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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第110回 [2024.2.2]

第二一巻 ニハリ宮法定む文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 にはりみやのりさだむあや (その2)
 ニハリ宮法定む文 https://gejirin.com/hotuma21.html
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 さきにみやはに おころあり もちうこににて ほのほはく
 たみらおそれて これつける ものぬしとえは こたえいふ

―――――――――――――――――――――――――――――
 先に宮場に オコロあり モチウコに似て 炎吐く
 民ら恐れて これ告げる モノヌシ問えば 応え言ふ

―――――――――――――――――――――――――――――

■宮場 (みやば)
「宮の場所・宮の敷地」 の意で、この場合は 「宮の建設現場」 をいいます。 ▶場


■オコロ
オコロは オコル(起る)の名詞形で、「(土を)隆起させるもの」 を意味し、
これは今に言う 「もぐら」 です。ただし炎を吐くといいます。

 もぐら【土竜】〈広辞苑〉
 地中にトンネルを作り、ミミズや昆虫の幼虫を食べ、土を隆起させ、
 農作物に害を与える。むぐら。うぐら。もぐらもち。うごろもち。田鼠(でんそ)。

モグラの別名にウゴロモチという名がありますが、この “ウゴロ” の変態がオコロです。


■モチウコ
モツ(持つ)+ウク(浮く) の同義語連結 “モチウク” の名詞形で、やはり
「持ち上げるもの・隆起させるもの」 を意味します。よってオコロの同義語です。

 モツ+ウク の語順を逆にした “ウゴモツ” という動詞があり、

  うごもつ【墳つ】〈広辞苑〉
  土が高くもりあがる。うぐもつ。うごもる。うぐろもつ

 上の説明の最後にある “うぐろもつ” の名詞形が ウグロモチ で、

  うぐろもち【土豹】〈広辞苑〉
  (動詞ウグロモツの連用形から) モグラの異称。うぐらもち。

“うぐろもち”、これはモグラの別名 “うごろもち” の変態でしょう。
したがってモチウコが土中に生息するモグラの類であるのは間違いないと思います。
誰もが知る普通のモグラを “モチウコ” と呼び、火を吐くという空想的な “モグラ” を
オコロと呼んで区別しているのかもしれません。


モノヌシ

 

【概意】
さきに宮の建設現場にオコロが現れた。モチウコに似るが炎を吐く。
民らは恐れてこれを報告し、モノヌシがオコロに問えば、応えて言う。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 かくつちたつお はにやすに よろこうませと
 たつならす あなにうれふる ねかわくは ひとなしたまえ
 ものぬしか もふせはみまこ みことのり

―――――――――――――――――――――――――――――
 「カグツチ 竜を ハニヤスに 万子生ませど
 竜 成らず 穴に憂ふる 願わくは 人なし給え」
 モノヌシが 申せば御孫 御言宣

―――――――――――――――――――――――――――――

カグツチ

ハニヤス

竜・龍 (たつ)

■穴に憂ふる (あなにうれふる)
アナ(穴)は オコロ(=もぐら)が土中に掘るトンネルをいうのでしょう。 ▶穴
“憂ふる” は ウレフ(憂ふ)の連体形で、今風には ウレエル です。
「離れる・曲る・逸れる・外れる」、またその結果 「落ちる・劣る・衰える」 などが原義で、
ウラブル
の変態です。

 オコロは 火神カグツチと埴神ハニヤスの子ですから、
 土中に住んで炎を吐くというのは、まことに納得です。


願わく (ねがわく)

 

【概意】
「カグツチが万の竜の子をハニヤスに生ませたが、
我らは竜とならず 土中の穴に落ちぶれている。願わくは人と成し給え。」
モノヌシがこれを君に申せば、御孫の御言宣。

 

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 なんちうけへし あめのかみ やまさおうみて みかまもり
 おふかんつみは はにしきて まつるやつくり しこめなし
 ゑとのいくしま たるしまと かみなたまえは もりもなし

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 「汝 受けべし 陽陰の守 ヤマサを生みて 竈 守り
 穢神潰は 埴 清きて 纏る社造り 鬼霊済し
 兄弟のイクシマ タルシマと 尊名賜えば 守も為し

―――――――――――――――――――――――――――――

■受けべし (うけべし)
“べし” は普通終止形に付きますが、ホツマにはそうでない場合が
ここと、もう1例あります。どちらの場合も下二段活用の動詞に付いてます。

 オホヤマト クニタマ神の 斎主 なさば平けべし 〈ホ33〉


■陽陰の守 (あめのかみ)
年宣り神」 の別名で、キ・ツ・ヲ・サ・ネ + ア・ミ・ヤ・シ・ナ・ウ の11神をいいます。
アメ(陽陰)は この場合は ヱト(▽上下・兄弟・干支)の換言です。


■八将 (やまさ) ■八将神 (やまさかみ)・八将の神 (やまさのかみ)
後に詳しく説かれますが、自然環境の脅威を緩和し、衣食住を世話するための
実戦部隊として、上の11神から派生した8神霊です。
後に八将神(はっしょうじん)に変貌しましたが、わずかにヤマサの面影を残します。

 1.ウツロヰ (空)  2.シナトベ (風)  3.カグツチ (火) 
 4.ミヅハメ (水)  5.ハニヤス (土)  6.オオトシ (豊作) 
 7.スヘヤマズミ (治水・治山)  8.タツタメ (鎮火・鎮浪)

 ★将 (まさ)
 マス(増す・▽纏す)の名詞形で、「合わせ・まとめ・統べ・司」 などが原義です。


■竈 (みかま・みかまど)・竈 (かまど)・竈 (かま)
「加熱・煮炊き」 を原義として 「炊事設備・台所」 をいい、
また転じて 「台所事情・日々の暮らし・生活・衣食住」 を意味します。

 ミク(▽活く)+カム(▽上む・醸む)+マツ(▽詣つ) のさまざまな短縮で、
 ミクは イク(活く)の変態、マツは マデ(詣で)の母動詞です。
 いずれも 「上げる・高める・勢いづける・熟す・至らす」 などが原義です。


穢ふ神潰 (おふかんつみ)
「桃」 の異称です。

 桃の木に 隠れて桃の 実を投ぐる てれば退く
 「葡萄ゆるく 櫛は黄楊よし 
桃の名を “穢ふ神潰” や」 〈ホ5-3〉


■埴清く (はにしく)
シク(▽清く)は スグ(直ぐ)の変態で、 「曲りを直す・調える・清める」 などの意です。
ですから 「土地の穢れを清める」 という意味です。


■纏る屋造る (まつるやつくる)
“纏る屋” は 「民を纏る屋/社/舎」 の意で、「皇宮・政殿・役所」 などをいいます。 ▶纏る
ですからこれは 「桃の木は政殿を造る材となる」 と言ってるように思えます。


■鬼霊済す (しこめなす)
ナス(済す・▽擦す)は カエス(返す)、スマス(済ます)と同義です。
ですから 「邪霊を追い返す・片付ける」 ということです。 ▶鬼霊 ▶済す


■兄弟 (ゑと)
「上下」 が原義です。実際の兄弟・姉妹でなくとも、
2つ以上で一組となるものをいう場合に、よく ヱト(兄弟)と表現します。


イクシマ/タルシマ
この2神は 「四方の御垣守」 と呼ばれ、「宮/都を囲む垣を守る神」 です。

 イクシマと タルシマ四方の 御垣守り 〈ホ14-1〉

この文脈からすると、イクシマ/タルシマも 穢ふ神潰(=桃)に賜った尊名のようです。
都を囲む垣も桃の木で造ったということでしょうか。

 

【概意】
「汝 受けるべし。
干支守の神は八将を生みて人々の暮らしを守り。
穢神潰は <その根を張って> 埴を清め、政の社を造り、また邪霊を祓い、
兄弟のイクシマ/タルシマと尊名を賜えば 宮の守りもなし。」

 

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 わかにいはりの あらやたつ なかつはしらの ねおかかえ
 またよところの もりもかね ともにまもれよ

―――――――――――――――――――――――――――――
 我が新張りの あら屋建つ 中つ柱の 根を抱え
 また四所の 守も兼ね 共に守れよ

―――――――――――――――――――――――――――――

■新張り (にいはり)
ニイ(新)+ハリ(張り・墾) で、「新たに開く/広げるさま」 をいいます。 ▶墾
ニハリ/ニヰハリ” とは意味が異なります。


■あら屋・あら家 (あらや)
アル(散る・離る)+ヤ(屋・家) で、アラカ(殿・舎) の換言です。


■中つ柱の根 (なかつはしらのね)
「中柱の根元の部分・土の中に埋まっている部分」 をいいます。 ▶中柱


■四所 (よところ)
すぐ後に示されますが、「竈・門・井・庭」 の4所をいいます。

 

【概意】
我が新張りの住処を建てる。
その中柱の根を抱え、また四所の守も兼ねて、汝も共に守れよ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 はるかまと こたそこにあり さおむきて きまくらにふせ
 なつはかと みたそこにあり ねにむきて つまくらにふせ
 あきはゐと なたそこにあり きにむきて さまくらにふせ
 ふゆにわと ひたそこにあり つにむきて ねまくらにふせ

―――――――――――――――――――――――――――――
 「春 竈 九尺底にあり 南を向きて 東枕に伏せ
 夏は門 三尺底にあり 北に向きて 西枕に伏せ
 秋は井所 七尺底にあり 東に向きて 南枕に伏せ
 冬 庭所  一尺底にあり 西に向きて 北枕に伏せ」

―――――――――――――――――――――――――――――

■竈 (かまど)
「煮炊きする所・台所」 をいいます。


■九尺底にあり (こたそこにあり)
「深さ9尺の地底に居て」 という意です。 ▶尺 (た)


■井所 (ゐど) ■庭所 (にわと)
それぞれ 「井の場所」 「庭の場所」 の意です。

 ★井 (ゐ)
 ヰ(井)は イケ(埋け)の略で、「埋め・満たし」 を原義とし、「水溜め・池」 などをいいます。
 イケ(池)は イケル(埋ける)の母動詞 “イク” の名詞形です。

 ★庭 (にわ・には)

 ★所・処 (と)
 トク(解く)の名詞形の トキ(時)・トコ(所) の短縮で、「分割・刻み・区分・区画」 などが原義です。
 タ(手)チ(方)、ツ(津・=の)、テ(手) の変態です。


■北枕に伏せ (ねまくらにふせ)
ヲシテ原文は この部分も “南枕に伏せ (さまくらにふせ)” と記しますが、
誤写と判断して修正しています。

 

【概意】
春は竈の地底1尺に居て、南を向いて東を枕に伏せよ。
夏は門の地底3尺に居て、北を向いて西を枕に伏せよ。
秋は井戸の地底7尺に居て、東を向いて南を枕に伏せよ。
冬は庭の地底1尺に居て、西を向いて北を枕に伏せよ。

 

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 はらせくひ あしにしたかふ いしすゑに
 しきますとこお いかすれと おころのかみと なおたまふ
 よよいかすりて あらやもるかな

―――――――――――――――――――――――――――――
 「腹・背・頭 足に従ふ 居し据えに
 敷き座す床を いかすれ」 と オコロの守と 名を賜ふ
 よよいかすりて あら屋守るかな

―――――――――――――――――――――――――――――

頭 (くび)

■従ふ (したがふ)
シツ(▽親つ)+カフ(支ふ) の同義語連結で、
シツは シツク(仕付く)の母動詞、カフは ツカフ(仕ふ・支ふ)の母動詞です。
どちらも 「合う・付く・添う・触れる」 などの意を表します。


■居し据えに (いしすゑに)
「敷地の鎮めに・敷地の調えに」 という意です。 ▶居し据え

 ここは原文の通りの語順では意味が取りにくいので、
 “居し据えに 腹・背・頭 足に従ふ 敷き座す床を いかすれ
 と語順を変えて読むとわかりやすいです。


■敷き座す床 (しきますとこ)
「下に敷いてすわる土台」 の意で、ようするに 「建物や施設の敷地」 です。

 ★床 (とこ)
 トク(疾く)の名詞形で、「早いさま・先にあるもの・下地」 などが原義です。
 「下敷き・土台・基礎・ベッド」 などを意味します。ソコ(底)の変態です。


■いかする・ゐかする (▽活摩る)
イク/ヰク(行く・活く)+スル(摩る・擦る・磨る) の同義語連結で、両語とも
「往き来させる・奮わす・回転させる・回帰させる・改める」 などが原義です。
ですから 「更新する・活かし改める・改善する」 などの意です。
これは オコロ(=もぐら)が 「土を掻き回して穢れを改める」 ことをいいます。


■オコロの守・ヲコロの守 (おころのかみ・をころのかみ)
オコロは 「もぐら」 をいいますが、これに オ/ヲ(汚・穢)+コロ(転) の意を重ねます。
ですから 「汚穢を転ばすモグラの守」 という意です。
オコロの守は後世 「土公神」 と呼ばれるようになります。


■よよ (弥々)
「いよいよ」と同じで、ここでは 「連綿と・絶え間なく・常に」 などの意を表します。

 

【概意】
「敷地の鎮めに、腹・背・頭・足に触れる土を掻き回して穢れを改めよ」 と、
“オコロの守” と名を賜う。常に土を掻き回して住処を守るかな。

 

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 みつかきお としよつにわけ とはとふか
 ひかたにこかと にかまたら ひふみにしるす

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 瑞垣を 年四つに分け 十端十二日
 一方に九門 和・曲・斑 日文に記す

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■御つ垣・上つ垣・瑞垣 (みつかき・みづかき)
ミ(御・▽上・▽神)+ツ(=の)+カキ(垣・▽画・▽郭) の意で、御垣(みかき)と同じです。
辞書は “瑞垣・瑞籬・水垣” と当てます。


■年四つに分け十端十二日 (としよつにわけとはとふか)
1年の365日を 東西南北の4で割ると 各92日。
92日を9で割ると 10日(×8)と 半端の12日となる、というような意です。


■一方に九門 (ひかたにこかど)
「東西南北の各一辺に9門を設ける」 という意です。 ▶九門
参考に 平安京の構造図 を見て下さい。その規模は 東西約4.5km、南北約5.2km です。


■和・曲・斑 (に・が・まだら)
ニ(▽和)は 「調和するさま」 を意味し、今に言う 「吉」 です。
ガ(▽離・▽曲)は 「離れ・曲り・はずれ・不調」 を意味し、今に言う 「凶」 です。
マダラ(斑)は 「(吉凶が) 交じるさま」 を意味し、今に言う 「吉凶相交」 です。


■日文・日記 (ひふみ)
「日めくり・カレンダー・暦」 をいいます。 ▶ふみ

 東西南北の36門に “和・曲・斑” を表す一句を当て、
 これを方位の吉凶を占うタネとして、暦に記したものではないかと考えてます。
 たとえば、「ある日の ある時間帯に その門の方角へ行くのは凶」 みたいな感じで、
 六曜につながるものではないかと考えています。

 

【概意】
御垣を年の4つに分けて、10日<8つ>と半端の12日。
一方に9門を設け、その 和・曲・斑 を暦に記す。

 

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 さのきより
 あかつきのあは にのたから くらやめのあは かにやめる
 ひわかれのあは かのはなれ ひのいてのあは にのいはひ
 はなやかのあは にのみやと てりあれのあは なかおひえ
 かになすのあは かにそこね あきらかのあは にのよろし
 ほしてるのあは にのひかり さのこかとこれ

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 南の東より
 暁の天は 和の宝 暗闇の天は 曲に病める
 日別れの天は 曲の離れ 日の出の天は 和の祝
 華やかの天は 和のみやと 照り粗れの天は 半怯え
 曲和なすの天は 曲に損ね 明らかの天は 和のよろし
 星照るの天は 和の光 南の九門これ

―――――――――――――――――――――――――――――

■南の東より (さのきより)
「南の御垣の東側の門から順に」 という意です。


■天 (あ)
ここでは 「空もよう・天気・天候」 をいいます。


■日別れ (ひわかれ)
「日との別れ・夕日」 をいうと考えます。


■みやと (▽和)
ミユ(見ゆ)+ヤツ(▽和つ・▽結つ) の短縮 “ミヤツ” の名詞形で、
「合わせ・結び」 を意味します。原義はミヤビと同じです。


■照り粗れ (てりあれ)
照り雨」 のことでしょう。テリオレ(照り降れ) ともいいます。


■曲和なす (がになす)
ガ(曲)+ニ(和)+ナス(和す) で、「曲と和が交じる」 の意です。
「荒猛と平穏があい半ばする」 ことをいうかと思います。


■よろし (▽寄ろし)
ヨル(寄る)+オス(押す・圧す) の短縮 “ヨロス” の名詞形で、
「寄り合わすこと・寄り添うこと」 をいいます。

 

【概意】
南の瑞垣の東側の門から順に、
暁の天は和の宝。暗闇の天は曲に病める。
日別れの天は曲の離れ。日の出の天は和の祝。
華やかの天は和の合わせ。照り雨の天は半ば怯え。
荒・穏の交じる天は曲に損ね。明らかの天は和の寄り。
星照るの天は和の光。南の九門はこれ。

 

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 つはさより
 あきらかのあは にのよろし くらやめのあは かにやめる
 かのふるのあは にみたから あかつきのあは にのたから
 あかるきのあは にのいのち あけほののあは このたから
 まつくらのあは かのうれひ ひるのひのあは ににみつる
 つこもりのあは かにきゆる つのこかとこれ

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 西は南より
 明らかの天は 和の寄ろし 暗闇の天は 曲に病める
 光の振るの天は 和み宝 暁の天は 和の宝
 明るきの天は 和の命 曙の天は 好宝
 真暗の天は 曲の憂ひ 昼延びの天は 和に満つる
 晦の天は 曲に消ゆる 西の九門これ

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■光の振る (かのふる)
カ(▽光・▽明・火) は カル(▽上る・▽明る)の名詞形で、「光・明かり」 と同じです。
フル(振る)は 「高まる・勢いづく・栄える」 などの意です。


■和み宝 (にみたから)
ニミ(和み)は ニムの名詞形で、ニムは ニフ(▽和ふ)・ニル(似る)の変態です。
これらの名詞形の短縮が ニ(▽和)ですから、ニミ(和み)=ニ(和) です。


■好宝 (このたから)
コノは コノム(好む)の母動詞 “コヌ” の名詞形で、
「合い/合わせ・やわし」 などの意を表します。ですからこれも ニ(和) の換言です。


■昼延び (ひるのび)
「昼が長い夏の時期」 をいうのではないかと思います。


■晦 (つごもり)
ツク(月)+コモリ(籠り・隠り) の短縮で、「月が隠れるさま」 をいいます。

 

【概意】
西の門は南側から順に、
明らかの天は和の接近。暗闇の天は曲に病める。
光の振るの天は和の宝。暁の天は和の宝。
明るきの天は和の命。曙の天は好宝。
真暗の天は曲の憂い。昼延びの天は和に満つる。
晦の天は曲に消ゆる。西の九門はこれ。

 

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 ねはつより
 めくるひのあは にもめくる あかるきのあは にのいのち
 はなやかのあは にのみやと みなるひのあは なかみなる
 くらやめのあは かにやめる おほろよのあは なかくらし
 とまよいのあは かにくるし あらはるのあは にのなあく
 ひかはくのあは かのとかめ ねのこかとこれ

―――――――――――――――――――――――――――――
 北は西より
 恵る日の天は 和も巡る 明るきの天は 和の命
 華やかの天は 和のみやと 見慣る日の天は 中実成る
 暗闇の天は 曲に病める 朧夜の天は 半暗し
 戸迷いの天は 曲に苦し 顕るの天は 和の名上ぐ
 干乾くの天は 曲の咎め 北の九門これ

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恵る (めぐる)

■朧夜 (おぼろよ)
ヨ(夜)は この場合は 「月」 を意味します。ですから 「朧月」 と同じです。

 ★朧 (おぼろ)
 オボル(溺る)
の名詞形で、「まみれるさま・紛れるさま・埋もれるさま」 が原義です。


■戸迷い (とまよい)
戸惑い」 と同じで、ここでは 「定まらないさま」 をいいます。

 トム+マヨフ(迷ふ) の短縮 “トマヨフ” の名詞形で、
 トムは トフ(訪ふ)・タム(回む)の変態です。
 両語とも 「往き来する・回る・うろうろする」 などが原義です。


顕る・表る・現る・著る (あらはる)
アラハ(顕・露)+アル(在る) の短縮で、
「くっきりと識別できる・顕在的である/となる」 などが原義です。

 ★顕・露 (あらは・あらわ)
 アル(離る)アフ(零ふ) の短縮 “アラフ” の名詞形で、
 両語とも 「離れる・別れる・識別される」 などが原義です。

 

【概意】
北の門は西側から順に、
恵る日の天は和も巡る。明るきの天は和の命。
華やかの天は和の結び。見慣る日の天は中実成る。
暗闇の天は曲に病める。朧夜の天は半暗し。
戸迷いの天は曲に苦し。顕るの天は和の名上ぐ。
干乾くの天は曲の咎め。北の九門はこれ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 きはねより
 さかえるのあは にのさかえ ひおつるのあは かにおとる
 のとやかのあは ににやすし あやうきのあは かにあやふ
 なれやふのあは ににもなる たそかれのあは かにやふる
 てりおれのあは またらゑた あひのてのあは にのたらち
 あきらかのあは にのよろし きのこかとこれ
 きつをさね をはうちおもる

―――――――――――――――――――――――――――――
 東は北より
 栄えるの天は 和の栄え 日落つるの天は 曲に劣る
 のどやかの天は 和に和すし 肖うきの天は 曲に肖ぶ
 均れやふの天は 和にもなる たそがれの天は 曲に破る
 照り降れの天は 斑枝 相の出の天は 和の父母
 明らかの天は 和のよろし 東の九門これ
 東・西・央・南・北 央は内を守る

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■やすし (▽和すし)
ヤス(▽和す)+シ(=如し) で、「調和/親和する如し」 の意です。

 
■肖うき (あやうし) ■肖ぶ (あやぶ)
アヤブ(▽肖ぶ)は 「合う・交じる・紛れる・どっちつかずである」 などが原義です。
その形容詞形が アヤウシで、アヤウキは連体形です。辞書は “危うし” と当てます。

 アヤブは アユ(肖ゆ)+ヤフ(▽和ふ・▽結ふ) で、「合う・交じる・紛れる」 などが原義。
 アヤム(怪む)
の変態です。アヤウシは それにシ(=如し)を付けて形容詞としたもので、
 「合う如し・交じる如し・紛れる如し」 などが原義です。


■均れやふ (なれやふ)
ナル(平る・均る)+ヤフ(▽和ふ・▽結ふ) の連結で、「均一になる」 という意です。


■たそがれ
タス(達す)+カル(枯る) の連結 “タソガル” の名詞形で、
「達して枯れること」 を意味し、「日が没する頃」 をいいます。


■照り降れ (てりおれ)
テリアレ(照り粗れ) の換言です。


■斑枝 (まだらゑだ)
マダラ(斑)は 「交ざり・混交・相半ばするさま」 などの意です。
ヱダ(枝)は ここでは 「枝分かれ・分岐点」 を意味します。
ですから「五分五分の分岐点・どっちに行くかの分かれ道」 などの意です。


■相の出・合の出 (あひので)
ここでは 「日と月が諸共に出ること」 をいいます。


父母 (たらち)

東・西・央・南・北 (きつをさね)

央 (を)
「中心・中央・上・高み」 などが原義で、“皇” も “王” も これを意味します。

 

【概意】
東の門は北側から順に、
栄えるの天は和の栄え。日落つるの天は曲に劣る。
のどやかの天は和に親し。あやふやの天は曲と交じる。
均一の天は和にもなる。たそがれの天は曲に破れる。
照り雨の天は和/曲の分岐点。相の出の天は和の父母。
明らかの天は和のよろし。東の九門はこれ。
以上、東西央南北。央(皇)は四方の内を守る。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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