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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第35回 [2023.9.3]

第八巻 霊還しハタレ打つ文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 たまかえしはたれうつあや (その2)
 霊還しハタレ打つ文 https://gejirin.com/hotuma08.html
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 ややしるまこと はたれとは あめにもおらす かみならす
 ひとのねちけの ときすくれ こりゑてむつの はたれなる
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 「やや知る真 ハタレとは 天にも居らず 神ならず
 人のねぢけの 研ぎ過ぐれ 凝り合て六つの ハタレ生る」
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やや

ハタレ
ここでは 「ハタレのモノ」 の略で、オロチ(折霊) の換言です。

 ★折霊・愚霊 (おろち)
 「折れ曲った霊・邪霊」 という意です。これは生きている人間が放つ、羨み・妬み・恨み
 などの曲った想念が “生き霊” に転じたものです。生き霊は “同類相求む” の法則により、
 同種の念を放つ人や動物に寄り付いて、干渉・支障を働きます。
 ハハ(▽蝕霊)・イソラ(▽逸霊)・ハタレ(▽外れ) などとも呼ばれます。
 これが具象した生き物が、曲がりくねって下を這う オロチ(蛇) と考えられているようです。

 当講座では 「邪霊」 をいう場合には “折霊”、「へび」 をいう場合には “蛇” と表記します。
 邪と蛇、どちらも “ジャ” と読むところが なんとも意味深です。


■天・▽上 (あめ)
このアメは 「天上界・霊界」 をいいます。いわゆる 「あの世」 です。


神 (かみ)
物質の上位にある存在形態で、「霊・神霊」 と同じですが、“神” という場合は、
比較的高級な霊をいうことが多く、それ以外の低級な霊は “モノ” と呼ぶことが多いです。
高級な霊というのは、主にはアメミヲヤの分霊、つまり創造神のエッセンスを持っている
「人霊」 をいい、あるいは、世に生きる人霊(=人間)の生活を支援する 「自然神・精霊」 の
類をいいます。


■人のねぢけ (ひとのねぢけ)
この場合は 「人の心のねじけ・人のねじけた想念」 をいいます。


■研ぎ過ぐる (とぎすぐる)
「研ぎ過ぎる・鋭さの度を超える・程度が進んで化ける」 というような意です。


■凝り合て (こりゑて)
「結び合って・凝集して」 という意です。

 

【概意】
「しだいにわかってきた真実を言えば、
ハタレとは天上界にも居らず、神でもなく、
人のねじけた想念が進化凝集して6つのハタレが生る。」

 

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 にしきおろちの しむみちや はるなははみち ゐそらみち
 みたるきくみち ゐつなみち なるかみもとむ あゑのみち
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 「錦蛇の シムミチや ハルナハハミチ ヰソラミチ
 乱るキクミチ ヰツナミチ 鳴神求む アヱノミチ」
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■錦蛇 (にしきおろち) のシムミチ
「ニシキヘビの霊の進化」 という意です。
以後は単に “シムミチ” と、略されて呼ばれます。

 ★錦 (にしき)
 丹(に)+白(しろ)+黄(き) の短縮で、「カラフル」 の意です。
 イロ(色)と呼ばれることもあります。

 ★蛇 (おろち)
 オル(折る)+オツ(堕つ) の短縮 “オロツ” の名詞形で、
 「曲がりくねって地を這うもの」 を意味します。つまり 「へび」 です。

 ★シム (▽霊・▽精)
 ここでは 「本質・エッセンス・精髄・精・霊」 を意味します。

 ★ミチ (満ち)
 「満ちたもの・進化発展・行き着くさま・成れの果て」 などの意です。


■ハルナハハミチ
「親分格の邪霊の進化」 という意です。

 ★ハルナ
 ハル(▽治)+ナ(=の)+モノ(物・者) の略で、「治める者・長」 を意味します。
 
 ★ハハ (▽蝕・▽這) ★ハハチ (▽蝕霊・▽這霊)
 ハフ(▽蝕ふ・這ふ) の名詞形で、「蝕み・曲り・汚穢・這うもの」 を意味します。
 ほとんどの場合、ハハチ(▽蝕霊)の略で、「蝕まれた霊・邪霊」 をいいます。
 またその具象としての 「蛇」 を意味する場合もあります。ですから オロチ(折霊/蛇) の同義語です。


■ヰソラミチ・イソラミチ
これも 「邪霊の進化」 という意味です。

 ★イソラ・ヰソラ (▽逸霊)
 イス/ヰス(逸す)+ソル(反る) の短縮 “イソル” の名詞形で、「曲り逸れるさま」 が
 原義です。これもほとんどの場合、「曲り逸れた霊・邪霊」 をいいます。


乱る (みだる)
後で出てきますが、この場合は 「咲き乱れる」 という意です。


■キクミチ
キクは 「ツネとツネ」 の略です。
ですから 「キツネとクツネ(霊の)の進化」 という意味になります。

 クツネは、通説ではキツネの別名ですが、ホツマは似て非なるものとして区別しています。


■ヰツナミチ・イツナミチ
ヰツナは ヰツ(▽結つ)+ツナ(▽繋・綱) の短縮で、
「結いつなぎ」 を意味し、「異種交配・ハイブリッド」をいいます。
ですから 「交配種の(霊の)進化」 という意味です。

 おそらくこれが 飯綱(いづな)管狐(くだきつね) の起源でしょう。
 しかしこの飯綱伝説は、ホツマのヰツナミチとはだいぶイメージが違い、
 キクミチの伝承と混合したもののように思えます。


■鳴神求む (なるかみもとむ)
ナルカミ(鳴神)は 「ゴロゴロ鳴る神・雷の神霊」 の意です。
モトム(求む)は ここでは マトム(纏む)・マトフ(纏う) などの変態で、
「まつわる・付きまとう」 などの意です。


■アヱノミチ・アメヱノミチ
ア/アメ(▽上・天)+ヱノ(狗)+ミチ(満ち) で、「上等な獣の進化」 という意です。
おそらくこれが天狗伝説の起源でしょう。

 ★アメ (▽上・天) ★ア (▽上・天)
 アム(▽上む)の名詞形で、「上(うゑ・かみ)」 が原義です。アは アメの略形です。

 ★ヱノ (▽犬・▽狗・▽猪)
 ヱヌ(▽穢ぬ) の名詞形で、「けがれ=逸れ・外れ」 が原義です。
 「人に非ざるもの・外道のもの」 を意味し、ケモノ(獣)、シシ(獣) の同義語です。

 

【概意】
「錦蛇のシムミチや、ハルナハハミチ、ヰソラミチ、
咲き乱れるキクミチ、ヰツナミチ、鳴神のつきまとうアヱノミチ。」

 

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 みなそのしむお ぬきとりて わさにもゑつく おこりひの
 ひひにみたひの なやみあり
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 「皆その霊を 抜き取りて 技に燃え着く 瘧火の
 日々に三度の 悩みあり」

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■瘧火・起り火 (おこりび)
「発熱」 のことで、瘧(おこり)と同じと思います。
この1日3回の発熱は 三の火(みのほ)、日三の炎(ひみのほのほ) とも呼ばれます。


悩み (なやみ)
ナヱ(萎え)+ヤミ(病み) の短縮です。

 

【概意】
「ハタレのモノ(=邪霊)に憑かれた者は、皆その霊を抜き取られ、
邪霊の技に燃え着く発熱により、1日3度の悩みがある。」

 

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 いかておそれん かんちから はらいのそかは
 おのつからははもいそらも よりかゑし いるやもうけす
 かみのやは かならすあたる はたれみの わさやあらはす
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 「如何で恐れん 神力 祓い除かば
 自ずから ハハもイソラも 揺り返し 射る矢も受けず
 上の矢は 必ず当る ハタレ霊の 技や露す」
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如何で (いかで)

■神力 (かんちから)
「霊的な力・霊力・人知を越えた力」 をいいます。
この場合は 「邪霊の持つ魔力」、またそれに基づく 「魔術・幻術」 をいいます。


ハハ (▽蝕霊)

イソラ・ヰソラ (▽逸霊)


■揺り返す (よりかえす)
ヨル(揺る)+カエス(返す) の連結で、ヨミガエル/ヨミガエスの変態です。
「往き来する・回る・回帰する」 などを原義とし、ここでは 「もとにもどる」 という意。
つまり 「邪霊の曲りがもとにもどる・普通の霊にもどる」 ということです。


■上 (かみ)
ここでは 御上(おかみ) を意味します。カミ(上)は カン(官)・コウ(公)の変態です。


■ハタレ霊 (はたれみ)
ハタレのモノ” の換言で、「邪霊」 を意味します。

 ★霊 (ミ・ヒル・ヒ・イ・ヰ・ル)


■露す・表す・現す (あらはす)
「あらわにする・露見させる・裸にする・あばく」 などの意です。

 

【概意】
「どうして恐れようか。霊力を祓い除けば
ハハもイソラも自ずからもとに戻り、射る矢も受けない。
官軍の矢は必ず当たり、<目に見えない> 邪霊の技をあらわにする。」

 

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 ふつぬしか てたておとえは かなさきの をきなこたゑて
 われもなし ゐつくしおもて かんかたち
 なかこすなおに かんちから よくものしるは かんとほり
 ことなふたもつ くしひるそ たたやわらきお てたてなり
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 フツヌシが 手立てを問えば カナサキの 翁 答えて
 「我も無し 慈しを以て 神形
 中子素直に 神力 良く物知るは 神通り
 異無保つ 貴霊ぞ ただ和らぎを 手立てなり」

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■フツヌシ
この人物の素性についてホツマには記述がなく、誰の子かわかりません。
また子孫も無かったようです。日本書紀に 経津主神 と記されます。

 香取神宮 (かとりじんぐう)
 千葉県香取市香取1697。
 現在の祭神:経津主大神


■慈し (ゐつくし・いつくし)
イツク(斎く・傅く)シク(如く) から ‘ク’ をカットしたク語法で、
慈しみ」 と同じです。今風に言えば「愛」です。

 アイ(愛)は アフ(合ふ)の名詞形で、
 「心を合わすさま・心を一つに和すさま」 が原義です。


■上形・神形 (かんかたち)
カミ(上・神)は ここでは 「上にあるさま・上位・本源・本質」 などを表し、
カタチは 「現れ・具現・具象」 などの意です。
ですから 「本質の現れ・本質的な形・上位の形態・本来の姿」 などの意となります。


中子・中心・中処 (なかご)
ナカゴは ハシッコ(端っこ)・スミッコ(隅っこ) の反対語です。
「中心部・中枢・本源」 などを原意とし、「心・精神・霊・魂魄」 などの換言です。


■素直 (すなお)
ス(素・▽直)+ナオ(直) の連結です。
「反り曲りのないさま・片寄りのないさま・中庸なさま」 をいいます。
言葉を換えれば 「和らぐさま・調和するさま」 です。


■神力 (かんちから)
この場合は 「人の神霊(みたま)が持つ力・人の本来の能力」 をいいます。
“すべての人間は神の顕現” という思想が背景にあります。
ですから、他力ではなく 「人に潜在する神の力」 という意味です。


■良く物知るは・良く物知るば (よくものしるは・よくものしるば)
「良く物事を知ること」 あるいは 「良く物事を知れ」 のどちらかだと
思いますが、古くは に区別はなかったのかもしれません。

 シル(知る・領る)は 「(身に)合わす・和す」 が原義です。


■神通る (かんとほる)
「人の神霊(みたま)が通る・人の上位の意識が通う」という意で、
つまり 「人に潜在する神の能力が働く」 ということです。


■異無・事無 (ことなふ)
コト(異・事)+ナフ(無) で、ナフ(無)は ナフの名詞形。
コトナキ(事無き)の古形で、「無事・平穏」 を意味します。


貴霊・奇霊 (くしひる・くしひ)
「貴いエネルギー・尊い力」 という意です。
ここでは 「調和・和(やわ)し・やわらぎ」 こそ、それだと言ってます。


■和らぎ (やわらぎ)
ヤワラグ(和らぐ)の名詞形で、「和らげること・調和すること」 です。
カナサキの言う  “慈し”  “素直”  “知ること” は、いずれも原義的には
「合わせ・和(やわし)・和合・調和」 であることに留意してください。

 

【概意】
フツヌシが手立てを問えば、カナサキの翁は答えて、
「我も無い。慈愛こそは人の本質の現れであり、
曲りなき心こそ人本来の力、良く物事を知れば人の神霊がそこに通り、
平穏無事を保つ尊き力となる。ただ “和” のみが手立てなり。」

 

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 かみのみこころ うるはしく みそきつかさお かなさきに
 ふつぬしそゑて みかつちも いさおしあわせ うたしむる
 あまのかこゆみ ははやそゑ はたれやふれと たまひけり
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 神の実心 麗しく 禊司を カナサキに
 フツヌシ副えて ミカツチも 勇し合わせ 打たしむる
 陽陰のカゴ弓 ハハ矢添え 「ハタレ破れ」 と 賜ひけり
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■神の実心 (かみのみこころ)
カミ(上・神)は ここでは アマテル神 を指します。
ミココロは 「じつの心」 の意で、「真心」 と同じです。


■禊司 (みそぎつかさ)
「曲りを直す司・汚穢を祓う司」 という意で、
この場合は 「6ハタレを平定する総司令官」 をいいます。

 ★禊 (みそぎ)

 ★司・▽束さ (つかさ)
 ツカス(▽束す)の名詞形で、「束ね・束ねる者・要」 を意味します。


カナサキ (▽要直)
カナは カナメ(要)、ツカサ(司) と同義です。
サキは スク(直ぐ)の変態 “サク” の名詞形で、「直し」 を意味します。
よってカナサキは 「要の直し・直しの司」 という意で、これは “禊司” の換言です。


■ミカツチ
タケミカツチの略称です。


勇し (いさおし)


■陽陰のカゴ弓 (あまのかごゆみ)
アマ(陽陰)は ここでは 「アマテル神」 また 「日と月」 を意味します。
カゴは 「籠」 ですが、これは 「囲い・包み・守り・加護」 が原義です。
ユミ(弓)は ユヒ(結い) の変態で、「合わせ・結び・生み」 を意味します。
よって 「日月の神霊の守りを結うもの」、そのモノザネとしての 「弓」 です。

 桑の木で造りました。は日月の運行そのままに成長する木だからです。〈ミ4-2〉


■ハハ矢 (ははや)
「ハハを射る」 のモノザネです。ハハは ハフ(蝕ふ)の名詞形で、
「曲り・汚穢・邪霊」 などを意味します。実際どんなものだったかは不明ですが、
神社で売ってる “破魔矢” は ハハ矢を起源とするものと思います。

 ★矢 (や)
 イル(射る)の変態 “イユ” の連用形が名詞化したものが イ(射) で、
 “イユ” の名詞形 “イヤ” が詰まって ヤ(矢) になったと考えます。


ハタレ
「反り曲って外れるさま/もの」 が原義で、詳しく見ると次の2種があります。
 (1) 曲り外れた霊。邪霊。 =ハタレのモノハタレ霊オロチ(折霊)
 (2) ↑に干渉を受けて曲り外れた人や動物。=ハタレマモノマ
1 が 2 を煽動して中央政府の転覆を企てているという状況です。


■賜ひけり (たまひけり)
タマフ(賜ふ)ケリ(=しかり) で、
ここでは 「御言宣を下されるのであった」 という意です。

 

【概意】
<カナサキの物言いに> アマテル神の御心は麗しく、
カナサキを禊司に任じ、フツヌシを副司とし、タケミカツチの勇も合せて平定させる。
“陽陰のカゴ弓” と “ハハ矢” を添えて、「ハタレを破れ」 と、御言宣を賜うのであった。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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