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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第42回 [2023.9.13]

第八巻 霊還しハタレ打つ文 (9)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 たまかえしはたれうつあや (その9)
 霊還しハタレ打つ文 https://gejirin.com/hotuma08.html
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 たかのには はけものいてて
 いふきぬし みやおたつれは しつまるに
 をしてたまわる たかのかみ

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 タカノには 化けモノ出でて
 イブキヌシ 宮を建つれば 鎮まるに
 ヲシテ賜わる “タカノ尊”

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■タカノ (▽治曲野・高野)
ハタレマ9千と民9万の 血(霊)の誓書を埋めた タカノのタマガワ です。

 そのヲシテ ハタレマ九千と 民九万  埋むタカノの タマガワぞこれ 〈ホ8-7〉


■化けモノ (ばけもの)
バケ(化け) は 「逸れ・曲り・外れ・異常」 を意味し、
モノ
は 「見えない存在・霊」 を表す代名詞です。
ですから “化けモノ” は ハタレのモノハタレミ の換言です。


イブキヌシ

宮 (みや)
この場合は 「化けモノを鎮める器」 をいうものと思います。


ヲシテ・オシテ (押手)
ここでは 「称号・尊名」 をいいます。


■タカノ尊 (たかのかみ:▽治曲野尊・高野尊)
タカノ(治曲野・高野) に出た化けモノを鎮めた功に対して、
アマテルがイブキヌシに賜った尊名です。

 丹生都比売神社 (にふつひめじんじゃ)
 紀伊国伊都郡。和歌山県伊都郡かつらぎ町上天野230。 
 現在の祭神:丹生都比賣大神、高野御子大神、御食都比賣大神、市杵島比賣大神
 <筆者注> ここがイブキヌシの建てた宮とは考えにくいですが、
      高野御子大神 は “タカノ尊” の名を留めるものではないかと思います。

 

【概意】
タカノには化けモノ(=邪霊)が出たが、イブキヌシが宮を建てれば
鎮まったため、大御神は “タカノ尊” と尊名を授ける。



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 またかなさきは すみよろし かみのをしてと
 みはのそを たまふ
 つくしの たみすへて ゆひをさむへし わかかわり

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 またカナサキは “スミヨロシ尊” のヲシテと
 御衣の末 賜ふ
 「ツクシの 民 統べて 結ひ治むべし 我が代り」

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  ここは五七調が少々いびつなため、言葉の区切りを調整しています。

カナサキ
このたびの六ハタレ平定においては 禊司 を拝命。
また シムミチ の軍を敗っています。


■スミヨロシ尊 (すみよろしかみ)
アマテルが カナサキの功を称えて授けた ヲシテ (称号・尊名) です。
「九州を統べ治める尊」 の意で、住吉 (スミヨシ/スミヱ/スミノヱ) の換言です。

 スミ は ツキスミ の略。ヨロシ は ヨル(寄る)+オス(押す) の短縮 “ヨロス”の名詞形で、
 オス は 「合わす」 が原義。「寄せ合わす者・統べ治める者」 を意味します。


■御衣の末 (みはのそを)
ミハ(御衣) は 「君の衣服」。ソヲ は スヱ(末)・スミ(隅) の変態です。
また ミハ は ミハタ の略でもあり、ミハタ は 「君主の国家統治」 を意味します。
よって 「君の衣服の末端」 を与えるということは、君の行うべき統治の一部を
委任することを意味します。そしてまた ソヲ(曽於) は ツキスミ の別称です。

 

【概意】
またカナサキには “スミヨロシ尊” の尊名と
御衣の末を授ける。
「九州の民を統べて結い治むべし、我が代りとして。」


 これによりカナサキは、日の神アマテルの代理として九州を統治する者となり、
 そのため “日を写します大老臣(ゑをやとみ)” とも呼ばれるようになります。
 これが古事記に見える 宇都志日金折命(うつしひかなさく) の名の意味です。



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 またふつぬしは かくやまお つかさとれとて かとりかみ
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 また 「フツヌシは 香山を 司れ」 とて “カトリ尊”
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フツヌシ
ヰソラミチ の軍を敗り、また ヰツナミチモノマ に対しては
ツハモノヌシタケミカツチ と共に史上初の “霊還し” を実行しました。


香山 (かぐやま)
この場合は、この山の麓の地である ホツマ国 (関東・東海) の換言です。


■カトリ尊 (かとりかみ)
アマテルが フツヌシ の功を称えて授けた ヲシテ (称号・尊名) です。
カトリ は カドル(制る・主る) の名詞形で、「統治・支配」 の意ですが、
ここに “グヤマをツカサトル者” の意をかけます。
ですからこれは 「ホツマ国全体を統治する者」 という意となります。

 かどる【制る・主る】〈広辞苑〉
 (「処(か)取る」 の意) 統御する。管轄する。

 香取神宮 (かとりじんぐう)
 下総国香取郡。千葉県香取市香取1697。
 現在の祭神:経津主大神

“フツヌシ” は 「ホツマの主」 という意味で、たぶんこの時に得た名です。
フツ は “ふつふつと湧き起こる” という場合の “フツ” で、「発す・湧く・出る」 を
原義としますが、それは ホツマ の ホツ(▽穂つ) の変態で、「日の上り」 を意味します。

 

【概意】
また 「フツヌシは香山を司れ (ホツマ国を治めよ)」 とて、“カトリ尊”。



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 たけみかつちは なるかみに たけものぬしの かふつちと
 さきのくにゑに ゆりしつむ かないしつちも たまふなり

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 タケミカツチは 鳴神に タケモノヌシの カフツチと
 さきの国絵に 搖り鎮む カナイシツチも 賜ふなり

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タケミカツチ
ヰツナミチ の軍を破り、そのモノマに対しては
ツハモノヌシ・フツヌシ と共に史上初の “霊還し” を実行しました。


■鳴神にタケモノヌシ (なるかみにたけものぬし)
‘タケ’ は重複使用で、「鳴神に長けタケモノヌシ」 の意と考えます。
“鳴神に長ける” は “雷も拉ぐ” の換言で、タケミカツチ の名の由来です。 ▶鳴神
タケモノヌシ(武モノ主) は 「武モノノベの主」 の意で、「武官の主・兵の長」 をいうと思われます。

 我が力 万に勝れて 雷も 汝も拉ぐ 縄受けよ 〈ホ8-4〉


■カフツチ・カフツツ (▽曲治・▽曲槌)
カフツチ(▽曲治) は 「曲りの直し」 を意味し、そのモノザネが カフツチ(曲槌) です。
カフツチノツルギ(曲治の剣) とも呼ばれます。どんな剣かは不明ですが、
これを授かることは 「武モノ主」 に任じられたことの証なのでしょう。
古事記などには カブツチノタチ(頭椎の大刀・頭槌の大刀) と記されます。
 
 ★カフ・カハ・カワ・カ・ガ (▽曲・▽汚)
 カル(離る) の変態 “カフ” の名詞形で、「離れ・逸れ・外れ・曲り」 などが原義です。
 クマ(曲・隈・阿) の変態で、短縮形が カ/ガ(▽曲) です。

 ★ツチ・ツツ (▽綴▽治・▽直・▽正・槌)
 ツツシム(慎む・謹む) の母動詞 ツツ(▽綴つ) の名詞形で、タダ(直) の変態。
 「合わせ・治め・直し・調え」 などが原義です。
 「叩いて直し調える道具」 である ツチ(槌) をこのモノザネとします。


■さきの国絵 (さきのくにゑ)
以前アマテルに 国絵 (地図) を描くように命じられたことをいいます。

 ヒノハヤヒコに 御言宣 「汝 国絵を 写すべし」 ヤマト巡りて 皆 描く 〈ホ6-4〉


■搖り鎮む (ゆりしづむ)
「揺れを治める・地震を治める」 という意です。 ▶鎮む


■カナイシヅチ (要石槌)
これは ヨヨ(▽揺) の カナメ(要) の イシヅチ(石槌) の略で、
“ヨヨのカナメ” は 「揺れの要・地震の肝心」 を意味します。
イシヅチ は 「揺れの治め」 を意味し、(イシ は イス の名詞形で、イス は ユス(揺す) の変態)
そのモノザネが 石槌 です。

 雷が 轟き通る 功を 揺の要の 石槌に 曲治剣 賜ふなり 〈ミ逸文〉

 タケミカツチを祭る 鹿島神宮 には 要石(かなめいし) があるといいますが、
 その起源は どうやらこの 「要石槌」 にあるようです。
 ❝ 香取と鹿島の大神は地中に深く石の棒をさし込み、大鯰の頭と尾を刺し通す ❞
 との伝承があります。〈香取神宮小史〉

 

【概意】
タケミカツチには 鳴神に長ける武モノ主の証として “カフ槌” を、
また先の地図作成の褒美として、地震を鎮める “要石槌” も賜うのであった。



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 つはものぬしか たまかえし
 きよきまことの はなふりて みちにあもなし
 しきあかた あなしうをかみ をしてそえ
 すゑてうつしひ かんをちそ

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 「ツハモノヌシが 霊還し
 清き真の はな振りて 道に阿も無し」
 シキ県 “阿無し植尊” ヲシテ添え
 据えて 写し日代治人ぞ

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ツハモノヌシ
ヰツナミチ のモノマに対して、フツヌシ・タケミカツチ と共に
史上初の “霊還し” を実行しました。

 ココストの道 大御神 ツハモノヌシと フツヌシと
 タケミカツチに 
霊還し 猿更る沢に 起る道かな  
〈ホ8-4〉


霊還し (たまかえし)

■清き真 (きよきまこと)
「究極の真理」 というような意味ですが、ここでは
「霊還しにより、迷える霊を救済できるしくみ」 をいいます。
 
 ★清し (きよし・きやし) ★清 (きよ)
 キヨ(清)+シ(▽如・▽然) で、キヨ は キワム(極む) の母動詞 “キユ” の名詞形です。
 「行き着くさま・極限」 を原義とし、「澄み切るさま・紛れなきさま・純粋・完全」
 などの意を表します。

 ★真 (まこと・ま)
 マ(真)+コト(如) で、「合う如く」 を原義とし、「本質・実質・本当」 などの意です。
 マ(真) は マツ(全つ) の名詞形で、マツ は 「合う/合わす」 が原義です。


■はな振る (はなふる)
ハヌ(▽返ぬ・撥ぬ)+フル(振る) の連結で、“はね返る” と同義です。
両語とも 「往き来する・めぐる・通る・循環する・反復する」 などが原義です。
ちなみに この名詞形を ハナフリ といい、「通貨」 を意味します。


■道 (みち)
ここでは 「往き来の道・輪廻転生の道」 をいいます。


阿 (あ)
クマ() の換言で、「曲り・隈・かげり・欠陥・不備」 などを意味します。


■道に阿も無し (みちにあもなし)
「往き来の道に隈は無し」という意味です。
輪廻転生のシステムにおいて、霊の緒が乱れて解けず、魂と魄が陽元と陰元に還れなくて、
世に迷う場合がありましたが、霊還し はこのシステムの欠陥を補ってくれるわけです。


■シキ県 (しきあがた)
のちの 大和国磯城郡 で、現在の磯城郡と、桜井市・天理市の一部です。
 
 ★シキ (▽繁城・磯城) ★トヨキ (豊城)
 シキ(頻)、または シキ(頻)+キ(城・▽限) の短縮で、
 シキ は シキル(頻る) の母動詞 “シク” の名詞形で、シゲ(繁・茂) の変態です。
 キ(城) は キリ(切り・限) の短縮で、「かぎり・仕切り・区画・領域」 を意味します。
 よって 「繁栄」、または 「繁栄の区画」 を意味します。トヨキ(豊城) とも呼ばれます。

 ★県 (あがた)
 アカツ(分つ・頒つ) の名詞形で、「分割・区分・区画」 などが原義です。


■阿無し植尊 (あなしうをかみ)
アマテルが ツハモノヌシ に授けた尊名です。

 アナシ(阿無し) は 「曲り・欠陥 の無いさま」 を表し、ウヲ は ウユ(植ゆ) の名詞形。
 「曲り・欠陥の無い道を植える尊」 という意味です。穴師 という磯城県の地名ともなります。

 穴師坐兵主神社 (あなしにますひょうずじんじゃ)
 大和国城上郡。奈良県桜井市穴師1065。 
 現在の祭神:兵主神


■写し日代治人 (うつしひかんをち)
「日の神アマテルの代理として統治する者」という意です。

 ★写し日・映し日 (うつしひ)
 「日の神アマテルの威光を写す/映すこと」 を意味します。

 ★代・換 (かん)
 カエ/カヱ (代え・替え・換え) の音便です。
 
 ★治人・大人・翁 (をぢ・おぢ・をし・おし)
 ヲサ(▽治・長)ウシ(大人)ヌシ(主) などの変態で、
 「治める者・統べる者・長」 をいいます。

 

【概意】
「ツハモノヌシの霊還し、究極の真理が世に通り、往き来の道に阿も無し」 と、
“阿無し植尊” の称号を添えて シキ県に据え、写し日の代治人となす。



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 ゐちちかゑらむ たまかえし ここすとのねお むすふふみ
 こことむすひの なにすゑて かすかとのとそ たふとませ

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 「ヰチチが選む 霊還し ココストの根を 結ぶ文」
 ココトムスビの 名に 据えて カスガ殿とぞ 尊ませ

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■ヰチチ
ツハヤムスビ(津速魂尊) の孫で、アマノコヤネ の父です。
霊還し の方法論を完成させた大功により、アマテルより ココトムスビ の尊名を賜り、
大和国 カスガ県 の領主に任じられます。先代旧事本紀に 市千魂命 と記されます。

 ツハヤムスビ については、ミカサ逸文に名前が登場するのみで、詳細は不明です。


選む (ゑらむ)
「上げる・優先する・洗練する」 などが原義で、
ここでは 「練り上げる・熟成させる・完成させる」 などの意です。


■ココストの根を結ぶ (ここすとのねをむすぶ)
ココスト は 「魂魄・陽陰・天地」 の換言。ネ(根) は 「根源・根本・本質」 などの意。
隔絶しているように見える 「天 (あの世) と 地 (この世) を根本的に結ぶ」 という意です。


■ココトムスビ (▽上下結び)
アマテルが ヰチチ に授けた尊名で、
「天と地・魂と魄・陽と陰 を結ぶ者」 という意味です。 ▶ココト(▽上下)
他文献では 興台産霊神・興澄魂神居々登魂命 などと記されます。

 ツハヤムスビの 御孫なる ココトムスビの 若御子の アマノコヤネの 〈ミ逸文〉

 天川神社 (あまがわじんじゃ)
 香川県仲多度郡まんのう町造田一本杉3431。
 現在の祭神:天児屋根命、興台産霊神、酒部黒麿


■カスガ殿 (かすがどの:▽上下殿)
これもアマテルが ヰチチ に賜った尊名です。
カスガ は ここでは ココスト/ココト の換言ですが、別の意味もあり 注意が必要です。

 ★カスガ (▽上下)
 ココスト/ココト の換言です。
 カス+スカ の短縮で、カス は カス(▽上す) の名詞形。
 スカ は スガル(尽る) の母動詞 “スク” の名詞形で、「下り」 の意。
 ですから 「上下・天地・陽陰・魂魄」 などを意味します。

 ★殿 (との)
 ツノ(角) の変態で、 「立つもの・高きもの・突起・突出・館」 などが原義です。
 (1) 突出/傑出した人。(2) 高き建物。御上の役所。政庁。政殿。(3) 2の主。
 この場合は1であり、また3でもあります。


■尊ます (たふとます)
タフトム(尊む)+ス(尊敬) で、 「尊重なさる・高く評価される」 などの意です。

 

【概意】
「ヰチチが完成した “霊還し” は 天地を根本的につなぐ文」 と、
“ココトムスビ” の称号に加え、<大和国の県の主に据えて>
“カスガ殿” と高く評価なされ、



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 きみかなさきに のたまふは よろものきれと
 たまかえし みたれをとけは かみとなる ここちかすかと

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 君 カナサキに 宣給ふは 「万者 切れど
 霊還し 乱れ緒 解けば 神となる 心地カスガ」 と

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■切る (きる)
“横切る”  “ハンドルを右に切る” の キル で、
この場合は 「曲る・逸れる・外れる・ハタレとなる」 などの意です。


■乱れ緒 (みだれを)
こんがらがって 魂と魄に分離できなくなった タマノヲ(霊の緒) をいいます。


■神となる (かみとなる)
「霊が魂と魄に分離して天に還る」 ことをいいます。
つまりは 「この世を去る・成仏する」 ということです。

 仏教伝来後は “佛に成る” と言うようになりますが、ホトケ=ほどけ(解け) なのでしょう。
 水が沸騰すると 分子がほどけて気体となりますが、人が沸騰すると 魂と魄にほどけて
 ホトケ(佛) になるですよ、たぶん。


心地 (ここち)
コク(転く)+コツ(▽越つ) の短縮 “ココツ” の名詞形で、
両語とも 「回る・めぐる・一回転してもとに還る・回帰する」 などが原義です。
したがって ココロ(心) と同じです。


■カスガ (▽和直・春日)
カス(▽和す)+スグ(▽直ぐ) の短縮の名詞形です。
「和して直るさま・調和してまっすぐなさま・晴朗で清々しいさま」 をいいます。

 このアマテルの言葉が、大和国の 春日県(かすがあがた) の名の起源で、
 ヰチチ は その県の主に任じられたわけです。
 なお ややこしい限りですが、カスガ殿 の “カスガ” とは意味が異なります。

 

【概意】
君がカナサキに仰っしゃるのは、
「万人は曲り外れるけれども、“霊還し” で乱れた霊の緒を解けば、
(魂と魄に分れて) 神となる。我が心は晴れやかで清々しい」 と、



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 さとのなも をきなかもりも たまわれは
 かとりかいもと あさかひめ こことむすひの つまとして
 うむかすかまろ わかひこそこれ

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 里の名も 翁が守りも 賜われば
 カトリが妹 アサカ姫 ココトムスビの 妻として
 生むカスガマロ ワカヒコぞこれ

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■里の名 (さとのな)
サト(里) は 「めぐり・周囲・周辺」 が原義で、ここでは 「領地・知行地」 をいいます。
その名が カスガ県 (春日県) です。

 ★カスガ県 (かすがあがた:▽和直県・春日県)
 後の 大和国添郡 です。このカスガ は “心地 カスガ” の意です。


■翁が守り (をきながもり)
ヲキナ(翁) は 「大きなる者」 の略で、この場合は 「主・長」 を意味します。
モリ(守り) は ここでは 「治め・纏り・知行」 などの意です。
ですから 「領主としての御役目」 をいいます。


■カトリ
カトリ尊 の略です。


■アサカ姫 (あさかひめ)
「フツヌシの妹」 であることしか記述がありません。


■カスガマロ ■ワカヒコ
カスガマロ は アマノコヤネの 幼名、ワカヒコは 斎名 です。

            ┌フツヌシ
         ??──┤
            └アサカ姫┐
                 ├─アマノコヤネ(幼名カスガマロ 斎名ワカヒコ)
 ツハヤムスビ──??───ヰチチ─┘
           (ココトムスビ)
            (カスガ殿)

 

【概意】
里の名も、領主としての御役目も賜われば、
カトリの妹のアサカ姫を、ココトムスビの妻としてカスガマロを生む。
ワカヒコぞこれ。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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