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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第76回 [2023.11.21]

第十五巻 食よろづ生り初めの文 (3)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 みけよろづなりそめのあや (その3)
 食よろづ生り初めの文 https://gejirin.com/hotuma15.html
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 むかしなかくに うけもちの かみかうけなお あにこゑは
 ひようるたねお わにくたす ひうるにはゆる うるのそは
 うるたのそなゑ よるなみに はゆるなろなは はたのたね

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 昔 中国 ウケモチの 尊が食菜を 天に乞えば
 日夜潤種を 地に下す 日潤に生ゆる 潤の種は
 潤田の具え 夜霊波に 生ゆる和菜は 畑の種

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中国 (なかくに)
広義の中国は 「ヒタカミ国・根の国・ホソホコチタル国を除く本州」 ですが、
狭義には アワ国ホツマ国を区別して、ヤマト(大和)国とヤマシロ(山背)国を
指す場合が多いです。この場合は山背国の、特に 「花山の野」 を指します。

 花山稲荷神社 (かざんいなりじんじゃ)
 京都府京都市山科区西野山欠ノ上65。
 現在の祭神:宇迦之御魂大神、神大市比売大神、大土之御祖大神

 伏見稲荷大社 (ふしみいなりたいしゃ)
 京都府京都市伏見区深草藪ノ内町68。 
 現在の祭神:宇迦之御魂大神、佐田彦大神、大宮能賣大神、田中大神、四大神
 ・社内に間の峰・荷田社あり。また稲荷山全体の地主神を荷田の神という。


■ウケモチの尊 (うけもちのかみ)
クニサツチの子で、トヨクンヌの兄弟です。
この子孫は代々山背の花山を治め、先進の農業技術を持っていたようです。
ウケモチの名は世襲され、中央政府の農業大臣のような役職に就きます。
帰天後、ウケモチの神霊は稲荷神として民の厚い信仰を受けます。


 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)    ┌クラキネ
 │          │           ├ココリ姫
 │          └アメヨロツ┬アワナキ─┴イサナキ┐
 │          (養子)↑  └サクナキ   (VII) ├ヒルコ
 │             └─────┐       ├アマテル
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ    ├ツキヨミ
 │      (初代)  │               ├ソサノヲ
 └ウケモチ┐      └タカミムスビ─トヨケ┬イサナミ┘
      :        (2〜4代)   (5代)├ヤソキネ─タカキネ┬オモヒカネ
      :                 │ (6代)   (7代) ├ヨロマロ
      :                 ├カンサヒ     ├フトタマ
      :                 └ツハモノヌシ   ├タクハタチチ姫
      :                           └ミホツ姫
      └ … … … … … … … … … … … … … …??─カダ
                              (8世孫)

 ウケモチは今日 “保食神” と記され、ウケミタマ(宇迦御魂)と同一視されていますが、
 別個の神です。ウケミタマは、火神のカグツチと土神のハニヤスが生んだ自然神で、
 別名をワカムスビといいます。


■食菜 (うけな)
「食べられる菜・食糧とする農作物」 です。 ▶菜(な)


 ★食・▽活 (うけ・うか・わか・みけ・け)
 いずれもイケ(活け)の変態で、「生かし・活かし・糧・衣食」 を意味します。 


■天 (あ)
「上」 が原義で、この場合は 「天界・神界」 を意味します。


■日夜潤種 (ひようるたね)
“夜” は “月” の換言で、「日月の潤に生える作物の種」 をいいます。 ▶日月の潤


■地 (わ)
「下」 が原義で、ここでは天(あ)に対して 「地上界・人間界」 を意味します。

 ヲシテ原文では “ア” と記されますが、 文脈から誤写と判断して “ワ” に修正しています。


日潤・日の潤 (ひうる・ひのうる)


■▽潤の種・▽潤の具 (うるのそ・うるそ)
「日潤の種・太陽のエネルギーに育つ種」 という意で、主に 「稲種」 をいうのでしょう。
ソ(▽具・▽種) は 次に出てくる ソナエ(具え)の略で、タネ(種)・ナエ(苗) の換言です。


■潤田 (うるた)
「うるおう田」 の意で、この場合は 「水田」 をいいます。
よって同じウル(潤)でも、上記のウルとは意味が異なります。
ウルチ(粳) というのは、ウルタ(潤田)のことをいうように思います。


■具え (そなゑ・そなえ)
ソナフ(具ふ)の名詞形で、「合わせ・添え・据え・植え」 などを原義とし、
この場合は 「植えるもの」 を意味します。ですから タネ(種) や ナエ(苗) の換言です。
 
 ★備ふ具ふ・供ふ (そなふ・そなゆ) ★苗 (なえ・なゑ)
 ソフ(添ふ)+ナフ/ナユ(▽和ふ) の短縮で、両語とも 「合わす・添える」 が原義です。
 ナフ/ナユ(▽和ふ) の名詞形が ナエ/ナヱ(苗) です。


夜霊波 (よるなみ)
月の潤」 の換言で、「月の陰エネルギー」 をいいます。


■和菜 (なろな)
「夜霊波を受けて生える菜」 という意です。
具体的には 「実が地中に育つ野菜・果物」 をいうように思います。
植物の根は夜霊波に成長すると考えられていたようです。

 ナロは ナル(▽和る)の名詞形で、「やわし・和らげ・緩いさま・柔和」 を意味します。
 これは 「陽・日・男」 の激しさを受けとめて和らげる 「陰・月・女」 の性質を表し、
 和(にこ・にふ)、妹心(ゐこころ)、妹道(ゐみち) などとも呼ばれます。
 夜霊波は 和霊(にこたま・にきたま)とも呼ばれます。


種 (たね)
このタネは 「合わせ・具・植えるもの」 を意味し、ソナヱ(具え)の同義語です。

 

【概意】
昔 中国のウケモチ尊が神に食菜を乞うと、
神は日の潤と月の潤の種を地に下す。
日の潤に生える稲は水田の具となり、
月の潤に生える和菜は畑の種となる。

 

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 くにとこたちの あめまつる みけはこのみか
 くにさつち うむうけもちの やよのまこ いまのかたなり

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 クニトコタチの 陽陰祭る 御供は木の実か
 クニサツチ 生むウケモチの 八代の孫 今のカダなり

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クニトコタチ

■陽陰祭る (あめまつる)
アメ(陽陰)は アメノミヲヤ(陽陰の上祖)を指します。
マツル(纏る・祭る)は 「神を世に招いて心を纏わす」 という意味です。


■御供 (みけ)
ミ(御)は カミ(上・神)の略です。
ケ(▽供)は クエ(食え)/クヘ(焼べ)の音短で、「食わせ・配り・配給」 が原義です。
ここでは 「神へのお供え・神饌」 をいいます。
これは神への尊敬・感謝を表すモノザネで、ヒモロケ(胙)とも呼ばれます。


クニサツチ
クニトコタチに継いで、地球の八方の国々の君となった8人です。
それぞれが生む5人の子から、君・臣・民の3つの身分に分れます。
日本においては クニサツチはトヨクンヌハコクニとウケモチを生みます。
そしてトヨクンヌが中国(なかくに)の中央政府の君となり、ヒタカミを
治めるハコクニと 山背を治めるウケモチが その臣となったようです。


カダ (荷田)

 ミナカヌシ─天の8尊─地の11尊─クニサツチ┬トヨクンヌ       〈中央〉
 ←……… クニトコタチ………→      ├ハコクニ        〈ヒタカミ〉
                      └ウケモチ・・・・カダ  〈山背花山〉
                             (8代ウケモチ)

 

【概意】
クニトコタチがアメミヲヤを祭る時の御供は、木の実だったろうか。
クニサツチが生むウケモチの8代の孫が、当代のカダである。

 

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 うけもちか はつきはつひに
 なるはつほ とよくんぬしに たてまつる
 かみはかしきの ゆふにきて あめなかぬしの かみまつる
 そろのほつみの みけもまた うすつきしらけ
 はつひには かゐとしるとそ うひちには つきことまつる

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 ウケモチが 八月初日に
 成る果つ穂 トヨクンヌシに 奉る
 尊は赤白黄の 結和幣 天中主の 神祭る
 ソロのホツミの 御供もまた 臼つき精げ
 初日には 粥と汁とぞ ウビチニは 月毎祭る

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■八月初日 (はつきはつひ)
ハツキは陰暦の8月をいいます。これは ハツ(果つ)+ツキ(月) の短縮で、
ハツ(果つ)は 「行き着く・至る・結ぶ・成る・実る」 などの意を表します。
ですからハツキは 「実を結ぶ月・成果の月・実りの月」 などが原意です。
ハツヒ(初日)も “果つ日” に語呂合せして、「実りの日・成果の日」 を表します。

 このゆえに 8月1日を 「収穫祭の日・収穫を神に供える日」 に定めたものと考えられ、
 ホヅミの祭・ウケ祭・ウカ祝(ほぎ) などと呼ばれます。また8月1日は 後には
 八朔
と呼ばれるようになり、田の実の祝 が行われました。


■果つ穂 (はつほ)
ハツ(果つ)+ホ(穂) で 「行き着く穂・結ぶ穂・成る穂・実る穂」 などの意です。
後に “初穂” と当て字されて、「その年の初の収穫」 の意になっていますが、
“初” の意味は無く、単に 「結び・実り・結果・成果・収穫」 を意味します。
ホツミ(▽秀つみ・穂積)、ミヅホ(充つ穂・瑞穂) とも呼ばれます。


トヨクンヌシ

■尊 (かみ)
カミ(尊)は 「上」 が原義です。ここではトヨクンヌシを指します。


■赤白黄の結和幣 (かしきのゆふにぎて)
「赤白黄の織物の和幣」 です。 ▶和幣

 ★赤白黄の結・▽畏の結 (かしきのゆふ・かしきのゆう)
 「赤白黄の織物・色とりどりの織物」 を意味します。
 ユウ/ユフ(▽結)は ユフ(結ふ)の名詞形で、「結う物・結った物」 が原義です。
 神と人(天と地)を結うモノザネとしての結った物 (=織物) をいい、
 別名が ニキテミテグラヌサ などです。

 ★カシキ (▽赤白黄 / ▽畏 )
 カシク(炊ぐ)の名詞形で、カシコ(畏) の変態、「上げ・立て・称え・尊敬」 を意味します。
 またアロ・(赤白黄)の略です。そのため語呂合わせにより、
 神を尊ぶ心のモノザネとして 赤白黄の結 (色とりどりの織物) を用います。 ▶モノザネ


■アメナカヌシ (天中主)
ミナカヌシの別名です。ミナカヌシは 「真中の主」 の意です。
アメナカヌシは 「天の真中 “アウワの座” の主」 の意と考えられます。

 ミナカヌシは地上人生を終えて天に還ると、アメミヲヤにより北極星(北辰)となり、
 後に妙見さまと習合します。北極星の位置は “アウワの座” と重なります。


■ソロの果つ実 (そろのほつみ)
ソロは ここでは 「稲」 をいいます。ですから 「稲の成果・稲の実」 です。

 ★ホツミ (秀つみ・穂積)
 「あがり・結果・成果・果実・収穫」 などを意味し、ハツホ(果つ穂) の換言です。
 ホツ(▽秀つ)+ツム(詰む・▽潰む) の短縮 “ホツム” の名詞形で、
 両語とも 「上る・熟す・行き着く・終る・結ぶ」 などが原義です。


■精ぐ・白ぐ (しらぐ)
ここでは 「行き来させる・擦る・研ぐ・磨く・熟す(こなす)」 などの意です。
「精米」 ですね。 ▶白ぐ


■初日 (はつひ)
ハツヒ(初日)を ハツヒ(果つ日)に語呂合せして、ハツホ(果つ穂)の日 の意を持たせています。


■粥 (かゐ・かゆ)
カユ(▽上ゆ)の名詞形で、「上げ・高め・炊き(かしき)」 などが原義です。
ですから 今の “粥” のイメージとは違い、単に 「炊いた飯」 のことです。
はやり 「神を上げる・立てる・称える・尊ぶ」 ためのモノザネです。


■汁 (しる)
しる(▽垂る・▽退る)の名詞形で、「垂れるもの・下るもの」 が原義です。
ゆえに 「神が地に下ること」 を願うモノザネと考えます。


ウビチニ
トヨクンヌの後を継いで国家君主となった尊です。トヨクンヌの世代までは
人に男女の別がなく独り尊でしたが、ウビチニ以降、人は男女に分れます。
男のウビチニは女のスヒヂと結ばれ、初の夫婦一対の国家君主となりました。
結婚制度はこの二人に始まり、このことが雛祭の由来となります。

 ミナカヌシ─天の八尊─地の十一尊─クニサツチ─トヨクンヌ┐
 ←……… クニトコタチ  ………→            │
 ←………………  最広義のクニトコタチ …………… ……→│
       ┌―――――――――――――――――――――┘
       │
       └ウビチニ
          ├――――ツノクヰ
         スヒヂ     ├――――オモタル
               イククイ     ├ … (断絶) … イサナキ
                     カシコネ        │
                               イサナミ
 

【概意】
ウケモチが ハツキハツヒ(8月1日)に ハツホ(果つ穂)をトヨクンヌシに献上し、
トヨクンヌシの尊は赤白黄の織物を和幣として天中主の神を祭る。
稲の実の御供もまた臼でついて精げて、初日には粥と汁とぞ。
ウビチニは月毎に祭る。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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