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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第57回 [2023.10.8]

第十一巻 三種譲り見受けの文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 みくさゆづりみうけのあや (その2)
 三種譲り見受けの文 https://gejirin.com/hotuma11.html
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 かみにみつけの かんつかい かるきみのこの しまつうし
 のほるほつまの をはしりの さかにゆきあふ をしかとは
 みうちにはへる かすかまろ かたまおすえて まつのかけ

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 神に御告げの 官使 カル君の子の シマツ大人
 上るホツマの “馬尻の 坂” に行き逢ふ 御使人は
 御内に侍る カスガマロ カタマを据えて 松の蔭

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■神に御告げ (かみにみつげ)
「アマテル神へのご報告」 です。


■官使 (かんつかい)
「御上の使者・公式の使者」 です。
カンは カミ(上)の音便で、ここでは 「御上・中央政府・朝廷」 を意味します。
これは 「官・公」 と同義であるため、“官” と当てました。


■カル君 (かるきみ:離る君)
オホナムチの別名です。カル(離る)アカル(散る)ツカル(尽離る) の簡略で、
「北の果て津軽に離れる君」 の意です。“ヒスミ君” とも呼ばれます。

 ★君・公 (きみ)

 天振ゆを受くる オホナムチ あかるアソベの ウモト宮 造る千尋の 掛橋や
 百八十縫の 標立に 現し地尊 オホナムチ ツカルウモトの 守となる 〈ホ10-5〉


■シマツ大人 (しまつうし:▽下末大人・島津氏)
オホナムチの子です。シマツは シモ(下)+マツ(末) の短縮で、
「最果て・辺鄙」を意味し、ヒスミアソベアカルウモトツカル などの換言です。
ウシ(大人・氏)は ヲサ(長・筬)・ヌシ(主) などの変態で、「治める者」 を意味します。
ですから 「最果ての地を治める者」 という意です。

  ソサノヲ┐      
      ├──オホナムチ──┐┌─クシヒコ
  イナタ姫┘ (オオモノヌシ) ││(コトシロヌシ)
                ├┤
  アマテル┐         │├─タカコ
      ├──タケコ────┘├─タカヒコネ
  ハヤコ─┘          ├─タケミナカタ
                 ├─シマツウシ
                 └─ 他176名

オホナムチの後、津軽国の治めを継いだのはこの人物なのでしょう。


■ホツマ
ここでは ホツマ国 をいいます。


■馬尻の坂・▽馬退りの坂 (をばしりのさか)
「馬も尻込みする坂」 の意で、それほど峻険な 箱根の峠 の古名です。
ヲバは オマ(馬)の変態、シリは シリゾク(退く)の母動詞 “シル” の名詞形です。


行き逢ふ (ゆきあふ)

■御使人 (をしかど)
ヲシカ(御使)と同じで、「君の代理の人・君が遣わす使者」 をいい、
シカ(使)サオシカ(差使) などとも呼ばれます。
この場合は 「大御神が (ヒタカミに) 遣わす使者」 です。


■御内 (みうち)
ミ(御)は カミ(上・神)の略、ウチ(内)は 「内部・内輪・近間」 を意味し、
この場合は 「アマテル神の近間」 という意味で、それはつまり
「アマテルの内臣としてイサワの宮に侍る」 ということです。


カスガマロ

■カタマ (▽固)
カタム(固む)の名詞形で、人が背負ったり馬に積んで運びやすいように
「まとめたもの・梱包したもの」 をいい、「こうり・荷」 と同じです。

 

【概意】
アマテル神に御告げの官使は、カル君の子のシマツ大人。
ホツマ国を上る途中、馬尻の坂(=箱根峠)で ばったり行き逢う御使人は、
大御神の御内に侍るカスガマロ。荷を降ろして松の蔭にいた。

 

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 しまつはこまお のりはなち ことほきをゑて にしひかし
 ゆきかひさかの なにのこる あきかえるとき またあえは
 ゆききのおかの なこそゑる

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 シマツは駒を 乗り放ち 寿ぎ終えて 西 東
 “往き交ひ坂” の 名に残る 秋 帰る時 また逢えば
 “往き来の丘” の 名こそ得る

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駒 (こま)

■乗り放つ (のりはなつ)
乗り捨てる” と同義と思います。


■寿ぎ (ことほぎ)
コトホグ(寿ぐ)の名詞形で、この場合は 「皇太子の結婚と即位を祝す言葉」 をいいます。


■往き交ひ坂 (ゆきかひざか) ■往き来の丘 (ゆききのおか)
どちらも 馬尻の坂(=箱根峠) の別名です。
“往き交ひ坂” は シマツ大人とカスガマロが 「行き逢う坂」 の意です。
“往き来の丘” は 「行きも帰りもその二人が出会った丘」 という意です。

 オカ(丘・岡)は オク(起く) の名詞形で、「隆起・高まり」 が原意です。
 “往き来” には 「巡回」 の意味があり、これは “ハコネ” の原義と同じです。
  (ハコネの意味については24アヤで詳しく述べます)

 

【概意】
シマツは駒を乗り捨てて、互いにお祝い申し述べた後、
それぞれ西と東へ。それが “往き交い坂” の名として残る。
秋に帰る時も、二人はまた偶然この坂に行き逢ったため、
“往き来の丘” の名こそ得る。

 

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 かねてほつまと ひたかみの さかいにてまつ ふつぬしか
 さかむかひして うゐまみゑ
 をちとをゐとの さかつきの ささのなかめは いわのうゑ

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 予てホツマと ヒタカミの 境に出待つ フツヌシが
 さか迎ひして 初まみえ
 叔父と甥との さかつきの 酒の和めは 岩の上

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予て (かねて)

■出待つ (でまつ)
「出て行って待つ」 という意で、「出迎える」 と同じです。


フツヌシ
フツヌシの妹のアサカ姫は、大和国の春日県主ココトムスビと結婚して、
カスガマロ(=アマノコヤネ・斎名ワカヒコ)を生みます。
したがってフツヌシは カスガマロの叔父にあたります。

 カトリが妹 アサカ姫 ココトムスビの 妻として 生むカスガマロ ワカヒコぞ〈ホ8-9〉

            ┌フツヌシ
         ??──┤
            └アサカ姫┐
                 ├─カスガマロ(アマノコヤネ)
 ツハヤムスビ──??───ヰチチ─┘
           (ココトムスビ)
            (カスガ殿)


さか迎ひ (さかむかひ)
サカには多くの意味が重ねられています。
「国(の)に受入側からに出向いて、を贈って迎えること」 です。
ですからサカには 「境」 「坂」 「逆」 「酒」 「栄」 の5意がかかってます。


■初まみえ (うゐまみゑ)
「初めて会って交わること」 をいいます。

 ★初 (うゐ・うい・うひ)
 ウミ(生み・産み)ウブ(産・生・初) の変態で、「新たなさま」 を表します。

 ★まみゑ・まみえ (目見え)
 マミユ(見ゆ)の名詞形で、マミレ(塗れ)の変態です。
 「交わり・紛れ」 などが原義で、「会見・面会・お目見え・目通り」 などを意味します。


■さかつき (直付き/酒注ぎ・盃)
このサカは ジカ(直)・チカ(近) の変態で、「直に付くこと・近付き」 の意と考えます。
そしてそれを 「酒注ぎ・盃」 にかけます。


■酒の和め (ささのながめ)
ササは サケ(酒)の別名です。ササケミキともいいます。
ナガメは ここでは ナゴミ(和み) の変態と考えます。
ですから 「酒を酌み交わしての親睦/懇親」 という意です。

 ナガメ(眺め)は 「(目に) 合わすさま・和すさま」 をいい、ナゴミ(和み)と原義は同じです。

 

【概意】
ホツマとヒタカミの国境に、あらかじめ出て待つフツヌシが、
“さか迎ひ” しての初対面。叔父と甥の お近づきの酒の睦みは岩の上。

 

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 ふりはよろしき はまひさし なみうちかきり いわあらふ
 みるめあふかゐ ゆるはまお とえはなもなし
 ふつぬしも なこそもかなに かすかまろ すくさのうたに

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 風はよろしき 浜庇 波打ち限り 岩洗ふ
 海松布・アフ貝 緩浜を 問えば名も無し
 フツヌシも 「名こそもがなに」 カスガマロ 直ぐさの歌に

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■風 (ふり)
フリ(振り・風)は フル(振る)の名詞形で、「まわり・めぐり・周囲」 を原義とし、
この場合は 「周囲の様子・景色・風景」 を意味します。

 ★振る (ふる)
 「行き来する/させる・回る/回す・めぐる/めぐらす・配る」 などが原義です。


■よろしき (宜しき)
ヨロシ(宜し)の連体形です。

 ★よろし (宜し)
 ヨル(寄る)+シ(▽如・▽然:形容詞接尾) で、
 心・気持ちが 「近寄る如し・親しむ如し・惹かれる如し」 などが原義です。


■浜庇 (はまひさし)
「ひさしのように突き出した海辺の岩」 を意味するものと思います。 ▶参考画像
(辞書の説明はどうもしっくりきません)

 これはたぶん 勿来の海岸にそびえ立つ奇岩 “二つ岩” のことです。 ▶写真
 当時の姿は現在とは違っているかもしれませんが。


■波打ち限る (なみうちかぎる)
「打ち寄せる波を限る/さえぎる」 という意です。


海松布・回る布 (みるめ) ■海松・回る (みる)
ミル(回る)の名詞形で、マル(丸・円)の変態です。「回るさま・丸まるさま」 をいいます。
メ(布)は ワカメ(若布)・コンブ(昆布) などの 「海藻類」 をいいます。 ▶画像


■アフ貝 (あふがゐ:合ふ貝・蛤貝)
「合う貝」 の意で、「二枚貝」 の総称です。別名がハマグリ(蛤)です。
カヰ(貝) は カキ(垣・牡蠣)、カラ(殻) の変態です。


■緩浜 (ゆるはま)
「ゆるやかな浜」 で、「遠浅の海岸」 をいうのではないかと思います。
それゆえ海中の海松布や二枚貝が岸から見えるのでしょう。

 ★浜 (はま)
 ハル(遥) の変態で、「離れ・分れ・別れ・際・境界」 などが原義です。
 「(陸と海の)分れ目・際」 をいいます。


もがな
「求めるさま・望むさま・WANTED!」 の意を表します。


■直ぐさ (すぐさ)
スグシ(直し)の名詞形で、“すぐさま” と同じです。
「即座・即席・即興」 などを意味します。

 

【概意】
その景色は、明媚な浜庇が打ち寄せる波を遮ってしぶきが岩を洗う。
海松布や二枚貝も目に入るこの緩浜を問えば名も無し。
フツヌシも 「名こそ求めるところなのだが … 」
カスガマロは即興の歌に、

 

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 なこそしる ふつのみたまの ささむかひ
 かゐのはまくり あふみをち をゐのみるめも としなみの
 なこそしるへゆ ちなみあふはま
 なこそなる

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 『名こそ知る フツの御尊の 酒迎ひ
 貝のハマグリ 会ふ御叔父 甥の見る目も 年並の
 名こそ知るべゆ 因み合ふ浜』
 “ナコソ” 生る

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■フツの御尊 (ふつのみたま)
「ホツマ国の主・ホツマ国の御本尊」 という意で、“フツヌシ” の換言です。

 ★フツ (沸)
 “ふつふつと湧き起こる” という場合のフツで、「発す・湧く・出る」 が原義です。
 このフツは、ホツマの ホツ(▽発つ)の変態で、この場合は 「日の出・東」 を意味します。

 ★ミタマ (御霊・▽神霊・▽御尊)
 ミ(御・▽上・▽神)タマ(▽尊・霊) で、両語とも 「上にあるさま・中心的なさま」 を
 原義とし、「本質・主体・精髄・本尊」 などを意味します。この場合は ヌシ(主) と同義です。


■酒迎ひ (ささむかひ)
「酒を酌み交わしての歓迎」 という意です。


■ハマグリ (蛤)
現在とは異なり、アフ貝(合う貝)の別名で、「二枚貝」 の総称です。
2枚の貝殻は良く似て見分けがつかないため、「そっくり・ぴったり」 の意を含みます。

 ハム(嵌む)+クル(▽比る) の名詞形で、クルは クラブ(比ぶ・較ぶ)の母動詞。
 両語とも 「合う/合わす」 が原義です。


■会ふ御叔父 (あふみをぢ)
アフ(合ふ・会ふ・逢ふ)を、アフ貝=ハマグリ にかけてます。


■甥の見る目 (をゐのみるめ)
ミルメ(見る目)を、ミルメ(海松布)にかけてます。
“見る目” は 「見た目・外見」 の意です。


■年並 (としなみ)
「年齢に並ぶさま・年齢に釣り合うさま・歳相応」 の意です。


■べゆ
今に言う 「〜するべよ・〜するべえ」 で、べし(可し)と同じです。
「(〜するのが状況に) 合うさま・釣り合うさま・適するさま」 を表します。


■因み合ふ浜 (ちなみあふはま)
チナミ(因み)の “チ” を、ミヲヂ(御叔父)の ”ヂ” にかけ、
“ナミ” をトシナミ(年並)の “ナミ” にかけます。
また アフ(合ふ)を “アフ貝” にかけます。
ですから 「ヲと年ナミの甥が チナミ合ふ アフ貝の浜」 ということです。

 ★因む (ちなむ)
 チヌ(▽親ぬ)+ナム(▽和む) の短縮で、“とつぐ” と原義は同じです。
 両語とも「和合する・交わる・睦む・親しむ」などの意です。

 

【概意】
名こそ知る (=名前だけは知っていた) フツの御尊の酒迎ひ。
 貝のハマグリのようにぴったり添って逢う御叔父。 甥の見た目も歳と合う。
 名こそ知るべよ 叔父と年並の甥が因み合う アフ貝の浜。』
 <この歌に> ナコソ(勿来)の名が生る。


 勿来はヒタカミ国とホツマ国の境界の地で、
 勿来より北がヒタカミ国、南がホツマ国とされていました。

 

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 さけのむあゐに さくらのみ 
 あきかえるひも さけおくる かたしおとりて さかなのり
 おなしみちして みやにいる

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 酒呑む和に 桜の実
 秋帰る日も 酒送る 堅塩取りて 肴 海苔
 同じ道して 宮に入る

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■酒呑む和 (さけのむあゐ)
アヰ(▽和)は アフ/アユ(和ふ/和ゆ)の名詞形で、「合わせ・添え・付け」 の意です。
ですから 「飲酒のお供・酒のつまみ」 という意です。


桜の実 (さくらのみ)

■酒送る (さけおくる)
「酒を酌み交わして見送る」 という意で、ササムカヒ(酒迎ひ)の逆です。


堅塩・固塩 (かたしお)
潮(海水)の水分を蒸発させたものを “堅塩”、また 焼塩(やくしほ) といいます。
古くは海藻を天日で干し、茎葉に結晶する白い粒を採っていました。


肴・▽酒和 (さかな)

■海苔 (のり)
製塩と海苔の採取はペアで行われることが多かったようです。


■宮 (みや)
タカノコフにあるオシホミミの皇宮、ツボワカミヤ(壺若宮)を指します。

 

【概意】
酒の供には桜の実。
秋帰る日も酒を以て見送る。堅塩を取りて肴は海苔。
同じ道して宮に入る。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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