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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第4回 [2023.7.11]

第一巻 東西の名と蝕虫去る文 (4)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 きつのなとほむしさるあや (その4)
 東西の名と蝕虫去る文 https://gejirin.com/hotuma01.html
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 しかるのち いさわのみやに はへるとき
 きしゐのいなた ほをむしに いたむおなけき
 あるかたち つくるいさわの ををんかみ
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 しかる後 イサワの宮に 侍る時
 紀州の稲田 蝕虫に 傷むを嘆き
 ある形 告ぐるイサワの 大御神
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■しかる (然る)
シク(如く)+アル の短縮で、「ごとくある・そのようにある」 という意味です。
“しかる後” は 「そうした後・そして後・その後」 などの意になります。


■イサワの宮 (いさわのみや)
この時の都です。
アマテル君は 初め富士山麓の宮を都としますが、その後 イサワの宮 に移ります。
場所は現在の 二見浦付近 (二見町三津:ミツは ‘御都/神都’ の意) と考えます。
“イサワ” は イセ(▽妹背・伊勢) の換言で、「陰陽の和合」 を意味します。

  
侍る (はべる・はんべる) ■侍 (はべ・べ・め)
「添う・付く・仕える・守る」 などの意です。
ハム(填む)ヘル(綜る) の短縮で、両語とも 「合わす・添う・付く」 などが原義です。
またそれをする人を ハベ(侍)、略して ベ/め(侍) といいます。

  はべる【侍る】〈広辞苑〉
  傍にひかえる。


■紀州 (きしゐ・きしい)
後代の 「紀州・紀伊国」 と同じです。 “ソサの国” とも呼ばれます。
紀州といっても広いですが、この場合は 今の 「和歌山市付近」 をいうようです。
“キ” の意味については思案中ですが、5アヤが記すところでは 「来」 の意です。

 ソサにたりて 宮造り 静かに結ます キシヰ国  〈ホ5-1〉
 
 ★州 (しい・しゐ・しほ・しま・し・すみ・す)
 シム(締む) の変態 “シフ” の名詞形で、「締め・括り・区切り・区分」 が原義です。
 今は “シュウ” と読んでいますが、発音としては シュウ=シフ です。


■蝕虫 (ほをむし・ほおむし・ほむし・はふむし・はほむし)
作物を 「むしばむ虫・食い荒らす虫」 をいいます。
ハフ虫、ハホ虫、ホ虫 などとも呼ばれます。

 ホヲ(▽蝕)は ホフ/ホユ の名詞形で、ホフ/ホユ は ハフ/ハユ(蝕ゆ) の変態です。


■ある形 (あるかたち)
アル(有る・在る・生る)+カタチ(形) で、
「現れたさま・ありさま・状況・経緯・結果」 などの意です。
 
 ★形 (かたち・かた)
 カタツ(▽固つ) という動詞の名詞形で、「凝り固まるさま」 を原義とし、
 「凝り固まって生じるもの・目に見えるさま・物質的な現れ」 などを意味します。


■イサワの大御神 (いさわのををんかみ)
「陰陽和合の大御神」 という意で、“アマテル大御神” の同義語なのですが、
それはどういう意味なのか?については 4アヤを待たねばなりません。

 ★大御神皇大神 (ををんかみ)
 「大々の神・央々の神・央大の神」 という意で、アマテルの別称です。
 御神(をんかみ) より尊敬レベルの一段高い言い方です。
 “ヲヲ” は ヲ(大・央) を重ねたもので、“ン” は “ノ” の音便変化です。

  皇大神宮 (こうたいじんぐう)
  伊勢国度会郡。三重県伊勢市宇治館町1。
  現在の祭神:天照坐皇大御神
  <筆者注> 古くは “ををんかみのみや”  “ををんかんみや” と呼ばれたと推測します。
       ここは イサワの宮 とは別です。

 

【概意】
しかる後 <ワカ姫が> イサワの宮に侍る時、
紀州の稲田が蝕虫にやられたことを嘆いて、
その状況をイサワの大御神に告げに来る。



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 あまのまなゐに みゆきあと
 たみのなけきに むかつひめ いそききしいに ゆきひらき
 たのきにたちて おしくさに あほくわかひめ
 うたよみて はらひたまえは むしさるお
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 アマノマナヰに 御幸後
 民の嘆きに ムカツ姫 急ぎ紀州に 行きひらき
 田の東に立ちて 押草に 扇ぐワカ姫
 歌詠みて 祓ひ給えば 虫去るを
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■アマノマナヰ
天橋立で有名な、宮津(みやづ) の別名です。
“アマノマナヰ” の意味については 6アヤで考察します。

 真名井神社 (まないじんじゃ)
 丹後国与謝郡。京都府宮津市江尻、籠神社奥宮。
 現在の祭神:豊受大神


御幸・行幸 (みゆき)
「巡って恵むこと」 が原義で、「君またはそれに準ずる貴人の外出」 を意味します。

 ミ(‘回る’の連用形)ユク(往く・行く) の名詞形で、両語とも 「回る/回す・巡る/巡らす」 を
 原義とし、この場合は 「巡ってめぐらす・巡って恵む」 という意です。
 そのため ミユキ は “御幸・行幸” と当てられ、また “巡幸” とも呼ばれます。


■ムカツ姫 (むかつひめ)
アマテル君の 「正妃・皇后」 です。
ホツマ・ミカサでは 皇后は 内宮(うちみや) と呼ばれます。


■行きひらく (ゆきひらく)
ユク(往く・行く)+ヒラク(▽翻く) の同義語連結で、
どちらも 「往き来する・回る・移る・動く」 などが原義です。
ですから 「行き移る・移動する」 ということです。

 ヒラクは “体をひらいてよける” という場合の ひらく で、
 翻す(ひるがえす)
と同義と思います。


■田の東 (たのき)
東(キ) の 原義は 「起」 ですから、
「田の起」 を願って “田の東” に立ちます。


■押草/押曲 (おしくさ・をしくさ)
「押し合せた草」 の意で、後に説明がありますが、具体的には
ヒノキ(檜) 製の扇に貼り付けた ヒオウギ(檜扇) の草花」 をいいます。

 そしてこれを オシクサ (押曲:曲りの直し) の モノザネ として用います。
 オス(押す) は 「合わす」 が原義で、クサ(▽曲・▽腐) は クセ(曲) の変態です。


■祓ふ (はらふ)
ハラフ(祓ふ) ハル(晴る・▽治る)+アフ(合ふ) の同義語短縮で、
「和(やわ)す・調える・直す・癒やす・つぐなう・調和する」 などが原義です。

 微妙ではありますが、払ふ・掃ふ の字は 「放つ・避ける・追いやる」、
 また 「行き来させる・貸し借りを清算する」 の意の場合に使っています。


■給ふ・賜ふ (たまふ)
タム(▽垂む)+アフ(零ふ) の同義語短縮で、タム は タル(垂る) の変態、
アフは アユ(零ゆ) と同じです。どちらも 「下がる/下げる」 が原義です。
ですから タマフ は 上から下へ 「くだす」 という意で、命令形の “たまえ” は
現代語では “ください” になります。

 本講座では “与える” の尊敬語としての タマフ には 「賜ふ」 を、
 他の動詞に付いて尊敬の意を添える タマフ には 「給ふ」 を当て字しています。

 

【概意】
ところが大御神はアマノマナヰに御幸の後。
民の嘆きに、ムカツ姫は急いで紀州に移動すると、
そこには田の東に立って押草に扇ぐワカ姫の姿。
歌を詠んで祓い給えば 虫が去るのを見て、



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 むかつひめより このうたお みそめおまてに たたつませ
 おのおのともに うたはしむ いなむしはらふ わかのましない
 たねはたね うむすきさかめ まめすめらの
 そろはもはめそ むしもみなしむ
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 ムカツ姫より この歌を 三十侍を左右に たたづませ
 各々共に 歌わしむ “稲虫祓ふ ワカのまじない”
 『田根・畑根 大麦・小麦・盛豆 大豆・小豆らの
 そろ葉も蝕めぞ 虫もみな締む』
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■三十侍 (みそめ)
宮中には多くの侍女が侍っていましたが、一番下級の侍女に 青侍(あおめ) と
呼ばれる若い侍女が30人いました。“三十侍” とはこの 「30人の青侍」 をいいます。
なお すべての侍女は 内宮(=正妃・皇后) の管理下に置かれました。
 
 ★侍 (め・べ)
 ハベル(侍る) の名詞形 ハベ/ハメ(▽侍) の短縮で、「侍る者・仕える者」 をいいます。
 多くの場合、男性は (部・兵・兵衛) と、女性は ‘メ(女)’ に語呂合せして と呼びます。


■左右・両手 (まて)
「両手・両方」 という意味で、辞書には マテ(真手) と記されます。
“左右” “両手” は筆者の当字です。


たたづむ・たたずむ (佇む)
「留まる」 が原義で、その場で動かず 「じっとしている」 ことをいいます。


稲虫 (いなむし)

■ワカ (▽和)
このワカは ワク(▽和く) の名詞形で、ワク は ハク(接ぐ)ナク(和ぐ) の変態です。
「合わせ・やわし・結び」 が原義で、「
中和/緩和/調和・やわらげ・直し」 などの意を表します。
したがって アワ/アメ(陽陰・和) の換言です。今日の “ワカ” に この意味は残っていません。
 
 ★和す (やわす) ★和し (やわし)
 ホツマ・ミカサを理解する上で非常に重要な言葉で、
 原義は 「陽と陰を融合して一つにする」 です。
 これは両極端を 「中和・緩和・調和する・やわらげる」 ことを意味し、
 例えば、酸とアルカリを和して中性にするということです。
 このことから 「調えて直す」 という意味にも使います。

 アワス(合わす) と ヤワス(和す) は似ていますが、少し違います。
 アワス は 「添える・くっつける・混ぜる・ぶつける」 という感じですが、
 ヤワス は もう少し深くて、「溶かす・融合させる・一つにする」 という感じです。

 
■まじない (呪い) ■まじなふ (呪ふ)
日本語の48音はそれぞれが神 ですから、言葉を発することは、各々の
神のエネルギーを発動することと同じで、それが 言霊(ことたま) です。
マジナイは 「思いに言葉(言霊)を当てること」、また 「その言霊を何かに
当てる/ぶつける」 ことをいいます。

 マジナイ(呪い) は マジナフ(呪ふ) の名詞形です。
 マジナフ は マス(申す)+ナフ(▽和ふ・綯ふ) の連結で、
 「申して合わす・申して当てる」 が原義です。


■ワカのまじない (▽和の呪い)
したがってこれは 「中和のまじない・調えて直すまじない」 という意味になります。
このまじないの歌は 1字余りの32音 であることに気を留めておいてください。


■たね (田根) ■はたね (畑根)
「田や畑に植える苗や種」 をいうものと思います。


■うむ (▽大麦) ■すき(▽小麦)
それぞれ ウムギ(大麦)、スムギ(小麦) の略と思います。
「上下・大小・多少」 などを “ウス” と呼びます。


■盛豆 (さかめ) ■大豆 (まめ) ■小豆 (すめ)
サカメは 「栄える豆・盛んな豆」 の意で、大角豆(ササゲ) かと思います。
この豆はサヤが30〜100cmにもなるそうです。“盛豆” は筆者の当字です。
昔は マメ(豆) といえば 「大豆」 でした。スメ(小豆)は あずき のことです。


■そろ葉も蝕めぞ (そろはもはめぞ)
ソロは ソロフ(揃ふ) の母動詞 “ソル” の名詞形で、「備わるさま・充足・実り」 などを
原義とし、ここでは 「繁栄・繁茂」 を意味します。
ハム(▽蝕む) は ハユ(蝕ゆ) の変態で、「下がる・落ちる・劣る・衰える」 などが原義です。
“蝕めぞ” は この場合は 「蝕めど・蝕めども」 と同義です。


■虫もみな締む (むしもみなしむ)
ミナ(皆) は ミタ(共) の変態で、ここでは 「共に・いっしょに」 という意です。
シム(締む) は ここでは 「閉まる・仕舞う・閉じる・終る」 などの意です。

 みた【共】〈広辞苑〉        むた【与・共】〈広辞苑〉
 (上代東国方言) 「むた」に同じ。   名詞・代名詞に「の」または「が」を介してつき、
                   「と共に」 の意を示す古語。

 

【概意】
ムカツ姫は、三十侍を左右にたたづませ、各々にワカ姫と共に歌わせる。
“稲虫祓う 直しのまじない”

 田根 畑根 大麦 小麦 盛豆 大豆 小豆らの 
 繁る葉も傷めど 虫も共におしまいになる



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 くりかえし みもむそうたひ とよませは
 むしとひさりて にしのうみ
 さらりむしさり ゑおはらひ やはりわかやき よみかえる
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 繰り返し 三百六十歌ひ 響ませば
 虫 飛び去りて 西の海
 さらり蝕更り 穢を祓ひ やはり若やぎ よみがえる
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■三百六十 (みもむそ)  ▶数の表し方
現在でも円を360度に分割してますが、古代の日本でもそうでした。
“三百六十” は円の1周を表します。これは時計と同じく、一つの過程 (1周目) を
終了して、同時に、新たな過程 (2周目) が始まることを意味します。
ですから “三百六十” という数は 「改め・更新」 を表す モノザネ です。
この場合は 「衰えた稲の改め」 のモノザネです。


■響ます (とよます)
トヨム(響む)+ス(使役) で、「響き渡らせる・どよめかせる」 などの意です。


■西の海 (にしのうみ)
辞書に “西海へさらり” という言葉があり、おそらくホツマのこの記述を
起源とすると考えます。「西の海」 自体に特別な意味があるのかは不明です。

 西海(にしのうみ)へさらり 〈広辞苑〉
 厄払いのことば。悪事・凶事・災厄などを払いのけて西の海へ流してしまう意。


■さらり蝕更る (さらりむしさる)
「さらりと蝕みが改まる」 という意です。

 “虫飛び去る” の サル は 「離れる・遠のく」 などの意ですが、“蝕更る” の サル は、
 サラ(更・新)
の母動詞で、一回りして 「元に返る・改まる・新たになる」 などの意です。
 “さらり” も同じで 「一転して・くるっと」 というのが原義です。
 くるくると360回歌った効果がここに現れるわけです。

 
■穢 (ゑ)
ヲユ(瘁ゆ) の名詞形 ヲヱ(汚穢) の短縮形で、
「曲り・逸れ・外れ・異常/不調」 などが原義です。

 おゆ瘁ゆ】ヲユ 〈広辞苑〉
 妖気などで苦しむ。病み疲れる。悩む。


やはり
これも “元に戻るさま” を表す副詞で、「元に戻って・元通りに」 という意味です。


■よみがえる (蘇る・甦る)
ヨム(▽揺む)+カエル(返る・還る) の同義語連結で、ヨムは ヨル(揺る) の変態です。
両語とも 「往き来する・回る・返る/還る・繰り返す・あらたまる」 などが原義です。

 

【概意】
繰り返し360回歌って響き渡らせば、虫は飛び去って西の海へ。
一転して蝕みは改まり、穢れを癒やし、元通りに若やいでよみがえる。



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 そろにみのりて ぬはたまの よのかておうる おんたから
 よろこひかえす きしゐくに
 あひのまゑみや たまつみや つくれはやすむ
 あひみやお くにかけとなす
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 そろに実りて 射干玉の 世の糧を得る 御宝
 喜び返す 紀州国
 太陽の前宮 タマツ宮 造れば安む
 太陽宮を 国懸となす
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■そろ (▽揃・▽繁)
ソロフ(揃ふ) の母動詞 “ソル” の名詞形で、「備わるさま・充足・実り」 などを原義とし、
ここでは 「繁栄・繁茂・豊かなさま」 をいいます。


■射干玉の世 (ぬばたまのよ)
ヌバタマの” は ヨ(夜・世) にかかる枕詞です。
ヌバタマ は ヒオウギ の真っ黒な種子をいい、▶写真 その黒さが夜の暗さを表すわけ
ですが、世は “地” の同義語ですので、夜も世も 「下」 という意味で同源です。

 今は “この世” “あの世” と、どちらも “世” と呼んでますが、本来は 世=地 です。
 ですから “この世” はいいですが、天のことを “あの世” と呼ぶのは本来誤りです。


■糧 (かて)
カツ(▽活つ) という動詞の名詞形で、「活かすもの・活を与えるもの」 が原義です。


御宝 (おんたから・をんたから)・大御宝 (ををんたから・おおんたから)
「最も尊く重要なもの」 の意で、「国民・人民」  の別名です。
人はすべて創造神の分霊が地に降りた者であることを表すもので、
特に、尊い神霊でありながら 世の最下層の身分に身を置く 「民」 をいいます。


■喜びかえす (よろこびかえす)
この “かえす” は “沸き返る” の “かえる” と同じで、
「激しくよろこぶ・喜びまくる」 という意です。

 
■太陽の前宮・天日の前宮 (あひのまえみや) ■日の前宮 (ひのまえみや)
太陽・天日 は “日” と同義で、これは 「アマテル神」 を指します。
太陽の前・日の前 は、皇后としてアマテル君に相対する ムカツ姫(向つ姫) の別称です。
ですから 「ムカツ姫の宮」 という意味です。

 ★太陽・天日 (あひ・あまひ・うほひ・うひ・おおひ)
 背(ヲセ)のムナモト と同じで、「陽の中心・核・極」 を意味し、「日」 をいいます。

 アマは アム(▽上む) の名詞形で、ア はその略。ウホ/オホ/オオ/ヲ/ウ (大・太・央)
 などは ウワ/ウエ(上) の変態で、いずれも 「上・頂き・中心・核・極み」 を表します。
 ヒ(陽)は ヒル(▽秀る) の名詞形で、天地創造の過程で上昇した 「陽」 を表します。
 太陽(あひ・あまひ・うほひ・うひ・おおひ) の略称が 日(ひ) です。


■タマツ宮 (たまつみや)
次段で説明します。


■安む・▽和む (やすむ)
「安まる・休まる」 という意味ですが、原義は「和らぐ」です。
これは 「和して治まる・調和する・やわらぐ・安らかになる・静まる」 などの意で、
ヤワス(和す)、ナグ(和ぐ)、ノドマル(和まる) なども同義です。


■国懸・国掛 (くにかけ)
地方の国を治める 「政庁・役所」 をいいます。
カケ(懸・掛) は 腰掛(こしかけ)の “かけ” と同じで、「(紀の国の治めを) 預ける土台」 の意です。
この場合は 太陽の前宮 を紀国の政庁にしたということです。

 国懸となった 太陽の前宮(日の前宮) は今も痕跡が残っています。

 日前國懸神宮 (ひのくまくにかかすじんぐう)
 紀伊国名草郡。和歌山県和歌山市秋月365。
 現在の祭神:日前大神 (日像鏡)、国懸大神 (日矛鏡)
 <筆者注> 日前大神は本来はムカツ姫ですが、現在の日前大神と国懸大神は
      ムカツ姫が二見の岩に置いたマフツの鏡を指すと見ています。(8アヤ出)

 

【概意】
豊かに実って射干玉の世の糧を得る民であった。喜びまくる紀州国。
太陽の前宮とタマツ宮を造れば、国は安らかに治まり、太陽宮を紀国の政庁となす。



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 わかひめの こころおととむ たまつみや
 かれたるいねの わかかえる わかのうたより わかのくに
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 ワカ姫の 心を留む タマツ宮
 枯れたる稲の 若返る ワカの歌より ワカの国
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■ワカ姫 (わかひめ:▽和姫)
枯れた稲を 「ワカの歌(▽和の歌) で直し調えた姫」 という意ですが、
この名の由来は他にもあり、この後に語られます。


■タマツ宮 (たまつみや)
ワカ姫は、その後この タマツ宮 を住まいとしました。
ワカ姫の 「心を留む」 というのが タマツ の意味であるようです。

 心は 霊(タマ)、神霊(ミタマ) ともいいます。また トドム(留む) は タモツ(保つ) と
 同義ですから、タマツ宮は「霊(たま)を保(たも)つ宮」の短縮ではないかと思います。

 玉津島神社 (たまつしまじんじゃ)
 紀伊国名草郡。和歌山県和歌山市和歌浦中3丁目4-26。
 現在の祭神:稚日女尊 (わかひるめのみこと)
 <筆者注> 稚日女(わかひるめ) は ワカ姫の別名です。


■ワカの歌 (わかのうた:▽和の歌) ■ワカの国 (わかのくに:▽和の国)
ワカ(▽和)の歌” は 「和す歌・調えて直す歌」 という意で、5・7・5・7・7 の31音に綴ります。
これを歌った姫であるため、“ワカ姫(和姫)” と呼ばれました。
後世 「和歌」 と呼ばれる歌は “ワカ(和)の歌” が短縮されたものと考えられます。

またワカ姫が ワカの歌を歌って直った国だから “ワカ(和)の国” です。
これが和歌山という県名の起源なのでしょう。

 

【概意】
ワカ姫の心を留めるタマツ宮。
枯れた稲が若返る “和の歌” により “和の国”。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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