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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第61回 [2023.10.14]

第十三巻 ワカヒコ 妹背すずかの文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 わかひこいせすずかのあや (その1)
 ワカヒコ 妹背すずかの文 https://gejirin.com/hotuma13.html
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 わかひこいせすずかのあや
 たかのこふ つほわかみやの あつきひの
 ゑらみうかかふ わかひこに みきたまわりて みことのり
 かみはいもせの みちひらく われはかすかに これうけん

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 ワカヒコ 妹背すずかの文
 タカの首 ツボ若宮の 暑き日の
 選み伺ふ ワカヒコに 御酒賜りて 御言宣
 「神は妹背の 道 開く 我はカスガに これ受けん」

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■ワカヒコ ■妹背 ■すずか
本文中で説明します。

タカの首 (たかのこふ)

ツボ若宮 (つぼわかみや:壺若宮)

■選み伺ふ (ゑらみうかがふ)
わざわざ暑い日を選んで伺う理由が見当たらないので、この “選む” は
「選択する」 の意ではなく、君の所に 「上る・参る・詣でる」 の意ではないかと考えます。

 ★選む/選ぶ (ゑらむ/ゑらぶ)
 ヱル(▽上る)+アフ(▽上ふ) の短縮で、ヱルは エラ(偉)の、アフは アフル(煽る)の母動詞。
 「上・先・前に行く/置く・上がる/上げる・優先する」 などが原義です。

 ★うかがふ (窺う・伺う)


ワカヒコ
アマノコヤネの斎名です。ワカヒコはオシホミミの即位の儀に際し、アマテルの勅使として、
タカノコフのツボ若宮に出向き、その御言宣を告って三種宝を授与していますが、〈ホ11〉
これはその直後の、ワカヒコがヒタカミに滞在している間のエピソードです。


御酒 (みき)

神 (かみ)
ここでは 陰陽を分けて大宇宙を創造した アメノミヲヤ(陽陰の上祖)
また それと同一視される アマテル神 を指します。

 アマテルは日の神霊と月の神霊の融合により、世に生れますが、
 日と月はアメノミヲヤの両眼に相当すると考えられていました。

 アメノミヲヤの 眼より 漏るる日・月と 天元神 三十二の神の 守るゆえ
 子種生ること 覚えます 〈ホ4-2〉

 
■妹背の道 (いもせ/ゐもせのみち・いせ/ゐせのみち)
「陰陽(女男)とその和合の道」という意で、アメナルミチ(陽陰和る道)と同じです。
イモセ(妹背)は 「陰陽・月日・女男」 を表します。陰と陽は結び付く宿命にあるため、
これは同時に 「和の道」 でもあります。

 イセノミチ(妹背の道)、アメノミチ(陽陰の道)、アメツチノノリ(天地の法)、
 アマノリ(陽陰法)、ヒツキノミチ(日月の道)、ヤマトノミチ(和の道) など
 非常に多くの換言があります。


■カスガ
カスガの尊 の略です。

 

【概意】
ワカヒコ 妹背すずかの文
タカの首 壺若宮の 暑き日の、参り伺うワカヒコに
オシホミミ君は御酒を下されて御言宣。
「神は陰陽の道を開く。我はカスガにこの道を受けよう。」

 

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 かすかはおなし ひたにます みきはひたかみ うおきみと
 かるきみをきな つきかとり かんきみおよひ かしまきみ
 つくはしほかま もろもます

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 カスガ 場を成し 左に座す 右はヒタカミ結君と
 カル君翁 次カトリ上君 および カシマ君
 ツクバ・シホカマ 諸も座す

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   ここは五七調が少々いびつなため、言葉の区切りを調整しています。

■場を成す (ばおなす)
「その場を設ける」 という意味でしょう。
 
 ★庭・場 (には/にわ) ★場 (は/ば)
 ニフ(▽和ふ)の名詞形で、「柔和・平らなさま・凸凹のないさま」 を原義とし、
 「何かを行うのに邪魔するものが無い比較的平坦な空き地」 をいうと考えます。
 また ニハ/ニワの短縮形が バ(場)と考えます。


■左 (ひだ)
“ひだり” と同じです。
ヒ(日)+ダ(出)で、「日の出・日の出の方向・東」 を意味します。
ダ(出)は デ(出)の変態で、ヅ(出) の名詞形です。


坐す・座す・在す (ます)

ヒタカミ結君 (ひたかみうおきみ)
ヒタカミ国全体を統べるタカミムスビの代理者です。

カル君 (かるきみ) ■翁 (をきな)
ツガル(津軽)=ムツ(陸奥) の国の知行者です。


■カトリ上君 (かとりかんきみ)
“カトリ” は フツヌシがアマテルより賜った尊名です。 ▶カトリ尊
“上君” は、「ホツマ国全体を統べるフツヌシ」 に対して一段高い敬意を添えるものです。


■カシマ君 (かしまきみ)
カシマは タケミカツチがオシホミミより賜った尊名です。 ▶カシマ尊
ホツマ国の カシマ(鹿島)=ヒタチ(日立・常陸) の地域の知行者です。


■ツクバ・ツクバ大人 (つくばうし)
ホツマ国のツクバ(筑波)の地域の知行者です。
ソガ姫の父のツクバハヤマ、あるいはその子だと考えられます。 ▶大人


シホカマ
ヒタカミ国のシホカマ(塩竈)の地域の知行者です。

 

【概意】
カスガはその場を設け、君の左に座す。
右にはヒタカミ結君とカル君翁。次にカトリ上君およびカシマ君。
ツクバにシホカマ。その他の諸臣も座す。

 

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 ときにみとひは さきにみつ あひせんつるお
 うほきみか とめてまねなす これいかん

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 時に御問ひは 「先に水浴び せんつるを
 結君が 止めて真似なす これ如何ん」

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■水浴び せんつるを (みづあびせんつるお)
ミヅアビ(水浴び)は ミソギ(禊・水濯ぎ)と同じです。
センは セ('する'の未然形)+ン(意志・推量)で、「しよう」 の意です。
ツルは 助動詞ツの連体形で、「〜したる」 と同じです。
ですから 「水浴びしようとしたるを」 という意になります。


如何ん (いかん)
イカニ(如何に)の音便変化です。
ここでは 「どうして?・どういうこと?」 の意となります。



【概意】
時に御問いは、
「先ほど水浴びしようとしたるを、結君が止めるので、
水浴びの “真似” だけしたのだが、これはどういうことか?」


 オシホミミは夏の水浴びにも注意が必要なほど虚弱だったようです。

  君は弱くて ミソギ稀れ  〈ホ11-1〉

 

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 かすかこたゑて のこるのり むかしうひちに ひなかたけ
 ももにとつきて はつみかに さむかわあひる
 そさのをは ひかわにあひる これつよし
 きみはやさしく やわらかに ませはかかえて ととむものかな

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 カスガ答えて 「遺る宣 昔ウビチニ 雛が岳
 モモにとつぎて 初三日に 寒川浴びる
 ソサノヲは 氷川に浴びる これ強し
 君は優しく 和らかに 坐せば考えて 止むものかな」

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■遺る宣 (のこるのり)
「遺る言葉・遺る伝え・言い伝え・言い習わし」 などの意です。 ▶宣


ウビチニ ■雛が岳 (ひながたけ) ■モモ

寒川 (さむかわ)

■氷川 (ひかわ)
意味は寒川と同じで、「熱さを冷ます川水」 の意と思います。
後に出雲の 簸川 (斐伊川) に比定されたようです。

 ソサノヲが川で水を浴びたという話は、ホツマの本文中には
 出てこないのですが、よく知られていたことなのでしょう。
 後代のヤマトタケのエピソードにその投影を見ることができます。

 

【概意】
カスガは答えて、
「遺る言い伝えでは、昔ウビチニは雛が岳でモモヒナミと交わり、
その初三日に寒川を浴びたといい、ソサノヲは氷川に浴びたといいます。
これらは強き者でありました。君は優しくやわらかにおわせば、
結君は思慮して止めたものかと。」

 

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 いせおこふ かすかとくなり
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 妹背を請ふ カスガ説くなり
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妹背 (いせ)
イモセと同じです。「陰陽・月日・女男」 を表します。
陰と陽は結び付く宿命にあるため、「和合・融合・調和」 の意にも使います。

 

【概意】
君はまた “陰陽” についてを請う。
カスガは説くのであった。


 以後、カスガの説明が長く続きます。

 

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 いもをせは やもよろうちの わかちなく
 みなあめつちの のりそなふ きみはあまてる つきひなり
 くにかみはその くにのてり たみもつきひそ

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 妹背は 八百万氏の わかち無く
 皆 天地の 法 備ふ 君は和照る 月日なり
 国守はその 地の照り 民も月日ぞ

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■妹背 (いもをせ・ゐもをせ)
イモセ・イセと同じです。ここでは特に人の 「女と男」 をいいます。

 ★イモ (妹) ★イメ (妹) ★ヒメ (姫) ★ヨメ (嫁) ★メ(陰・女)
 イモ(妹)は イムの名詞形で、イムは ウム(倦む)の変態です。
 「下るさま・落ち・劣り・衰え」 などを原義とし、下に降った 「陰」 を表します。
 イメ(▽妹)・ヒメ(姫)・ウメ(陰)・ウビ(泥)・ヨメ(嫁)・ヨミ(黄泉)・ヨヒ(宵)・
 ヤミ(闇・病) などは イモの変態です。
 また イメ・ヒメ・ヨメ などの簡略、これがもう一つの メ(陰・女) の語源です。

 ★ウヲセ (▽背) ★ヲセ (▽背・▽雄♂) ★セ (背・兄・夫)
 ウホス(▽上す)の名詞形で、「上るもの」 を原義とし、上に昇った 「陽」 を表します。
 ウホスは オホス(果す)の変態で、「あがる・行き着く・至る」 などが原義です。
 ウヲセは “ヲセ” に縮まり、ヲセは “ヲ” または ”セ” に簡略されます。

   ウヲセ → ヲセ ┬→ ヲ (陽・男)
           └→ セ (兄・夫・背)


■氏 (うぢ・うじ)
ウツ(打つ・▽結つ)の名詞形で、ウシ(大人)・ヲサ(長)・ヌシ(主) などの変態です。
「結び・束ね・治め」 などが原義で、 「家系・氏族・氏族の長」 などを意味します。


■天地の法 (あめつちののり)
アメツチ(天地)も やはり 「陽陰・日月・男女」 を表します。
ですから 「陰陽とその和合の法」 という意で、“妹背の道” の換言です。


■君・ 木実 (きみ)
このキミは 「国君・君主」 をいいます。


■和照る月日・和照る日月 (あまてるつきひ・あまてるひつき)
“和照る” は 「和して照らす・和して恵る・ほどよく調えて恵む」 の意で、
“月日” は ここでは実際の「月と太陽」をいいます。
「この月日の役目を地上で担うのが 君(木実) である」 という意味です。

 天が下 和して恵る 日月こそ 晴れて明るき 民の父母(=木実)なり 〈ホ7-4〉

 和照る (あまてる) ★和照らす (あまてらす)

 ★日月/月日 (ひつき/つきひ)


■国守 (くにかみ・くにもり)
「国家を守る者」 という意で、国君に仕える 「役人・公務員」 をいいます。
ですから 「臣・守・司・モノノベ」 などの換言です。
もう一つ 「地方の国や県を治める役人」 をいう クニカミ(地守) もあります。


■その地の照り (そのくにのてり)
“その” は 「月日の」、“地の照り” は 「地上での反射/反映」 という意です。
つまり 「月日の輝きが地に反射する光」、これが国守だというのです。
これは 「月日の光を中継して地にめぐらす者」 という意味でしょう。

 

【概意】
女男は八百万氏の区別なく、みな陽陰の法が備わる。
国君夫婦は、地を和して照らす月日である。
国守の夫婦は、その月日の 地における反映。
民の夫婦も、また月日である。

 

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 めにほあり ひすりひうちは つきのひそ
 をにみつありて もゆるほの なかのくらきは ほのみつよ

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 陰に火あり 火擦り・火打ちは 月の火ぞ
 陽に水ありて 燃ゆる火の 中の暗きは 火の水よ

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■火擦り (ひすり) ■火打ち (ひうち)
火打ち石をこすったり、打ったりして出す 「火花」 をいうものと思います。
この火花は触っても熱くありません。


■月の火 (つきのひ)
月は 「陰の核心・極」 です。ですから 「陰の火」 の意を表します。


■火の水 (ほのみづ)
火は 「陽」 から派生物ですので、ここでは 「陽の水」 の意を表します。

 

【概意】
しかし水と埴を生んだ “陰” にも火が存在する。
火擦り・火打ちの出す熱くない火は、陰の火である。
また空・風・火を生んだ “陽” にも水は存在する。
燃える火の、中心部分の青く暗い炎は、陽の水である。

 〈それと同じく、人も女と男に分かれて生まれるが、
 女の中にも陽の部分があり、男の中にも陰の部分はある。
 女男の違いは、陰・陽の占める割合だけである〉

眞鍼堂さんのブログも同様のことを語っておられます。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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