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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第41回 [2023.9.11]

第八巻 霊還しハタレ打つ文 (8)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 たまかえしはたれうつあや (その8)
 霊還しハタレ打つ文 https://gejirin.com/hotuma08.html
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 ちわやより あめゑのみちか をんかみに ことかたらんと
 よはらしむ きみいふきとに しつめしむ

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 チワヤより アメヱノミチが 御神に 「言 語らん」 と
 呼ばらしむ 君 イブキトに しつめしむ

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■チワヤ (千早・知和夜)
ちわやふる” の ‘ちわや’ に由来すると思われる地名ですが、場所は不明です。
候補としては、千早城があった現在の大阪府南河内郡千早赤阪村。
また津秦天満宮の所在地は、古くは “知和夜の森”、“千早の杜” と呼ばれたといいます。


アメヱノミチ・アヱノミチ

■イブキト
イブキトヌシ の略です。

 
■しつむ (▽執む・為集む・鎮む)
為集む鎮む と同一ですが、「うまくまとめる・治める・調える・処置する」
などが原義で、マツル(纏る) と同義です。「下げる・低める」 の意ではありません。

 この時にもアマテルは御幸していますが、アメヱノミチとの直接交渉には、
 御使としてイブキトを差し向けたということです。

 

【概意】
チワヤよりアメヱノミチが、御神に 「話し合おう」 と、
使者をして呼びかければ、君はイフキトにこれを纏らしむ。

 

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 いふきとぬしは みゆきこし はたれかとわく かんかみか
 こたえてかみの やつこなり またとふやつこ こしはなに
 いわくなんちお やことせん ゆえにのるなり

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 イブキトヌシは 御幸輿 ハタレが問わく 「上尊か」
 答えて 「神の 奴なり」 また問ふ 「奴 輿は何?」
 曰く 「汝を 奴とせん ゆえに乗るなり」

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■御幸輿 (みゆきこし)
通常は 和つ君 以外は乗ることを許されないものですが、
この時のイブキトは君の御使であるため、御幸の輿に乗ります。
これは 「霊鳥の出車八房輿」 と同じものです。


■ハタレ
アメヱノミチの軍勢を率いるハタレ頭をいいます。これは人間です。


■上尊 (かんかみ)
「上位の尊」 という意味です。
この場合は 「中央政府の最高位者」 をいいます。


■神 (かみ)
アマテル神 をいいます。


奴・臣 (やつこ・やこ)
ヰユ(居ゆ)の名詞形 ヰヤと、ツク(付く・▽仕く)の名詞形 ツコの連結 “ヰヤツコ” の
短縮で、両語とも 「合わせ・添い・付き」 などを意味し、「居合わす者・添い付く者・
侍る者・仕える者」 などの意です。イツキ(斎)の変態で、斎は女、奴は男です。

 

【概意】
イブキトヌシは御幸輿に乗る。
ハタレが 「上様か?」 と問えば、答えて 「神の奴なり。」 
また問ふ 「奴の分際が輿とはどういうことだ?」
曰く 「汝を奴とせんがゆえに乗るなり。」

 

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 またはたれ なんちわかはゑ はちみする やつことせんと
 なりめくる はたたかみなり
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 またハタレ 「汝 若生え 恥 見する 奴とせん」 と
 鳴り巡る ハタタ神なり

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若生え (わかばゑ)

■鳴り巡る (なりめぐる)
メグル(巡る)は ここでは 「伝わる」 の意で、“響く” と同じです。


ハタタ神 (はたたがみ:霹靂神)
カミナリのことです。ナルカミ(鳴神)、イカツチ(雷)ともいいます。
さきに 「鳴神求むアヱノミチ」 とありますので、雷と関わりを持つハタレなのでしょう。

 

【概意】
またハタレは「汝 若生えめ、恥をかかすわ。奴としてくれる」と、
言うやいなや鳴り響く雷であった。

 

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 いふきとは うつろゐまねき これおけす
 むらくもおおひ くらませは しなとおまねき ふきはらふ
 ほのほおはきて むろやけは たつためまねき これおけす
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 イブキトは ウツロヰ招き これを消す
 むら雲覆ひ 暗ませば シナトを招き 吹き払ふ
 炎を吐きて 室 焼けば タツタ姫招き これを消す
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■ウツロヰ (▽空埋)
「ウツロ(空間・空気)を支配する自然神」 です。”鳴神の主” と呼ばれます。
この神は他の文献には登場せず、また とある理由により祀る神社もありません。


シナト (科戸・級長戸)・シナトベ (級長戸辺)
「風を支配する自然神」 です。

 龍田大社 (たつたたいしゃ)
 奈良県生駒郡三郷町立野南1丁目29-1。
 現在の祭神:志那都比古神(しなつひこのかみ)、志那都比売神(しなつひめのかみ)


タツタ姫 (たつため・たつたひめ)
「竜を司る自然神」 です。水界の王者である竜を駆使して、火災と高波を鎮めます。

 龍田神社 (たつたじんじゃ)
 奈良県生駒郡斑鳩町龍田1-5-6。
 昔の祭神:龍田比古大神、龍田比女大神

 ★竜・龍 (たつ・たつた・たった)
 タツ(立つ・▽達つ)の名詞形で、「成長して達したもの」 を原義とし、
 「ウロコの動物の頂点に立つもの」 を意味します。
 幼児語で “立つこと” を “たった” といいますが、これと同じく
 タツタは タツ(竜)と同じです。現在は “竜田・龍田” と当て字します。

  火の神と埴の神より生れながらも、竜は水の属性です。そのため水を操って、
  火を消したり 高波を鎮めたりする能力を持ちます。シナの伝説でも同じです。
  西洋のドラゴン(dragon)は dragの名詞形で、「(地を)引きずるさま」 を意味します。
  ですから本来は、蛇やトカゲの類を指す言葉だったと考えられます。

 

【概意】
イブキトはウツロヰを招いて雷を消す。
むら雲が空を覆って暗ませば、シナトを招き吹き払ふ。
炎を吐いて室を焼けば、タツタ姫を招いてこれを消す。

 

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 はたれむせんて このはして つふてあられに たみせめる
 みかたひれきて かくいれて うちこほさせは
 はたれまの うはひはむまに とりしはる

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 ハタレむせんで このはして つぶて霰に たみ攻める
 御方 領巾着て 香 入れて 打ちこぼさせば
 ハタレマの 奪ひ食む間に 捕り縛る

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■咽んで (むせんで)
ムセンデは ムセテ(咽せて)、ムセビテ(咽びて)」 の音便です。

 ムス(咽す)は ムスブ(結ぶ)の母動詞で、ムセブはムスブ(結ぶ)の変態。
 「結ぶ・せばまる・塞がる・詰まる」 などが原義です。


■このはす
カナワス(適わす)の変態で、「適応する・工夫する」 などの意と思います。


つぶて (飛礫・礫) ■霰 (あられ)


■たみ攻める(たみせめる)
タミは タム(回む・廻む)の名詞形で、「まわり・周囲・周辺」 をいいますが、
この場合は 「離れてるさま」 を意味し、「遠隔攻撃する」 という意です。


領巾・肩巾 (ひれ)                [画像]
「ひらひらした大きめのショール・天の羽衣」 みたいなものです。
魚の鰭(ひれ)も同源で、ひらひらと翻る(ひるがえる)ものをいいます。


香 (かぐ)
この場合は 「香の菓・橘の実」 です。


打ち (うち)

■奪ふ (うばふ)
「そらす・曲げる・外す」 などが原義で、ここでは 「気をそらす」 という意です。

 

【概意】
(消えた火の煙に)
むせるハタレは工夫して、つぶての霰で遠くから攻める。
御方は領巾を着て、中に橘を入れて打ちこぼさせ、
ハタレマが気をそらして食む間に捕り縛る。

 

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 はたれもひれし まはすはゐ みておとろけは かんかゑて
 ほらかゐふかせ まひれけし かくむさほらせ これおうつ
 はたれつちもて かみおうつ
 かみはにきてに うつつちの やれてとへらの はうちわや

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 ハタレも領巾し 回す貝 見て驚けば 考えて
 ホラ貝吹かせ マ領巾消し 香 貪らせ これを打つ
 ハタレ槌以て 神を打つ
 神は和手に 打つ槌の 破れて海桐花の 葉団扇や

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■回す貝 (まはすばゐ)
バヰは カヰ(貝)の別名です。マハスバヰは 「回す貝・貝回し
という意で、貝独楽(ばいごま・べいごま)と同じです。
これは 「領巾をかぶって回るハタレマの姿」 を喩えた表現と思われます。


■ホラ貝 (ほらがゐ)
これは “貝をホル(放る)” の意のモノザネです。
貝とは、ハタレの 「回す貝」 をいいます。


■マ領巾 (まひれ)
「ハタレ領巾」 という意味でしょう。


■和手 (にきて)
ニキ(和)+テ(手) で、「手の合わせ・手の結び・手の交え」 を意味し、
タミメ(手見目)
の換言です。


海桐花 (とべら)   [画像]


■葉団扇 (はうちわ)
アメヱノミチ の “アメヱノ” に漢字を当てると ”天狗” となりますが、
ハウチワ(葉団扇)は アメヱノミチが天狗の起源であることを裏付けるように思います。
天狗はハウチワ(羽団扇)を持つと伝えられるからです。

 八手(やつで)も “天狗の羽団扇” の別名があり、
 こっちの方が団扇のイメージにより近いです。

 

【概意】
ハタレも領巾を着てクルクル回れば、まるで貝独楽の如し。
見て驚けば考えて、ホラ貝を吹かせてハタレマの領巾を消し、
橘の実に熱中させてこれを平らげる。
ハタレは槌でアマテル神を打とうとするが、神がタミメを結ぶと、
打つ槌は破れて海桐花の葉団扇となる。

 

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 ここにはたれか むなさわき
 にくるおつかむ たちからを ついにわらひの なわしはり
 なんちやつこと なすへきや なるやといえと ものいわす

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 ここにハタレが 胸騒ぎ
 逃ぐるを掴む タチカラヲ ついに蕨の 縄縛り
 「汝 奴と なすべきや なるや」 と言えど 物言わず

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タチカラヲ

蕨の縄 (わらびのなわ)

 

【概意】
ここにハタレ頭は胸騒ぎを覚え、逃げようとするを、
タチカラヲが掴んで、ついに蕨の縄に御用となる。
「汝を奴とすべきだろうか、なるか!?」 と言えど、物言わず。

 

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 きらんとすれは いふきぬし ととめてこれも ちかいなす
 ひますのものま あゐぬかけ ほのほものかれ
 ちわやふる かみのめくみと ちちをかむ

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 斬らんとすれば イブキヌシ 留めてこれも 誓いなす
 一マスのモノマ アヰヌ影 炎も逃れ
 「幸振る 神の恵み」 と 散々拝む

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■誓い (ちかい)
「ハタレマの霊の曲りを直す一連の過程」 をいいます。
それはすなわち、隈の神の使いのカラスを招いて魄を枯らし、
血を絞って誓書を書かせ、潮を浴びるというものです。
その後、マフツのヤタ鏡に映してハタレ霊の影が消えたかを鑑定します。

■一マスのモノマ (ひますのものま)
マスは 「100,000 を表す数詞」 です。“ハカリ” ともいいます。
モノマは ハタレマと同じです。


■アヰヌ影 (あゐぬかげ:天狗影)
アヰヌは アヱノ/アメヱノの変態で、「高等な獣=天狗」 をいいます。
カゲ(影)は それが人に与える 「影響」 をいいます。


■炎 (ほのほ)
瘧火」 のことです。

 技に燃え着く 瘧火の 日々に三度の 悩みあり 〈ホ8-2〉


幸振る (ちわやふる)


■散々・千々・▽繁々・▽幸々 (ちち・ちぢ・しじ)
チチは チツの名詞形で、チツは シッソウ(疾走)の シツ の変態です。
「高まるさま・勢いづくさま・栄えるさま・活発なさま・甚だしいさま」 などが原義で、
ここでは 「非常に多いさま・幾千・あまた」 などの意を表します。
ちなみに チチ(父) も同じで、「活発で先に上昇した」 が原義です。

 辞書では “千千・千箇・数千” と当てられていますが、さんざん(散々) も
 似たような意味と考え、当講座では多くの場合 “散々” と当て字しています。

 

【概意】
斬ろうとするを、イブキヌシが留めて、これも誓いをなす。
こうして10万のモノマは、天狗の影響も、1日3度の発熱からも逃れ、
「幸振る神の恵み」 と散々に拝む。

 

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 すへてななます ここちみな ひとなるのりの みかかみお
 せおりつひめの もちいてて のちのはたれの ひととなる
 まふつのかかみ みるために ふたみのいわと なつけます

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 すべて七マス 九千みな 人なる法の 御鏡を
 セオリツ姫の 持ち出でて 後のハタレの 人となる
 マフツの鏡 見るために “フタミの岩” と 名づけます

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■七マス九千 (ななますここち)
「70万9千」 で、6ハタレの軍勢の総員数です。


■人なる法 (ひとなるのり)
邪霊/折霊の干渉を受けて心の曲った者が、「人となる法」 の意で、
マフツの鏡に映して邪霊の影をチェックすること」 をいいます。

 13アヤに “直からざれば人ならず” とあり、心が直ぐであることが
 人であるための第一要件です。
 邪霊/折霊は “同類相求む” の法則によって寄り付くわけですから、
 人の心が曲っていなければ、そもそも寄って来ません。

もし邪霊の影が映れば、反省・改善の心が起こるため、
「心の曲りを直す法」、すなわち 「人なる法」 です。


■後のハタレ (のちのはたれ)
「今後、邪霊の干渉を受けてハタレとなってしまう者」 という意です。


■フタミの岩 (ふたみのいわ)
フタミは マフツ の語順を逆にした換言で、フタは フツ(▽付つ)の名詞形。
ミは ミル(見る)の名詞形で、両語とも 「合い/合わせ」 が原義です。
ですから フタミの岩は 「符合・合致の岩・真実の岩」、つまり 「マフツの岩」 という意です。

 セオリツ姫は、万人がいつでもマフツの鏡を見れるようにと、持ち出して
 イサワ宮近くの海岸に置いたのです。それが現在の 二見浦夫婦岩 です。

 歌枕にもなっていて、藤原定家が次のように詠んでいます。
 マス鏡 (=マフツの鏡) フタミの浦に 磨かれて 神風清き 夏の夜の月

 

【概意】
総勢70万9千のハタレマ全員を人に戻した、その法である御鏡を、
未来のハタレが、人に戻るマフツの鏡を見るためにと、
セオリツ姫は外に持ち出し、鏡を置いた岩を “フタミの岩” と名づけます。

 

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 よよあらしほの やもあひに ひたせとさひぬ かんかかみ
 いまなからえり
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 弥々あら潮の 八百会に 浸せど錆ぬ 神鏡
 いま永らえり

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■弥々 (よよ)
“いよいよ” の略形で、「連なり続くさま」 を意味し、
「連綿と・絶え間なく・常に・ときわに」 などの意を表します。


■あら潮 (あらしほ)
アラ(新)は ここでは 「あらたまるさま」 を意味します。
シホ(潮)も同義で、「往き来・満ち引き・回転・循環」 などを原義として、
「改め・洗い・濯ぎ・リフレッシュ」 などを意味します。


■八百会 (やもあひ)
これも “あら潮” の類語で、「無限に往き来すること・常に洗い改めること」 をいいます。


神鏡 (かんかがみ)

 

【概意】
ときわに寄せては返す波に、数限りなく洗い晒されても錆ない神鏡、
今なお永らえるなり。


 ところで現在は、二見浦の夫婦岩にマフツの鏡は存在しません。
 いずれかの時代に何らかの理由により、セオリツ姫のために建てられた 日の前宮 に移されて、
 その御神体となったと推測しているのですが、どうでしょう?

 日前國懸神宮 (ひのくまくにかかすじんぐう)
 紀伊国名草郡。和歌山県和歌山市秋月365。
 現在の祭神:日前大神、国懸大神
 ・日前大神(ひのくまおおかみ)は、日像鏡(ひがたのかがみ)を神体とし、
  國懸大神(くにかかすおおかみ)は、日矛鏡(ひぼこのかがみ)を神体とす。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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