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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第31回 [2023.8.17]

第七巻 遺し文 清汚を直つ文 (5)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 のこしふみさがおたつあや (その5)
 遺し文 清汚を直つ文 https://gejirin.com/hotuma07.html
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 やすかわの やみにおとろく おもいかね
 たひまつにはせ こにとひて たかまにはかり ゐのらんや
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 ヤスカワの 闇に驚く オモイカネ
 灯燃に馳せ 子に訪ひて 「タカマに諮り 祈らんや」
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ヤスカワ (和郷) ■オモイカネ

 アマテル君はムカツ姫とオシホミミという皇太子を生みます。この皇太子は
 ヤスカワの多賀に住みますが、若年であり、また虚弱な生れ付きのため、
 夫婦となったアチヒコ(=オモイカネ)とシタテル姫(=ヒルコ)が
 御子守(みこもり)として多賀に行き、皇太子を守り育てています。


■闇 (やみ)
日の神アマテルが結室に籠ったら、世に昼夜の区別がなくなったことをいいます。

 君 恐れまし 結室に 入りて閉ざせば 天が下 明暗も紋無し 〈ホ7-4〉


■灯燃 (たひまつ)
辞書には 「松明・炬」 とあり、タキマツ(焚松)の音便と説明しています。
筆者は タヒ=トウ(灯)、マツ=モシ(燃し)、タヒマツ=トモシ と考えています。
まあ照明という点では同じですからどちらでもいいでしょう。


■子 (こ)
イサワの宮に侍る タチカラヲ を指します。


タカマ (高天)

諮る (はかる)

祈る (ゐのる・いのる)

 

【概意】
その闇に驚いたヤスカワのオモイカネは、灯火に馬を馳せて
子のタチカラヲを訪い、「タカマで策を諮って解決を祈ろうや」 と。

 

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 つはものぬしか まさかきの かんゑはにたま
 なかつゑに まふつのかかみ しもにきて かけゐのらんと
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 ツハモノヌシが 「真榊の 上枝は熟玉
 中つ枝に マフツの鏡 下 和幣 掛け祈らん」 と
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■ツハモノヌシ
トヨケの子で、ヤソキネ・イザナミ・カンサヒの弟です。
サホコチタル国副マスヒトとなり、シラヒトコクミの非道をタカマに告発しました。
アメオシヒがサホコ国のマスヒトに就任してからはイサワの宮に侍っているようです。

 サホコより ツハモノヌシが 香宮に キギス飛ばせて … …
 カンサヒこれを 正さねば 臣これを請ふ      〈ホ7-1〉

 
 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)    ┌クラキネ
 │          │           ├ココリ姫
 │          └アメヨロツ┬アワナキ─┴イサナキ┐
 │          (養子)↑  └サクナキ   (VII) ├ヒルコ
 │             └─────┐       ├アマテル
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ    ├ツキヨミ
 │      (初代)  │               ├ソサノヲ
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ┬イサナミ┘
               (2〜4代)   (5代)├ヤソキネ─タカキネ┬オモヒカネ
                        │ (6代)   (7代) ├ヨロマロ
                        ├カンサヒ     ├フトタマ
                        └ツハモノヌシ   ├タクハタチチ姫
                                  └ミホツ姫

真榊 (まさかき)
マサカキはイサワの宮に植えられていました。


■熟玉・煮玉・丹玉 (にたま)
「優れた玉・宝石・珠」 をいいます。

 ★煮・丹・▽熟 (に)
 ニ(▽熟)は ニル(煮る)の名詞形で、
 「煮えたさま・熟すさま・優れるさま・至るさま」 を表します。


■マフツの鏡 (まふつのかがみ)
「心の真実を写す鏡」 です。詳しくは8アヤで語られます。

 
■和幣 (にきて・にぎて)
人と神を結ぶモノザネとして供える物品の総称です。
布や紙を用いる場合が多いようです。[画像]
ヌサ(幣)ミテグラ(幣)・ユフ(結・木綿) などとも呼ばれます。

 

【概意】
ツハモノヌシが 「真榊の上の枝に宝珠を、中の枝にマフツの鏡を、
下の枝には和幣を掛けて祈ろう」 と提案。


 真榊にこうした物品 (珠・鏡・和幣) を掛けることの意味は不詳ですが、
 おそらく “三種の神器” (この時点ではまだ制定されていません) の代用で、
 「御上(中央政府)の権威を示す物・御上への恭順を表す物」 と考えています。

 

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 うすめらに ひかけおたすき ちまきほこ おけらおにはひ
 ささゆはな かんくらのとの かんかかり
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 ウズメらに ヒカケを襷 茅巻矛 朮を庭火
 笹湯花 神座の外の 神篝
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■ウズメ (渦女・渦侍)
記紀では 天宇受賣命/天鈿女命 と記され、個人名とされますが、
ウズメは 「舞踏を業とする侍女」、つまり 「舞姫」 だと考えます。
ウズ(渦)は 「回転」 ですから、「舞」 と同じです。
これは女官職の一つで、不特定多数のウズメがいたものと考えます。


■ヒカケ
日陰鬘(ひかげのかずら)という植物で、キツネノタスキ、カミダスキともいいます。
ヒカケの名の意味は、おそらく 「ひっかけ」 です。というのは針状の細い葉が茎一面に
生えているため、引っかかりやすいからです。
これを “日(アマテル)をかける” モノザネとしたのでしょう。

 奈良の率川神社の三枝祭では、これを頭に飾った舞姫が “五節の舞” を
 奉納します。[画像] この時のウズメらの舞が起源ではないでしょうか。


襷 (たすき)
タスキはタスク(助く)の名詞形です。
これもアマテルを “助ける” モノザネなのでしょう。


茅巻矛 (ちまきほこ)
チマキ(茅巻)は 「幸巻き」 のモノザネ、ホコは 「祝・寿」(ほぎ) のモノザネです。
ウズメらがこれを持って舞ったのでしょう。“剣の舞” ですね。


朮 (おけら)
邪気と悪臭を取り去るのに用いる習わしがあり、現在も京都の八坂神社で
行われる大晦日〜元旦の 朮祭には、オケラを加えた篝火が焚かれます。[画像]

 オ(汚・穢)+ケル(蹴る) の名詞形で、これを焚いて 「穢の祓い」 のモノザネとした
 ものと思います。カイブシ(蚊燻し)の別名があり、蚊取り線香の代りになります。


庭火 (にはひ・にわひ)
「庭で焚く篝火」 です。


■笹湯花・笹湯撥 (ささゆばな)
湯釜の熱湯に笹の枝葉を浸し、それを振り回して参列者に湯を掛けます。
これを湯花と呼び、身に浴びると一年中無病息災だといいます。
現在は 「湯立神楽・湯神楽」 などと呼ばれます。 ▶画像
ササ(笹)は チ(茅)と同様に 「繁茂・栄え・幸」 のモノザネです。


■神座 (かんくら)
神座とは 「神の座所」 をいい、この場合は 「アマテル神の居場所」 をいいます。
この場合それは 結室(いわむろ) の中です。


■神篝 (かんかがり)
「神を称え祝うこと・祭礼」 をいい、ようするに 「お祭り騒ぎ」 です。
ウズメによる舞、朮の庭火、笹湯花は、いずれもお祭り騒ぎの一環です。
神とはアマテル神を指します。

 ★篝 (かがり)
 カグ(▽上ぐ)+カル(上る) の名詞形で、カグは コグ(焦ぐ)の変態です。
 「上げ・高め・栄し・称え」 などが原義で、火を焚いて 「輝かす」 ことを以て、
 「称え・敬い・祝」 のモノザネとします。

 

【概意】
舞姫らにヒカケの襷と茅巻矛を着けて、
庭火で朮を焚き、また笹湯花も行って、
アマテル神の座す結室のすぐ外でお祭り騒ぎをする。

 〈にぎやかにお祭り騒ぎしてアマテルの気を引こうという作戦〉

 

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 ふかくはかりて おもいかね とこよのおとり なかさきや
 わさおきうたふ
 かくのき かれてもにほゆ しほれてもよや あかつまあわ
 あかつまあわや しほれてもよや あかつまあわ
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 深く謀りて オモイカネ トコヨの踊り “長咲き” や
 俳優歌ふ
 『香の木 枯れても匂ゆ 萎れても好や 吾が妻合わ
 吾が妻合わや 萎れても好や 吾が妻合わ』
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トコヨの踊り (とこよのおどり)
「トコヨから伝わる踊り」 という意です。


俳優 (わざおき)
ワザ(業・技)+オキ(燠・熾) で、「技能の熟達した者・芸達者」 という意です。


■香の木 (かぐのき)
タチバナ(立木・橘)の換言で、トコヨの木(とこよのはな) ともいいます。 ▶香ぐ


■吾が妻合わ(あがつまあわ)
アワ(合わ)は アフ(合ふ)の名詞形で、ここでは 「同じ・同様」 という意味です。

 

【概意】
オモイカネは深慮の末、トコヨの踊り “長咲き” を演ることにした。
芸達者は歌う。
『香の木は枯れても匂う しおれても好しや 吾が妻も同じ
 吾が妻も同じや しおれても好しや 吾が妻も同じ』

 

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 もろかみは いはとのまえに かしまとり
 これそとこよの なかさきや
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 諸守は 結戸の前に かしまどり
 これぞトコヨの “長咲き” や
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結戸 (いはと・いわと)
「アマテルが籠っている結室を閉ざす戸」 をいいます。

 ★戸・門 (と)
 トヂ(綴ぢ・閉ぢ)の略で、「(内と外の) 結び・閉じ・つなぎ」 などが原義です。


■かしまどり (囂踊り・姦踊り)
「にぎやかで騒がしい踊り」 という意です。
カシマは カシマシ(囂し・姦し)の語幹。トリは オドリ(踊り・躍り)と同じです。

 ★踊り・躍り (おどり) ★踊る・躍る・跳る (おどる)
 オツ(復つ)+トル の短縮の名詞形で、トルは トフ(跳ぶ)の変態です。
 両語とも 「往き来する/させる・回る/回す」 が原義で、
 「舞ったり、跳ねたり、手足をバタバタさせること」 をいいます。

 ★とり・どり (踊り・躍り) ★とる・どる (踊る・躍る・跳る)
 オドリの母動詞 トルの名詞形で、やはり 「舞ったり、跳ねたり、手足をバタバタさせること」
 をいいます。ちなみに 鳥(とり/ちょう) や 蝶(ちょう) も原義はこれです。

 

【概意】
諸守は結戸の前でにぎやかな踊り。
これぞトコヨの “長咲き” や

 

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 きみゑみほそく うかかえは
 いはとおなくる たちからを みてとりいたし たてまつる
 つはものぬしか しめなわに なかえりましそ
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 君笑み 細く うかがえば
 結戸を投ぐる タチカラヲ 御手取り出し 奉る
 ツハモノヌシが 締縄に 「な返りましそ」
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うかがふ (窺ふ・伺ふ)
ウカガ+アフ(合ふ) の短縮で、ウカガは イカガ(如何)の変態、
アフは 「合わす」 の意です。ですから 「如何かを 見る/知る/探る」 という意です。


■締縄 (しめなわ)
シメ(締・閉・〆)+ナフ(▽和ふ・綯ふ) の名詞形で、
「締め (シャッター) を設けること」 をいい、そのモノザネとして
戸口にシメナワ(標縄・注連縄・七五三縄)を張り渡します。


■な返りましそ
「な」+「動詞の連用形」+「そ」 の形は、ゆるやかに禁止する意を表します。
ここでは 「お返りになりますな」 というような意になります。

 

【概意】
<楽しそうな気配に> 君は笑みて、結戸を細く開けて外をうかがう時、
すかさずタチカラヲは結戸を放り投げ、君の御手を取ってお出し申し上げる。
ツハモノヌシは締縄を張り渡して、「どうかお戻りになりませぬよう。」

 

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 しかるのち たかまにはかり
 そさのをの とかはちくらの みきたかれ
 かみぬきひとつ つめもぬき またととかねは ころすとき
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 しかる後 タカマに諮り
 ソサノヲの 咎は千クラの 三段枯れ
 髪抜き一つ 爪も抜き まだ届かねば 殺す時
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■咎 (とが)
ツミ(罪)と トガ(咎)は同義語で、どちらも 「曲り・反り・逸れ・外れ」 が原義ですが、
死罪に相当する360クラ以上の重い罪を トガ(咎) と呼ぶことが多いようです。

 トガは トクの名詞形で、トクは ツク(突く) の変態です。
 「突き出るさま・逸れ外れるさま」 が原義で、トゲ(棘)・ドク(毒)は変態です。


■千クラ (ちくら)
ソサノヲが犯した罪の総計です。


■三段枯れ (みきだがれ)
キダ(段)は 「割・区分」 を表し、カレ(枯れ)は 「死」 を意味します。
“三段枯れ” は 「3回分の死」 という意味です。360クラで死刑ですから、
死刑3回分だと、正確には1080クラ以上ということになります。


■髪抜き (かみぬき) ■爪も抜き (つめもぬき)
どういう計算なのかは説明がありませんが、髪と爪を抜くことで、
360クラ分の罪を償うことになるようです。これで 1080−360=720クラ と
なりますが、まだ死刑2回分の罪が残ります。

 

【概意】
しかる後にタカマで協議すれば、
ソサノヲの罪は千クラの三段枯れ。
髪を抜いて一つ、爪も抜き、まだ届かねば殺す時、

 

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 むかつひめより さをしかに うけものいのり よみかえす
 はなこのよもさ つくのゑは さかおあかせよ そさのをか
 しわさはしむの むしなれと さかなくつつか なからんやわや
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 ムカツ姫より 差使に 「活モノ祈り よみがえす
 ハナコの四百割 償のえば 清汚を明せよ ソサノヲが
 仕業は霊の 蝕なれど 逆無く つつが 無からんやわや」
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ムカツ姫 (むかつひめ)

差使 (さをしか・さおしか)
この場合は、ムカツ姫からの伝言を、アマテルが差使を遣して急ぎ知らせた
ということでしょう。


■活モノ (うけもの)
ウケは イケ(生け・活け)の変態です。モノは 「目に見えない存在・霊」 を表す代名詞です。
よって 「生かす霊・人を蘇生する霊」 という意味になりますが、これ一度きりしか
登場しないため詳細は不明です。(語義としてはウケミタマと同じです。)


■よみがえす
ヨミガエル(蘇る・甦る)の他動詞形です。


■ハナコの四百割 (はなこのよもさ)
「ハナコ殺害の400クラ分」 という意です。
サ(▽割)は サク(割く)の名詞形で、「分割・区分・相当分」 を表します。


清汚 (さが)

■明かす (あかす)
アカル(明る)の他動詞形で、「曲りなくまっすぐにする」 が原義です。
ここでは 「紛れもなくはっきり見えるようにする・明らかにする」 という意です。


■霊の蝕・血の虫 (しむのむし)
陽陰の節の乱れた時に孕んだソサノヲの、「先天的な霊の蝕み/欠陥」 をいいます。

 ★霊・精・血・乳 (しむ)

■逆 (さか)
サク(離く)の名詞形で、「離れ・反り・逸れ・曲り・外れ・背き」 などが原義です。
ツミ(罪) や トガ(咎) の同義語です。


■つつが (恙)
ツツガは ツツク(突く)の名詞形です。「つつかれること」 が原義で、
意志に反して 「ちょっかい・干渉を受けること」 をいい、サワリ(障り)と同義です。
かなり広い意味を持ちますが、ここでは 「受難・被害・受刑・処罰」 などを意味します。


■やわや
やわか” と同じです。

 

【概意】
御后ムカツ姫より差使をして、
「活モノに祈ってよみがえしたゆえ、ハナコ殺害の400クラ分は償われた。
改めて是非を明らかにせよ。ソサノヲの仕業は生れ付いた霊の蝕みなれど、
罪もなく処罰することは よもやあるまいぞ。」

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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