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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第82回 [2023.11.29]

第十六巻 孕み謹む帯の文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 はらみつつしむおびのあや (その3)
 孕み謹む帯の文 https://gejirin.com/hotuma16.html
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 をのいきす よろみちむやそ めのいきす よろみちもやむ
 みたねゑて ははにますいき みもむその あすはなもふそ
 みかちやそ みそかよろやも みそやかに よろみちむやそ
 もととまし ふよろむちやも よそむたひ ましととまりて

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 男のイキス 万三千六百八十 女のイキス 万三千百八六
 御胤得て 母に増す息 三百六十の 翌日は七百二十
 三日 千八十 三十日 万八百 三十八日に 万三千六百八十
 元と増 二万六千八百 四十六度 増し止まりて

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イキス (息子・息素・息数)
成人男性の1日あたりの呼吸数は 13,680回、成人女性は 13,186回です。


御胤・神胤 (みたね)

■母に増す息 (ははにますいき)
妊娠後の 「母の呼吸数の増加分」 という意です。
ここでは男子を孕んだ場合の数字を列挙しています。
女子の場合については 少し後に示されます。


■二万六千八百四十六度 (ふよろむちやもよそむたび)
母のもとの呼吸数と男子妊娠による増加分を合せた呼吸数です。
単純計算では 13,186+13,680=26,866 となるはずなのですが ・・・  ▶度(たび)

 

【概意】
成人男性の呼吸数は13,680。成人女性の呼吸数は13,186。
御胤を得て(男子を孕んで) 母に増す呼吸数は、初日には360、翌日は720、
3日目には1080、30日目に10,800。38日目には13,680となり、
母のもとの呼吸数と御胤の増加分を合せて26,846度。これにて呼吸数の増加は止まる。

 

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 みめくりは ふつきいたれは みかはしり
 しわさらにきる きさらとて ははのつつしみ

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 回巡りは 二月至れば 三日走り
 皺さらに切る “キサラ” とて 母のつつしみ

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■回巡り・回転り (みめぐり)
ミ(‘回る’ の連用形)+メグル(回る・巡る) の名詞形で、「回転・巡回」 を意味します。
これは ニシ(霊)シジナミ(波) の回転をいいます。

 昼は “和” 上に 左昇り 夜は “繁” 上に 右降り 翌日二回り 三回りと 〈ホ16-2〉


■二月至れば (ふつきいたれば)
「2月が満ちれば」 という意です。


■三日走る (みかはしる)
ハシル(走る)は 「勢いを増す・速まる・急ぐ」 などが原義です。
これは2月目が満ちると3日間 「和霊と繁波の回転が速まる」 という意で、
これにより先の “タラム” での遅れを挽回することになります。

 三十一・二・三 三日弛り緩む “タラム” とて 母の謹み 〈ホ16-2〉


■皺さらに切る (しわさらにきる)
シワ(皺)は ここでは精骨 (胎芽・胚) の分裂をいいます。(今に言う 「卵割」 )
ですから 「新たに胚の皺を切る・卵割が新たな段階に入る」 などの意です。

 ★皺 (しわ・しは)
 シフの名詞形で、シフは シム(締む)の変態です。
 「締め・切り・限り・きざみ・分割・区切り」 などが原義です。

 
■キサラ (▽刻更・▽亀更)
キは 「切り・刻み・亀裂」 を意味し、シワ(皺)の換言です。
“キサラ” は 「皺を更に切る時」 を意味し、この時期の妊婦に注意を促す標語です。

 ★キサラギ・キサラ (如月)
 陰暦2月の別名です。「(刻)サラ(更)にル(切る)」 の意を表します。
 「キサラ(刻更月)」 の略かもしれません。


つつしみ (慎み・謹み)

 

【概意】
和霊と繁波の回転は、2月が満ちると3日間加速し、
胎芽の皺を更に切る。“キサラ” と呼ばれる時期で、母は注意を要す。

 

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 むそよかは むそよめくりに きわまりて
 みめくりすへて ちやそなり ついにたねなる

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 六十四日は 六十四巡りに 極まりて
 回巡りすべて 千八十なり ついに種 成る

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千八十 (ちやそ)

■種成る (たねなる)
このタネ(種)は 「もと・素材」 などの意で、「子の種・精骨(胚・胎芽)」 をいいます。 ▶種
ですから 「種が成就する・子種が子となる・胚が胎児となる」 というような意です。

 

【概意】
64日目に1日あたり64回転となって極まり、
回転の総計は1080。ついに胎芽は胎児となる。


 14アヤでは、次のように記されています。

 やや六十四日に 巡り満つ 総べて千八十に 巡り遂げ やや充り子の 態 備ふ
                                 〈ホ14-2〉

 

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 おのころの ゑなのへそのを かわくるま ややししおもり
 めくりへる あすむそみたひ つきむそふ おそりめくりて

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 オノコロの 胞衣の臍の緒 川車 やや肉を盛り
 巡り減る 翌六十三度 次六十二 遅り巡りて

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オノコロ

胞衣 (ゑな)

臍の緒 (ほぞのを)

川車・河車 (かわぐるま)

やや (弥々)

■遅る (おそる)
今の辞書にはない言葉で、「勢いを失う・遅くなる・遅れる」 などの意です。
なお オソルではなく ホソル(細る)と記している写本もありますが、意味としては同じです。

 

【概意】
胎児本体を包む胞衣の臍の緒は水車形。
しだいに肉を盛り、回転は減り始める。
翌日には63回、その次の日は62回と回転は遅れ、


 14アヤでは、次のように記されています。

 オノコロの 胞衣の形は 川車 臍の緒となる 実柱の ほどよく重り 巡り欠け
                                  〈ホ14-4〉

 

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 みつきには みそことなれは みかやすむ
 みとりはななり やよいさむ やよもつつしみ
 よつきには このみうるうも つつしみよ

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 三月には 三十九となれば 三日休む
 充り 端生り やよ勇む やよも謹み
 四月には 熟み潤うも つつしみよ

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三月には三十九 (みつきにはみそこ)

■三日休む (みかやすむ)
「3日間は回転数の減少が止まる・3日間は39回転のまま留まる」 ということだと思います。


充る (みとる)

■端生る (はななる)
端を添ふ” と同じです。


■やよ (▽弥)
やや(稍・漸)いやいや(弥々)いよいよ(弥々) などの変態で、
ここでは 「いよいよ・ますます・一層」 などの意です。


勇む (いさむ)
「勢いを増す・栄える・奮う」 などの意です。
ここでは胎児の成長が 「勢いを増す」 ということです。

 ★ヤヨイ・ヤヨヰ (弥生)
 陰暦3月の別名ですが、やよ勇む(やよいさむ) が語源のようです。
 胎児の成長が 「いよいよ勢いづく月」 という意でしょう。


■熟み潤う (このみうるう)
コノム+ウルフ(潤ふ) で、コノムは コナル(熟る)の変態です。
「こなれてうるおう・馴れて余裕が出る」 などの意です。
これは胎児成長の一つの山場を越えた、母の体調を表しているように思います。

 ★ウツキ (卯月)
 陰暦4月の別名です。
 ウツ(▽鬱つ)+ツキ(月) の短縮で、「繁茂する月・うるおう月」 という意味のようです。
 ウツは ウデル(茹でる)の母動詞で、「上がる・高まる・栄える・熟す」 などが原義です。

 

【概意】
3月の末に39回転になると、3日はその回転数を保つ。
この時期には胎児も充ち足りて末端の構造が備わり、
いよいよ成長の勢いを増すが、母もいよいよの注意を。
4月には馴れて余裕も出てくるが、注意は怠りなく。


 14アヤでは次のように記されています。

 三月は三十九 端を添ふ 四月満つれば 充りつす 〈ホ14-4〉

 

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 ゐつきはもとの ひとめくり
 いはふよろむち やもよそむ はらおひのゐも つつしみよ

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 五月は元の 一回り
 息は二万六千 八百四十六 孕帯の意も つつしみよ

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■息 (い)
イキ(息) の略です。


二万六千八百四十六 (ふよろむちやもよそむ)

■孕帯 (はらおび・はらをび)
ハラミノオビ(孕みの帯)ともいい、今に言う 「妊婦帯」 です。
妊娠5ヶ月目(サ月サの頃)から着用するため、サツサ孕帯とも呼ばれます。
他にも ヒタチ帯、ヰハタ帯、ケフの帯、身丈の帯、メヲ羽二重 など多くの別名があります。

 この帯の効能についてはこの後 詳しく語られますが、
 ・臓腑の育成と定着 ・邪霊の障りの阻止 ・呼吸数の調整 があります。


つつしみ (慎み・謹み)
これまでは 「心すること・気遣い・配慮・注意」 の意に使われてきましたが、
ここでは 「正し・直し・調え」 の意で、「呼吸数の調整」 をいいます。

 

【概意】
<和霊と繁波の回転は> 5月に当初の1回転に戻り、妊婦の呼吸数は26,846。
<この頃から着用する> 孕帯の意図もイキスの調えよ。


 14アヤでは次のように記されています。

 サ月サの頃 一巡り サツサ孕帯 五腑生す 〈ホ14-4〉

 

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 あもとにまねく あらみたま つきのにこたま たらのほと
 みつましはりて こころいき なりてみつかふ つゆあふれ

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 天元に招く 荒神霊 月の和霊 父母の霊と
 三つ交わりて 心・意気 成りて瑞通ふ 液あふれ

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■天元・陽元 (あもと)
この ア(天・▽上)は 「陽」 の換言で、「陽の元」 という意です。
つまり ムナモト(棟元) と同じです。


■荒神霊 (あらみたま)
アラ(荒) は 「勢いあるさま・活発」 を意味し、軽く先に昇って天となった 「陽」 を表します。
ですから 「陽の霊・日の神霊」 の換言で、アメノホ(天の霊)タマ(魂) などと同じです。


■月 (つき)
ここでは 「陰の極み・陰の源・太陰」 を意味し、ミナモト(穢元)と同じです。


■和霊 (にこたま)
“荒神霊” の反対語です。「陰の霊月神霊」 の換言で、
妹が霊母の和霊ニシ(和霊)シヰ(魄) などと同じです。


父母の霊 (たらのほ)

■心 (こころ) ■意気 (いき)
この2つは同義語で、この場合は 「人としての心・心派・人心・人情」 をいいます。
▶中子と心派


■瑞通ふ (みづかふ)
ミヅ(瑞)は ミヅ(水)と同源で、「上澄み・精髄・本質・純粋」 などが原義です。
ここでは 「人の本質」 をいいますが、それがすなわち 「心・意気」 です。
カフ(交ふ・▽通ふ)は、それが 「身に通う」 という意です。


つゆあふる (液溢る)

 

【概意】
日より招く荒神霊と、月の和霊と、父母の霊と、
この3つが交わって人心と意気が生まれ、人の本質が身に通ふ。
また羊水が増加する。


 14アヤでは次のように記されています。

 天の霊と タラチネの霊と 陰を招き 三つの因みの つゆあふれ 〈ホ14-4〉

 

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 むつきいたれは かわくゆえ ほそのをくたに ちしるかふ
 なつきちおにて ゐいろはに これくらわたと あふみなす
 ここもつつしみ

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 六月至れば 乾くゆえ 臍の緒管に 霊汁通ふ
 七月 血を煮て 五色埴 これ臓腑と 腎 成す
 ここも謹み

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■乾く (かわく)
これは 「羊水の量が減る」 ということだと思います。

 ★ミナツキ(水無月)

霊汁・血汁 (ちしる)

煮る (にる)

五色埴 (ゐいろはに)

■臓 (くら) ■腑 (わた) ■腎 (あふみ)
“五色埴” は完成して 「五臓六腑 (主要臓腑とその他)」 となります。
腎(あふみ)は “ムラト” “ムラ” とも呼ばれ、「腎臓」 をいいますが、
これだけ別個に名を挙げられる理由は不明です。

 ★アフミ月 (あふみつき)
 陰暦の7月は 文月(ふみつき・ふづき)といいますが、ホツマではアフミ月とも呼ばれます。
 これは 「腎(あふみ)が備わる月」 を意味するようです。
 アフミは 「釣合うさま・対になるさま・中間にあるさま」 を意味します。
 そのため一年の 「釣合う位置にある月・中間の月」 の意もあるようです。
 アフミ月 → フミ月 → フ月 と簡略されたのでしょう。

 ★あふみ・あぶみ (腎・近江・鐙・▽歩み)
 アフ(合ふ)+フム(踏む) の同義語短縮の名詞形で、
 「合い/合わせ・間(あい)・相(あい)・中・半・対」 などを意味します。
 アフミには 「中間」 の意味に加えて、「ふたつで一つ・一対・相」 の意味があり、
 例えば 馬具のアブミ(鐙)はこれです。腎臓も ホツマでは “アフミ” と呼ばれます。
 また2本の足の連携プレーである アユミ(歩み)は アフミの変態です。

 

【概意】
6月が満ちると羊水は減り、臍の緒管に血液が通う。
7月には血液が熟成して5種の固形物となり、これが臓腑と腎となる。
ここも要注意。


 14アヤでは次のように記されています。

 六月 乾き 臍の緒へ 霊汁通れば 身を養す
 霊汁煮られて 五色の 埴もて付くる 守の神
 七月 臓・腎 八月 腑       〈ホ14-4〉

 

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 やつきにて そみはなりはの はなるとき
 ははのつつしみ これなるそ

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 八月にて 十三端生成の 跳なる時
 母のつつしみ これなるぞ

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■十三端生成 (そみはなりは)
ソミは 「13」、ハ(端)は ヘ(辺・部・片) の変態です。
ですから 「13部位の生成」 という意と考えますが、具体的には不明です。
なお ソミハ(十三端)ではなく、ソフハ(十二端)と記す写本もあります。

 ★成生 (なりは・なりわ)
 ナル(生る・成る)+ハフ(生ふ・栄ふ) の名詞形 “なりはひ・なりわひ” の短縮で、
 「生えたり成ったりすること/もの」 を原義とし、「生成・生産・産出」 などを意味します。


■跳なる・▽果なる (はなる)
ハヌ(跳ぬ)+ナル(成る) の短縮で、両語とも 「あがる・完成する・終る」 などの意です。

 ★ハツキ (葉月・▽果月)
 陰暦8月の別称です。これは ハツ(果つ)+ツキ(月) の短縮で、
 ハツ(果つ)は 「行き着く・至る・結ぶ・成る・実る」 などの意を表します。
 よってハツキは 「実を結ぶ月・成果の月・収穫の月」 などを原義としますが、
 「胎児の13部位の完成の月」 でもあるようです。
 数字の 「八」 を “ハチ” と言うのも、ハツ(果つ)が語源と思われます。

 

【概意】
8月にて胎児の13部位の生成が完了する時。
以上が子を孕む母の心するべきことである。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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