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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第80回 [2023.11.27]

第十六巻 孕み謹む帯の文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 はらみつつしむおびのあや (その1)
 孕み謹む帯の文 https://gejirin.com/hotuma16.html
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 はらみつつしむおひのあや
 ふそゐすす ももゑふそやほ としさみと
 かしまのみやの ひとりひめ をのこなけれは
 かしまきみ かとりのみやに ゆきいたる

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 孕み謹む帯の文
 二十五鈴 百枝二十八穂 年サミト
 カシマの宮の 一人姫 男の子なければ
 カシマ君 カトリの宮に 行き到る

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■二十五鈴百枝二十八穂 (ふそゐすずももゑふそやほ)  [数詞]
真榊(=鈴木)による暦法で、1鈴=6万年、1枝=60年、1穂=1年 です。
ウビチニ&スヒヂの時代に植え継ぎが500回の限界に達し、累計年数が
一旦リセットされていますので、この暦の起点はその頃と考えられます。
以来ホツマに暦年の記載されている出来事を振り返ると、次の通りです。

・21鈴125枝31穂 アマテル誕生。
・21鈴126枝58穂 アマテル即位。
・22鈴505枝1穂 トヨケ帰天。
・24鈴999枝60穂 六ハタレ蜂起。
・25鈴93枝37穂 カシマ直ち開始。
・25鈴100枝11穂 オシホミミ即位。


■サミト
我が国本来の干支の表し方で、今の表し方では 辛卯 (かのと・う) に当たります。
60年で一周する28番目ですから、これは真榊の暦で “28穂” と言うのと同じです。


■カシマの宮・カシマ宮 (かしまのみや・かしまみや)
「ヒタチの宮」 の別名で、ヒタチの国の宮 (中枢/政庁)です。
カシマ尊” の名を授かった タケミカツチ がこの宮の主です。

 鹿島神宮 (かしまじんぐう)
 茨城県鹿嶋市宮中2306-1
 現在の祭神:武甕槌大神
 
 ★ヒタチの国 (日立国・常陸国) ★カシマの国 (鹿島国)
 “カシマの国” の別名で、「日が立つ国・の国」 を意味します。
 ホツマ国
を構成する国の1つで、今の 「茨城県+千葉県」 です。
 後代には 常陸国、上総国、安房国 に分割されます。
 (下総が分れるのはホツマの時代の後で、武蔵国は まだ海の底です。)


■一人姫 (ひとりひめ)
タケミカツチの一人娘で、“ヒメ” と通称されます。母についての記はありません。
春日大社や枚岡神社などに 比賣神(ひめがみ) の名で祀られます。

 春日大社 (かすがたいしゃ)
 奈良県奈良市春日野町160。
 現在の祭神:武甕槌命、經津主命、天兒屋根命、比賣神

 枚岡神社 (ひらおかじんじゃ)
 大阪府東大阪市出雲井町7-16。  
 現在の祭神:天兒屋根命、比賣御神、武甕槌命、齋主大神(=フツヌシ)


■カシマ君 (かしまきみ)
「カシマの宮の君」 という意で、タケミカツチカシマ尊 を指します。 ▶君
タケミカツチはフツヌシと共に、オシホミミの朝廷における最重鎮を務めます。

 フツヌシと ミカツチ常に 侍りて 纏り事守れ 〈ホ11-3〉


■カトリの宮・カトリ宮 (かとりのみや・かとりみや)
「ホツマ国全体を統括するの宮 (中枢/政庁)」 です。  ▶ホツマ国
カトリ尊” の名を授かったフツヌシがこの宮の主です。

 香取神宮 (かとりじんぐう)
 千葉県香取市香取1697。
 現在の祭神:経津主大神

 

【概意】
孕み謹む帯の文
25鈴100枝28穂のサミトの年。
カシマの宮には姫が1人のみで、代嗣の男子がなければ、
カシマ君はカトリの宮に行き至る。

 

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 ふつぬしむかえ とことおゑ いりますのちに ものかたり
 しろすことくに ひひめあり つきこなけれは かすかとの
 あまのこやねは よにひいて かすかのかみと なおたまふ
 われねかわくは かんつきみ はしかけなして たまわんや

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 フツヌシ迎え 門言終え 入ります後に 物語り
 「知ろす如くに 一姫あり 嗣子なければ カスガ殿
 アマノコヤネは 万に秀で カスガの尊と 名を賜ふ
 我 願わくは 上つ君 橋架けなして 給わんや」

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フツヌシ
フツヌシはタケミカツチと共に、オシホミミの朝廷における最重鎮を務めます。

 この時期の国家の政体は、国家元首のオシホミミはヒタカミの首都タカノコフにあり、
 ヒタカミ国主のタカキネは代の殿となって、近江のタガで中央政府の君を代行、
 さらにアマテルはイサワの宮にて世を照らすという、複雑怪奇な状況にあります。


■門言 (とこと)
「門前での言葉・あいさつ」 をいいます。


知ろす (しろす)
シル(知る)の尊敬語です。
尊敬のレベルをもう一段上げると “知ろしめす”、
さらにもう一段上げると ”知ろしめさる” となります。


■嗣子 (つぎこ)
ヨツギのコ(代嗣の子・節嗣の子)の略です。 ▶よつぎ
この場合は 「家を継ぐ子」 を意味します。


カスガ殿 (かすがどの)
アマノコヤネの父 ヰチチ がアマテルより賜った称号です。
ヰチチは ココトムスビ の尊名も賜っています。


■アマノコヤネ
ヰチチとアサカ姫(フツヌシの妹)の子で、幼名カスガマロ、斎名ワカヒコです。
記紀には 天児屋命/天児屋根命 と記されます。

            ┌フツヌシ
         ??──┤
            └アサカ姫┐
                 ├─アマノコヤネ
 ツハヤムスビ──??───ヰチチ─┘
           (ココトムスビ)
            (カスガ殿)


■万・余 (よ)
このヨは 「弥・万・余」 の意を表し、「多数・有り余るさま・残余・他」 などが原義です。


カスガの尊 (かすがのかみ)

願わく (ねがわく)

■上つ君 (かんつきみ)
「上位の君」 という意で、この場合は 「ホツマ国の統括司であるフツヌシ」 に対する敬称です。
カトリ上君” とも呼ばれてます。


■橋架け (はしかけ)
“橋を架ける” というのは 「離れているものを結ぶ」 という意です。
ここでは 「男女の橋架け」 をいい、男女の 「仲介・仲人」 を意味します。

 

【概意】
フツヌシはこれを迎え、門前での挨拶を終え、宮に入ります後に物語り。
「ご存知のように、一姫はあれども嗣子がないのであるが、
カスガ殿のアマノコヤネは 万に秀でて “カスガの尊” と名を賜る。
我願わくは、上つ君、橋架けをなして下さらぬだろうか。」

 

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 ふつぬしこたえ わかおゐの わかひこさきに をしかにて
 さかむかひして あひそめて それよりいまに むつましく
 いまそのきみの ことなさは われももふける このことく
 なかおなさんと ひたかみえ

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 フツヌシ応え 「我が甥の ワカヒコ先に 御使にて
 さか迎ひして 会ひ初めて それより今に 睦じく
 今 その君の 子となさば 我も儲ける 子の如く
 仲をなさん」 と ヒタカミへ

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御使 (をしか)
この場合は アマテルがヒタカミのオシホミミに派遣した使者をいいます。
その使者を務めたのが アマノコヤネ (斎名ワカヒコ:幼名カスガマロ) でした。

 上るホツマの “馬尻の 坂” に行き逢ふ 御使人は 御内に侍る カスガマロ 〈ホ11-2〉


さか迎ひ (さかむかひ)

 予てホツマと ヒタカミの 境に出待つ フツヌシが さか迎ひして 初まみえ 〈ホ11-2〉


■会ひ初む (あひそむ)
「初めて会う」 の意です。これを “初まみえ” ともいいます。


■その君 (そのきみ)
カシマ君、すなわちタケミカツチを指します。


■儲ける (もふける・もうける)
モフク(儲く)の “終止形+エル” の形の連体形です。


■仲をなす (なかおなす)
ナカ(中) を ナス(▽和す) で、「間を合わす・仲介する・仲人を務める」 ということです。


ヒタカミ
ヒタカミのタカの首に、君主オシホミミの皇宮があります。

 

【概意】
フツヌシは応えて、
「我が甥のワカヒコとは、先に御使として来た時に、
さか迎いして会い初めて、それ以来今日まで睦じくしている。
今 その君の子となせば、自分が子に恵まれるようなもの。
仲人を務めよう」 と、フツヌシはヒタカミへ。

 

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 しかにこたえて かえりきき ともにのほりて なかくにの
 かすかにいたり そのちちの こことむすひに こひうけて

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 使に応えて 帰りきき 共に上りて 中国の
 カスガに到り その父の ココトムスビに 乞ひ受けて

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使・▽如 (しか)
ヲシカ(御使)と同じで、「君の代理・君が遣わす使者」 をいいます。
この場合は君主オシホミミの代理人、取次の者をいいます。


応ふ・答ふ (こたふ・ことふ)
ここでは 「告げる・ことわる」 の意です。
つまり、ヒメとコヤネの婚姻を仲介するため、
フツヌシとタケミカツチはしばらく留守にすることを、
事前にオシホミミの代理人に告げるということです。


■帰りきき (かえりきき)
カエリガケ(帰り掛け) の変態で、「帰路のついで・帰る途中」 の意です。


■上る (のぼる)
都に近づくことを 「上る」 、都から遠ざかることを 「下る」 といいます。
この場合は 中央政府が置かれてている 「中国に向かう」 ということです。


中国 (なかくに)
ここでは ヤマトの国(大和国) を指します。


カスガ (▽和直・春日)
カスガ殿の知行する大和国の 「カスガ県」 をいいます。


ココトムスビ

 

【概意】
君の使に断りを入れ、その帰る足で、
ミカツチと共に上って、中国のカスガに到り、
その父のココトムスビに乞えば、了承を得る。

 

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 たかまにのほり もろともに これうかかえは みことのり
 みゆるしうけて おかむのち ふたきみかえる もとつくに

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 タカマに上り 諸共に これ伺えば 御言宣
 御許し受けて 拝む後 二君帰る 元つ国

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■タカマ (高ま・高天)
タカミ(高み)の変態で、「高み・頂き・中心」 などが原義です。
この場合は 「一番高い所」 を表し、アマテルの座す 「イサワの宮」 をいいます。
<君の座す都が3つもあるので言い回しがたいへんです>

 ★イサワの宮 (いさわのみや)
 アマテルは初め富士山麓のヤスクニ宮を都としますが、その後イサワの宮に都を移し、
 オシホミミに皇位を譲った後も、イサワを住まいとして世を照らし続けます。
 (最晩年には宇治の宮に移ります。)
 イサワは イセ(妹背・伊勢)の同義語で、「陰陽とその和合」 を意味します。
 場所は現在の二見浦付近と考えます。


■上る (のぼる)
ここではアマテルの都である 「イサワの宮に向かう」 ということです。


■これ
「アマノコヤネとヒメの婚姻のこと」 をいいます。


拝む (おがむ)

■二君 (ふたきみ)
カトリ君とカシマ君、すなわちフツヌシとミカツチです。


■元つ国 (もとつくに)
「もとの国・本国・出発した国」 などの意です。
この場合は カトリ宮とカシマ宮のある、ヒタチの国です。

 

【概意】
諸共にイサワのタカマに上り、この婚姻についてうかがえば、
大御神の御許しの御言宣を受けて、拝んだ後、二君は元の国へと帰る。

 

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 こことむすひは うらなひて よきひにちなみ ととのゑて
 ことほきおえて むつましく こやねはあめに つかえます

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 ココトムスビは 占ひて 吉き日に因み 調えて
 寿ぎ終えて 睦まじく コヤネは陽陰に 仕えます

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占ふ (うらなふ)

■因み (ちなみ)
チナム(因む)の名詞形で、「和合・結合・交合・親交」 などが原義です。
ここでは 「男女の交わり・交接・性交」 をいい、トツギの同義語です。


■寿ぎ (ことほぎ)
コトホグ(寿ぐ)の名詞形で、ここでは 「祝い・祝福・祝賀」 などの意です。


睦まじ (むつまじ)

陽陰 (あめ)

■睦まじくコヤネは陽陰に仕えます
表面的には 「夫婦睦じくコヤネは陽陰に仕え申す」 という意味なのですが、
もっと深い意味が奥にあります。

まず “夫婦睦じく” というのは、コヤネが女(陰)と結ばれて融合一体化したことをいいます。
これにより、それまで陽に偏っていたコヤネが 陽陰一体の身となったことを意味します。
これは、男女が分離した ウビチニ&スヒヂ以降の普通の人間は、男(陽)と女(陰)が
融合一体化(結婚)してはじめて一人前となる、ということです。

次に “睦まじく陽陰に仕える” という意があります。
これは 「アマテルと心を一つにして仕える」 ということです。日月の神霊の顕現であるアマテルは、
生まれつき陽陰が融合一体化しているため、そのアマテル神と心を一つにして仕えるには、
仕える側も陽陰が融合一体化している必要があります。

ですから結婚して陽陰一体の身となったコヤネは、ここでようやくアマテル神と心を一つにして
お仕えすることができるというわけです。

 

【概意】
ココトムスビはフトマニに占って、吉日に婚姻の儀を調える。
祝賀を終えて、陽陰一体の身となったコヤネはアマテル神と心を一つにして仕えます。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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