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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第59回 [2023.10.11]

第十二巻 アキツ姫 天形の文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 あきつひめあまがつのあや (その1)
 アキツ姫 天形の文 https://gejirin.com/hotuma12.html
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 あきつひめ あまかつのあや
 さつさつの こゑといもせの ささいはふ そのもとおりは
 あまかつお はやあきつめの つくりそめ

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 アキツ姫 アマガツの文
 颯颯の声と 妹背のささ祝ふ そのもとおりは
 アマガツを ハヤアキツ姫の 造り初め

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■アキツ姫 (あきつひめ・あきつめ)
ハヤアキツ姫の略です。  ▶アマテルの后と御子


アマガツ (天児天倪・▽天形)
アマ(天)+ガツ(▽形) で、ガツは ガタ(形)の変態です。
「天の形・神が形を取った物」 の意で、人形(ひとがた・にんぎょう)に対して “天形” です。


■颯颯の声 (さつさつのこゑ・さっさつのこゑ)
これが何を意味するかは 本文中で説かれます。

 ★颯颯 (さつさつ・さっさつ)
 「滞らないさま・軽快で爽やかなさま・勢いの良いさま」 をいい、
 “さっさとやれ” のサッサ、またサッソウ(颯爽)と同じです。サツキ(皐月)の サツもこれです。


■妹背のささ祝ふ (いもせのささいはふ)
「女男の結び付き(=結婚)を祝う」 という意味で、「結婚式を上げる」 ということでしょう。

 ★イモセ・ヰモセ (妹背)
 “イモ・ヲセ” の短縮で、「陰陽・女男」 を意味します。
 イモ(妹)が 「陰・女」、ヲセ/セ(背)は 「陽・男」 を表し、さらに “イセ” と略されます。

 ★ささ
 サス(挿す・差す)の名詞形で、「合わせ・結び・付け」 などが原義です。
 
 ★祝ふ・斎ふ (いはふ・いわふ) ★祝・斎 (いわひ・いはひ)
 イヤブ(礼ぶ) の変態で、「心を寄せる・慈しむ・大切にする」 などが原義です。
 またその結果として 「上げる・敬う・尊ぶ・もてはやす」 などの意ともなります。


もとおり (回り・廻り)
“颯颯の声” と “妹背のささ” を祝うようになった 「由縁・由来」 です。
この行事は サ月サの頃 (さつきさのころ:今に言う端午の節句) に行われました。

 “妹背のささ” を祝う行事は、ミカサでは 女男の祝 (めをのほぎ) と呼ばれています。
 おそらくオシホミミとタクハタチチ姫のご成婚にあやかって、この時期 (陰暦5月) に
 結婚式をすることが流行ったのでしょう。つまり古代日本のジューンブライドですね。

  双葉に上る “さつゆ月” かつみの露や 
  乗り競べ 五五のツツタチ 
女男の祝 ヰワタ・茅巻や 〈ミ9-2〉

 

【概意】
アキツ姫 アマガツの文
颯颯の声と男女の結婚を祝うその由来は、
ハヤアキツ姫がアマガツを造り初めたことにあり。

 

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 あまてるみこの をしほみみ あまつひつきは たかのかふ
 たくはたひめの みうちいり そのさきこしの あまかつお
 しほかまのかみ またしらて かすかのかみに ゆえおとふ

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 和照る御子の ヲシホミミ 和つ日月は タカの首
 タクハタ姫の 御内入り その先輿の アマガツを
 シホカマの守 まだ知らで カスガの尊に 謂を問ふ

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■和照る御子 (あまてるみこ)
国家を 「ほどよく調えて恵みを与える御子」 という意です。
これは 「皇位を継承する予定の御子」 を意味し、“皇太子” の換言です。

 ★和照る (あまてる) ★和照らす (あまてらす)
 「和(やわ)して照らす」 という意で、“和して恵る” と同義です。
 「(日月のように天が下を) ほどよく調えて恵む」 ことを意味し、
 これを行う責務を担うのが 中央政府の君、つまり国君(皇)です。


ヲシホミミ

■和つ日月 (あまつひつき)
アマツは「和す・養う・調える」などの意で、“和照る・和照らす” とほぼ同義です。
天が下を 「やわして調える日月」 を意味し、和つ君、和して恵る日月、和照らす君
などとも呼ばれます。

 ★日月/月日 (ひつき/つきひ)
 これは キミ(木実) の換言で、「中央政府の君・国君・主君」 を意味します。
 人間が男女別姓に分れて以降、ウビチニ&スヒヂ から イサナキ&イサナミ までは、
 文字通り 「君=木実=夫婦」 でしたが、日と月の神霊の顕現であるアマテル以降は、
 男尊単独で 「君=木実」 となります。それでも 形式/儀礼上は 「君=木実=夫婦」 の
 伝統は存続し、例えば、后が不在の状態では即位できないなどの縛りがあります。

  ミナカヌシ─天の八尊─地の十一尊─クニサツチ(2代)─トヨクンヌ(3代)┐
  ←…… クニトコタチ(初代) ……→                 │
                                   │
        ┌――――――――――――――――――――――――――┘
        │
        └ウビチニ
        (4代)├――――ツノクヰ
          スヒヂ  (5代)├――――オモタル
                イククイ  (6代)├ … (断絶) … イサナキ
                      カシコネ     (7代)├―――アマテル―オシホミミ
                                イサナミ


タカの首 (たかのかふ/こふ/こう)


■タクハタ姫 (たくはたひめ)
タクハタチチ姫の略です。


■御内入り (みうちいり)
“御内” の ミ(御)は カミ(上・神)の略、ウチ(内)は 「内部・内輪・近間」 を意味します。
この場合は 「御上の内輪入り・皇宮入り・皇室への嫁入り」 という意です。


■先輿 (さきこし)
嫁入り行列の 「先頭を行く輿・先頭車両」 をいいます。
これにアマガツを備え付けたのでしょう。


■シホカマの守 (しほかまのかみ)
この人物については情報が少なくてよくわからないのですが、ヒタカミ国の中の
“シホカマ” という地域(県)の領主だと考えられます。そしてその場所はケタツボ
位置とかぶります。つまりケタツボはシホカマ(塩竈)の領域内にあったと考えられます。
シホカマは シホ(潮・塩)+カム(醸む) で、「塩の醸成」 の意です。よって製塩が盛んな
地域だったことがうかがえます。
13アヤの記述から考察すれば、シホカマの ヒタカミ圏における司としての序列は、
ヒタカミ結君カル君カトリ尊カシマ尊ツクバ守 に次ぐNo.6です。
なお この人はシホツチ(鹽土老翁神)と同一視されていますが、時代がけっこう違うため、
別人だろうと思います。

 鹽竃神社 (しおがまじんじゃ)
 宮城県塩釜市一森山1番1号。  
 現在の祭神:鹽土老翁神、武甕槌命、経津主命
 ・鹽土老翁神が当地で塩の作り方を教えたという。


■カスガの尊 (かすがのかみ)
アマノコヤネがアマテルから賜った尊名です。そのことは14アヤで語られます。


■故・▽由縁・▽所以・▽謂 (ゆえ)
ユフ(結ふ・言ふ)の名詞形で、「結び付き・関わり・ゆかり・由(よし)・いわれ」 などの意です。

 

【概意】
皇太子のヲシホミミは、タカの首にて和つ日月を受け継ぐ。 
タクハタ姫が御内入りする時の、その先頭の輿のアマガツを
まだ知らずにいたシホカマの守は、カスガの尊にその故を問う。

 

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 かすかこたえて これむかし あめのますひと そむくゆえ
 むはたれよもに わきみちて たみくるしむる そのときに
 あまてるかみの のりおゑて もろかみのうつ はたれなか

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 カスガ答えて これ昔 天のマスヒト 背くゆえ
 六ハタレ四方に 湧き満ちて 民苦しむる その時に
 アマテル神の 法を得て 諸守の打つ ハタレ中

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■天のマスヒト (あめのますひと)
マスヒトと同じです。“天の” は 「中央から任命されること」 を表します。
ここでは根の国のシラヒトと、サホコ国の コクミ を指します。

 ちなみに辞書はこんな説明をしています。
 辞書なんてそんなもんで、あまり当てにしちゃいけません。


六ハタレ (むはたれ)

■アマテル神の法 (あまてるかみののり)
「アマテル神の戦法」 という意味で、これはアマテルが速川の瀬に禊して得た、
まじないの種” をハタレにぶつけることをいいます。

 アマテル神は さくなだり 速川の瀬に 禊して “ハタレ敗る” の
 
まじないの 種を求めて 授けます 諸守受けて これを打つ 〈ホ8-3〉

 

【概意】
カスガ答えて、
これは昔、天のマスヒトが背いたことで、
六ハタレが四方に湧き満ち、民を苦しめるその時に、
アマテル神の戦法を得て、諸守が打つハタレの内、

 

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 かんつはるなか はからんと かんいきよめは
 ををんかみ これしろしめし みつのちこ てくるまのうち
 たもとした おきてたついき ましるゆえ
 はたれうたかひ かそえせす わさもみたれは

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 上つハルナが 謀らんと 神息 読めば
 大御神 これ知ろし召し 三つの稚児 出車の内
 袂下 置きて立つ息 交じる故
 ハタレ疑ひ 数えせず 技も乱れば

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■上つハルナ (かんつはるな)
「主導的なハルナ・親分格のハルナ」 という意です。

 ★上つ (かんつ・かみつ)
 カンツは カミ(上)+ツ(=たる・の) の音便で、
 「上の・上位/上席の・主導的な」 などの意を表します。

 ★ハルナ
 「ハルナハハミチを率いる首領」 の通称です。
 ハル(▽治)+ナ(=なる・の) で、語義は 「治める者・長なる者」 です。
 ですから “上つ” と意味が かぶります。


■神息読む (かんいきよむ)
カンイキ(神息)は 「アマテル神の呼吸」、ヨム(読む)は 「数える」 の意です。


■知ろし召す・領ろし召す (しろしめす)
シル(知る・領る)ス(尊敬)メス(召す) で、シルの2重尊敬語です。
シルは 「我が身に合わす・自分のものとする」 が原義です。


■三つの稚児 (みつのちご)
「3歳の稚児」 です。

 ★稚児・児 (ちご)
 「小さい(ちひさい)子」 の意で、チは チブ(禿ぶ)の名詞形 “チビ” の短縮です。
 よって 稚児=ちびっ子 です。


出車 (てぐるま)

■袂下・手元下 (たもとした)
タモトは 「手元」 ですから、「手(腕)の付け根部分の下」 をいいます。


■疑ふ (うたがふ)
原義は 「(心が) 行き来する・揺れる・迷う」 などです。

 

【概意】
親分格のハルナが 一計を案じようと、神の息を数えれば、
大御神はこれを察知なされ、3歳の稚児を出車の内に入れて袂下に置く。
すると神と稚児の立てる息が混じるため、ハタレは迷って数えられず、
ハタレの技も乱れると、

 

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 ををんかみ あめつちしろす くしひるに
 さとくはたれか いきはかり みうたつくれは
 そめふたお さつさもちゐに つけなくる さつさつつうた

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 大御神 天地知ろす 貴霊に
 聡くハタレが 息 計り 御歌創れば 
 染札を サツサ餅飯に 付け投ぐる “さつさつつ歌”

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■天地知ろす (あめつちしろす)
天地”は ここでは 「陽陰・日月」 を表します。
“知ろす” は シル(知る・領る)の尊敬語で、原義は「我がものとする・支配する」です。
よって 「陽陰を我がものとなさる」 という意で、
これは日月の神霊の顕現であるアマテルの素性を表します。


貴霊 (くしひる)

■染札 (そめふだ)
「歌を書き付ける札(短冊)」 のことです。
歌札(うたふだ)・歌見(うたみ)・歌得(うたゑ) とも呼ばれます。


■サツサ餅飯 (さつさもちゐ)
「“サツキ(皐月・五月)の頃” に食べる 笹(ササ)に包んだ餅」 という意で、
チマキ(茅巻・粽)の別名です。

 ★サ月サの頃 (さつきさのころ)

サツサつつ歌 (さつさつつうた/つづうた)

 

【概意】
大御神は、陽陰を我がものとなさる日月の神霊により、
すばやくハタレの息を計って御歌をつくり、
その歌札をサツサ餅飯に付けて投げる “サツサつつ歌”。

 

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 さすらても はたれもはなけ みつたらす
 かかんなすかも てたてつき かれのんてんも あにきかす
 ひつきとわれは あわもてらすさ

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 『さすら手も ハタレもハナケ 充つ足らず
  カカンなすかも 手立て尽き 故ノンテンも あに効かず
  日月と我は 天下照らすさ』

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■さすら手 (さすらて)
サスラは 「反る・曲る・逸れる・外れるさま」 を意味し、
テ(手)は “歌い手・担い手” などのそれです。
ですから 「曲り外れた者」 という意味になります。


ハタレ
「反り・曲り・外れ」 などの意で、「反り曲って外れたさま」 を表し、
ここでは邪霊に干渉を受けて 「曲り外れた人」 をいいます。
ですから “さすら手” の同義語です。


■ハナケ (▽返気)
ハヌ(▽返ぬ・撥ぬ)+ケ(気) で、このハヌは 「往き来する・回る・巡る・反復する」
などが原義。ケ(気)は 「空気」 です。つまりこれは 「息・呼吸」 の換言です。


■充つ足らず (みつたらず)
呼吸が 「充ち足りない・不足である」 の意です。
心が曲った人の呼吸数は、普通より少ないことが、16アヤで説かれます。

 妬むその息 一万三千 群れて鱗の 折霊成す  〈ホ16〉


■カカンなす
カカンは “かかり” の音便で、「とっかかり・始まり」 を意味します。
「カカンなす」 は 「始まりとなる・始める・着手する」 などの意です。


かもがも
もがも” の短縮で、「求めるさま・望むさま・WANTED!」 の意を表します。
もがな”  “もが”  “かながな” とも言います。


故 (かれ)

■ノンテン
ノンは ノブ(伸)の音便で、 「伸び栄え・成長発展」 を意味します。
テンは テフ(頂)の音便で、 「至り・極み・頂・天」 を意味します。


■あに効かず (あにきかず)
アニ(豈)アヱ(敢)ナニ(何)の変態で、打消の語を伴って
「少しも〜しない・〜できない」 の意を表します。 ゑ(得・能) 〜ず と同じです。
キク(効く・聞く)は 「交わる・反応する・通じる・叶う」 などが原意です。


■天下 (あわも)
アワは ここでは アメ(天)の変態で、モは シモ(下)の略です。
よって アメガシタ(天が下) と同じです。

 天が下 和して恵る 日月こそ 晴れて明るき 民の父母なり 〈ホ7-4〉

 

【概意】
『さすら手もハタレも、息が充ち足りぬゆえ
  何かに着手したくとも、その手立ては尽きており
  しかれば進展成就もあい叶わぬ 
  日月と我は天が下を照らすさ』


  歌頭の “さすらても” の並びを逆にして、“もてらすさ” と結んでいます。

 

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 さつさつと もろかうたえは きくはたれ わさもみたれて
 しはらるる かれこのうたお さつさつの こゑとたのしむ

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 颯々と 諸が歌えば 聞くハタレ 技も乱れて
 縛らるる 故 この歌を “颯々の 声” と楽しむ

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颯々と (さつさつと・さっさつと)
「軽快に・調子よく・颯爽と」 などの意です。


故 (かれ)

■颯々の声 (さつさつのこゑ・さっさつのこゑ)
アマテルの創った 「サツサつつ歌」 の別名だったわけです。

 

【概意】
颯々と諸が歌えば、聞くハタレは技も乱れて呪縛される。
しかればこの歌を “颯々の声” と名づけて楽しむ。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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