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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第6回 [2023.7.15]

第二巻 天七代 とこ酒の文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 あめななよとこみきのあや (その1)
 天七代 とこ酒の文 https://gejirin.com/hotuma02.html
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 あめななよとこみきのあや
 このときは みこおしひとの とつきまえ
 たかきかみきの あやこえは かみのをしゑは
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 天七代 とこ酒の文
 この時は 御子オシヒトの とつぎ前
 タカギが酒の 謂 乞えば 神の教えは
―――――――――――――――――――――――――――――

■天七代 (あめななよ)
アメ(▽上・天)は アム(▽上む)の名詞形で、「上・前・先」 などが原義です。
ですから 「先の7代・先んじる7代・先祖の7代」 などの意となります。


■とこ酒 (とこみき)
本文中で説明します。


■文・紋・綾 (あや)
アユ(肖ゆ)の名詞形で、アヱ(和え)アヒ(合い) などの変態です。
「合わせ・交わり・編み・織り」 などが原義で、多くの意味がありますが、
ここでは 「言葉の編み・言葉の織りなすもの・文」 をいいます。


■請ふ・乞う (こふ)
コユ(越ゆ)の変態で、「往き来する・回る・めぐる」 などが原義です。
「さぐる・たずねる・求める」 などの意を表し、トフ(訪ふ・問ふ)と原義は同じです。


■御子・皇子・神子 (みこ)
ミ(御)+コ(子) で、「上位の子・尊い子・神の子」 などを意味します。
ここでは特に 「代嗣御子・皇太子」 をいいます。

 ★み (御・▽上・▽尊・▽神)
 カミ(上・尊・神) の簡略形です。
 また ‘ミ’ は ‘マ’ や ‘モ’ と互換です。 例:真中(なかなか)、最中(なか)

 ★子・児 (こ)
 “わこ” の略です。ワコは ワク(分く)の名詞形で、ワケ(分け)と同義です。
 ですから母体から分れたものをいい、「小・粉・個」 なども同じです。


■オシヒト
アマテル君とムカツ姫が生んだ、皇太子オシホミミ斎名です。


■とつぎ
トツ(閉づ・綴づ)+ツク(付く・接ぐ) の短縮 “とつぐ” の名詞形で、
陽陰/男女の 「交わり・結び・和合」 を意味します。
今は “嫁ぎ” と当てられますが、これだと 女が男の家に入るという
イメージしか湧かないため、カナを使ってます。


■タカギ
“タカキネ” の略称で、7代タカミムスビの斎名です。
記紀には “高木神(たかぎのかみ)” と記されます。

 ★タカミムスビ (高み結び)
 タカミムスビは 「タカミを結ぶ者」 の意で、タカミは “ヒタカミ” の略です。
 ヒタカミ国の統治者に対する伝統的な呼称で、個人名ではありません。
 記紀には 高御産巣日/高皇産霊尊 と記されます。

 ★ヒタカミ (日高み)
 後に本文中で説明されます。


■酒・御酒・▽上生 (みき)
サケ(酒)の別名です。“ササケ” “ササ” とも呼びます。
辞書は “御酒・神酒” と当てますが、尊敬を表す語ではありません。
ただ 君や神から下される酒は、たいてい “ミキ” と呼ばれています。

 ミ(▽上)+キ(生) で、ミは カミ(上)の略形、
 キ(生)は 「純粋・上澄み・透明」 を意味し、「水」 の別称です。
 よってミキは 「高めた水・熟成した水」 が原義と考えます。

 き【生】  (広辞苑)
 まじりけのないこと。人工を加えていないこと。純粋なこと。


■謂 (あや)
アヤ(綾・紋・文)と同じですが、「交わり」 という原義から、
「関わり・ゆかり・いきさつ・いわれ」 などの意が派生し、
ここでは 謂れ(いわれ) の意となります。そのため “謂” と当てています。


神 (かみ)
アマテルを指します。

 

【概意】
天七代トコ酒の文
この時は御子オシヒトの結婚前。
タカギが酒(みき)のいわれを乞えば、
神の教えは、

 

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 いにしえの あめつちうひの きはなきに
 きさしわかるる あうのめを
 をはあめとなり ひのわなる めはくにとなり つきとなる
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 いにしえの 天・地・泥の 際無きに
 萌し分かるる アウの陰陽
 陽は天となり 日輪なる 陰は地となり 月となる
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   ホツマ・ミカサの7か所に記されている天地創造説話の一つです。

いにしえ (古・往にし方)
イヌ(往ぬ・去ぬ)+シ(▽如)+エ/ヘ(方・辺) で、
「過ぎ去りし方」 という意味です。

 シは 助動詞キの連体形です。この助動詞はシク(如く)という動詞から
 変化したもので、「如く(ごとく)の〜」 の意が本来です。

 
■天地泥 (あめつちうび)
ここでは “天” は 「形なきもの」 を表し、エネルギー、霊、空間、気体などを
いいます。“地” は 「凝り固まったもの」 を表し、固体・固形物をいいます。
“泥” は 「凝り固まってないもの」 を表し、流体・液体をいいます。

 
萌す・兆す (きざす)
キス(▽起す)+サス(差す) の同義語短縮で、
「出る・放つ・発す・生ずる」 などが原義です。

 
■アウの陰陽 (あうのめを)
アウは アワ・ウビ (泡・泥) の略で、原始宇宙が陽と陰に分離する前の
混沌状態を、「泡と泥の混じり合う状態」 に喩えたものです。
分離すると、軽い “泡” は 「陽」 へと変じ、重い “泥” は 「陰」 に変じます。

天地人も 分かざるに 初の一息 動く時 東上りて 西下り
 虚空に回り 
アワウヒ(泡泥)の 回れる中の 実柱に 裂けて陰陽生る  〈ホ14-2〉
・天地の 
アホウヒ(泡泥)いまだ アメミヲヤ 'ア手' を結びて 吹く虚空 〈ホ18-1〉
・回る虚空の その中に 天地届く 実柱を 回り分かるる
 
アワウヒ(泡泥)の 泡は清くて 宗陽神 泥は濁りて 鄙陰神      〈ミ6〉

 

【概意】
遙か昔、天・地・泥の区別も無かった頃、
泡と泥の混じり合う混沌の中に、陽と陰が萌して分離。
陽は天となり、また日輪となる。陰は地となり、また月となる。

 

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 かみそのなかに あれまして くにとこたちの とこよくに
 やもやくたりの みこうみて みなそのくにお をさめしむ
 これくにきみの はしめなり
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 神 その中に 生れまして クニトコタチの トコヨ国
 八方八下りの 御子生みて 皆その国を 治めしむ
 これ国君の 初めなり
―――――――――――――――――――――――――――――

■神その中に生れます (かみそのなかにあれます)
“神” は 「天界に存在する神霊」 をいいます。
“その中” とは、まだ人のいない クニ(地)、すなわち 「地上世界・地球」 です。
生れます” の マス は今とは少し使い方が違い、「最上級の尊敬」 を表します。

 地球に生まれた最初の人間は ミナカヌシ と呼ばれます。続いて
 ミナカヌシの御子として、ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ の8神が地上に
 肉体を持ち、それに続いては キ・ツ・ヲ・サ・ネア・ミ・ヤ・シ・ナ・ウ
 11神が地上に人として生れます。


■クニトコタチ (▽地疾立)
「地の先発者・地の先達」 という意味で、太古、地上社会の基礎を造った人類の
先祖たちを総称してクニトコタチといいます。クニ(地)+トコ(▽疾)+タチ(立ち) で、
トコは “とっくの昔” と言う場合の “とっく” の変態です。
ここでは地上に人間として現れたミナカヌシと、トホカミヱヒタメの8尊と、
キツヲサネ+アミヤシナウの11尊を総称しています。

 ただし、クニトコタチは対象となる神人の範囲が場合によって異なります。
 ミナカヌシ+8尊+11尊 を指す場合が一番多く、次に ミナカヌシ+8尊 を
 指す場合が多く、最も広義には クニサツチとトヨクンヌ までも含めます。


 ミナカヌシ─天の八尊─地の十一尊─クニサツチ─トヨクンヌ┐
 ←……… クニトコタチ  ………→            │
 ←………………  最広義のクニトコタチ …………… ……→│
       ┌―――――――――――――――――――――┘
       │
       └ウビチニ
          ├――――ツノクヰ
         スヒヂ     ├――――オモタル
               イククイ     ├ … (断絶) … イサナキ
                     カシコネ        │
                               イサナミ

 
■トコヨ国 (とこよくに)
トコヨ(▽疾代)は 「先行する時代・古き時代・いにしえ」 などが原義ですが、
「クニトコタチの時代」 を特に  “トコヨ” と呼びます。そしてクニトコタチが
建てて治めた ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ の8国を “トコヨ国” と呼びます。


■八方八くだりの御子 (やもやくだりのみこ)
ミナカヌシは地球の八方を巡って、おびただしい数の子を生みますが、
ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メの8御子を、後継者として八方に派遣します。
8御子は現地に下り、社会の基礎を整えて ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ の
8国を建てます。この8御子が “八方八くだりの御子” の元祖です。
それに続いて キツヲサネ+アミヤシナウ の11尊が下って8国を治めます。

 ★くだり (下り・降り・件・行・領・襲)
 クダル(下る・降る)の名詞形で、クヅレ(崩れ)の変態です。
 「下がること・おりること・劣ること・衰えること」 を意味しますが、
 「一つのものが幾つかに崩れる(分れる)さま」 の意があり、これは 「種」 と同義となります。


■国君 (くにぎみ)
「国家を統べる君」 をいいます。 ▶君

 

【概意】
天界の神は地上に生れてクニトコタチとなり、トコヨ国を建てる。
始祖のミナカヌシは、八方に下る八人の御子を生み、それぞれに
ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ の八国を治めさせた。これが国君の初である。

 

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 よつきのかみは くにさつち
 さきりのみちお うけされは さつちにをさむ
 やみこかみ おのおのみこお ゐたりうむ
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 代嗣の尊は クニサツチ
 サキリの道を 受けざれば サツチに治む
 八御子尊 各々御子を 五人生む 
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■代嗣/節継ぎ (よつぎ)
「治めを継ぐこと/者」 の意です。“治め” にも 家の治め、国の治め など
さまざまなレベルがありますが、ここでは 国家の治め をいいます。

 辞書は “世嗣・世継” と当てますが、原義を考慮して本講座では
 “代嗣” の当て字を採用しています。

 ★節 (よ)
 ミユ(見ゆ)の名詞形 “ミヨ” の略で、「合わせ・集まり・まとめ」 などを
 原義とし、「まとめ・まとまり・治め・範囲・節・区分」 などを表します。
 辞書は “節” を “世” と同源と説いていますが、これは同意しかねます。
 “世” は 「下・低・地」 が原義で、ヨ(夜) と同源です。

 
■尊/上 (かみ)
「上・上の者・御上」 が原義で、この場合は 「君」 と同じです。


■クニサツチ (▽国割治)
キツヲサネ+アミヤシナウの11尊を継いで、八国の君となった8御子の総称です。
クニサツチの語義は “国割治” で、一国を複数の地方に分割して治めるシステムを
敷いた君、つまり 「中央集権国家制度を敷いた君」 をいうのではないかと考えてます。
日本書紀には “国狭槌尊” と記されます。

 
■サキリの道 (さきりのみち)
これはサツチとは逆に、国を分割しないで統治するシステムをいうものと考えます。
サキリ
は今に言う “すっきりすっかり” の変態と見ています。

 
■サツチ (▽割治・▽細治)
サ(▽割・細・狭)+ツチ(▽治) で、サは サキ(裂き・割き)の短縮形、
ツチは トヂ(綴ぢ)の変態と見て、「分割して統べること」 をいうと考えてます。

 次段で示されるように、クニサツチは人の従事すべき業を3つに分け、
 それに伴って自分の5人の子を 君・臣・民 の3つの身分に分けました。
 そうして臣を遣って地方国を統治させ、君は中央政府で国家全体の
 運営にあたるというシステムです。

 

【概意】
八国の治めを継ぐ君はクニサツチであった。
彼らは一国をまるごと治める道を受け継がず、中央集権制を敷いて治める。
この八御子の君は それぞれ5人の御子を生む。

 

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 やものよつきは とよくんぬ あめよりみつの わさおわけ
 きみとみたみの みくたりの かみはもふその みこありて
 あめなるみちは めもあらす みつよをさまる
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 八方の代嗣は トヨクンヌ 上より三つの 業を分け
 君・臣・民の 三くだりの 尊は 百二十の 御子ありて
 陽陰和る道は 女も生らず 三代納まる 
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■トヨクンヌ・トヨクンヌシ (▽響国主)
“トヨクニヌシ” の略で、「中央政府国の主・朝廷国の主」 を意味します。
これは クニサツチの後を継いで 8国の君となった8御子の総称です。
日本書紀には “豊国主尊・豊斟渟尊・豊雲野神” などと記されます。

 ★トヨ (▽響・▽訪・樋) ★トヨクニ (▽響国)
 トフ/トユ(訪ふ)、トヨム(響む) などの名詞形で、「往き来する・めぐる・伝わる・配る」
 などが原義です。この場合は 「八方に響き渡らせるさま」 を表し、「響きの発信源・中心」 を
 意味します。したがって トヨクニ(▽響国)は 「中心の国・中央の国」 の意で、
 連邦制における 「中央政府の国・朝廷国」 をいいます。

 
■上より三つの業を分け (あめよりみつのわざをわけ)
アメ(▽上・天)は アム(▽上む)の名詞形で、「上・前・先」 などを表しますが、
ここでは 「先代の君・先帝」 をいいます。そしてこれはクニサツチを指します。
ワザ(業) は人が従事する仕事をいいます。

 8国のクニサツチは人の従事すべき業を3つに分け、それに伴って
 自分の5人の子を 君・臣・民 の3つの身分に分けました。
 その中で、君となったのが トヨクンヌ だということです。

 クニトコタチの 八下り子 何クニサツチ 八方主となりて
 トホカミ ヱヒタメの 国に生む子は 三くだりの 君・臣・民ぞ 〈ホ18〉


■三くだり (みくだり)
「3つに分れるさま・3種」 をいいます。 ▶くだり


■陽陰和る道 (あめなるみち)
これは根源神アメノミヲヤが創った あの世とこの世を貫く根本法則で、
万物万象は 陽と陰の結合と分離によって生成・消滅するというものです。
今日では 陰陽和合の法 と呼ばれています。この道の広さと深さを説くことが
ホツマ・ミカサの目的といっても過言ではありませんが、ここではシンプルに
「人が地に生まれてくる仕組み」 と考えていいでしょう。

 陽陰の道(あめのみち)、妹背の道(いせのみち)、和の道(やまとのみち)、
 調の道(とのち) など、多くの換言があります。


■女も生らず (めもあらず)
その当時の陽陰和る道 (人が地に生まれる仕組み) は男女を分けず、
地に生まれてくる人間は みな男女両性であったということです。
日本書紀はこれを 独神(ひとりがみ) と呼んでいます。

 
■三代納まる (みつよをさまる)
“三代“ とは クニトコタチ (ミナカヌシ+8尊+11尊) の時代と、
クニサツチの時代と、トヨクンヌの時代をいいます。
“納まる” は ここでは 「結ぶ・締まる・閉まる・終わる」 などの意です。

 この後、陽陰和る道 (人が地に生まれくる仕組み) に変化が訪れます。

 

【概意】
八方の国の治めはトヨクンヌが継ぐ。先代のクニサツチにより、
人の業が3つに分かれ、5人の御子は 君・臣・民 の3くだりの身分に分れた。
3階級を治める尊 (=トヨクンヌ) には120人の御子があった。
<当時の> 陽陰和る道は女を生むことなく、3つの時代は終了する。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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