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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第38回 [2023.9.7]

第八巻 霊還しハタレ打つ文 (5)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 たまかえしはたれうつあや (その5)
 霊還しハタレ打つ文 https://gejirin.com/hotuma08.html
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 またはたれ つくしのみたり
 なかくにの はなやまののに ともあつむ
 ときにあまてる みことのり
 うけもちのまこ かたまろに くにみてかえれ
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 またハタレ ツクシの三人
 中国の 花山の野に 朋集む
 時に和照る 御言宣
 ウケモチの孫 カダマロに 「国見て返れ」

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ツクシ

中国 (なかくに)
広義の中国は 「ヒタカミ国・根の国・ホソホコチタル国 を除く本州」 ですが、
狭義には ヤマトの国 (大和国)、ヤマシロの国 (山背国) を指す場合が多いです。


■花山の野 (はなやまのの)
ヤマシロの国 (山背国) の古名と考えられます。
葛野(かどの) とも呼ばれ、おおよそ現在の 「賀茂地区を除く京都市」 を指すようです。

 花山稲荷神社 (かざんいなりじんじゃ)
 京都府京都市山科区西野山欠ノ上65。
 現在の祭神:宇迦之御魂大神、神大市比売大神、大土之御祖大神


■和照る御言宣 (あまてるみことのり)
「和(やわ)して照らす御言宣・ほどよく調えて恵む御言宣」 という意で、
アマテル大御神の御言宣を 尊んでこのように表現します。 ▶あまてる(和照る)
和照らします御言宣、響御言宣(とよみことのり) ともいいます。


■ウケモチ (▽活望・保食神)
クニサツチ の子で、トヨクンヌ の兄弟です。
天から 日・夜潤種(ひようるたね:15アヤ出) を授かり、帰天後は 稲荷神 として信仰されます。
ウケ は イケ(活け)・ミケ(食) の変態、モチ(望) は ミチ(充ち・満ち) の変態です。
日本書紀には 保食神 と記され、ウケミタマ と同一視されていますが、別神です。

 ウケモチの子孫は 代々 花山の野を治め、先進の農業技術を持っていたようです。
 ウケモチ の名は世襲され、初代ウケモチの8世の孫が カダマロ です。
 カダマロ は アマテルの政府内で ウケモチの臣 (農業大臣のような役職) に就いています。


 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)    ┌クラキネ
 │          │           ├ココリ姫
 │          └アメヨロツ┬アワナキ─┴イサナキ┐
 │          (養子)↑  └サクナキ   (VII) ├ヒルコ
 │             └─────┐       ├アマテル
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ    ├ツキヨミ
 │      (初代)  │               ├ソサノヲ
 └ウケモチ┐      └タカミムスビ─トヨケ┬イサナミ┘
      :        (2〜4代)   (5代)├ヤソキネ─タカキネ┬オモヒカネ
      :                 │ (6代)   (7代) ├ヨロマロ
      :                 ├カンサヒ     ├フトタマ
      :                 └ツハモノヌシ   ├タクハタチチ姫
      :                           └ミホツ姫
      └ … … … … … … … … … … … … … ─??─カダ
                              (8世孫)


■カダマロ (荷田麻呂) ■カダ (荷田・▽葛)
ヤマシロの “花山の野” を治める 地守 で、北局の乙下侍 アチコ の父です。
クニサツチの子の ウケモチ の8世の孫で、政府で ウケモチの臣 (農業大臣) を努めます。
カダ は カツ(▽活つ) の名詞形で、葛(かど・かつ・くず)、糧(かて) などの変態です。
おそらく カダ の名は ウケモチ(▽活望) の意を換言したものです。
カダマロ は 幼名なのですが、大人になってもそのまま使われています。

 伏見稲荷大社 (ふしみいなりたいしゃ)
 山城国紀伊郡。京都府京都市伏見区深草藪ノ内町68。 
 現在の祭神:宇迦之御魂大神、佐田彦大神、大宮能賣大神、田中大神、四大神
 ・社内に間の峰 荷田社 あり。また稲荷山全体の地主神を 荷田の神 という。

 ★幼名 (おさなな)
 成人して 斎名 を付ける前に使う名で、生育地名+マロ  のパターンが多いです。
 “カダマロ” を例に取ると、カダ(荷田・葛) は 生育地名。
 マロ(麻呂) は ウマル(生まる) の略の名詞形で、後世は マル(丸) に転じます。


■国見て返れ (くにみてかえれ)
聞き慣れない言い方ですが、「国見て来い」 と同じです。

 

【概意】
またハタレは九州の3人をして、中国の花山の野に仲間を集める。
時に和して照らす御言宣。ウケモチの子孫カダマロに 「領国を見て来いよ。」



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 かたまろか いたれははたれ いろかえて さきみたれたる
 きくみちの ここさわゆくや
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 カダマロが 到ればハタレ 色変えて 咲き乱れたる
 キクミチの “ココ” 騒ゆくや
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ハタレ

キクミチ

■ココ
キツネ・クツネ の鳴き声を表すもので、今風には “コンコン” です。

 “色変えて”  “咲き乱る”  “ココ” は、
 キクミチ を キク(菊) に語呂合わせしての表現だろうと思います。


■騒ゆく (さわゆく)
騒立つざわめくさやぐ」 などの意です。
サフ(▽騒)+ユク(▽活く) の連結で、 サフ は サワグ(騒ぐ) の母動詞、
ユク は イク(生く・活く) の変態で、「いきいきする」 の意です。

 

【概意】
カダマロが現地に到れば、
ハタレ霊が色を変えて 咲き乱れたるキクミチの、
“こんこん” と騒ぎ立つや、



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 ひめおとり むらくもたひや ほたるひの わらひあさけり
 いかりひの あおたまはけは すすみゑす

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 姫躍り むら雲・灯や 蛍火の 笑ひ嘲り
 怒り霊の 阿汚霊 吐けば 進み得ず

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■姫躍る (ひめおどる)
ヒメ は ヒム(▽卑む) の名詞形で、「下るさま」 が原義です。これは 天地創造の過程
下った 「陰」、また陰より生じた 「水と埴」 をいい、この場合は 「川と大地」 を意味します。
ですから 「川や野山が躍動する・揺れ動く」 という意味です。

 これは シムミチ の時に出てきた “山川あぶる” の換言と思います。
 これもなんかも “姫の踊り” を想像させるように 故意に仕向けて いるのでしょう。


むら雲 (むらくも)

灯 (たひ) ■蛍火 (ほたるび)
タヒ(灯・手火) は ここでは 「人の灯す光」 をいい、
ホタルビ(蛍火) は 「自然が生み出す光」 をいうものと考えます。


■怒り霊 (いかりひ)
イカリ(怒り)+ヒ(霊) で、語義としては イカツチ(厳つ霊・雷) と同じですが、
この場合は 「怒るハタレ霊・怒るハタレのモノ」 の意と思います。


■阿汚霊 (あおたま)
アオ(▽阿汚) は ヲヱ(汚穢) の変態です。
タマ(霊) は ここでは 「エネルギー・気・放射」 などを表します。
ですから 「汚穢のエネルギー・汚穢のオーラ」 などの意です。

 

【概意】
川や野山は揺れ動き、むら雲が立ち上り、
灯火や蛍火が笑い嘲るように光るのであった。
怒れるハタレ霊が汚穢のオーラを放つため、それ以上進めず。


 ここに言う 灯(たひ)、蛍火(ほたるび)、阿汚霊(あおたま) は、
 狐火(きつねび) の伝承と何らかの関わりを持つと考えています。



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 かたまろかえり もふすとき しはしかんかゑ みことのり
 これきくならん
 きつねとは きはねよりなる つさおへて ねにきてすめる
 ねすみおは あふらにあけて いとふへし

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 カダマロ帰り 申す時 しばし考え 御言宣
 「これ キ・ク ならん
 キツネとは 東は北より生る 西・南を経て 北に来て済める
 ネズミをば 油に揚げて いとふべし」

―――――――――――――――――――――――――――――――
 
■キ・ク
ツネ と ツネ」 の略です。
クツネは、通説ではキツネの別名ですが、ホツマは似て非なるものとして区別しています。


■キツネ
本来の語義は不明ですが、ここでは “東西北・起尽寝” の意に取っています。 ▶キ・ツ・サ・ネ
また キツ(▽朽つ) は キタ(北) の母動詞 であるため、”北寝” (北で寝るもの) の意に
解いているようです。


■東は北より生る・起は寝よりなる (きはねよりなる)
東・南・西・北 は、太陽が  「起る・盛る・熟す・寝る」  方向ですが、1アヤで
“北(寝)より来たりて 北(寝)に帰る” と言ってるように、その起点と終点は 「北・寝」 です。
よって 「東は北より生まれる」 という意味だと思います。

 皆見/南に事を わきまえて 落ち着くは西 帰る北
 
北/寝より来たりて 北/寝に返る 
〈ホ1-3〉


■西・南を経て北に来て済める (つさおへてねにきてすめる)
「西・南を経て北に来て 仕舞う/終る/寝る」 という意です。
スメル(済める) は スム(済む) の連体形で、シメル(締める)シマフ(仕舞ふ) などの変態です。

 北に発して東に現れる太陽は、南と西を経て、北に戻って来て一日を終えて寝ますが、
 キツネ も “東西北・起尽寝” の音からなるのだから、これと同じだろうというわけです。

 ★済む (すむ) ★済み (すみ)
 シム(締む) の変態で、「閉まる・仕舞う・終わる・完了する・決着する」 などが原義です。


■ネズミ
同じ意味に解釈できることから、ネズミ を キツネ の身代りとします。
キツネ (北で寝るもの) = ネズミ (北で済むもの・北で仕舞うもの) です。


■油に揚げる (あぶらにあげる)
アゲル(上げる・揚げる) は 「高める・熱する」 という意ですが、
「仕上げる・完了する・終らす・片付ける」 という意味もあります。
ですから、キツネの身代りの ”ネズミを揚げる” ことを以て
“キツネを片付ける” の まじないの種 とするということです。

 あぶらねずみ【油鼠】〈広辞苑〉
 油で揚げた鼠。狐をつる餌。

 あぶらあげ【油揚げ】Wikipedia
 俗に「キツネの好物」とされ、故に稲荷神には油揚げを供える。
 キツネの好物とされた由来には諸説あるが、昔話などではキツネの好物は
 "ネズミの油揚げ" とされており、殺生を禁じた仏教の影響もあって
 かわりに豆腐の油揚げを供えたものという。


いとふ・ゐとう (厭う・▽愛ふ・▽結留ふ)
イ/ヰ+トフ で、イ/ヰ は ユヒ(結ひ) の短縮形。トフ は トム(留む) の変態です。
どちらも 「合わす・結ぶ・縛る・付ける」 などが原義で、2つの意味があります。
(1) 心を結び付ける。気にする。同情する。いたわる。愛する。いとおしむ。惜しむ。
(2) 結い留める (=いとめる)。縛る。動けなくする。封じる。
ここでは (2) で、この意味は今の辞書にはありません。


■べし (可し)
ヘ(‘綜る’ の連用形)+シ(▽如・▽然) で、ヘル(綜る) は 「合う/合わす」 が原義。
「(〜することが状況に) 合う如し/ふさわしい」 という意味です。

 

【概意】
カダマロが帰って返言申せば、君はしばし考えて御言宣。
「これは キ と ク なのだろう。
キツネとは、東(キ) は 北(ネ) より生まれ、西(ツ)・南(サ) を経て、
北(ネ) に戻って 済む(スム)、ということなれば、ネズミをば油に揚げて封じるべし。」



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 くはちとたかふ くはきうの をのほおいとふ
 はしかみの をかめかふすへ ひしかんと
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 「クはちと違ふ クは煙の 陽の放をいとふ
 椒の 陽香・陰香 燻べ 拉がん」 と

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■ク
クツネ の略です。


■ちと (些と少と)
今に言う 「ちょっと」 です。シツ(垂ヅ) の変態 “チツ” の名詞形で、
しとしと”  “しづしづ” の シト・シヅ、また シタ(下) などの変態です。
「下がるさま・劣るさま・衰えるさま・勢いのないさま」 などが原義です。


■違ふ・▽互ふ (たがふ・ちがふ)
タク(綰く)カフ(交ふ・替ふ・代ふ) の短縮で、両語とも 「往き来する/させる」 が原義ですが、
この場合は 「交差する・ちぐはぐになる・互い違いになる・すれ違う」 などの意を表します。


■煙 (きう)
今に言う キウ(灸) のことで、これは ケブ(煙)・ケム(煙) の変態です。
「上げ・高め・加熱」 などが原義で、その結果 「立ち昇るもの・けむり」 を意味します。
キワム(極む) の母動詞 “キフ” の名詞形で、キフ は キル(鑽る) の変態。

 きる【鑽る】〈広辞苑〉
 金と石と、木と木となどを烈しく打ち合せ、また、すって発火させる。火を打ち出す。


■陽の放 (をのほ)
ホノホ(炎) の変態で、「陽の放射」 という意です。
陽 は 「形なきもの・エネルギー・気」 などをいい、ここでは特に 「香り・匂い」 です。

 天地創造の過程で、軽い は上昇して となり、また
 生みますが、これらはいずれも 「形なきもの・エネルギー・気」 です。


椒・薑 (はじかみ・はしかみ)
ハシ(愛し)+カミ(上み・▽香味) で、「いい香り・香り立つもの」 が原義です。
カミ は カム(▽上む) の名詞形で、「上がるもの・立つもの・香り」 を意味します。
  
 ★香り (かほり) ★香る (かほる) ★香 (か)
 カフ(▽上ふ)+ホル(▽秀る) の短縮で、両語とも 「上る・立つ・栄える」 などが原義です。
 カフ の 名詞形が カウ/コウ(香)カ(香) です。


■陽香 (をが) ■陰香 (めが)
ヲガ は 今に言う ショウガ(生姜)、メガ は ミョウガ(茗荷) です。

 ★陽陰 (をめ)・陰陽 (めを)
 対となるような よく似た物の、一方を ヲ(陽)、他方を メ(陰) と言い表します。


燻ぶ (ふすぶ)
「高める・勢いづける・活性化する・熱する」 などが原義で、
クスブ(燻ぶ)イブス(燻す)ウムス(蒸す) などと同義です。


拉ぐ (ひしぐ)

 

【概意】
「ク はちょっと違う。ク は煙の臭いを気にする。
椒のショウガとミョウガを燻し、その臭いで拉がん」 と。



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 みことおうけて かたまろか もろにをしゑて のにいたる
 はたれみたりか さきみたれ いくゑかわりて おとろかす

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 御言を受けて カダマロが 諸に教えて 野に到る
 ハタレ三人が 咲き乱れ 幾回変わりて 驚かす

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■野 (の)
花山の野 をいいます。カダマロの知行地です。


■ハタレ三人 (はたれみたり)
キクミチ の軍勢を率いる 3人の ハタレ頭(はたれかみ) をいいます。

 キクミチ は やたら “乱る” と表現されてるわけですが、
 それは ミタリ(三人) に掛けているからかもしれません。

 

【概意】
御言を受けてカダマロは諸兵に教えて花山の野に到る。
ハタレ頭の3人が咲き乱れ、その色が幾重にも変わって驚かす。



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 かたまろなける あけねすみ きくたみうはひ むさほるお
 もろかみつよく たたかえは ゆつりにくるお おひつめて
 ちたりとらゑて きらんとす
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 カダマロ投げる 揚げ鼠 キク民 奪ひ 貪るを
 諸守強く 戦えば 譲り逃ぐるを 追い詰めて
 千人捕えて 斬らんとす
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■揚げ鼠 (あげねずみ)
アマテルの教えに従って用意した まじないの種 です。
後世は 油鼠 と呼ばれたようです。


■キク民 (きくたみ)
「キクミチの、人間の ハタレマ」 をいいます。

貪る (むさぼる)


■譲る (ゆづる)
ウツル(移る) の他動詞形で、「回す・移す・渡す・任す」 などが原義です。

 

【概意】
カダマロが揚げ鼠を投げ、キク民が気をそらして熱中する時、
諸守が強く叩いて、諦めて逃げだすところを 追い詰めて1,000人を捕え、
これを斬ろうとする。



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 ふつくなけきて やつかれら かえりもふてん あめたみと
 いのちおこえは かたまろか みなときゆるし わらなわお
 さわになわせて はしかみと めかおいふせは みたるるお
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 悉く嘆きて 「僕ら 返り詣でん 天民」 と
 命を乞えば カダマロが みな解き許し 藁縄を
 多に綯せて 椒と 陰香を燻せば 乱るるを
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■悉く (ふつく)
フツシ(悉し) の連用形で、「まさに・まったく・すっかり」 などの意です。 ▶悉


僕 (やつがれ)
ヤツ(▽窶つ)+カレ(枯れ) で、「やつれ枯れたる身」 という意。自分の謙称です。
ヤツ は ヤツレ(窶れ) の母語で、ヤセ(痩せ) の変態です。


■返り詣づ (かえりもふづ)
ここでは 「元の所に返って仕える・帰参する」 という意味です。 ▶詣づ


■天民 (あめたみ)
アメ(天) は ここでは 御上 を表します。
ですから 「御上の治めを受ける民」 という意です。


藁縄 (わらなわ)
「藁を編んだ縄」 です。これを燃料として火を焚いたのだと思います。
藁を焚く” という言葉が辞書にあり、「焚きつける・けしかける」 ことを表す
モノザネ (=まじないの種) ではないかと思います。

 ★藁 (わら)
 ワル(割る) の名詞形で、「離れる・割れる・くずれる・開く」 などが原義。
 「ほどけるさま/もの・ほぐれるさま/もの・バラバラなさま/もの」 などの意です。

 ★縄 (なわ)
 ナフ(綯ふ・▽和ふ) の名詞形です。ナフ は ヌフ(縫う) の変態で、
 「合わす・結う・編む」 などが原義です。

 

【概意】
ことごとく嘆いて、「僕らは御上の民にもどって仕えます」 と命を乞えば、
カダマロが皆を解き許し、藁縄を大量に綯わせて、それで火を焚き、
椒とミョウガを燻して、敵が乱れたところを、



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 さらにたたかひ おひつめて ふつくとらゑて さきためし
 つひにおひつめ みはたれお しはるわらひに

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 さらに戦ひ 追ひ詰めて 悉く捕えて 先例
 つひに追ひ詰め 三ハタレを 縛る蕨に

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■先例 (さきためし)
「前の繰り返し」 という意です。
 
 ★試す (ためす) ★試し・例 (ためし)
 タム(回む)+ヱス(▽回す) の短縮で、「回す・事を運ぶ・運転する・繰り返す」 などが原義。
 タメシ(試し・例) は 「回し・運転・繰り返し・パターン」 などが原義です。

 

【概意】
さらに戦って追い詰め、ハタレマをことごとく捕えて先の例。
ついには3人のハタレ頭も追い詰め、蕨縄に縛る。



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 きくつねお みさとのあみお のにはりて
 みなおひいれて たまつなき きくつねすへて みそみよろ
 みたりはつつか もろかえりけり
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 キ・クツネを 三里の網を 野に張りて
 みな追ひ入れて 珠つなぎ キ・クツネ総て 三十三万
 三人はツツガ 諸 帰りけり

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■キ・クツネ
キクミチの支配を受ける 「動物の キツネとクツネ」 をいいます。


■三里の網 (みさとのあみ)
サト(里) は ここでは 距離/面積 の単位です。
1里=3.9km ですから、「約12キロメートル四方の網」 ということになります。


■珠つなぎ (たまつなぎ)
「数珠つなぎ」 と同じでしょう。
非常に興味深いことに、なぜか “犯罪者などを多くつなぎ縛ること” という意味があります。

 じゅずつなぎ【数珠繋ぎ】〈広辞苑〉
 数珠玉をつないだように、多くのものを縛ってつなぐこと。
 犯罪者などを多くつなぎ縛ること。

 

【概意】
三里の網を野に張り、そこに キ・クツネ をすべて追い入れて数珠つなぎ。
キ・クツネはその数すべて33万。ハタレ頭の3人は拘置して、諸は帰るのであった。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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