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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第128回 [2024.3.4]

第二四巻 コヱ国 ハラミ山の文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 こゑくにはらみやまのあや (その3)
 コヱ国 ハラミ山の文 https://gejirin.com/hotuma24.html
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 おとたまかわの しらすなに ひるねしておる ちまたかみ
 みのたけそなた つらかかち はなたかさなき めはかかみ
 とものやそかみ おそるれは みまこうすめに みことのり
 なんちめかちに とふへしと

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 オトタマ川の しらすなに 昼寝して居る チマタ守
 身の丈 十七尺 面 案山子 鼻高さ 七寸 目は鏡
 供の八十守 恐るれば 御孫 ウズメに 御言宣
 「汝 粧ちに 問ふべし」 と

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■オトタマ川 (おとたまがわ)
オオタやミシマが安曇川から水を引くために掘った水路だと思います。
この水路が現存するかは不明ですが、“オトタマ川” は 曲野よろき野
「劣(おと)を矯む(たむ)川・欠点を直す川」 という意と考えます。


■しらすな
シラは シル(▽親る・知る・領る)の名詞形で、「合い/合わせ」 が原義です。
この場合は 「添い/沿い・端(はた)・付近・近辺」 などの意を表します。
スナは シナ(品・科)・ソノ(園) などの変態で、「締め・括り・範囲・区画」 を意味します。
ですから 「〜沿いの区画・〜の近く」 という意です。

 
■チマタ守 (ちまたかみ) ■辻君 (つぢきみ)
「往来の占拠者・交差点の主」 などの意です。ツヂキミ(辻君)とも呼ばれます。 ▶衢の神
カミ(守) / キミ(君)は この場合は モリ(守)、ウシ(大人)、ヌシ(主) などの意です。

 ★チマタ (巷・岐・衢)
 チマタは チ(道・方)+マタ(股) で、「道の分岐する所・道の交差する所」 をいいます。
 ツヂ(辻・通ぢ)、スヂ(筋) などともいいます。 ▶つぢ(辻)

 
■身の丈十七尺 (みのたけそなた)
身長17尺(382.5cm)は、タケミカツチの16尺(360cm)を上回り、
ホツマの登場人物中で最大です。1尺=約22.5cm です。 ▶尺(た)


■面 案山子 (つらかかち)
「作り物のような顔」、あるいは 「人をこけ脅すような大げさな顔」 の意に解しています。

 ★案山子 (かかち)
 カカシ(案山子)コケシ(小芥子)の変態と考えて、“案山子” と当て字しています。


■七寸 (なき)
キ(寸・▽切)は 「1尺を10等分に切った長さ」 をいいます。 ▶寸(き)
ですから 1寸=0.1尺=2.25cm で、“七寸” は 16cm近くにもなります。


■目は鏡 (めはかがみ)
これはよくわかりませんが、「鏡にように丸くてギラギラ光っている」 という意味でしょうか。


■八十守 (やそがみ)
八十のモノノベ」 の換言です。


ウズメ (渦侍)
神社で舞を奉納するために、君の巡幸などにも随行したと考えます。 ▶立舞


■粧ち (めかち)
メカシ(粧し)の変態で、「まね・扮飾・扮装・演技」 などをいいます。
辞書は “目勝” と宛てて、「にらめっこ」 のことだと説明しています。


■問ふ・訪ふ (とふ)
タム(回む・廻む)の変態で、「回る・巡る・往き来する」 などを原義とし、
この場合は 「探る・検(あらた)める・調べる」 などの意を表します。

 

【概意】
オトタマ川沿いの往来で昼寝しているチマタ守。
身の丈は17尺。面は案山子のようで、鼻の高さは7寸。目はまるで鏡。
供の八十守が恐れるため、御孫はウズメ(=舞姫)に御言宣。
「汝は ひと演技して探りを入れるべし」 と。

 

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 うすめむねあけ もひほさけ あさわらいゆく
 ちまたかみ さめてかくする なにゆえや 
 いわくみまこの みゆきさき かくおるはたそ
 こたえいふ かみのみまこの みゆきなす 
 うかわかりやに みあえして あひまつなかた さるたひこ

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 ウズメ 胸開け 下秘部 放け 嘲笑い行く
 チマタ守 覚めて 「かくする 何故や」
 曰く 「御孫の 御幸先 かく居るは誰ぞ」
 答え言ふ 「神の御孫の 御幸なす
 ウカワ仮屋に 御饗して 合ひ待つ 長手 サルタヒコ」

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■下秘部 (もひぼ)
モは モツ(▽没つ)の名詞形で、シモ(下)と同じです。
ヒボは ヒム(秘む)の変態 “ヒブ” の名詞形で、「秘め・秘める所」 をいいます。
ですから 「下の秘め所」 という意で、ようするに 「陰部・秘部」 です。


放く (さく)

嘲笑ふ (あざわらふ)
「たわむれて笑う・ふざけて笑う・狂ったように笑う」 などが原義です。

 アス(▽遊す)+ワラフ(笑ふ) の連結です。アスは アザル(狂る・戯る)の母動詞で、
 「離れる・曲る・逸れる・外れる・狂う」 などが原義。“たわむれる”  “ふざける” も同義です。


■神の御孫 (かみのみまご) ■御孫 (みまご)
「アマテル神の尊き孫」 の意で、アメノミマゴ(陽陰の御孫) の換言です。
いずれもニニキネを指します。略して “御孫” と呼んでます。


■ウカワ仮屋 (うかわかりや)
「御幸先の仮宮・巡幸中の本拠とする仮宮」 という意です。
ここは後には 「ウカワ宮」 となり、その痕跡が白髭神社です。

 白髭神社 (しらひげじんじゃ)
 滋賀県高島市鵜川215。
 現在の祭神:猿田彦命、白鬚明神
 <筆者注> 現在は猿田彦命と白鬚明神は同一神と考えられています。
      しかし25アヤの記事からわかるように、別神です。

 ★ウカワ
 ウカワは ウク(動くの母動詞)+カフ(交ふ・▽通ふ) の短縮 “ウカフ” の名詞形で、
 「めぐる/めぐらす・巡って恵む」 が原義です。ですから 「御幸・巡幸」 の換言です。
 ウカイ(迂回)エコウ(回向・廻向) なども おそらくウカワの変態と思います。

 この場合はさらに、ウ(卯)+カワ(側・▽郷) で、「卯の花の地域」 の意が重なります。
 これはニニキネが高島を巡幸した時、ちょうど卯木の花の季節だったからです。 ▶画像

 ニニキネの 「卯の花の時の巡幸の地」 が ウカワという地名となり、後世 “鵜川” と
 漢字が当てられますが、これは 安曇川を流れる朽木に乗って羽を干す鵜を見て、
 シマツヒコがイカダを考案したという伝承と混合したものと考えられます。

  朽木に乗れる 鵜の鳥の アヅミ川行く イカダ乗り 竿差し覚え 船となす 〈ホ27〉


 ★仮屋 (かりや)・仮宮 (かりみや)
 御幸の君が仮宮(=臨時政府)とする施設をいい、行宮(あんぐう)のことです。
 高屋・高宮
とも呼ばれます。


御饗 (みあえ)

■合ひ待つ (あひまつ)
アフ(合ふ)+マツ(待つ) の同義語連結で、両語とも 「合わす」 が原義です。
この場合 “あひ・あい” は、“待つ” に冠して、語勢を添え、語調を整えます。


■長手 (ながた)
ナガ(長)+タ(手・▽方) で、ナガテ(長手)の変態。またオクテ(奥手)の類語です。
「長い方・長めのタイプ」 という意で、これはサルタヒコの、何かに付けて
「長く留まる生れ付き」 をいうと考えます。

 彼は (1) 16年もの妊娠期間を経て生れ、(2) 208万年もこの世に永らえ、
 (3) 8万年もサコクシロ内宮でアマテルの宝を守ったことが記されています。

 ・このコヤネ 百月座せり タチカラヲ 三十六月座す
  サルタヒコ 
十六年居れど これはまれ 〈ホ16-5〉
 ・
二百八万歳の サルタヒコ ワカゴに曰く
  「我 昔 神の賜物 サコクシロ 内宮に入れ 荒神霊 
八万年待ちし 〈ホ36〉


サルタヒコ (▽猿治彦)
サル(猿)+タ(▽治)+ヒコ(彦) で、「猿を治める臣」 という意です。
この名は 彼が野生の獣を調教して芸を仕込んだ最初であることに由来します。
この獣による演芸は 獣舞(ししまひ)、神楽獣(かぐらじし・かぐらおのこ) などと呼ばれ、
彼の流れを受けて獣を調教する官職は 猿部(さるべ) と呼ばれました。

・猿部らと 神楽獣の 君の基なり 〈ホ23-3〉
・カシマ神楽の 獣舞を 問えばトキヒコ 「これ昔 いよに渡りて
 ししばむを 辻君執りて 立て全つる」 〈ホ40〉
・犬愚を サルタが執りて 神楽獣 汚曲を晴らす よよの神風 〈フ26〉

 

【概意】
ウズメは胸を開き、下秘部をさらけ出し、ばか笑いしながら行く。
チマタ守は目を覚まして、「なんでそんなことするのや?」
<ウズメ> 曰く 「御孫の御幸先をこのように占拠しておるのは誰ぞ?!」
答えて言ふ。
「神の御孫の御幸なすウカワ仮屋に祝賀の礼を準備し、あい待つのんびりサルタヒコ。」

 

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 うすめまたとふ いつれから ゆくや
 こたえて われゆかん
 またとふなんち しるやきみ いきますとこお
 こたえいふ きみはつくしの たかちほそ われはいせのさ
 なかたかわ なんちわかなお あらわさは われもいたさん
 かえことす

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 ウズメまた問ふ 「いづれから 行くや」
 答えて 「我 行かん」
 また問ふ 「汝知るや 君 いきます所を」
 答え言ふ 「君は筑紫の 高千穂ぞ 我はイセの南
 ナガタ郷 汝 我が名を 表さば 我も出さん」
 返言す

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  ここは五七調が少々いびつなため、言葉の区切りを調整しています。

■いづれから行くや (いづれからゆくや)
この地域の灌漑工事は 「どこから行く?・どこから始める?」 と尋ねていると考えます。


■我行かん (われゆかん)
これは 「我が先に行こう・我が先導/案内しよう」 の意と考えます。


■いきます所 (いきますとこ)
非常に解釈に悩むところです。イクは ユク(行く・往く・逝く)の変態で、
「回る・巡回する・一回りして還る」 などが原義ですが、前の文ではユクと言っているのに、
ここではイクと表現しているのには、何らかの意味の区別があるはずです。
そうなると 「一回りして還る・人生を終えて天に還る」 の意と考えざるをえませんが、
ウズメがサルタにそんなことを尋ねる理由がわかりません。

しかしこの問いに対するサルタヒコの答えは、まさにニニキネとサルタの
「世を去る場所・臨終の地」 であることが、後のアヤで判明するのです。


■筑紫の高千穂 (つくしのたかちほ)
「九州の高千穂峰」 をいい、後にニニキネはこの峰にて世を離れます。 ▶ツクシ ▶高千穂峰
タカチホは 「高み・頂き・高嶺」 を意味する普通名詞です。

 兼ねて合う日の 逸の尊 高千穂の峰の 神となる 〈ホ26〉

 霧島神宮 (きりしまじんぐう)
 鹿児島県霧島市霧島田口2608番地5号。 
 現在の祭神:天饒石國饒石天津日高彦火瓊瓊杵尊

 
■イセの南ナガタ郷 (いせのさながたがわ)
“イセの南” は 「妹背宮(=イサワ宮)の南」 という意です。
ナガタ(長手)ガワ(側・▽郷)は、「長めの生れ付きのサルタヒコが留まる区画」 という意です。
これは現在の宇治 (伊勢内宮の所在地) をいいます。

 猿田彦神社 (さるたひこじんじゃ)
 三重県伊勢市宇治浦田2-1-10。
 現在の祭神:猿田彦大神、大田命


■汝我が名を表さば我も出さん (なんぢわがなおあらわさばわれもいださん)
「汝が我が名を君に表すならば、我も臣として功名を世に表そう」 という意です。

 

【概意】
ウズメはまた問う 「どこから行くや?」
答えて 「我が先導しよう。」
また問う 「汝は君の逝きます所を知ってるのか?」 
答えて言う 「君は九州の高千穂ぞ。我はイセの南のナガタ郷。
汝が我が名を君に表すならば、我も君が代に我が功名を出さん。」
<渦侍は君に> 報告する。

 

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 みまこよろこひ うのはなも またかさしゆく
 さるたして たけのいわくら おしはなち
 いつのちわきの よろいさき
 たけやかかみの みおのつち つむみかみやま いせきつく

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 御孫喜び 卯の木も また髪挿し行く
 サルタして 長の磐座 押し放ち
 逸のチワキの 万いさき
 タケやカガミの ミオの土 積むミカミ山 井堰 築く

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■卯の木 (うのはな)・卯木(うはな・うつぎ)
ウツギ(卯木)と同じです。 ▶木(はな)
ウツキ(卯月・鬱月:陰暦4月)に咲くから、 卯木(うはな・うつぎ)なのだろうと思います。


■長の磐座 (たけのいわくら)
「巨大な凝固物・巨大な岩」 をいいます。
タケ/ダケ(長)は タク(長く)の名詞形で、ここでは 「重厚長大・でけーさま」 を意味します。

 ★磐座・岩座・▽結括 (いわくら)
 イフ(▽結ふ)+クル(▽括る) の名詞形で、イフは ユフ(結ふ)の変態。
 クルは ククル(括る)の母動詞です。ですから 「結束・凝結」 が原義です。 ▶イワ ▶クラ

これを押し放つサルタヒコの力は、もはや起重機並みだったということでしょう。
万引きの岩をも投げた” というタケミカツチを彷彿とさせます。


■逸のチワキ (いつのちわき)
イツ(逸)は 「並外れるさま・抜群・圧倒的」 のなど意で、▶イツ(稜威・厳・逸)
また同時に イツカミ(厳尊・逸尊)=ニニキネ を表します。
ですから 「逸尊による、並外れた道開け/土地開発/繁栄」 という意味です。

 ★チワキ (道別/地別/幸)
 複数の意味が重なります。
 1. チ(道)+ワキ(別き・開き) で、「道が開けること・開運」 の意。
 2. チ(地)+ワキ(別き・開き) で、「土地開発・国土の開発」 の意。
 3. チフ+ワク(沸く)の短縮 “チワク” の名詞形で、チフは チハフ(幸ふ)の母動詞。
   両語とも 「勢いづく・栄える・ほとばしる」 などの意で、ツバキ(椿・唾)の変態です。

なお鈴鹿市にある椿大神社では、サルタヒコを “チワキの大神” の名で祀っています。

 椿大神社 (つばきおおかみやしろ)
 三重県鈴鹿市山本町字御旅1871。
 現在の祭神:猿田彦大神
 ・倭姫命の御神託により、鈴鹿川の川上の高山短山の麓に猿田彦を
  「椿(ちわき)の大神の社」 として奉斎することになったという。


■万いさき (よろいさき)
「あらゆることが勢いづくさま・万事が急展開するさま」 をいいます。
ある障害物を取り除くと、「堰を切ったような勢いが生れるさま」 を表す慣用語と考えます。

 ヨロ(万)は ここでは 「あらゆること・万事(ばんじ)」 の意です。
 イサキは イス+サク(咲く) の短縮 “イサク” の名詞形で、ヤサカ(弥栄)の変態。
 イスは イサム(勇む)、イソグ(急ぐ) などの母動詞です。
 両語とも 「高まる・勢いづく・栄える」 などが原義です。


■タケ・ダケ
滋賀県高島市音羽にある 岳山 (だけやま:565m) をいうものと思いますが、
ここにタケノイワクラ(長の磐座)があったことからの命名なのかもしれません。


■カガミ
滋賀県蒲生郡竜王町鏡にある 鏡山 (かがみやま:385m) だと思います。
“カガミ” は 「鏡」 ではなく、土を削られて低くなった 「屈み」 の意と考えます。


■ミオ (▽和)
ミフ(▽見ふ)の名詞形で、ミヤ(宮)ミホ・ミモ・ニオ などの変態です。
「合い・間・釣り合う所」 が原義で、「中心・中央」 を意味します。
この場合は 「日本のまん中 (北海道を除く)」、つまり 「琵琶湖付近」 のことをいい、
アワ国ヤスヲウミ などの換言です。


■ミカミ山 (みかみやま)
滋賀県野洲市三上にある 三上山 (みかみやま:432m) だと思います。
近江富士として知られます。

 サルタヒコは岳山や鏡山から削り取った土を積み上げてミカミ山を成し、
 そこから井堰を築いて水を運び、山裾の荒地を潤したということです。
 ミカミは イカメ(厳め)の変態で 「いかめしくなった山」 の意と考えてます。

 御上神社 (みかみじんじゃ)
 滋賀県野洲市三上838。
 現在の祭神:天之御影神


■築く (つく)

 

【概意】
御孫は喜び、卯木の枝も <幸運のしるしと> また髪に挿して行く。
サルタをして 巨大な岩の塊を押し放てば、
逸尊の並外れたチワキ (道別き/地別き/幸) が一気に大ブレイク。
岳山やカガミ山の近江の土を積み上げてミカミ山を造り、井堰を築く。

 

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 さるたおほめて みおのかみ
 このむうすめお たまわりて そのなあらはす
 さるへらと かくらおのこの きみのもとなり

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 サルタを褒めて ミオの尊
 好むウズメを 賜りて その名 表す
 猿部らと 神楽獣の 君のもとなり

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■ミオの尊 (みおのかみ)
ニニキネがサルタヒコに賜った尊名です。 ▶ミオ


■好むウズメ (このむうずめ)
「気に入ったウズメ(=舞姫)」 の意ですが、おそらくは
「胸を開け 下秘部を曝して サルタヒコと会話したウズメ」 を指すのでしょう。


■その名表す (そのなあらはす)
これは、さきのサルタの言葉 「汝 我が名を表さば、我も出さん」 が、成就したことをいいます。


■猿部 (さるべ)
サルタヒコの流れを受けて、「猿などの獣を調教して芸を仕込むモノノベの集団」 をいいます。
これは “猿回し・獅子舞・猿楽” などの演芸を興行する官職です。 ▶官職

 ★部・侍 (べ)
 「はべる者・付く者・仕える者」 が原義で、モノノベの略です。

後世には曲解されて、サルメ(猿女) に転じたようです。
また “猿女” は 「サルタヒコの女(妻)」 の意にも誤解されたらしく、
天宇受売命(あまのうずめ)の別名ともなっています。

 佐瑠女神社 (さるめじんじゃ)
 三重県伊勢市宇治浦田2-1-10、猿田彦神社の境内社。
 現在の祭神:天宇受売命


■神楽獣 (かぐらおのこ)
「舞獣」 の意で、「猿回し」 と同じです。“獅子舞” も 本来はこれだったのでしょう。
これは “猿部” とは異なり、庶民による庶民のための演芸をいうものと思います。

 ★神楽 (かぐら)
 カク(駆く)+クル(▽転る) の同義語短縮 “カクル” の名詞形で、「回転・舞」 が原義です。

 ★獣 (おのこ)


君 (きみ)
この場合は 「猿部 や 神楽獣を司る長」 をいいます。

 

【概意】
君はサルタを褒めて “ミオの尊” と名を賜う。
また好むウズメを賜って、その名を表す。
猿部らと神楽獣の君の起源である。

 

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 みことのり みおのちわきも たはここに これかかみなり
 かりみやお みつほとなつく

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 御言宣 「ミオのチワキも 田はここに これ鏡なり
 仮宮を “ミヅホ” と名付く」

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■鏡 (かがみ)
「田に水を張った時の景観」 を形容したものと思います。


仮宮 (かりみや)

ミヅホ (瑞穂/水保/水辺)
ミヅホは ムスビ(結び)の変態で、普通 「実り・結果・成果・収穫」などを意味しますが、
ニニキネが田に水を張った様子を “これ鏡なり” と評していることから、ここでは特に
ミヅ(水)+ホ(保・補) の意を重ねていると考えます。またこの仮宮はアワ海(=琵琶湖)の
ほとりに建てられたため、「水のほとり・水辺」 の意も重なっているように思います。

 滋賀県守山市の野洲川河口の西岸に、水保町(みずほちょう)という地名が見えますが、
 三上山との位置関係から見て、この近辺にミヅホの仮宮があったと考えて間違いない
 ように思います。なお この仮宮は後に再開発されて国家首都となります。

 

【概意】
御言宣。
「近江の開発も田はここに成る。これまるで鏡なり。
ゆえに仮宮をミヅホと名づける。」

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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