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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第44回 [2023.9.16]

第九巻 八雲打ち 琴つくる文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 やくもうちことつくるあや (その2)
 八雲打ち 琴つくる文 https://gejirin.com/hotuma09.html
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 ひめはゆけやに かくしいれ
 すさはやすみの ひめすかた ゆつのつけくし つらにさし
 やまのさすきに やしほりの さけおかもして まちたまふ

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 姫は弓削屋に 隠し入れ
 スサは優みの 姫姿 髻の黄楊櫛 面に挿し
 山の桟敷に 八搾りの 酒を醸して 待ち給ふ

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■弓削屋 (ゆげや)
弓削のツルメソの家です。ソサノヲはこの家にイナタ姫を隠しますが、
佐久佐神社 (現在の八重垣神社) の奥の院の伝承は この記憶を留めます。

 佐久佐神社 (さくさじんじゃ)
 島根県松江市佐草町227。 
 現在の祭神:素盞嗚尊、櫛稻田姫命
 ・社殿背後の佐草女の森に鏡の池、二本の大杉(夫婦杉)があり、奥の院が鎮座する。
  稲田姫が八俣大蛇退治の際、身を隠した場所との故事による。


■スサ
ソサノヲを指すものと思います。誤写でなければの話ですが、
ホツマツタヱの中で “ソサ” ではなく、“スサ” と記されている唯一の箇所です。


■優みの姫姿 (やすみのひめすがた)
ヤスミ(▽和み・▽安み・▽優み)は ここでは 「柔和・優柔」 などの意で、
「女性的なやわらかさ」 を表します。つまり 「女装」 した ということです。

 ソサノヲがとったこの戦術は、どうか記憶しておいてください。
 はるか後の話になりますが、「そうかなるほど!」 と思う時がやって来ます。


髻の黄楊櫛 (ゆつのつげくし)

■面に挿す (つらにさす)
ツラはここでは 「表面・前面」 を意味し、「前髪に櫛を挿す」 ことをいいます。
辞書には 面櫛(つらぐし) という言葉があります。
髪を頭頂にまとめている櫛を外すわけですから、髪の毛が解けて垂れ下がり、
女性っぽく見えることを意図したのではないかと思います。


桟敷・仮庪 (さすき・さずき)
サジキ(桟敷)の古形と辞書はいいます。
おそらく ザシキ(座敷)、ザセキ(座席) も同じで、ムシロ(席) の換言でしょう。

 サス(差す・挿す)+スキ(空き・隙) の短縮で、「(身を)挿し入れる空間」 が原義と考えます。


■八搾りの酒 (やしぼりのさけ)
“搾り酒” というのは、どういう酒・製法をいうのかよくわかりませんが、
ミカサフミは これが搾り酒の初めと書いてます。
ヤシボリ(八搾り)というのは、“頭が8つある蛇” に合せた数でしょう。

 また搾り酒 ソサノヲの イヅモに初め 造るこれなり  〈ミ2-6〉

 

【概意】
姫は弓削ツルメソの家に隠し入れて、
スサは柔和な姫姿を装う。髷を束ねる黄楊櫛を前髪に挿し、
山の桟敷に八搾りの酒を醸して待機なさる。

 

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 やまたかしらの おろちきて
 やふねのさけお のみゑいて ねむるおろちお つたにきる
 ははかをさきに つるきあり ははむらくもの なにしあふ

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 八岐頭の 蛇 来て
 八槽の酒を 飲み酔いて 眠る蛇を 寸に斬る
 蝕霊が汚離きに 剣あり “ハハムラクモ” の 名にしあふ

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■八岐頭の蛇 (やまたかしらのおろち)
「頭が八つに分岐した蛇」 で、ヤマタノオロチ(八岐の蛇)ともいいます。
これは 病曲の折霊 が憑依・支配しているオロチ(蛇)を表現したものですが、
その実体は蛇ではなく、心が曲がりくねってしまった人間たちです。
その中でも特に モチコとハヤコの “二さすら姫” をいいます。

 さすらなす 二さすら姫 憤り ヒカハに怒り 成る折霊 〈ホ7-3〉


■つだ (寸)
ずたずた」 の意です。


酔ふ (ゑふ)
ヨフ(酔ふ)ヤル(破る)ヨル(揺る)ユル(揺る) などの変態で、
「曲る・逸れる・外れる・異常になる」、また 「揺れる・ふらふらする」 などが原義です。


蝕霊が汚離き (ははがをさき)
“蝕霊が汚”は 蛇を支配する 「邪霊の汚穢」 の意で、「邪霊の干渉・影響」 をいいます。
サキ(離き)は サク(離く・放く) の名詞形で、「放ち・分離・切断」 などを表します。
ですから 「邪霊の影響の切断」 という意味です。


■剣あり (つるぎあり)
ここは 「剣が見つかる」 という意味ではなく、「剣の力あり・剣の活躍あり」 という意と考えます。


■ハハムラクモ (▽蝕霊群曇)
ソサノヲが 「八岐頭の蛇を斬った剣」 に付けられた名です。
ハハ(▽蝕霊)は、「八岐の蛇に憑依する邪霊」 をいいます。
ムラクモは ここでは 「汚穢・曲りの直し」 という意です。
ですから 「邪霊の汚穢/曲りを直す剣」 の意で、これは “蝕霊が汚離き” の換言です。

 ★ムラクモ (群曇)
 このムラクモは これまでの “むら雲” とは意味が異なります。
 ムラは ムル(群る)の名詞形で、「合わせ・中和・調和・直し」 などが原義です。
 クモ(曇)は クマ(隈)の変態で、汚穢 と同じです。
 ですから 「汚穢/曲りの直し」 を意味し、クサナギの換言です。


■名にしあふ (なにしあふ)
シアフは シフ(▽狭ふ・▽締ふ)+アフ(合ふ) の短縮で、
両語とも 「合う/合わす・迫る・縛る・並ぶ・匹敵する/させる」 などの意を表します。
ですから “名にしあふ” は 「名に釣り合う/合わす・名に値する/させる」などの意です。
今は “名にしおう” といいます。

 

【概意】
八岐頭の蛇が来て、八槽の酒を飲み酔いて、眠る蛇をずたずたに斬る。
邪霊の汚穢を断ち切れたのは剣の存在が大きい。“ハハムラクモ” の名にしおう。

 

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 いなたひめして おおやひこ うめはそさのを
 やすかわに ゆきてちかひの をのこうむ あかつといえは

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 イナタ姫して オオヤヒコ 生めばソサノヲ
 ヤスカワに 行きて 「誓ひの 男の子生む 吾勝つ」 と言えば

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イナタ姫

■オオヤヒコ
ソサノヲとイナダ姫の第1子の男子です。ホツマには名前だけで、
何の事績も記されません。他文献では 大屋毘古神 と記され、
また 五十猛神(いたける・いそたける)、有功の神(いさおのかみ)とも呼ばれます。

 伊太祁曾神社 (いたきそじんじゃ)
 和歌山県和歌山市伊太祈曽558。
 現在の祭神:五十猛命、大屋都比売命、柧津姫命


ヤスカワ
ソサノヲはヤスカワに住む 姉のヒルコに会いに行ったのです。


■誓ひの男の子 (ちかひのをのこ)
ソサノヲが一方的に、姉のヒルコと交わした誓いをいいます。

 根に到る後 子を生まん 女ならば汚れ 男は清く これ誓ひなり 〈ホ7-7〉

 

【概意】
イナタ姫によってオオヤヒコを生むと、ソサノヲはヤスカワに行き、
「誓いの男の子を生んだ。我は勝った」 と言えば、

 

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 あねかめに なおきたなしや そのこころ はちおもしらぬ
 よのみたれ これみなそれの あやまちと おもえはむせふ
 はやかえれ

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 姉が目に 「なおきたなしや その心 恥をも知らぬ
 世の乱れ これ皆それの 誤ちと 思えばむせぶ
 はや帰れ」

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きたなし

■世の乱れ (よのみだれ)
”世の乱れ” とは、六ハタレが蜂起して、中央政府に反旗を翻したことをいいますが、
この背後には根国とサホコ国のマスヒト (シラヒト・コクミ) の汚職、北の局のモチコ
ハヤコの離反、そしてサホコ国の新マスヒトとなったアメオシヒのもとにこの4人が
集結して反体制勢力を築いたことがあります。
これに加えて、ソサノヲが北の局と不倫関係を結び、重罪を犯して皇室を追放される
という事件も重なります。ソサノヲは無邪気にも中央政府(皇室)の統治にヒビを入れ、
知らぬ間に反体制勢力の旗印として担ぎ出されたのです。


■むせぶ (咽ぶ)
ムス(▽結す)+セブ(▽狭ぶ) の短縮で、ムスブ(結ぶ)の変態です。
「結ぶ・狭まる・締まる・詰まる」 などが原義です。
ここでは 「胸が締めつけられる・切なくなる」 などの意となります。

 

【概意】
姉の目には、
「なお見境なしや その心。恥をも知らぬ。世の乱れはこれ、
みな其の方の誤ちと思うと胸が締めつけられる。はや帰れ。」

 

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 そさのをはちて ねにかえる
 のちおおやひめ つまつひめ ことやそうみて かくれすむ

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 ソサノヲ恥ぢて 根に帰る
 後 オオヤ姫 ツマツ姫 コトヤソ生みて 隠れ住む

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根 (ね)
根の国とサホコの国は区別が曖昧で、
この場合はサホコ国のヒカワの地を指します。


■オオヤ姫 (おおやひめ) ■ツマツ姫 (つまつひめ)
オオヤ姫はソサノヲとイナダ姫の第2子で長女、ツマツ姫は第3子の次女です。
この2姫もホツマでは名前のみの紹介です。
他文献ではそれぞれ 大屋津姫/柧津姫 と記されます。

 大屋都姫神社 (おおやつひめじんじゃ)
 和歌山県和歌山市宇田森59。
 現在の祭神:大屋都姫命
都麻津姫神社 (つまつひめじんじゃ)
和歌山県和歌山市吉礼911。
現在の祭神:都麻津姫命


■コトヤソ
コトヤソは “異八十・別八十” で、「その他大勢」 の意と考えたいのですが、
少し後に “ソサノヲの子は五男三女ぞ” という記述があり、ホツマはコトヤソを
一人の男子として扱っています。
伏見稲荷の四大神の一人として “事八十神” の名で祀られます。

 

【概意】
ソサノヲは恥じて、根の国に帰る。
その後にオオヤ姫、ツマツ姫、コトヤソを生んで隠れ住む。

 

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 たかまはむつの はたれかみ はちのことくに みたるれは
 かみはかりして はたれうつ

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 タカマは六つの ハタレ醸み 蜂の如くに 乱るれば
 守諮りして ハタレ打つ

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タカマ (高天)

六つのハタレ (むつのはたれ)

醸む (かむ)
カモス(醸す)の母動詞で、ここでは 「熟して成る」 という意です。


■蜂の如くに乱る (はちのごとくにみだる)
蜂起” という言葉は この状態を表すように思います。


守諮り (かみはかり)

 

【概意】
6つのハタレが醸成し、蜂の如くに乱れれば、
タカマでは守々が対策を協議し、ハタレ退治に当たる。

 

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 きみはみそきの さくなたり はたれゐとふの たねおゑて
 みよをさまれと みなもとは ねのますひとに よるなれは
 いふきとぬしに うたしむる

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 君は禊の さくなだり ハタレ厭ふの 種を得て
 御世 治まれど 源は 根のマスヒトに 因るなれば
 イブキトヌシに 打たしむる

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禊 (みそぎ) ■さくなだり

■ハタレ厭ふの種 (はたれゐとふのたね)
「ハタレを射止めるまじないの種」 という意です。 ▶まじないの種

 アマテル神は さくなだり 速川の瀬に 禊して
 “ハタレ敗る” の まじないの 種を求めて 授けます 〈ホ8-3〉


御世 (みよ)

根のマスヒト (ねのますひと)

イブキトヌシ・イブキヌシ
ハルナハハミチアヱノミチのハタレ軍と戦ってこれを敗り、
またハタレマの誓書を埋めたタカノに出る化けモノを、宮を建てて
鎮めた手柄により、アマテルから “タカノ尊” の称号を賜っています。

 

【概意】
アマテル君は禊の滝下りに、ハタレを射止めるまじないの種を得て
社会は治まるも、その源はサホコのマスヒトにあるため、イブキトヌシに打たしめる。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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