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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第53回 [2023.9.29]

第十巻 カシマ直ち 連り鯛の文 (5)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 かしまたちつりたいのあや (その5)
 カシマ直ち 連り鯛の文 https://gejirin.com/hotuma10.html
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 またひとり ありといふまに あらはるる
 たけみなかたそ ちひきいわ ささけてたれか わかくにお
 しのひしのひに おとさんや いてわかちから くらへんと

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 「まだ一人 あり」 と言う間に 現わるる
 タケミナカタぞ 千引岩 捧げて 「誰か 我が国を
 忍び忍びに 脅さんや 出で我が力 比べん」 と

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■タケミナカタ
オホナムチには181人の子があったとされますが、ホツマに登場するのは
5人だけで、その内の1人です。古事記には 建御名方神 と記されます。

 オホナムチ 生え画内で 楽しむる 百八十一人 子に満つるかな  〈ホ9-6〉

  ソサノヲ┐      
      ├──オホナムチ──┐┌─クシヒコ
  イナタ姫┘ (オオモノヌシ) ││(コトシロヌシ)
                ├┤
  アマテル┐         │├─タカコ
      ├──タケコ────┘├─タカヒコネ
  ハヤコ─┘          ├─タケミナカタ
                 ├─シマツウシ
                 └─ 他176名


■千引岩 (ちびきいわ)
「千人でようやく引けるほどの巨大な岩」 をいいます。
タケミナカタ も怪力を誇っていたようですが、このたびは相手が悪すぎました。
万引きの岩 を引く タケミカツチ ですから。


■捧ぐ (ささぐ)
サス(差す)アグ(上ぐ) の連結 “サシアグ” の短縮形です。サスは “傘をさす” のそれで、
両語とも 「上げる・高める」 が原義です。「献上する・奉納する」 の意に使われる場合が
多いのですが、ここでは 「持ち上げる」 の意です。


■忍び忍びに (しのびしのびに)
シノブ(忍ぶ) は、「内にひそめる・内に抑える・外に出さない」 などの意です。
ですから 「ひそやかに・隠れて・裏でコソコソ」 等の意となります。

 ★忍ぶ・偲ぶ (しのぶ) ★忍び・偲び (しのび)
 シナフ(撓ふ)シナブ(萎ぶ) などの変態で、
 「低まる/低める・垂れる・抑える・ひそめる・衰える」 などが原義です。

 

【概意】
「まだ一人いる」 と、言う間に現われるタケミナカタであった。
千引岩を持ち上げて 「誰か我が国を裏でコソコソ脅そうとするか。
出できて、我が力と比べようぞ」 と、



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 とるてもいわの みかつちか とらへてなくる あしかひの
 おそれてにくる しなのうみ すわといふとき かしこみて
 われおたすけよ このところ ほかえはゆかし そむかしと
 いえはたすけて たちかえり

―――――――――――――――――――――――――――――
 取る手も岩の ミカツチが 捕へて投ぐる アシカヒの
 恐れて逃ぐる シナの海 「すわ」 と言ふ時 畏見て
 「我を助けよ この所 他へは行かじ 背かじ」 と
 言えば助けて 立ち帰り

―――――――――――――――――――――――――――――

■取る手も岩 (とるてもいわ)
タケミナカタが持ち上げた千引岩を、奪い取るミカツチの手も
また岩のようであったということです。

 ★岩・巌・磐 (いわ) ★石 (いし)
 イワ(岩) は イフ(▽結ふ) の名詞形で、イフ は ユフ(結ふ) の変態です。
 ウビコ(泥塊=溶岩) が冷えて 「結んだもの・凝り固まったもの」 が原義です。
 イシ(石) は イス(▽結す) の名詞形で、これも原義は同じです。


■アシカヒの (▽葦萱の・葦牙の)
“シナ” にかかる 枕詞 と考えます。(辞書は “葦牙” と当て、“足” にかかると説明)

 アシカヒ(▽葦萱) は チガヤ(茅萱) の換言で、屋根を覆う材として用いられました。
 “屋根” は 「家屋の一番高い場所」 です。そして シナの国 (=信濃国) は 国家の中で
 もっとも平均標高の高い国です。
 そのため アシカヒ(▽葦萱) は 国家の屋根=シナの国 にかかると考えています。
 また アシカヒ は アチ(阿智) や カヒ(甲斐) の地名となったとも考えています。

 アシ(葦) は アス(填す) の名詞形、カヒ は カフ/カウ(高・甲)、カヤ(萱) などの変態。
 いずれも 「高いさま・高地・栄えるさま・繁茂」 などが原義です。


■シナの海 (しなのうみ)
「高所の海」 という意で、諏訪湖 を指します。 ▶シナ
諏訪湖の水面の標高は759メートルです。


すわ
これは今に言う “さあ” で、「促し・勢い付け」 の詞です。
そしてもちろん スワ(諏訪) に語呂合わせしています。

 ★すわ (諏訪)
 岨(そわ・そば) の変態で、「そびえ立つ所・そそり立つ所」 を意味します。


■畏見る (かしこみる)
カシコ(恐・畏・賢)+ミル(見る) で、「尊敬/畏怖の念を抱く」 という意です。
カシコマル(畏まる)オソレイル(恐れ入る) などと同義です。
後世は カシコム(畏む) という動詞に変形しています。

 カシコは カシグ(炊ぐ) の名詞形で、相手を 「上げる・高める・敬う・尊ぶ」 などの意ですが、
 これは裏返せば、自分が 「下がる・低まる・退く・おじけづく」 という意にもなります。


■行かじ (ゆかじ) ■背かじ (そむかじ)
ジ は 否定の ズ の推量・意志形で、マジ と同じです。
マジ は現代語に言う マイ で、この場合は 「行くまい」 「背くまい」 という意になります。


立ち帰る (たちかえる)

 

【概意】
<持ち上げた千引岩を> 奪い取る手も岩のような ミカツチがその岩を投げて、
恐れたタケミナカタは 葦萱の シナの海(=諏訪湖) へと逃げるも、
<追い詰めて> 「さあ!どうする」 と言う時、タケミナカタはかしこまって
「我を助けよ。この所の他へは行くまい、背くまい」 と言えば助けて、
ただちにイヅモへもどり、


 これにより タケミナカタ は シナの国 に土着し、その知行者となります。
 前の知行者はどうしたのか? という疑問が湧いてきますが、おそらく
 前任者はいなかったのでしょう。シナの国の立地・自然環境は非常に厳しいため
 住む人も少なく、まだ国としての体をなしていなかったと考えています。
 以後、タケミナカタが 諏訪湖畔 を拠点として開拓してゆくのです。
 タケ(▽高・丈・長)+ミナ(▽峰)+カタ(方) は 「高峰の区画」 を意味し、
 シナの国、スワ(諏訪) の換言です。


  諏訪大社 (すわたいしゃ)
  信濃国諏訪郡。長野県の諏訪湖周辺に4宮。
   上社本宮(かみしゃほんみや) 長野県諏訪市中洲宮山1。
   上社前宮(かみしゃまえみや) 長野県茅野市宮川2030。
   下社秋宮(しもしゃあきみや) 長野県諏訪郡下諏訪町193。
   下社春宮(しもしゃはるみや) 長野県諏訪郡下諏訪町5828。
  現在の祭神:建御名方神
  ・諏訪大社の古名は 南方刀美神社(みなかたとみのかみのやしろ:峰方臣の神の社)。



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 とえはことふる おほなむち そのこのままお ふたかみえ
 わかこさりにき われもさる いまわれさらは 
 たれかまた あえてなれなん ものあらし
 わかくさなきの このほこに ならしたまえと いひてさる

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 問えば応ふる オホナムチ その子のままを 二尊へ
 「我が子去りにき 我も去る いま我去らば
 誰かまた あえて平れなん 者あらじ
 我がクサナギの この矛に 平し給え」 と 言ひて去る

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■応ふる (ことふる)
コタフ(応ふ・答ふ) の変態 “コトフ” の連体形で、コタエル(応える・答える) と同じです。

 コタフ/コトフは 「往き来させる・回す・伝える・返す」 などが原義で、
 コトフ の名詞形が コトバ(言葉)、また コトフル の名詞形が コトワリ(断り) です。


■その子のまま (そのこのまま)
「タケミカタナの言う通り」 という意です。 ▶まま (儘・任・随)


■二尊 (ふたかみ)
この 二尊 は 「タケミカツチとフツヌシ」 を指します。


■去りにき (さりにき)
これは 「去りにければ」の略形です。
この ‘き’ の使い方は “〜じゃ・〜じゃ・〜じゃけん” など 方言に多く残ります。
サル(去る) は、ここでは ヒク(退く)・シリゾク(退く) の意です。


■平れなん (なれなん)
ナル(▽和る・▽平る・慣る・馴る) は 「やわす・馴染む・懐く・平らに収まる」
などが原義で、この場合は 「まつろう・平伏する・服従する」 などの意です。
ナン は ナ(否定のヌの未然形)+ン(意志/推量) で、「〜しようとしない」 の意を表し、
ナレナン は 「服従しようとしない」 という意味になります。


■あらじ
これも ジ は 否定の ズ の推量・意志形で、マジ と同じです。
この場合は 「あるまじ・あるべきでない・あってはならない」などの意を表します。


■クサナギ (▽曲和ぎ・草薙)
クサ(▽曲)+ナギ(和ぎ・凪) で、「曲りの直し」 を意味します。
クサ は クセ(曲) の変態、ナギは 「やわし・治め・調和・直し」 を表します。
草薙 (草を薙ぎ払うこと) を これの モノザネ とする場合もあります。

 ここに言う “クサナギの矛” は、有名な 草薙剣 とは別物です。


平す・均す (ならす)
ナル(▽平る・▽和る・慣る・馴る) の他動詞形で、
「やわす・収(治)める・調える・直す・平定する」 などの意です。

 

【概意】
「我が子が去ったからには 我も去る。
今 我が去って、また誰か あえて従おうとしない者があってはならぬゆえ、
我がクサナギの この矛に平し給え」 と言いて去る。



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 さかふはきりつ まつらふは ほめてもろかみ ひきいつつ
 あめにかえれは こふのとの まつりおとりて みことのり

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 逆ふは斬りつ 服ふは 褒めて 諸守 率いつつ
 天に返れば 代の殿 政を執りて 御言宣

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逆ふ (さかふ)
ここでは名詞形で、「逆らう者」 という意です。


■斬りつ (きりつ)
ツ は ツツ の短略で、今の接続助詞 “テ” と同じ。
ですから “斬りつ” は 現代語の “斬りつつ・斬って” と同義です。

 ツツ は ツヅル(綴る)・ツヅク(続く) の母動詞 “ツツ” の名詞形で、
 「合わせ・結び・つなぎ」 などが原義。
 それを 「〜して、なおかつ・〜しながら」 の意の接続詞としています。


■服ふ (まつらふ・まつろふ)
ここでは名詞形で、「服従する者」 を意味します。
 
 ★服ふ (まつらふ・まつろふ:動詞)
 マツル(纏る)+アフ/オフ(合ふ) の短縮で、両語とも 「合う・付く・まとう・まとまる」
 などが原義。「付き添う・まとい付く・付き従う・服従する」 などの意を表します。
 マツワル(纏わる)マトワル(纏わる)マトマル(纏まる) などの変態です。


諸守 (もろかみ)
この場合は、オホナムチの配下として 「イヅモの国を治めていた諸役人」 をいいます。


天 (あめ)

代の殿 (かふ/かう/こふのとの)
7代タカミムスビのタカキネが、病弱の国君オシホミミに代わり、
中央の政を執るために就いた臨時の役職です。

 

【概意】
逆らう者は斬りつつ、従う者は褒めて、諸守を率いつつ
中央政府に帰って報告すれば、<君に代り> 代の殿が政を執って御言宣。



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 なんちふつぬし あわうわの とふるみちひき さかんなり
 またみかつちは かしまたち いつおあらはす もののへの
 なんたやわらに もとすより たまふかんへは かしまかみ

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 「汝フツヌシ アワウワの 通る導き 盛んなり」
 「またミカツチは 曲染 直ち 稜威を現す モノノベの
 灘 柔らに 戻すより 賜ふ尊部は “カシマ尊”」

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■アワウワの通る (あわうわのとふる)
「混沌・混乱に 秩序が通る」 という意です。 ▶アワウワ (▽泡泥)


盛ん (さかん)
サカリ(盛り) の音便で、サカリ は サク(咲く)+カル(上る) の短縮 “サカル” の名詞形です。
両語とも 「高まる・勢いづく・栄える・優れる」 が原義で、サクラ(桜)・サカエ(栄え) の変態。


曲染 (かしま) ■直つ (たつ)
「さかしま・よこしまを直す/正す」 という意です。


■稜威を現すモノノベ (いつおあらはすもののべ)
イツ(稜威・厳)は 「勢いの鋭いさま・厳しさ・気概・意地・憤慨」 などをいいます。
ですからここでは 「憤慨をあらわにするモノノベ」 という意となります。

 モノノベ は 公務員・役人 をいいますが、モノノベの主が オオモノヌシ です。
 ですからすべての モノノベ は、オホナムチの部下であるのです。
 またオホナムチは ホヒ親子アメワカヒコ が、靡いて寝返るほどに人望が
 ありました。そうした親ぶんが失脚させられたわけですから、モノノベたちが
 憤慨をあらわにするのも無理のないことでしょう。


■灘・▽難 (なんだ)
ナダ(灘) の音便です。「高ぶり・険しさ・激しさ」 などを意味します。
本当は 「難」 の意ですが、これには ナダ の読みが無いので、やむなく “灘” を当て字しています。


和ら・柔ら (やわら)
「中和・調和するさま・極端に偏らない状態」 をいい、ヤスラ(安ら) の換言です。
“和らに戻す” は、憤慨するモノノベの激昂を和らげて、「穏やか・平穏」 に戻すという意です。

 ヤワ(▽和・柔)+ラ で、ラ は アル(在る) の名詞形、「ありさま・状態・位置」 を表します。
 ヤワ は ヤフ の名詞形で、ヤフ は アフ(合ふ・和ふ)、ユフ(結ふ) などの変態です。


■尊部 (かんべ)
カミナ(尊名) と同じです。 「称え名・称号」 をいいます。
ベ(侍・部) は 「付くもの・添うもの」 を表し、この場合は 「名」 の換言です。

 ★侍・綜 (へ・べ)
 ヘル(綜る)ヘス(圧す) などの名詞形で、
 「合わせ・添え・付き・ガイド・ガード」 などが原義です。


■カシマ尊 (かしまかみ)
タケミカツチ に賜った尊名です。
この カシマ は “カシマ直ち” の カシマ(▽曲染) とは意味が違い、
“和らに戻す” ことを表すものです。

 ★カシマ (▽和染・▽和親)
 カス(和す)+シム(染む・▽親む) の短縮 “カシム” の名詞形で、
 両語とも 「合わす・和す・調和する・平穏にする」 などの意です。

 

【概意】
「汝フツヌシの 混沌に秩序が通るその導きはみごとなり。」
「またミカツチは曲りを正し、憤慨をあらわにするモノノベの
高ぶりを平穏に戻すにより、“カシマ尊” の尊名を賜う。」



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 ときにまつらふ おほなむち ももやそかみお ひきゐきて
 まめもひかけの なんたあり たかみむすひの たたしゑた
 ことわりあれは みことのり たまふあそへの あかるみや

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 時に服ふ オホナムチ 「百八十守を 率い来て
 忠も日陰の 灘あり」 タカミムスビの 正し枝
 理あれば 御言宣 賜ふアソベの “アカル宮”

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■百八十守 (ももやそかみ)
オホナムチの子供たちをいいます。
180という数は、シナの国に逃れた タケミナカタ を除いた子供の数です。

 オホナムチ 生え画内で 楽しむる 百八十一人 子に満つるかな 〈ホ9-6〉


忠 (まめ)

■日陰の灘 (ひかげのなんだ)
「人知れぬ困難・陰の努力奮闘」 という意に取っています。

 ★なんだ
 ナダ の音便で、「難」  「傾」  「涙」 の 3種の意味があります。


■正し枝 (ただしゑだ)
「公正のための言い訳・不公平を排除する言い分」 という意です。
タダス(正す・直す) は 「まっすぐにする・片寄りをなくす・不公平をなくす」 が原義。
ヱダ(枝) は 「分け・訳」 の意で、この場合は 「言い訳言い分」 をいいます。

 
 ★枝 (ゑだ・えだ・ゑ)
 ヱツ(▽回つ・▽越つ) の名詞形で、ヱツ は オツ(復つ) の変態。
 「回転・あらため・更新・再生・繰り返し」 などが原義で、
 「母体から新たに生まれるもの・派生・新派・子孫」 などを意味します。


理 (ことわり)

■アソベ (彼辺)
アソ(彼)+ベ(辺) で、アソ は アソコ(彼処・彼所) の アソ です。
「遠く離れる所・辺鄙・辺境」 を意味する地名で、辺境とは 具体的には
ヒスミの国 (=津軽) をいいます。 ▶ヒスミ

 青森県の岩木山周辺は古くから アソベ(阿曽部)の森 と呼ばれています。


■アカル宮 (あかるみや)
アカル(散る・分る)ミヤ(宮) で、アカル は 「離れる・隔たる・外れる」 などが原義。
「辺境の宮/都」 という意で、アソベ と同義です。


御言宣 (みことのり)
これは 国君オシホミミ による御言宣だと思います。
さすがに知行地を付与するというような重大な決定は、
代の殿の独断ではできないのでしょう。

 

【概意】
時に服従したオホナムチについて、
「180人の守を率い来て、忠も人知れぬ奮闘あり」 と、タカミムスビの公平な言い訳。
理あれば オシホミミ君は御言宣。アソベのアカル宮をオホナムチに賜う。

 
 タケミナカタの場合と同じく、北端の地である津軽はまだ国として成立しておらず、
 中央政府の統治が及んでいないのでしょう。そこにイヅモ国を繁栄させた実績を持つ
 オホナムチを知行者として送り込めば、あわよくば津軽は第二のイヅモになるかも …
 という中央政府の期待が透けて見えるような気がします。そしてオオナムチは
 みごとにそれを成し遂げるのです。



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 あふゆおうくる おほなむち あかるあそへの うもとみや
 つくるちひろの かけはしや ももやそぬゐの しらたてに
 うつしくにたま おほなむち つかるうもとの かみとなる
 ほひのみことお もとまつり

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 天振ゆを受くる オホナムチ あかるアソベの ウモト宮
 造る千尋の 掛橋や 百八十縫の 標立に
 現し地尊 オホナムチ ツカルウモトの 守となる
 ホヒの尊を 元纏り

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■天振ゆ (あふゆ)
ア(天) は アメ(天) の略で、ここでは「中央政府・御上・皇」をいいます。
フユ(振ゆ) は 「恵み・施し」 の換言。ですから 「御上の恵み」 という意となります。


■ウモト (▽埋没) ■ウモト宮 (うもとみや:▽埋没宮)
ウモト は ウム(埋む)モツ(▽没つ) の短縮 “ウモツ” の名詞形で、
「(日が) 埋没状態にある方角=」 を意味し、ヒスミ(日済) の換言と考えます。
よって ウモト宮 は 「ヒスミ国の宮/都」 の意で、アカル宮 の換言です。

 ムツ(陸奥) も モツ(没) の変態かと思案中です。

 
■千尋の掛橋 (ちひろのかけはし)
「広さ2000畳の掛橋」 です。

 ヒロ(尋) は 「両手を左右にひろげた時の両手先の間の距離」 で、
 1尋=約1.8m とありますが、もとは面積の単位だったと考えています。
 つまり 1尋=1間平方=1.8m×1.8m=2畳、千尋=2000畳 です。

 カケハシ は 「掛け合わせ」 という意で、「隔たる2カ所に掛けて結ぶもの」 をいい、
 ただの ハシ(橋) との違いはありません。


■百八十縫の標立 (ももやそぬゐのしらたて)
“百八十縫” は オホナムチの 「180人の子らが縫ったこと」 をいい、
シラタテ(▽標立) は 「知らせるために立てるもの」 の意。
つまり 「ウモト宮を示す標識 (旗・幟)」 をいうのではないかと考えます。

 日本書紀は “百八十縫の白楯” と記していますが、“楯” ではないと思います。
 ホツマには防具の 「楯」 については何も書かれてなくて、
 剣(太刀)を 敵の攻めを遮断するための武具として位置づけています (23アヤ)。
 つまり タチ(太刀) を タテ(楯) とするため、楯は使わなかったと考えています。


■現し地尊 (うつしくにたま)
「下界の尊者・物質的繁栄の偉人」 などの意で、オホナムチの称え名です。
記紀には 宇都志国玉神/顕国玉神 と記されます。 ▶現し国

 岩木山神社 (いわきやまじんじゃ)
 青森県弘前市百沢字寺沢27。  
 現在の祭神:顕国玉神 (うつしくにたまのかみ)
 ・岩木山(625m) の南東麓に鎮座。岩木山は古く 「アソベの森」 と呼ばれた。


■ツガル (▽尽離る・津軽)
ツク(尽く)カル(離る) の短縮で、「至って離れる・極めて隔たる」 などの意です。
これが名詞化した地名が ツガル(津軽) で、やはり 「辺鄙・辺境」 を意味します。
ですからこれも アソベアカルウモト などの換言です。


ホヒの尊 (ほひのみこと)
アマテルの長男で、尊(みこと) はアマテルの御子に対する敬称です。
カシマ直ち の勅使の1人目としてイヅモに派遣されますが、
オホナムチになびいてイヅモに居着きます。


■元纏り (もとまつり)
「元の国を纏る者」 という意です。 ▶纏る
元の国とは 「オホナムチの元の国」 という意で、イヅモの国 を指します。

 ホヒ は モチコ の生んだ男子で、根国とサホコチタル(イヅモの旧名)を平定し、
 その最初の知行者となった、アワナキ の血筋を受け継ぐ男子です。
 それゆえオホナムチが去った後の、イヅモ国の後継者に任じられたものと考えます。

 
 ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル  ┌ココリ姫
     │            │
     └アメヨロヅ┬アワナキ─┼イサナキ───アマテル      
           │      │        ┃
           └サクナキ  │ ??????? ┌─モチコ──ホヒ
                  │  ┃──┤  ┃
                  └クラキネ └─ハヤコ──タケコ・タキコ・タナコ
                     ┃──┐
                   サシミメ  └─クラコ
                           ┃
            トヨケ───カンサヒ───アメオシヒ


 ★元・本・基・原・旧・故 (もと)
 モドル(戻る) の母動詞 “モツ” の名詞形で、「回る・巡る・還る・回帰する」 などが原義です。
 ですから 「回って返る所・回帰する所・前にいた所・出発点・原点」 などを意味します。
 “もっと”  “また” も同源で、「あらためて・さらに・くりかえして」 の意を表します。

 

【概意】
御上の恵みを受けるオホナムチ。あかるアソベ (遠き辺鄙) の “ウモト宮”。
千尋の掛橋や百八十縫の標旗を造り、地上の尊者オホナムチは 最北端の守となる。
ホヒの尊を元国イヅモの守となす。


 ところで日本書紀の第九段一書(二)に、次のような記述があります。

 ❝ 汝が住むべき 天日隅宮 は今つくりまつらむこと、即ち 千尋の栲縄 を以て、
 結ひて百八十紐にせむ。 (中略) また天安河に亦 打橋 つくらむ。
 また 百八十縫の白楯 つくらむ。また汝が祭祀を主らむは 天穂日命 是なりと。❞

 ここに言う 天日隅宮 (あめのひすみのみや) は、世間では 出雲大社 を指すと
 考えられていますが、実は ヒスミの国 (=津軽) の 「ウモト宮」 を指すようです。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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