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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第56回 [2023.10.7]

第十一巻 三種譲り見受けの文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 このアヤは 皇太子オシホミミが即位する時の模様を語ります。
 時間軸でいうと 前のアヤの冒頭の時代とかぶっていて、
 タカキネが代の殿に就任したばかりの頃の話です。

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 みくさゆづりみうけのあや (その1)
 三種譲り見受けの文 https://gejirin.com/hotuma11.html
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 みくさゆつりみうけのあや
 ふそゐすす ももゑそひほに ひたかみの みくらのあとに
 またみやこ うつしてなつく たかのこふ

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 三種譲り 見受けの文
 二十五鈴 百枝十一穂に ヒタカミの 御座の跡に
 また都 移して名付く “タカの首”

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■三種譲り見受け (みくさゆづりみうけ)
「三種の授受」 の意で、この授受がの皇位継承の儀式となります。
“三種” とは いわゆる 三種の神器 です。

 ★見受け (みうけ)
 ミル(見る)+ウク(受く) の同義語短縮 “ミウク” の名詞形で、
 両語とも 「合わす・寄す・入れる・得る」 などが原義です。
 ですから “受け” と同義です。

後代においては 皇位の継承=皇の退位 であり、それはほとんどの場合
皇の崩御という形で起こるわけですが、この時代はそうではありません。
下り居(=退位)を宣言するまでは、前の皇も存続します。つまり新たな
皇がその地位を受けることと、前の皇がその地位を下りることは別個で、
複数の皇が併存し得るのです。ちなみにアマテルが下り居するのは
25鈴130枝58穂 ですが、アマテルの場合はまた別格で、国家の存続に
関する重大な意志決定に際しては、下り居の後も “神の声” が響きます。


■二十五鈴百枝十一穂 (ふそゐすずももゑそひほ)  ▶数詞
真榊(=鈴木)による暦法で、1鈴=6万年、1枝=60年、1穂=1年 です。
ウビチニ&スヒヂの時代に植え継ぎが500回の限界に達し、累計年数が
一旦リセットされていますので、この暦の起点はその頃と考えられます。
以来ホツマに暦年の記載されている出来事を振り返ると、次の通りです。

・21鈴125枝31穂 アマテル誕生。 ・21鈴126枝58穂 アマテル即位。
・22鈴505枝1穂 トヨケ帰天。 ・24鈴999枝60穂 六ハタレ蜂起。
・25鈴93枝37穂 カシマ直ち開始。


ヒタカミの御座 (ひたかみのみくら)
ミクラ(御座・神座)は 「尊い位置」 の意で、「神や君の座所」 を意味します。
“ヒタカミの御座” とは、アマテルがヒタカミに滞在していた頃の座所をいい、
すなわちそれは ケタツボ(方壺) を指します。

 ★御座・上座・神座 (みくら)
 ミ(御・▽上・▽神)+クラ(座・坐・位) で、ミ(御)は カミ(上・神)の短縮形、
 クラは クラブ(比ぶ)の母動詞 “クル” の名詞形で、「合わす所・居る所・位置」
 などを意味します。カンクラ(神座/上位・上座)ともいいます。

 ★ケタツボ (方壺)
 「ヒタカミ国の都」 の名です。場所は今の塩釜市付近です。
 ケタ(方)は 「地方・片田舎」、ツボ(壺)は 「集積・集中・中心・要所」 を意味します。
 二尊の時代の国家首都 “奥壺” に対して、ヒタカミの都は “方壺” と呼ばれました。
 方丈宮(かたたけみや)とも、またヒタカミの宮とも呼ばれます。


■タカの首 (たかのこふ/かふ/こう)
“タカ” は ヒタカミ の略、“コフ” は コウベ(首・頭) と同じです。
ですからタカノコフは 「ヒタカミの首都」 という意です。
ケタツボとタカノコフの関係は、今の東京と首都の関係と同じで、
つまり地方都市のケタツボに、国家首都を置いたということです。

 ヒタカミは 「東」 の意、コフ(首)は 「」 と同じですから、なんと “東京” ですね。

 

【概意】
三種譲り見受けの文
25鈴100枝11穂、<大御神が滞在した> ヒタカミの御座の跡に、
また国家の都を移し、これを “タカの首” と名付ける。

 

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 つほわかみやの とのしまも たかやいらかも ふつくなり
 うらのよきひに わたましの きみはあまてる よつきみこ

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 ツボ若宮の 門の締も 高屋甍も 悉く成り
 占の吉き日に 渡座しの 君は和照る 代嗣御子

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■ツボ若宮 (つぼわかみや:壺若宮)
“ツボ” は ケタツボ の略で、“若宮” は 「新宮」 の意と 「皇太子」 の意が重なります。
近江の多賀を都としていた頃は、“タガ若宮” と呼ばれていました。


■門の締 (とのしま)
シマは シメ(締め・閉め)の変態で、「門の締め・戸締まり・入出の取締り」 を意味します。
これは 宮の門の両脇にある ヒノシマ(日の締)とツキノシマ(月の締) をいい、
“日の締” にはクシイワマドの神が、“月の締” にはトヨイワマドの神が入って、
門から汚穢が侵入するのを防ぎます。

 今でも神社の正門にはよく見られ、門の両脇のブースに弓矢を持った神像が
 座っていますが (随神門)、門の両脇のブースが “門の締”、その中に座す神像が
 クシイワマドとトヨイワマドです。 ▶画像


■高屋甍 (たかやいらか)
タカヤ(高屋)は 「宮の正門と一体化した高楼」 をいうように思います。 ▶画像
ですから 「正門の高楼の屋根」 という意です。

 ★高屋 (たかや)
 1.四方を見渡せる 「高い建物」 をいい、ウテナ(台) ともいいます。
 2.御幸の君が仮宮とする施設をいい、高宮(たかみや)とも呼ばれます。

 ★甍 (いらか)
 イラ+カ(処)のイラは イル(煎る・鋳る)の名詞形で、「上げ・高め」 が原義です。
 ですから 「高い所・頂・棟・屋根」 をいいます。
 


■占の吉き日 (うらのよきひ)
ヱト(干支)フトマニに照らして吉凶を判断するものと思います。

 ★占・心・裏 (うら)


渡座 (わたまし)
ワツ+マス(坐す・座す) の名詞形で、ワツは ワタル(渡る)の母動詞、
ワタルは ウツル(移る) の変態です。「移りすわること・移って居をすえること」 が原義です。


■和照る (あまてる)
アム(▽和む)+テル(照る) で、アマテラス(和照らす)と同じです。
日月のように天が下を 「ほどよく調えて恵みを与える」という意味で、
ヤワシテメグル(和して恵る)ともいいます。

 天が下 和して恵る 日月こそ 晴れて明るき 民の父母なり 〈ホ7-4〉


■代嗣御子 (よつぎみこ)
「皇太子」 をいいます。 ▶代嗣 (よつぎ) ▶御子

 

【概意】
ケタツボの新宮は その門の締から高屋の甍まですっかり完成し、
占の吉き日に渡座の君は、天が下を和して照らす代嗣御子。

 

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 はははひのまえ むかつひめ いむなほのこの
 うふみやは ふちおかみみの おしほゐに あれますみこの
 ちにむせふ むつきしめして おしひとの をしほみみとそ
 きこしめし たかわかみやに ひたします

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 母は日の前 向つ姫 斎名ホノコの
 産宮は 縁丘耳の オシホヰに 生れます御子の
 乳にむせぶ ムツキ湿して オシヒトの ヲシホミミとぞ
 聞し召し タガ若宮に 養します

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■日の前向つ姫 (ひのまえむかつひめ)
「日の神アマテルの正面に向う姫」 という意で、アマテルの内宮(=正妃)であることを
表す名です。あまさかる日に向つ姫 とも呼ばれ、日に向つ姫・向つ姫 と略されます。
またの名が セオリツ姫で、斎名は ホノコ。“日の前” は “太陽の前” の換言です。

  サクラウチ─┬─カグツミ─┬カグヤマ──カゴヤマ
 [初代ヤマズミ]│  [2代]   ├カンタマ
        │      └マウラ [3代]
        ├─ホノコ
        │  ├──オシホミミ┬クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ)
        │ アマテル     │
        │  │       └ニニキネ(斎名キヨヒト)
        └─ハナコ


■縁丘耳 (ふちおかみみ)
フチオカアナ(縁丘穴) の換言です。
ミミ(耳)は “パンの耳” のそれで、「端・ふち・へり」 などの意です。


オシホヰ

生れます (あれます)
アル(生る)+マス(尊敬)で、「お生まれになる・出現なさる」 の意です。


乳 (ち) ■むせぶ (咽ぶ)

ムツキ (襁褓)


■オシヒト ■ヲシホミミ・オシホミミ     ▶アマテルの后と御子
アマテルの代嗣御子です。斎名はオシヒトで、オシホミミ/ヲシホミミと通称されます。
オシホ(=オシホヰ)+ミミ(耳)は、両語とも 「終・端」 を意味し、またミミは ミコ(御子)の換言です。
ですから 「産野ので生まれたの御子」 という意です。記紀には 天忍穂耳尊 と記されます。

 ★ミミ (御実・御子)
 ミ(御)ミ(実・子) で、ミコ(御子) の換言です。


■聞し召す (きこしめす)
キコス(聞す)メス(召す) で、この場合は 「言う」 の尊敬語です。


■タガ若宮 (たがわかみや:▽治曲若宮・多賀若宮)
オシホミミはタカノコフに来る前は、ヤスカワ(=近江)の “タガ若宮” にいましたが、
若年であり、また虚弱な生れ付きのため、叔父・叔母にあたるオモイカネ&ワカ姫の
夫婦が、御子守となって皇太子を守り育てながら その政務を代行しました。

・アメヤスカワの ヒルコ姫 皇子オシヒトを 養します 〈ホ6-5〉
・先に御子守 オモイカネ シナの辞洞 アチの神 よりて七代の 大嘗事
 タカキネ ヤスの 今宮に タガ若宮の 代の殿 〈ホ10-1〉

今も滋賀県犬上郡多賀町には “多賀若宮” という名のバス停があります。
近江のタガ(▽治曲・多賀)は 二尊の最後の宮があった場所です。

 多賀大社 (たがたいしゃ)
 滋賀県犬上郡多賀町多賀604。
 現在の祭神:伊邪那岐命、伊邪那美命


養す (ひたす)

 

【概意】
母は “日の前向つ姫”、斎名はホノコ。その産宮は縁丘の端にあり、
都のはずれに生れませる御子は、乳にむせび、おむつを濡らし、
名をオシヒトのヲシホミミとおっしゃって、タガ若宮にて養育します。

 

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 ひたるのときに おもいかね わかひめともに もりそたつ
 よろまろひとり そはにあり きみはよわくて みそきまれ
 おはさりませは かうのとの まつりとるゆえ
 よろまろお ひたかみのかみ

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 ひたるの時に オモイカネ ワカ姫 共に 守り育つ
 ヨロマロ一人 側にあり 君は弱くて ミソギ稀れ
 叔母 更りませば 代の殿 政 執るゆえ 
 ヨロマロを ヒタカミの守

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■ひたるの時 (ひたるのとき)
ヒタルは イタル(至る)の変態で、「満ちる・完了する・上がる・終る」などが原義です。
ですから 「人生の完了の時・晩年」 という意です。


オモイカネ ■ワカ姫 (わかひめ)


■ヨロマロ
タカミムスビ7代目タカキネの代嗣子で、オモイカネの兄弟です。ヨロマロは幼名でしょう。
この人がタカミムスビ8代目となったと考えられますが、ホツマのヒタカミに関する記述は、
タカキネの代で途絶えます。

                       ┌ソサノヲ
                       ├ツキヨミ
          イサナキ         ├アマテル
            ├──────────┴ヒルコ(ワカ姫)
         ┌イサナミ            │
   トヨケ───┤                ├タチカラヲ
(5代タカミムスビ) │                │
         └ヤソキネ───タカキネ──┬オモヒカネ
           (6代)     (7代)   ├ヨロマロ
                       ├フトタマ
                       ├タクハタチチ姫
                       └ミホツ姫


禊 (みそぎ)
ミソギ(禊)は 「曲り・穢れを直すこと」 が原義ですが、
ここでは 「水を浴びて穢れを濯ぐ」 という具体的な行動を言ってます。
オシホミミは 水浴びも滅多にできないほど 虚弱だったようです。


■叔母 (おば)
オシホミミの叔母である シタテル姫 を指します。


■更る (さる)
サラ(更・新)の母動詞で、「一回りして元に返る・戻る・還る・改まる・更新する」 などが原義です。
この場合は、一生を終えて 「あの世に還る・天界にもどる・帰天する」 という意味です。


代の殿 (かふ/かう/こふのとの)

 

【概意】
オモイカネとワカ姫は晩年、共に若君を守り育て、ヨロマロも一人 側に侍る。
君は弱くて禊も稀れ、叔母のシタテル姫が帰天なされば、代の殿タカキネが
<君に代って> 中央の政を執るゆえ、ヨロマロをヒタカミの守となす。

 

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 きみはこそ つほおしたひて みゆきなる
 たかのみやこお ひきうつし かうのたくはた ちちひめと
 そふのつほねも そなわれは みうちのいわひ ととのひて
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 君は去年 ツボを慕ひて 御幸なる
 タガの都を 引き移し 代のタクハタ チチ姫と
 十二の局も 備われば 御内の祝 調ひて
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去年 (こぞ)

ツボ (壺)
この場合は ケタツボ(方壺) の略です。


■御幸なる (みゆきなる)
ミユキ(御幸・行幸)は “なる” と述語されることが多いのですが、
この “なる” は 広辞苑C-1によれば、「高貴の人の行為をあらわす」 と説明されています。


■タガの都 (たがのみやこ)
タガ若宮 と同じです。


■代 (かう)
代の殿 の略です。


■タクハタチチ姫 (たくはたちちひめ)
代の殿タカキネの娘で、オシホミミの内宮(=正妃)となり、
クシタマホノアカリ(斎名テルヒコ) と ニニキネ(斎名キヨヒト) を生みます。
日本書紀に 栲幡千千姫命 と記されます。

 ヤソキネ─タカキネ─タクハタチチ姫┐
                  ├クシタマホノアカリ (斎名テルヒコ)
 サクラウチ─セオリツ姫┐     │
            │     ├ニニキネ (斎名キヨヒト)
            ├オシホミミ┘
 イサナギ┐      │
     ├─アマテル─┘
 イサナミ┘


十二の局 (そふのつぼね)

■御内の祝 (みうちのいわひ)
ミウチの ミ(御)は カミ(上・神)の略、ウチ(内)は 「内部・内輪・近間」 を意味し、
この場合は 「尊き所の内部、皇宮の内輪」 という意です。
ですから 「皇宮内での祝の儀」 という意味です。

 内輪での儀式を調えた後、お披露目の儀式に進みます。

 

【概意】
君は去年、ケタツボを慕って御幸なされ、都をタガからケタツボに引き移す。
“代の殿” のタクハタチチ姫と12の局も備わり、皇宮内での祝の儀を調えて、

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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