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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第40回 [2023.9.10]

第八巻 霊還しハタレ打つ文 (7)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 たまかえしはたれうつあや (その7)
 霊還しハタレ打つ文 https://gejirin.com/hotuma08.html
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 きみやさかにの まかるたま
 せおりはまふつ やたかかみ
 あきつくさなき やゑつるき

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 君 ヤサカニの 環る珠
 セオリはマフツ ヤタ鏡
 アキツ クサナギ ヤヱ剣

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■ ヤサカニの環る珠 (やさかにのまかるたま)
「日月の和しと恵みを循環させる珠」 という意です。おそらく マサカ瓊 と同一でしょう。
日本書紀は 八尺瓊勾玉・八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま) と記します。

 ★ヤサカニ
 日月が 「和して恵ること」、つまり 日月の 「和しと恵み」 を意味します。

  ヤス(▽和す)+サカヌ(▽探ぬ) の名詞形で、ヤス は 「和(やわ)す」 と同義。
  サカヌ は サガネル(探ねる) の原動詞で、「行き来する/させる・めぐる/めぐらす」
  などが原義です。

  ・天が下 和して恵る 日月こそ 晴れて明るき 民の父母なり 〈ホ7-4〉
  ・
日月と我は 天下照らすさ 〈ホ8-6〉

 ★環る珠・巻かる珠 (まかるたま)
 その “ヤサカニ” を 「回す珠・めぐらす珠・循環させる珠」 という意です。 ▶まかる
 またその モノザネ としての 「まんまるの珠」 をいいます。
 


■マフツヤタ鏡 (まふつやたかがみ)
「真実を映すヤタ鏡」 という意です。日本書紀は 真経津の鏡 と記します。

 ★マフツ (▽真悉)
 「同一・一致・符合・合致・真実」 などの意です。

  マ(真)+フツ(悉) で、マ(真) は マツ(全つ) の名詞形。フツ(悉) は フス(付す) の名詞形。
  両語とも 「合うさま・くい違いのないさま・一つであるさま」 が原義で、それゆえまた、
  「唯一であり全てであるさま・完全・真実」 を意味します。

 ★ヤタ鏡・ヤタの鏡 (やたかがみ・やたのかがみ)
 “ヤタカガミ” には 幾重の深い意味が重なり、それについては アマテル自身が17アヤで
 詳しく語りますが、おおまかに要約すれば、(要約したら意味がないとは思うのですが)
 「8尺の身(=民)を 和し養うために、その心(=魂魄)を写し収める 円周8尺の鏡」 です。
 後に 三種宝 の一となり、記紀には 八咫鏡 と記されます。


■クサナギヤヱ剣 (くさなぎやゑつるぎ)
「曲りを直し汚穢を断つ剣」 という意です。

 ★クサナギ (▽曲和ぎ)
 クサ(▽曲)+ナギ(和ぎ・凪ぎ)で、 「曲り・汚穢の直し」 の意です。
 クサナギ は 多く “草薙ぎ”(草をなぎ払うこと) にかけます。

  ★クサ (▽曲・▽腐・▽臭)
  クス(屈す) の名詞形で、クセ(曲・癖) の変態です。
  「曲り・逸れ・外れ・異常・不調」 などが原義です。

  ★ナギ (和ぎ・凪)
  ナグ(和ぐ) の名詞形で、「和し・直し・調和」 などを意味します。

 ★ヤヱ剣 (やゑつるぎ)
 “ヤヱ” にも複数の意味がありますが、ここでは ヲヱ(汚穢) の変態です。
 ツルギ(剣) は 太刀(たち) と同じく 「断つ物」 を意味します。
 ですから 「汚穢を断つ物」 の意です。

 

【概意】
君はヤサカニの環る珠、セオリツ姫はマフツのヤタ鏡、
ハヤアキツ姫はクサナギのヤヱ剣を携える。


 ここに登場の は、後に 「三種宝」 へと発展するプロトタイプと考えられます。



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 ときにいふきと ゆえおとふ はるなこたえて
 やつかれに ねのますひとか をしえけり
 いさおしならは くにつかみ これそさのをの みことなり

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 時にイブキト 故を問ふ ハルナ答えて
 「僕に 根のマスヒトが 教えけり
 “功 成らば 地つ守 これソサノヲの 御言なり”」

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■イブキト
イブキトヌシ の略です。

■ハルナ
ハタレナルナ の略です。

僕 (やつがれ)

■根のマスヒト (ねのますひと)
根の国マスヒト」 と言ってますが、根国とサホコ国の区別は曖昧で、
これは正確には サホコチタル国 の新マスヒトとなった アメオシヒ を指します。

 アメオシヒは モチコ の仲介により クラ姫を娶り、サホコ国のマスヒトになります。
 そしてあろうことか、“交わり去る” の刑で ヒカワ に流された シラヒトとコクミ を
 臣として召し入れます。そこに ウサの宮居 を出奔した モチコとハヤコ が合流して、
 オロチ(折霊) に取り入られるのです。〈ホ7-3


■功成らば地つ守 (いさおしならばくにつかみ)
「成功すれば地方の国の司に取り立てる」 という意ですが、
どこかで聞いたせりふです。 ▶功(いさおし) ▶地つ守(くにつかみ)

 ソサノヲが 湛えかねてぞ 剣持ち 行くをハヤコが 押し止め
 「
功 成らば 天が下」 
〈ホ7-3〉


ソサノヲ
アマテルの 南の内侍 ハナコ を殺害するなどの罪により、死罪を宣告されますが、
ハナコの姉でもある 内宮ムカツ姫の温情により “交わり去る” の刑に減免され、
サホコ国のヒカワへ向かいます。ソサノヲとしては 父イサナキの遺言に従って
サホコに向かっているだけで、モチコ・ハヤコらの陰謀には気づいていません。

 ムカツ姫より 差使に 「ウケモノ祈り よみがえす
 ハナコの四百割 償のえば 清汚を明せよ ソサノヲが 仕業は霊の 蝕なれど
 逆無く つつが 無からんやわや」
 
〈ホ7-5〉


御言 (みこと)
9アヤで明らかとなりますが、“ソサノヲの御言” というのはいつわりで、
アマテルの弟という威厳を借り、旗印として名前を利用されてるだけです。

 

【概意】
時にイブキトヌシは反逆蜂起の理由を問う。
ハルナは答えて、
「根のマスヒトが僕に教えたのだ。
“成功すれば地つ守に取り立てる。これはソサノヲの御言である” と。」



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 ときにいふきと まふつなら かんかみんとて
 みかかみに うつせはふつく つはさあり
 いふきといわく このはたれ ぬゑあしもちそ
 はけわさに たふらかすもの みなきらん

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 時にイブキト 「マフツなら 鑑みん」 とて
 御鏡に 写せば悉く 翼あり
 イブキト曰く 「このハタレ ヌヱアシモチぞ
 化け術に たぶらかす者 みな斬らん」

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マフツ

■鑑みん (かんがみん)
カンガミ(‘鑑みる’ の連用形)+ン(意志) です。
  
 ★カガミル・カンガミル (鑑みる・▽明暗見る) ★カガミ (鏡・鑑・▽明暗見)
 カガ(▽明暗)+ミル(見る) で、「明暗 (陽陰/日月/昼夜/上下/魂魄) を合わす」 が原義で、
 「比べ見る・照らし合わす・比較考慮する」 などの意に使います。
 カガミル の名詞形が カガミ(▽明暗見・鑑・鏡) です。


■御鏡 (みかがみ) ■神鏡・尊鏡 (かんかがみ)
ミ(御)+カガミ(鏡) で、ミ は カミ(上・▽尊・神) の略形です。
これは セオリツ姫が携えている マフツのヤタ鏡 を指します。


悉く (ふつく)

■ヌヱアシモチ・ヌエアシモチ
ハルナハハミチ の正体と思われますが、不詳です。
語義としては ヌエ(▽萎)+アシ(▽褪)+モチ(▽没) かと思ってます。
病気を引き起こすと信じられた疫病神の一種なのかもしれません。

 ヌヱアシモチが かさくさも コゲウ・ハコベラ イタヒラコ
 スズナ・スズシロ スセリ・ナヅ この七草に 除くなり 
〈ホ19b-1〉


■化け技 (ばけわざ)
人を 「化かす技・惑わす技」 の意です。


たぶらかす (誑かす)
タブル(狂る) の他動詞形で、「逸らす・曲げる・狂わす・惑わす」 などが原義です。

 

【概意】
時にイブキトは、「それが真実なら照合してみよう」 と、
マフツのヤタ鏡に写せば、まさに翼あり。
イブキト曰く、「このハタレの正体はヌヱアシモチぞ。
化かし技に惑わす者どもはみな殺そう。」



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 ときにくすひか くまのかみ まねけはからす やつきたる
 ここにはたれの ちおしほり ちかひととめて うしほあひ
 かけうつすとき むますたり ひとなるはみな たみとなる

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 時にクスヒが 隈の神 招けばカラス 八つ来たる
 ここにハタレの 血を絞り 誓ひ留めて 潮 浴び
 影映す時 六十万人 人成るは皆 民となる

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クスヒ

■隈の神・曲の神 (くまのかみ)
「汚穢隈を滅ぼす神」 の意で、「イサナミの神霊」 をいいます。 ▶汚穢隈
この名は 黄泉辺境 における イサナミの言立ち に由来します。

 イサナミ曰く 「麗しや かく為さざらば 千頭を 日々にくびらん」 〈ホ5-3〉


カラス (烏・鴉)
隈の神は 鬼霊の化身の カラス を使って、人の魄を枯らします。 ▶鬼霊(しこめ)
魄は ここでは 「肉体・形・見た目・うわべの装い」 を意味します。 ▶魄(しゐ)
つまり 「人の外見を取り払って本質(心)をあらわにする」 のが カラス です。

 隈の神 鬼霊が魄を 枯らす神 纏れば黒き 鳥 群れて “カラス” と名付く 〈ホ6-5〉


霊・血 (ち・しむ)

■誓ひ留む (ちかひとどむ)
「誓書を書き留める」 ということです。絞った血で書いたのでしょう。


■潮浴ぶ (うしほあぶ)
「心身を濯ぐこと・禊すること」 を意味します。 ▶禊(みそぎ)

 ★潮 (うしほ・みしほ・しほ)
 「往き来・満ち引き・回転・循環」 などが原義で、
 「改め・洗い・濯ぎ・リフレッシュ」 などを意味します。
 そのため海で禊を行うことも多いのです。

 

【概意】
時にクスヒが隈の神を招くと、カラスが8羽飛び来たる。
ここにハタレの血を絞って誓書を書き、潮で身を濯いで、
あらためてマフツのヤタ鏡に影を映す時、人となった60万人は、
皆 民にもどる。



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 さきのつつかの むはたれも はるなかものま ゐちたりと
 くにあつけよち みなめして ちおそそくとき
 きくみたり すくにきつねの かけあれは 
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 さきのツツガの 六ハタレも ハルナがモノマ 五千人と
 国預け四千 みな召して 霊を濯ぐ時
 キク三人 直ぐに狐の 影あれば

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■ツツガの六ハタレ (つつがのむはたれ)
「拘置されている6人の ハタレ頭」 をいいます。 ▶ツツガ
シムミチイソラミチヰツナミチ の頭と、キクミチ の3頭です。


■ハルナがモノマ
「ハルナが率いる モノマ」 です。


■国預け四千 (くにあづけよち)
地元の同輩に預けた4000人のモノマをいいます。
それはすなわち、シムミチ の3,000人 と イソラミチ の1,100人です。
辞書には 村預け という言葉があります。


■霊を濯ぐ (ちおそそぐ)
この場合は 「霊・本質・エッセンス・精髄 を濯ぐ」 という意で、
鬼霊の化身のカラスを招いて魄を枯らし、血を絞って誓書を書き、
潮を浴びる、という先の一連の手順で行います。 ▶霊・血(ち)


■キク三人 (きくみたり)
キクミチ の軍勢を率いる 3人の ハタレ頭」 をいいます。これは人間です。


■直ぐに (すぐに)
「曲り無く・ストレートに・まさしく・確かに・明らかに」 などの意です。

 

【概意】
さきに拘留した6人のハタレ頭も、ハルナのモノマ5,000人と
また国預けの4,000人も、みな呼び召して、その霊を濯ぐ時、
キクミチのハタレ頭3人は、明らかに狐の影が映れば、



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 なもみつきつね みそみよろ たまたちせんお かたかこふ
 もろゆるさねは かたのかみ ななたひちかふ のりこちに
 ややゆるさるる みことのり
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 名も “三狐” 三十三万 霊断ちせんを カダが乞ふ
 諸 許さねば カダの守 七度誓ふ 宣り言に
 やや許さるる 御言宣

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■三狐 (みつぎつね)
マフツの鏡 に 狐の影が映った 「キクミチハタレ頭 3人」 に付けられた名です。


■三十三万 (みそみよろ)
キクミチ のハタレ頭3人が率いる キツネとクツネの総数です。
これは本物の生きたキツネとクツネです。


霊断ち (たまだち)

カダ

■宣言・宣詞 (のりこち)
ノル(宣る)+コツ の名詞形で、コツ は コト(言) の母動詞です。
「鳴り響かす言葉・となえる言葉・知らせの言葉・伝える言葉」 などが原義で、
ノトコト・ノト・ノリト などともいいます。


やや

 

【概意】
名も三狐と名付け、この3人と配下のキツネ・クツネ33万を
霊断ちしようする時、カダが赦免を乞う。
諸守が許さねば、カダの守は7度までも誓いの言葉を繰り返す。
これによりようやく許しの御言宣を得る。



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 みつひこかこと もろきつね うけのみたまお まもらせよ
 もしもたかはは すみやかに たまたちなせよ
 このゆえに なかくなんちに つけるなり

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 「三彦が如 諸狐 ウケノミタマを 守らせよ
 もしも違はば すみやかに 霊断ちなせよ
 この故に 永く汝に 付けるなり」

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■三彦 (みつひこ)
三狐 を指しますが、ヒコ(彦) は 「臣」 の同義語です。よってこれは
正式に三狐を中央政府に仕える従者として認めた名であるように思います。


如・事 (こと・ごと)
コツ の名詞形で、コツ は カツ(糅つ且つ) の変態です。
「一括りであるさま・まとい付くもの・類似・セット」 などが原義です。
この場合は 「一味(いちみ)・たぐい・同類・仲間」 などの意です。


ウケノミタマ

 

【概意】
「三彦一味の諸狐に ウケノミタマ(=稲荷神) を守らせよ。
もし背いた場合には、すみやかに霊断ちなせよ。
これを条件として、永く汝(=カダ) の配下として付けるなり。」


 このアマテルの御言宣により、稲荷神とキツネの密な関係が始まります。
 辞書にも 三狐神(さぐじ) という言葉が見つかります。



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 あまつみことの おもむきお つけてあにひこ ここにとめ
 なかはやましろ はなやまの おとはひかしの あすかのへ
 きつねもみつに わけゆきて たはたのとりお おわしむる
 うけのみたまと うけもちも かたのかみなり
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 陽陰つ御言の おもむきを 告げて兄彦 ここに留め
 中は山背 花山野 弟は “ひがし” の アスカ野へ
 狐も三つに 分け行きて 田畑の鳥を 追わしむる
 ウケノミタマと ウケモチも カダの神なり
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■陽陰つ御言 (あまつみこと)
アマ(陽陰) は 日月の神霊の顕現である アマテル を指します。
ですから 「アマテル君の御言宣」 です。


おもむき

■兄彦 (あにひこ) ■中 (なか) ■弟 (おと)
三彦 の3人を “兄・中・弟” と呼んでいます。


■ここ
ヤマタ/ヤマダ です。 豊受大神宮(=外宮) の所在地です。
倭姫命世記 では、豊受大神宮の 調御倉神 (つきのみくらのかみ) を、
「宇賀能美多麻神、三狐神、形尊形也、保食神是也」 と説明します。

 調御倉神(=三狐神) は 兄彦 を祀ったもので、トヨケの神霊が 真名井から
 伊勢の山田に移される前より、この地に祀られていたものと推測しています。
 このことは 豊受大神 が 「食の神」 とされた理由にも関わるように思います。

 御稲御倉 (みしねのみくら)
 三重県伊勢市宇治館町1 内宮宮域内。
 現在の祭神:御稲御倉神
 ・平安時代の『大治御形記』には 保食神(うけもちのかみ) とあり、
  鎌倉時代の『神名秘書』では ウカノミタマ とする。
 ・古代には、調御倉(つきのみくら)・御塩御倉・鋪設御倉・御稲御倉 の4棟で1組として
  板垣外の西方に建っていた。


■山背花山野 (やましろはなやまの)
ヤマシロ(山背) は、琵琶湖側から見た 「山のうしろ」 という意で、
“山” は後の 「比叡山」 を指します。〈24アヤ出〉 ▶花山野

 花山稲荷神社 (かざんいなりじんじゃ)
 京都府京都市山科区西野山欠ノ上65。
 現在の祭神:宇迦之御魂大神、神大市比売大神、大土之御祖大神

 伏見稲荷大社 (ふしみいなりたいしゃ)
 山城国紀伊郡。京都府京都市伏見区深草藪ノ内町68。 
 現在の祭神:宇迦之御魂大神、佐田彦大神、大宮能賣大神、田中大神、四大神
 ・社内に間の峰 荷田社 あり。また稲荷山全体の地主神を 荷田の神 という。


ひがし (▽日上し・東)
“ひがし” は ここでは方角をいうのではなく、“アスカ” の語義を説明しているようです。


■アスカ (▽明す日)
アスカ は アス(明す)+カ(日) で、「日の改まり・新たな一日」 を意味しますが、
それは 「日がのぼること・日の出」 と同じであり、ヒガシ(東) の原義と一致します。


■アスカ野 (あすかの:▽明す日野)
和歌山県新宮市の 「神倉山 の裾野」 をいうようです。阿須賀 という地名が今もあります。
イサナキ&イサナミの二尊の、紀州における宮 の東にあるため、“アスカ野“ (‘東の野’ の意) と
名づけられたと考えます。

 阿須賀神社 (あすかじんじゃ)
 紀伊国牟婁郡。和歌山県新宮市阿須賀1-2-25。
 現在の祭神:事解男命、熊野速玉大神、熊野夫須美大神、家津美御子大神

 阿須賀稲荷神社 (あすかいなりじんじゃ)
 阿須賀神社の境内摂社。
 祭神:三狐神
 ・三狐神は 「天狐・地狐・人狐」 で、熊野新宮の 飛鳥(阿須賀) を本拠とする。〈玉置山権現縁起〉


ウケモチ

■カダの神 (かだのかみ)
この場合は 「糧の神」 という意で、稲荷神 の換言です。 ▶カダ

 

【概意】
アマテル神の御言の主旨を告げて、兄彦をここに留め、
中彦は山背国の花山野へ、弟彦は “ひがし” のアスカ野へ遣る。
33万の狐も三つに分け行きて、田畑の鳥を追わしめる。
ウケノミタマとウケモチも糧の神なり。



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 しむみちも ゐそらゐつなも ちおぬきて
 おしてにちかひ しほあひて うつすかかみに
 なおさると おろちとみつち かけあれは

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 シムミチも ヰソラ・ヰツナも 血を抜きて
 オシテに誓ひ 潮浴びて 写す鏡に
 なお猿と 蛇と蛟竜 影あれば

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■オシテに誓ふ (おしてにちかふ)
「誓書を書く」 ということです。オシテ はここでは 「文書」 を意味します。


■猿と蛇と蛟竜 (さるとおろちとみづち)
ヰツナミチ の正体は 猿の邪霊、シムミチ の正体は ニシキ蛇の邪霊 でした。
ヰソラミチ の正体は ミヅチ(蛟竜) の邪霊 だったようです。

 ★ミヅチ (蛟)
 「未熟な竜・蛟竜」 をいいます。

 

【概意】
シムミチ・ヰソラミチ・ヰツナミチ のハタレ頭も
血を抜いてオシテに誓い、潮を浴びてマフツの鏡に映すと、
なお猿と蛇と蛟竜の影があれば、



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 そそひてはけぬ ももみそは すてにころすお みことのり
 きらはみのほに なやまんそ ひとなるまては たすけおき
 ひとさかしれは かみのたね
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 濯いで剥げぬ 百三十は すでに殺すを 御言宣
 「斬らば三の火に 悩まんぞ 人成るまで 助け置き
 人 直曲知れば 尊の種」

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すでに (既に・已に)
「早々に・はやばやと・さっさと・もはや」 などの意です。

 ★すで (既・已)
 すっさっさつ(颯) などの変態です。


■三の火 (みのほ)
瘧火 の換言です。

 技に燃え着く 瘧火の 日々に三度の 悩みあり 〈ホ8-2〉


直曲・清汚 (さが)

尊・上 (かみ)

 

【概意】
濯いでも邪霊の剥げぬ130人は、もはや殺そうとする時、御言宣。
「殺せば三の火に悩もうぞ。人となるまでは助け置きや。
人は 直曲を知れば 尊者のたねなり。」



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 みねにあつけて そのをして はたれまこちと たみこよろ
 うつむたかのの たまかわそこれ

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 峰に預けて そのヲシテ ハタレマ九千と 民九万
 埋むタカノの タマガワぞこれ

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■峰 (みね)
「タカノの峰」 をいい、今の 高野山 ではないかと思います。


ヲシテ
霊を濯ぐために書かせた 「血の誓書」 をいいます。


■ハタレマ九千 (はたれまこち) ■民九万 (たみこよろ)
前に 「六つのハタレはヤマタあり 九千司七十万群れ集りて」 とありました。
ですから、ハタレマ の総数は70万9千です。
この内60万は、あっさりと邪霊の干渉を断ち切って民に戻ります。
(この60万には、この後に出てくる アヱノミチのハタレマ10万も含まれます。)

 影映す時 六十万人 人成るは皆 民となる 〈ホ8-7〉

よって 70万9千−60万=10万9千。
イツナミチのハタレマ1万は、全員死んでます。
よって 10万9千−1万=9万9千。

“ハタレマ九千” とは “九千司” をいうように思います。
それを除くと 9万9千−9千=9万 で、これが “民九万” の意味でしょう。
この 9万9千 は、邪霊の影響が強くてそれを除くのに手こずった人数
だったのだと思います。


■タカノのタマガワ (▽治曲野の霊郷)
タカノ は 今の 高野山 をいうものと思いますが、意味は “治曲野” で、
ハタレマの 「曲りを治した野」 の意と考えます。 ▶治曲
タマガワ は タマ(霊)ガワ(側・郷) で、「血(=霊) の誓書を埋めた郷」 の意と思います。
なお 高野山には 高野の玉川 が流れています。

 丹生都比売神社 (にふつひめじんじゃ)
 紀伊国伊都郡。和歌山県伊都郡かつらぎ町上天野230。 
 現在の祭神:丹生都比賣大神、高野御子大神、御食都比賣大神、市杵島比賣大神

 

【概意】
御言宣を受け、邪霊が剥げなかった130人は峰に預け、
ハタレマ9千と民9万の 血(霊)の誓書を埋めた場所こそ、
タカノのタマガワぞこれ。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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