⇦前の講座          目次           次の講座⇨ 

 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第117回 [2023.2.14]

第二二巻 オキツヒコ火水の祓 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 おきつひこひみづのはらひ (その3)
 オキツヒコ火水の祓 https://gejirin.com/hotuma22.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

―――――――――――――――――――――――――――――
 もしもほわさの あらんとき たつためのかみ あらはれは
 たとひほのほに はたるとも たつたにしつめ のそくへし

―――――――――――――――――――――――――――――
 もしも火災の あらん時 タツタ姫の神 現れば
 たとひ炎に はたるとも 竜に鎮め 除くべし

―――――――――――――――――――――――――――――

タツタ姫 (たつため)

■はたる
ハダレ(斑)ハダラ() の母動詞で、「合わす・寄す・込む・交じる」 などが原義です。
この場合は 炎に 「交わる・紛れる・まみれる・巻かれる」 などの意です。


竜・龍 (たつた)

 

【概意】
もしも火災のあろう時、タツタ姫の神の現れば
たとえ炎に巻かれても、竜をして鎮め除くべし。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 もしもゐのみつ くみたえて みけつのさわり あらんとき
 みつはめのかみ あらはれは いてのしみつお いさきよく
 あらためかえて ひとふるに みかめもきよく まもるへし

―――――――――――――――――――――――――――――
 もしも井の水 汲み絶えて 水欠の障り あらん時
 ミヅハメの神 現れば 出の染水を 潔く
 改め変えて 一振に 水瓶も清く 守るべし

―――――――――――――――――――――――――――――

■井 (ゐ・い)
ヰ(井)は イケ(埋け)の略形で、「埋め・溜め」 を原義とし、
「水埋み/湖・水溜り・池」 などをいいます。

 ★埋け・池 (いけ)
 イケル(埋ける)の母動詞 “イク” の名詞形で、「埋め・溜め」 が原義です。
 ウケ(受け・槽)オケ(桶) などの変態です。


■水欠 (みけつ)
「水の不足」 を意味します。
ミ(水)+ケツ(欠) の、ケツは ケヅル(削る)の母動詞 “ケツ” の名詞形で、“けち” の変態。


ミヅハメ

■出の染水 (いでのしみづ)
「湧き出る染水」 という意です。

 ★染水・滲水 (しみづ)
 シミ(染み・滲み)+ミヅ(水) の短縮で、「染みる水・地に染み込む水」 をいいます。
 今は “清水” と当てられます。


潔し (いさぎよし)

■水瓶 (みかめ)
ミ(水)+カメ(瓶) で、カメは コメ(籠め・込め)の変態です。
ミカメの短縮形が ミカ(甕) ではないかと思います。


一振 (ひとふる)

清し (きよし)

 

【概意】
もしも井の水が汲み絶えて、水欠の障りのあろう時、
ミヅハメの神の現れば、湧き出る染水を潔く改め変えて、
水瓶も一途に清く守るべし。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 もしもみわさの あらんとき すへやまつみの あらはれは
 たとひなかあめ あふれても やまはしけきに もちこたえ
 なかれおふかく なすことも つねにいせきお まもるなり

―――――――――――――――――――――――――――――
 もしも水災の あらん時 水山統みの 現れば
 たとひ長雨 溢れても 山は繁木に 持ちこたえ
 流れを深く なすことも 常に井堰を 守るなり

―――――――――――――――――――――――――――――

水山統み (すへやまつみ)

■山は繁木に持ちこたふ (やまはしげきにもちこたふ)
「山に繁る木の 深くて広い根張りが 土砂崩れを防ぐ」 という意味だと思います。


■流れを深くなす (ながれおふかくなす)
これも山に繁る木の 深くて広い根張りが、
「地下水や伏流水の流れを深くゆったりしたものとする」 という意味だと思います。


井堰・堰 (いせき)
イス(▽結す)+セク(塞く) の短縮 “イセク” の名詞形で、
両語とも 「合わす・結ぶ・締める・狭める」 などが原義です。
ですから 「(水の)塞き止め・溜め」、つまり 「井戸・池・湖」 などをいいます。

 

【概意】
もしも水災のあろう時、水山統みの現れば
たとえ長雨に氾濫しても 山は繁木に持ちこたえ、
水の流れも深くして、常に井堰を守るなり。

 〈これにてオキツヒコの宣詞は終わります〉

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 みなかんちかひ いちしるきかな
―――――――――――――――――――――――――――――
 皆 神誓ひ 著きかな
―――――――――――――――――――――――――――――

■神誓ひ (かんちかひ)
この宣言に歌われている 「神々があらためて(人の守りを)誓うこと」 をいいます。


著し (いちじるし)
「至って顕著なさま・他と大きく異なるさま・きわだつさま」 を表します。

 イチ+シルシ(著し) で、イチは イヅ(出つ)の名詞形、「突出するさま」 をいい、
 イツ(厳・稜威・逸)、イタ(▽甚・▽至)、“いと”  “ひど(い)”  などの変態です。

 ★著し (しるし・しろし)
 シル(知る)+シ(=如し) で、「わかる如し・認められる如し」 などが原義です、

 

【概意】
<この宣言を聞いて> 神としての誓いを新たにすること、皆 明らかなるかな。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 このときに としのりかみの まてにある おおとしかみと
 はにやすめ おころもともに ちかひして いさきよかれと
 かんほきに ほきのりなせる かなきゆひ

―――――――――――――――――――――――――――――
 この時に 年宣り神の 左右にある 大歳神と
 ハニヤス姫 オコロも共に 誓ひして いさぎよかれと
 神祝に 祝宣なせる かなぎ結ひ

―――――――――――――――――――――――――――――

年宣り神 (としのりかみ)

左右 (まて)

大歳神 (おおとしがみ・ををとしがみ)

ハニヤス姫 (はにやすめ)

オコロ

■いさぎよかれ (潔かれ)
「いさぎよからん」 の換言と考えてます。  ▶潔し ▶かれ
今風に言えば 「潔くなるべし・潔くするべし」 でしょうか。


■神祝 (かんほぎ)
「神を尊んで称えること」 をいいます。 ▶祝
この場合の神は、高天の原の神司である 「アマテル大御神」 です。


■祝宣 (ほぎのり)
「祝の言葉・祝辞」、またそれを 「宣ること・鳴り響かすこと」 をいいます。 ▶宣


■かなぎ結ひ (かなぎゆひ)
カナギは カヌ(兼ぬ)ナグ(和ぐ) の短縮 “カナグ” の名詞形で、
両語とも 「合わせ・締め・綴じ・閉じ」 が原義です。(“金具”も これかも)
ですから 「締めを結ぶこと・締めくくり」 という意です。

 

【概意】
この時に年宣り神の左右にある 大歳神とハニヤス姫、オコロも共に誓いして、
“潔くするべし” と、アマテル神を称えて祝辞を鳴り響かす締めくくり。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 たきひもきよく みつきよく みかまときよく みなきよく
 ひみつのみつの たからおの すさみなけれは いさきよく
 にあくるみけの ひもろけお ささくるすえも きよらかに
 むすふひみつの きよはらひ

―――――――――――――――――――――――――――――
 「焚火も清く 水 清く 竈 清く みな清く
 火水の充の 宝斧 荒み無ければ 潔く
 煮上ぐる食の ヒモロケを 捧ぐる据えも 清らかに
 結ぶ火水の 清祓」

―――――――――――――――――――――――――――――

清し (きよし・きやし)

火水の充 (ひみづのみつ)
この場合は 「陽陰5元素が合い充ちて生るもの・陽陰5元素の化合物」 という意です。
つまり 「粗金(埴+空)に、水・埴・火を合せて錬ったもの」 で、「金属製品」 をいいます。

 山に空の 通り生る ・・・ 粗金の 水・埴・火 錬りて 色変る 〈ホ15-2〉


■宝斧 (たからおの)
「尊い刃物」 という意ですが、おそらく今に言う ホウチョウ(包丁) です。
“包丁” の ホウは “宝” の音読み、チョウは 手斧(ちょうな) の略でしょう。


■荒み (すさみ)
ススミ(進み)の変態で、「進展・経過・成熟」 などを原義とし、
この場合は 「変化・劣化・荒廃・老朽化」 などを意味します。


ヒモロケ (胙・▽斎供)
「捧げるお供え」 の意で、この場合は 「神を尊ぶ心の (モノザネとして捧げる) お供え」 をいいます。


■据え (すえ・すゑ)
スフ(据ふ)の名詞形で、この場合は ヒモロケを据える 「食器」 をいいます。
これが スヱ(陶) の語源かもしれません。


■清らかに結ぶ (きよらかにむすぶ)
この “結ぶ” は 「〜という結果にする・〜に結着させる」 の意です。
相撲の “結びの一番” の “結ぶ” です。

 ★清らか (きよらか)
 キヨ(清)ラカ で、「曲り/濁りの全くないさま・澄み切るさま・純粋無垢」 が原義です。


■火水の清祓 (ひみづのきよはらひ)
「自然環境 (陰陽5元素) の清らかな調え」 というような意で、
この祝宣(ほぎのり)のタイトルです。 ▶火水 ▶清 ▶祓

 

【概意】
「焚火も清く、水清く、竈清く、みな清く
火水の充の宝斧(包丁)も荒みなければ、清潔に煮上げる
食物のお供えを、捧げる器も清らかに、結ぶ “火水の清祓”」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――
 よつきたからと すさましく しつむちかひの いさおしお
 ゆきすきはにの ををんかみ きこしめさるる きよはらひ
 ひみつおかみに つつしみて きよめたまへと まうしてまふす

―――――――――――――――――――――――――――――――
 代継ぎ宝と 進ましく しつむ誓ひの 功を
 ユキ・スキ・ハニの 大御神 聞こし召さるる 清祓
 火水を神に 謹みて 清め給えと 申して申す

―――――――――――――――――――――――――――――――

■代継ぎ宝 (よつぎたから)
「代々伝え継ぐ宝」 という意です。

 後代、ヤマトタケは東征に向かう際、叔母のヤマト姫から
 この “火水の祓” と、ソサノヲの “ハハムラクモの剣” を授かっています。

 ヤマト姫 錦袋と 剣 持ち 親王に曰く 
 「陽陰御孫 染めし火水の 御祓 火水の障り 祓ふべし」 〈ホ39〉


■進ましく (すさましく)
スサム(進む)+シク(如く) で、スサムは ススム(進む)の変態です。
ここでは 「上げる・進上する・献上する」 などの意です。
シク(如く)は ゴトク(如く) と同じです。
ですから 「進上する如く・献上するよう」 という意となります。


しつむ (為集む・鎮む)

■ユキ・スキ・ハニの大御神 (ゆきすきはにのををんかみ)
ユキは アユキ(陽結き) の略で、ここでは ア(天・陽・日) の意を表します。
スキは ワスキ(陰挿き) の略で、ここでは ワ(地・陰・月) の意を表します。
ハニは ハニスキ(埴挿き) の略で、ここでは ハニ(凝固物・この世・人) の意を表します。
これは 「日であり、月であり、人でもある大御神」、
つまり 「日月の大神霊が人として顕現した大御神」 という意味です。


■聞し召さる (きこしめさる)
聞こし召す” に、さらに尊敬の “” を重ねた表現で、“聞く” の3重尊敬語です。
キクは 「身に合わす/寄せる」 が原義で、この場合は 「心に留める・知る・認める」
などの意です。


火水 (ひみづ)

■神 (かみ)
竃の神」 をいいます。具体的には 年宣り神ヤマサ神、そしてオコロの守です。


謹む (つつしむ)

■清む (きよむ)
キワム(極む)の変態で、「行き着かす・至らす・澄み切らす・純粋にする」 などが原義です。


■申して申す (まうしてまふす・もうしてもうす)
1つ目の “申す” は 「謙譲/尊敬」、2つ目のは 「言う・伝える」 の意です。
ですから 「へりくだって言う・申し上げる・言上する」 などの意です。

 

【概意】
代々伝え継ぐ宝として進上するようにと、神の誓いを取りまとめた功を、
日月の顕現の大御神がお認めになられた “清祓”。
竃の神に 「火水を清め給え」 と、<御身を低めて> 申し上げるのであった。


 “謹みて”  “清め給え” “申して申す” これらの表現は、
 最高神であるアマテル大御神のものとしては、普通はまずありえないもので、
 ほとんど 「身を低めてお願いする・頭を下げて頼む」 と言ってるのも同じです。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

⇦前の講座          目次           次の講座⇨