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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第98回 [2023.12.22]

第十八巻 オノコロと呪ふの文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 おのころとまじなふのあや (その1)
 オノコロと呪ふの文 https://gejirin.com/hotuma18.html
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 おのころとましなふのあや
 あめはれて のとかにみゆき あそひます
 たかまはよろの くにかたち これおのころと
 にこゑみて なかのいわほに おわします

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 オノコロと呪ふの文
 陽陰晴れて のどかに御幸 遊びます
 「タカマは万の 国形 これオノコロ」 と
 にこ笑みて 中の巌に おわします

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■オノコロ
本文中で説明します。

呪ふ (まじなふ)

■陽陰晴れてのどかに (あめはれてのどかに)
「陽と陰が穏やかに調和して平安なる時に」 という意で、これもアマテルの重要な教えが
アマテル自身によって語られるアヤの冒頭に置かれる 賛美感謝の前書き のバリエーションです。

 ★陽陰晴る (あめはる)

 ★のどか (▽和か・長閑)
 ノド(和)カ(▽如・▽然) で、やはり 「平穏・平和なさま」 を意味します。
 ノドは ノツの名詞形、ノツは ノトル(則る)の母動詞で、「合う/合わす」 が原義です。


御幸 (みゆき)

■遊ぶ (あそぶ)
「離れる・それる・外れる」 などが原義で、「日常の物事や仕事から離れる」 ことをいいます。

 アス(▽彼す)+ソフ(▽背ふ) の短縮で、アスは アソコ(彼処)の “アソ” の母動詞、
 ソフは ソル(逸る・反る)の変態です。いずれも 「離れる」 が原義です。


■タカマは万の国形 (たかまはよろのくにかたち)
タカマは 「高み・頂き・中心」が原義で、この場合は 「中央政府・都」 を意味します。
“万の国形” は 「国家を構成する多くの国々のありさま」 という意です。
ですから 「都は国家全体のありさまの写し・縮図」 というような意となります。


■オノコロ
オヌ+コル(▽転る) の連結 “オノコル” の名詞形で、オヌは オフ(合ふ和ふ)の変態、
コルは コロガス(転がす)の母動詞です。「やわしてめぐらす・ほどよく調えて恵む」 ことをいい、
和して恵る” や “和照らす” などの同義語です。記紀には 淤能碁呂/磤馭慮 と記されます。

オノコロは 「中心にあるものが周囲を和し恵むこと」 を原義としますが、
 (1) 周囲を和し恵む 「中心」。
 (2) 中心が和し恵む 「範囲全体」。
この2つの意味があります。両者の関係は 「太陽と太陽系」 の関係と同じと言えます。

 この場合は “タカマ” が、周囲を和し恵む 「中心・(太陽)」 に相当し、
 “万の国” が、中心/太陽が和し恵む 「範囲全体・(太陽系)」 に相当します。


■中の巌におわします (なかのいわほにおわします)
「中央の岩に座っておられます」 という意ですが、日の神アマテルは
「周囲を和し恵む中心・太陽」 そのものですから、その座所は常に 「中央」 となります。

 ★イワホ (巌)

この場所は イサワの宮にほど近い フタ岩浦 だろうと思います。アマテルは時折
この海岸に海水浴(=ミソギ)に来ていたようです。

 和照らす 神の御幸の フタミ潟 潮を浴びて ミソギなす 〈ホ15ー1〉

 

【概意】
オノコロと呪ふの文
陽と陰が穏やかに調和して平安な時に、御幸なされて遊びます。
「都は国家全体の縮図。これオノコロよ」 と、にこ笑みて中央の巌におわします。

 

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 そはにとみあり あめみまこ みまえにもふて
 つつしみて そのおのころの ゆえおこふ
 きみのをしゑは

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 そばに臣あり 陽陰御孫 御前に詣で
 つつしみて そのオノコロの 謂を乞ふ
 君の教えは

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■陽陰御孫 (あめみまご)・陽陰の御孫 (あめのみまご)
アメ(陽陰)はアマテルを指します。ミマゴ(御孫)は 「尊き孫」 の意です。
ですから 「アマテルの孫の内、皇位を継ぐ孫」 をいうものと考えます。
それに該当する孫は2人いるのですが、ホツマの中でアメミマゴと呼ばれるのは
なぜか 「ニニキネ」 だけです。

 アマテル(斎名ワカヒト)
     ├─────オシホミミ(斎名オシヒト)
 セオリツ姫(斎名ホノコ)  ├────クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
              ├────ニニキネ(斎名キヨヒト)
 タカキネ──────タクハタチチ姫(斎名スズカ)


詣づ (もふづ)
「上がる・のぼる」 が原義で、「上位者や神のところへ参上する」 ことをいいます。


つつしむ

謂 (ゆえ)

 

【概意】
そばには臣が侍っていた。陽陰の御孫(=ニニキネ)である。
神の御前に詣でて、つつしみてそのオノコロのいわれを乞う。
君の教えは、

 

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 ふたかみの うきはしにたち このしたに くになからんと
 とほこもて さくるみほこの したたりか こりなるしまお
 おのころと

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 二尊の うきはしに立ち 「この下に 国なからん」 と
 経・矛以て さくる み祝の 滴りが 凝り成る州を
 “オノコロ” と

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二尊 (ふたかみ)

うきはし

■この下に (このしたに)
「根の国とヒタカミ国の協力のもとに」 という意です。


■国なからん (くになからん)
“国なからんや” の略で、「(どうして) 国家の無かろうや、あるべしぞ」 という意です。
“国” は この場合、「国々の結び・統一国家・中央集権国家」 をいいます。


■経・矛 (とほこ)
ここでは “経矛の道” をいい、「法と懲罰の制度」 を意味します。


さくる (決る・刳る)

■み祝の滴り (みほこのしたたり)
ほこのしづく” の換言で、「みのった果実・成果」 を意味します。

 ★みほこ (▽み祝)
 ミル(見る)+ホク(祝ぐ・寿ぐ) の短縮 “ミホク” の名詞形で、
 「結んで成るさま・みのり・成功・成就」 などを意味します。

 〈余談〉筆者の地方では、卵が孵ることを “みおける・みよける” と言うのですが、
     これは “ミホク” の連体形の “ミホケル” の変態ではないかと考えています。

 ★滴り (したたり)
 シヅ(垂づ)タル(垂る) の名詞形で、「垂れ下がるさま・たわわに実るさま」 をいい、
 「(落ちたり流れたりせずに) 結んで形となったもの」 を意味します。


州・▽締 (しま)
シム(締む)の名詞形で、「締め・区切り・区分・区画」 が原義です。


オノコロ
ここでは 「周囲を和して恵む中心」 をいい、「中央政府・都」 を意味します。
これは 主が不在となった旧朝廷国の中国(なかくに)に、二尊が新たに建てた
オキツの宮/オキツボ」 を指します。

 

【概意】
二尊が根の国とヒタカミ国の協力に立脚し、
「この協力のもとに どうして統一国家の無かろうや」 と、
経矛の道を以て救い上げ、その成果が実った地域を “オノコロ” と呼んだ。

 

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 くたりてともに とつきして みはしらまわり
 あわうたお よみておのころ よろものお うみしはむかし

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 下りて共に とつぎして 実柱回り
 アワ歌を 詠みてオノコロ 万物を 生みしは 昔

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■下る (くだる)
「オノコロ(=オキツの宮)に下向する」 という意です。
君主の座所は常に中心/最高点となるため、どこに向かうにしても “下る” です。


とつぎ
この場合は 男女の肉体的な和合を言うのではなく、
「神霊レベルで 陽と陰を和すこと」 を意味します。 ▶和す(やわす)

 和してアワを 胞衣として 〈ホ3-2〉


■実柱回る (みはしらまわる)
オキツボの皇宮 “ヤヒロの殿” の中心に立つ柱を、二尊が回ったことをいいます。

 二柱 うきはしに得る オノコロの ヤヒロの殿に 立つ柱 回り生まんと 〈ホ3-1〉
 
 ★実柱・真柱 (みはしら) ★中柱 (なかはしら)・中つ柱 (なかつはしら)
 建物の 「中央にあって最初に立てる柱」 のことで、後には “大黒柱” とも呼びます。
 皇宮の中柱は、国家の中心(都)の、そのまた中心(皇宮)の、
 さらにその中心(中柱)を意味します。つまり国家のど核心です。


■アワ歌 (あわうた)
天のアワ歌」 をいいます。


オノコロ
ここでは 「中心が和し恵む範囲」 の意で、「国家全域の国々・国土・大ヤマト」 をいいます。

 大ヤマト 万物生みて 人草の 食も籠交ひも 道 成して 〈ホ2-3〉


■万物を生みし (よろものおうみし)   ▶万物生む
“生みし” のは 今風に言えば 助動詞キの連体形ですが、
シク(如く)
という動詞を起源とし、「ごと(如)」 の意を表します。
ですから 「生む如は・生むさまは」 などの意となります。

 

【概意】
新都に下って、陽陰を和して実柱を回り、アワ歌を詠んで国土や万物を生むさまは、
昔 <アメミヲヤが行った天地創造を 地上にて再現したものであった。>

 

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 あめつちの あほうひいまた
 あめみをや あておむすひて ふくうつほ きわなくめくり 
 うゐとうぬ あうぬむすひて あまつくり

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 天地の 泡泥いまだ
 アメミヲヤ ア手を結びて 吹く虚空 際なく回り
 ウヰとウヌ アウヌ 結びて 天 創り

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■天地の泡泥 (あめつちのあほうび)
「陽陰の元となる泡泥」 という意です。 ▶天地 ▶泡泥


アメミヲヤ (▽陽陰上祖)

■ア手を結ぶ (あておむすぶ)
「アの音を表すタミメを結ぶ」 という意です。 ▶タミメ
これがアメミヲヤの最初の挙動で、“初の一息” とも呼ばれ、
ミカサの『アワ歌の文』には次の記があります。

 初の巡りは ‘ア’ のオシテ 天地分つ 形なり 人の初音も ‘ア’ に開き <ミ10-3>

これより察すれば アカツ(分つ)・アク(開く) の意を表すものと考えられます。


■吹く虚空 (ふくうつほ)
虚空に巡り” と同義です。
フク(吹く)は 「めぐる/めぐらす・往き来する/させる」 が原義です。
ウツホ(虚空)は 「何もない空間」 を意味しますが、これは 「泡泥が渾然と漂う原始の宇宙」
と考えていいと思います。

 初の一息 動く時 東上りて 西下り 虚空に巡り 〈ホ14-2〉

ですから、アメミヲヤが “ア手を結ぶ” ことにより、渾然とした泡泥が 陽陰の2極性に分かれ
それにより虚空に回転運動が起ったということでしょう。


■ウヰ ■ウヌ ■アウヌ
それぞれの音を表すタミメです。
このあたりは説明のしようがないのですが、これもミカサの『アワ歌の文』の記によって、
ちょっと屁理屈を付けてみようかと思います。

 ‘ウヌ’ の音は 基 ‘ア’ が上る オシテより 三つに分れて
 清き ‘ウ’ と 軽く散り ‘ン’ と 半の ‘ヌ’ と みたも火を生む 天音となり 
 継ぎ生む地を 結ぶ種 ‘ウア‘ の ‘ワ’ を生む
  <ミ10-3>

これより推せば  ‘ウヰ’ は 「初・発」、 ‘ウヌ’ は 「上る」 の意を表すようです。
さすれば  ‘ア+ウヌ’ は 「分る+上る=陽」 という意になるのでしょうか。


天 (あま・あめ)

 

【概意】
陽と陰の元となる泡と泥がいまだ (分かざるに)
アメミヲヤが ‘ア’ の手を結ぶと 虚空に回転が起って際限なく回りだし、
次に ‘ウヰ’  ‘ウヌ’  ‘ア・ウヌ’ の手を結んで天を創造する。

 

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 うぬあましりて うはむすひ うひおくにたま
 かてむすひ むねほゑらみて ひとまろめ あかみやにすゑ
 してむすひ みなもとゑらみ つきのわと しらみやにすゑ

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 ウヌア 交じりて ウハ 結び 泥を地球
 カ手結び 棟穂選みて 日と丸め 赤宮に据え
 シ手結び 穢元選み 月の輪と 白宮に据え

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■ウヌア 交じりて ウハ (うぬあまじりてうは)
「ウヌ+アの音が交じって詰まったウハの音」 という意と考えます。

 これも『アワ歌の文』の記から考えますと、基本となる ‘ア’ のオシテの形が
 上に伸びて ‘ウヌ’ となり、‘ウヌ’ は ‘ウ’ と ‘'ウン’ と ‘ヌ’ の3種の変音を生じます。
 そうすると ウヌ=ウ=ン=ヌ ですから、ウヌ+ア=ウア となります。
 また ウア/ウワ/ウハ は短く詰めれば同音ですから、ウヌア=ウワ (上) です。
 ウア/ウワ/ウハ は、さらに短く詰めると  (陰・地) となります。

 ‘ウヌ’ の音は 基 ‘ア’ が上る オシテより 三つに分れて
 清き ‘ウ’ と 軽く散り ‘ン’ と 半の ‘ヌ’ と みたも火を生む 天音となり 
 継ぎ生む地を 結ぶ種 ‘ウア‘ の ‘ワ’ を生む
  <ミ10-3>


■泥を地球 (うびおくにたま)
ウハの手を結ぶことによって (地:物質世界) を創出し、
ウビ(泥:水+埴)を以て地球を造る」 という意ではないかと思います。

 ★泥 (うび)
 ウフの名詞形で、ウフは アユ(零ゆ)、オル(下る) などの変態です。
 「下がる」 が原義で、天地創造の過程で下った 「陰」 また 「水と埴」を意味し、
 妹(いも・いめ)、姫(ひめ)、嫁(よめ)、黄泉(よみ)、宵(よひ) などの変態です。

 ★地・埴・土 (は・わ)
 ウフの名詞形 ウハ/ウワ の発音短縮です。
 ウフは アユ(零ゆ)、オル(下る) などの変態で、「下がる」 が原義です。
 よって ウハ/ウワ、ハ/ワ は 天地創造の過程で下った 「陰」 が原義ですが、
 “水” と区別して、一番下に沈殿した 「凝固物・土・地・埴」 をいいます。


■カ手 (かて)
「‘カ’ のタミメ」 です。
‘カ’ は 「上(み)・明/赤(あ)」 などの意を表し、上に昇る 「陽」 を意味します。


■棟穂 (むねほ)
ムネ(棟)は 「上・高み」 を表し、上昇して天となった 「陽」 を意味します。
ホ(穂・▽峰) は 「頂・極み・至り」 の意です。
ですから 「陽の極み・陽の源」 を意味し、ムネカミ(棟上)・ムナモト(棟元) の換言です。


■赤宮・明宮 (あかみや)
このアカ(赤)は 「明るいさま」 を意味し、宮は 「収まる場所」 をいいます。 ▶宮
ですから 「(明るく照らす) 日の座・太陽の宮(きゅう)」 という意です。

 太陽の周回軌道は 「赤き道」 と呼ばれます。


■シ手 (して)
「‘シ’ のタミメ」 です。
‘シ’ は 「垂(づ)・下(た)・痴(る)・白(ろ)」 などの意を表し、
下に降る 「陰」
を意味します。


穢元 (みなもと)

■白宮 (しらみや)
このシロ/シラ(白)は 「希薄なさま・淡いさま」 を意味します。
ですから 「(ほのかな白光で照らす) 月の座・月の宮(きゅう)」 という意です。

 月の周回軌道は 「白道」 と呼ばれます。

 

【概意】
‘ウヌ・ア’ が交じる ‘ウハ’ の手を結んで、ウビ(泥:水+埴)を以て地球を創出。
‘カ’ の手を結び、陽の極みを選んで日と丸め、赤宮に据え、
‘シ’ の手を結び、陰の極みを選んで月の輪となし、白宮に据える。


 これまでの天地創造の過程とは一味違う説明が この18アヤではなされ、
 天地創造の各過程は創造神アメミヲヤが “タミメを結ぶ” ことで引き起こされている
 ことが示されています。タミメとは つまり “言葉” です。
 したがってホツマにおいても やはり『始めに言葉ありき』なのです。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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