の短縮で、
 「還り/還し・送り・あがり」 などを意味します。喪=葬=送 (そう) です。
 マツリ(纏り) は 「取りまとめ・調え・手当て・処置」 などを意味します。
 ですから 「死者の送還のための処置」 の意で、今に言う 「喪儀葬儀」 です。


■ココリ姫 (ここりひめ)
イサナキの姉妹の シラヤマ姫 の別名です。
赤子アマテルの声を 「聞き切る姫」 という意味のキクキリ姫が、「菊桐姫」 の意に転じ、
さらにまた “ココリ姫” へと訛ります。

 白山比盗_社 (しらやまひめじんじゃ)
 加賀国石川郡。石川県白山市三宮町ニ105-1。 
 現在の祭神:白山比淘蜷_ (菊理媛神:くくりひめのかみ)


族 (やから)
ナカマ(仲間) の変態ではないかと思案中です。

 ヤカラは ヤク(▽和く)+カル(▽交る) の名詞形。
 ウカラは ウク(受く)+カル(▽交る) の名詞形。
 ナカマは ナク(和ぐ)+カム(▽交む) の名詞形。


■見まく (みまく)
ミム(見む) の ク語法 です。ミム は ミ(‘見る’ の連用形)+ン(意志) の変形です。
ここでは「見ようとするさま/こと・会おうとするさま/こと」の意となります。


■な見そ (なみそ)
「な」+「動詞の連用形」+「そ」 の形は、ゆるやかに禁止する意を表します。
ここでは 「見てはなりませぬ・見ないでください」 などの意になります。


■悲しむ (かなしむ)
カナシ(悲し)+シム(染む) の短縮で、形容詞を動詞化した語です。
“かなし” は 「かなわない・どうすることもできない」 が原義で、
自分の非力さを嘆く言葉です。

 ★悲し・哀し愛し (かなし)
 
カヌ(兼ぬ)シ(▽如・▽然) で、「かなわぬ如し」 が原義です。

 

【概意】
イサナミはアリマに葬る。花と火を供えて喪儀を行い、
ココリ姫はその事を仲間に告げる。
それを聞いたイサナキは、追い行きて会いに行こうとする様子。
ココリ姫は 「君はこれを見てはなりませぬ」 と止めるも、なお聞かず、
「悲しむゆえに来たのだ」 と言って、

 

本日は以上です。それではまた!

 

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