⇦前の講座          目次           次の講座⇨ 

 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第75回 [2023.11.20]

第十五巻 食よろづ生り初めの文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 みけよろづなりそめのあや (その2)
 食よろづ生り初めの文 https://gejirin.com/hotuma15.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

―――――――――――――――――――――――――――――
 あめつちの ひらけるときの ひといきか めをとわかれて
 をはあめに めはつちとなる

―――――――――――――――――――――――――――――
 天地の 開ける時の 一息が 陰陽と分れて
 陽は天に 陰は地となる

―――――――――――――――――――――――――――――
   ホツマ・ミカサの7か所に記されている 天地創造説話 の一つです。

■天地の開ける時の一息 (あめつちのひらけるときのひといき)
初の一息」 と同じです。
“天地の開ける時” は 「泡泥の混沌が陽陰に分れる時」 という意味です。

 

【概意】
天地の開ける時の一息が、陰と陽に分れて、陽は天に、陰は地となる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 をのうつほ かせうみかせも ほとわかれ
 うをせのむねは ひのわなる いめのみなもと つきとなる
 つちははにみつ かつはには やまさととなる

―――――――――――――――――――――――――――――
 陽の空 風生み 風も 火と分かれ
 背の宗は 陽の環なる 妹の穢元 月となる
 地は埴・水 かつ埴は 山・里となる

―――――――――――――――――――――――――――――

空 (うつほ)

■背の宗 (うをせのむね)
ウヲセ(背)は 「陽」 を表し、ムネ(棟・宗)は「頂・極み・中心・核心」を表します。
ですから ヲセノムナモト(背の棟元)ムネカミ(棟上) の換言です。
ムネホ(棟穂)、ヒノワ(陽の環) とも呼ばれ、これはすなわち 「太陽=日」 です。


陽の環 (ひのわ)

■妹の穢元 (いめのみなもと・いものみなもと)
イメは 「陰」 を表し、ミナモトは 「陰の本源・陰の中心・陰の核心」 を表します。
“イメ” と “ミナ” は意味がダブっていますが、これはすなわち 「太陰=月」 です。


■地は埴水 (つちははにみつ)
このツチ(地)は、重い陰が凝って出来た 「物質」 を意味し、当時の認識では
「見えるもの・感触のあるもの」 で、「気体やエネルギー以外のもの」 です。
ハニ(埴)とミヅ(水)は、ここでは 「固体と液体」 と考えていいでしょう。 ▶埴 ▶水

 ★つち (地・土)
 ツヅル(綴る)の母動詞 “ツツ” の名詞形で、ツツは トヅ(綴づ・閉づ)の変態です。
 「合わせ・まとまり・凝り」 などが原義で、重い陰が 「下って凝ったもの」 を意味します。


里 (さと)
ここでは “山” に対して、「その周辺・裾野・麓・平地」 などを意味します。

 

【概意】
陽の空は風を生み、風もまた火を分け生む。
陽の核心は太陽となり、陰の核心は月となる。
地は埴と水とに分れ、かつ埴は 山・里となる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 はにうつほ うけてははいし すかはたま
 やまにうつほの とほりなる あらかねのあわ すすなまり
 すかははきかね ししろかね うひにあかかね はくろかね

―――――――――――――――――――――――――――――
 埴 空 受けて 蝕は石 清は珠
 山に空の 通り生る 粗金のアワ 錫・鉛
 清は果黄金 清白金 泥に赤金 果黒金

―――――――――――――――――――――――――――――

■蝕 (は・ば)
ワ(曲)の変態で、「曲り・直ぐでないさま・不純」 を意味します。
ばっちい” の バ です。


石 (いし)

清 (すが)
「直ぐなさま・純粋なさま」 を表し、ハ(蝕)の反対語です。


珠 (たま)
「上のもの・優れたもの・尊いもの」 が原義で、この場合は 「宝石・宝珠」 をいいます。


粗金 (あらかね)
「鉱石・粗鉱」 です。


■アワ
今に言う アエン(亜鉛) と思われます。


■果黄金 (はきかね)
ハは ハテ(果て)の略で、「至り・極み・純粋」 を表し、今風に言えば マ(真) です。
ですから 「真黄色の金属」 の意で、「金・ゴールド」 をいいます。  ▶黄金


■清白金 (ししろがね)
シ(清)は ス(素)の変態で、「直ぐなさま・澄むさま・純」 を表し、ハ(▽果)と同義です。
ですから 「真っ白な金属」 の意で、「銀」 をいいます。 ▶銀


■泥 (うび・ひぢ)
「埴と水の混合・どろ」 をいい、「混じるさま・濁るさま・純粋でないさま」 を表します。


赤金 (あかがね)

■果黒金 (はくろがね)
「真っ黒な金属」 の意で、「鉄」 をいいます。 ▶鉄

 

【概意】
埴が空を受けて、不純なるは “石”、純なるは “珠” となる。
山に空が通って生ずる “粗金” のアワ、錫、鉛。
清き埴には金や銀。泥には銅や鉄。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 それはきはきに きりはしろ ひのきはきあか くりはくろ
 てるあらかねお たたらなし ふいこにねれよ

―――――――――――――――――――――――――――――
 それ榛は黄に 桐は白 桧は黄赤 栗は黒
 出る粗金を タタラなし フイゴに練れよ

―――――――――――――――――――――――――――――

 この前半部分は何が言いたいのか悩むところです。
 「榛は黄色、桐は白色、桧は黄赤色、栗が黒色なのは、
 榛の生える所には黄金、桐の生える所には銀、桧の生える所には金と銅、
 栗の生える所には鉄の鉱石が出るからだぞ」 と言ってるのでしょうか。


榛 (はぎ)  [画像]   ■桐 (きり)  [画像]
桧 (ひのき) [画像]   ■栗 (くり)  [画像]

■タタラ (▽爛・▽称)
タタラは タタル(爛る)の名詞形で、タタルは タタフ(称ふ)の変態。
「上げる・高める・敬う・活性化する・栄す」 などが原義です。
よってタタラは 「上げ・高め・活性化・加熱・尊崇」 などをいいます。


■フイゴに練る (ふいごにねる)
フイゴ(鞴・吹子)は フキコギ(吹き漕ぎ)の略で、「漕いで風を送ること/物」 を表すと考えます。
ネル(練る・錬る)は ニル(煮る)の変態で、「高める・熟(こな)す・精練する」 などの意です。

 

【概意】
それ榛は黄に、桐は白、桧は黄赤、栗は黒。
出る粗金を熱し、風を送って精錬しろよ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 はにうくる うつほあまみつ なるくさき
 うつほはたすく みつひやす ははけかれする
 はなもみも あめのままなり みつはくふ ふよはくわぬそ

―――――――――――――――――――――――――――――
 埴受くる 空・雨水 生る草木
 空は助く 水 冷やす 埴は穢れ摩る
 花も実も 陽陰の随なり 三つは食ふ 二・四は食わぬぞ

―――――――――――――――――――――――――――――

■空は助く (うつほはたすく)
ウツホは ここでは空気 (酸素や二酸化炭素) をいうのでしょう。
タスク(助く)は 太陽エネルギーによる光合成を助けるということでしょうか。


■冷やす (ひやす)
強力な太陽エネルギーによってオーバーヒートしないように、
水を循環させて冷却するということでしょうか。


■埴は穢れ摩る (ははけがれする)
ハは ハニ(埴)と同じです。 ▶穢れ
スル(摩る・擦る)は 「往き来させる・回す・還す・改める」 などが原義です。
ですから 「埴は異常を改める」 という意になります。


■陽陰の随 (あめのまま)
「陽と陰のバランスしだい」 という意だと思います。 ▶まま
この草木の例では “空” は陽に属し、“水” と “埴” は陰に属しますが、
3つの配分バランスによって、花も実もさまざまに品が変わるということでしょう。

 

【概意】
埴が空と雨水を受けて “草木” が生る。
空は助け、水は冷やし、埴は穢れを改める。
花も実も陽陰の随なり。
3音の名のものは食うが、2・4音の名は食わぬぞ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 いしたまの ふなるはつきす
 あらかねの みつはほねりて いろかわる

―――――――――――――――――――――――――――――
 石・珠の 二なるは尽きず
 粗金の 水・埴・火 錬りて 色変る

―――――――――――――――――――――――――――――


【概意】
石や珠の内、2音の名のものは無尽蔵である。
粗鉱は、水・埴・火を加減して精錬すれば色が変る。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 くさきのむしの みつのこゑ
 かせにこゑあり うつほはね はにむしもこれ

―――――――――――――――――――――――――――――
 草木の虫の 三つの交
 風に声あり 空 跳ね 埴虫もこれ

―――――――――――――――――――――――――――――

■三つの交 (みつのこゑ)
ミツ(三つ)とは、空・風・火・水・埴 の五元素の内の3つということです。
コヱは コフ/コユ(交ふ)の名詞形で、「まじり/まじえ」 を意味します。


■埴虫 (はにむし)
土中に棲む虫 (=地虫) をいうのでしょう。
地虫鳴く” という季語があります。

 

【概意】
草木に群がる “虫” は、3元素の交わりで生まれる。
風の元素を持つ虫は鳴き、空の元素を持つ虫は跳ねる。
土中に棲む虫も同じである。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 うつほかせ ほみつのよつか なるとりの ほかつはおよく
―――――――――――――――――――――――――――――
 空・風 火・水の四つが 生る鳥の 火勝つは泳ぐ
―――――――――――――――――――――――――――――

 
【概意】
空・風・火・水 の4元素が交わって生じる “鳥” の、
火の元素が優勢な種類は泳ぐ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 はにとみつ ほかせのよつか なるけもの
 かせみつよるお なもみこゑ きつねたぬきそ
 ほとはにの よるはふたこゑ ゐのましそ よつなもこれそ

―――――――――――――――――――――――――――――
 埴と水 火・風の四つが 生る獣
 風・水 優るを 名も三声 狐・狸ぞ

 火と埴の 優るは二声 猪・猿ぞ 四つ名もこれぞ
―――――――――――――――――――――――――――――

獣 (けもの)

■優る・選る (よる)
ヨル(選る)の自動詞の意で、「上がる・優れる・勝る」 が原義であるため、
“優る” と当て字しています。

 

【概意】
埴・水・火・風 の4元素が交わって “獣” が生じる。
風と水が優勢な種類は名が3音、すなわちキツネやタヌキである。
火と埴の優勢な種類は名が2音の ヰノ(猪)・マシ(猿)などで、
4音の名の獣もそれである。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 つきのみつ くたせるつゆは かはのみつ
 うつほうくれは くもとなり ちあゆみのほる はにのいき
 のほるいかくり いゐのなり そやとめちつゑ

―――――――――――――――――――――――――――――
 月の水 下せる露は 川の水
 空 受くれば 雲と成り ちあゆみ昇る 埴の息
 昇るイガ栗 飯の態 十八トメチつえ

―――――――――――――――――――――――――――――

■月の水 (つきのみづ)
ツキ(月)は ここでは 「陰」 の換言です。ですから 「陰から生じた水」 という意です。
陰から水と埴が生じ、陰の核心が月に凝りました。ゆえに月は 「太陰」 とも呼ばれます。


■下せる (くだせる)
クダス(下す)の 「終止形+える」 の形の連体形です。


露 (つゆ)
ツブ(粒・▽円)の変態で、「つぶ状に結んだ液体」 を意味します。
この場合は 「水滴・雨滴・雨粒」 をいいます。

 参考: ★汁 (つゆ)
 
ツユ(潰ゆ)の名詞形で、「下るもの・落ちるもの・垂れるもの」 を原義とし、
 シル(汁)、タレ(垂れ) と同義です。


■ちあゆむ
チハヤブ(千早ぶ)の変態で、「高まる・勢いづく・沸き立つ」 などが原義です。
この場合は 「気化する・蒸発する」 という意になります。


■埴の息 (はにのいき)
蒸発する土中の水分を 「埴の息」 と形容しています。


態 (なり)

■トメチ
語義は未解明ですが、これは距離の単位で、1トメチ=38里 です。
今日の 1里=3.9273km で計算すれば、1トメチ=約150km、
18トメチ= 約2700km と、今日の知識からすると かなりすごい距離になります。

 トメチとは 女の三十六踏む 畝は十イキ 百イキは町 三十六 里
 里三十八なり (360歩=1町 36町=1里 38里=1トメチ) 〈ミ6-7〉


■つゑ
ツユ(潰ゆ・▽遂ゆ・▽終ゆ)の連用形で、
「行き着く・達する・至る・終る」 などが原義です。

 

【概意】
陰の水を下す雨滴は川の水となり、それを空が受ければ雲となる。
沸き立ち昇る埴の息は、イガ栗や飯粒が昇ってゆくようなさまで、
18トメチの上空に達し、

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 くもなかは ふれはめつゑに あひもとめ あめとふるなり
 さむかせに ゆきとこほれと をにとける

―――――――――――――――――――――――――――――
 雲 半ば 経れば 陰 終に 合ひ求め 雨と降るなり
 寒風に 雪と凍れど 陽に融ける

―――――――――――――――――――――――――――――

半ば (なかば)
ここでは副詞として 「かなりの程度に」 の意を表します。


■経る (ふる)
ヘル(経る)の変態で、「時間が経過する」 という意です。フル(経る)の名詞形が フル(古)です。


■陰 (め)
水の源である 「陰霊・陰エネルギー」 をいいます。


■終に・遂に (つゑに)
ツヱは ツユ(潰ゆ・▽遂ゆ・▽終ゆ)の名詞形で、ツヱニ は ツイニ(終に・遂に) と同じです。


■合ひ求む (あひもとむ)
アフ(合ふ)+モトム(求む) の連結で、「合いまとまる・寄り集まる」 などの意です。


■雨 (あめ・あま)
アムの名詞形で、アムは アユ(零ゆ)オル(下る・降る)フル(降る) などの変態。
「下るもの・落ちるもの・降るもの」 が原義です。


■雪 (ゆき)
ユク(▽結く)の名詞形で、ユキ(靫)と同源です。
「結び・束ね・凝り・凍り・梱・結晶・凝結」 などが原義で、
「(雨が冷えて) 凝り固まったもの・結晶したもの」 を意味します。


■陽 (を)
「陽霊・陽エネルギー」 をいいます。この場合は 「太陽の熱」 です。

 

【概意】
雲はある程度 時が経つと、陰は終に寄り集まって、雨と降るなり。
寒風に雪と凍れど、陽に融ける。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 よるなみうけて なるうしほ 
 やくしほすかの うつわもの はめはみのあか まぬかるる

―――――――――――――――――――――――――――――
 夜潤波受けて 生る潮
 焼塩 清の 器物 食めば身の垢 免かるる

―――――――――――――――――――――――――――――

夜潤波・夜霊波 (よるなみ)
「月の陰エネルギー」 をいいます。


潮 (うしほ)

■焼塩・焼潮 (やくしほ)
加熱して水分を蒸発させたウシホ(潮)で、ようするに 「塩の結晶」 です。
カタシオ(堅塩・固塩)とも呼ばれます。


清 (すが)

器物 (うつわもの)

垢 (あか)

 

【概意】
月の陰エネルギーを受けて “潮” が生ずる。
潮を焼いた塩は 清の具現物ゆえ、食えば身の穢れを免かれる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 みつはにふくむ ほなるかゐ
 みつうくうつほ ほなるうお しはうろこよし
 ほはくさし

―――――――――――――――――――――――――――――
 水・埴 含む 火 生る貝
 水 受く空 火 生る魚 皺鱗 好し
 火は臭し

―――――――――――――――――――――――――――――

■皺鱗 (しはうろこ)
同義語の連結で、シハ/シワ(皺)は 「きざみ・分割・区切り」 が原義。
ウロコは ウロ(▽万)+コ(小・分) で、「万の断片・多くの分割」 の意です。
ですからどちらも、体表が 「小片に分割されるさま」 を表します。

 

【概意】
水と埴が火を含むと “貝” となる。
水が空と火を受けると “魚” となる。鱗の魚が好ましい。
火を含むものは臭い。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

⇦前の講座          目次           次の講座⇨