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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第49回 [2023.9.23]

第十巻 カシマ直ち 連り鯛の文 (1)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 かしまたちつりたいのあや (その1)
 カシマ直ち 連り鯛の文 https://gejirin.com/hotuma10.html
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 かしまたちつりたいのあや
 ふそゐすす こそみゑとしの さあゑなつ かくゑしほみて
 ふとまにの しちりはやもり はけしくて
 つねすみのくに みせしむる

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 カシマ直ち 連り鯛の文
 二十五鈴 九十三枝 年の サアヱ夏 香枝しぼみて
 フトマニの “シチリ” は家漏り 激しくて
 西北隅の国 見せしむる

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■カシマ (▽曲染・▽汚染)
カ(▽曲・▽汚)は 「離れ・逸れ・曲り・外れ」 を意味します。
シマ(▽染)は シム(染む)の名詞形で、「染め・染まり」 を原義とし、サマ(様)の変態です。
よって 「曲り外れるさま・逸脱」 をいい、サカシマ(逆しま・倒)サカサマ(逆さま・逆様)
ヨコシマ(邪・横しま) などの同義語です。


■直ち (たち)
タダ(直)の母動詞 “タツ” の名詞形で、「まっすぐにすること・直し・正し」 などの意です。


■連り鯛・釣り鯛 (つりたい・つりたゐ)
「釣り針にかけられてそのまま泳がされている鯛」 の意で、チノタヰ(鉤の鯛)とも呼びます。


■二十五鈴九十三枝 (ふそゐすずこそみゑ)  ▶数詞
真榊(=鈴木)による暦法で、1鈴=6万年、1枝=60年、1穂=1年 です。
アマテルの即位が、21鈴126枝58穂3月1日 (87歳) ですから、
以来 23万8019年が経過しています。


■サアヱ
我が国本来の干支の表し方で、今の表し方では 庚子 (かのえ・ね) に当たります。
60年で一周する37番目ですから、これは真榊の暦で “37穂” と言うのと同じです。


■香枝 (かぐゑ)
カグ(香ぐ)は タチバナの別名です。タチバナは 「立つ木・起つ木」の意味であり、
“国を立つ” のモノザネとして、クニトコタチが植えた木です。
ですから逆に、この木の枝がしぼむということは、「国の衰退」を暗示するのでしょう。


フトマニ (太兆)
フトマニは占いの手段として使われます。特定の事柄を象徴する音を、
ア・イ・フ・ヘ・モ・ヲ・ス・シ の8種と ヤマ・ハラ・キニ・チリ・ヌウ・ムク・エテ・
セネ・コケ・オレ・ヨロ・ソノ・ユン・ツル・ヰサ・ナワ の16種を組合せた
3音から選び (この場合は “シ・チリ”)、その3音から意味を導き出して、
事柄の本質を読み解きます。


■シ・チリ
フトマニで占うために選び出した3音です。ここでは “しぼむ” の シ と、
“散る” の チリ によって "シチリ" を選出したようです。


■家漏り (やもり)
ヤ(家)はここでは 「国のファミリー」、つまり 「国家・連邦」を意味します。
モリ(漏り)は 「離れ・散り・分れ・外れ」などが原義です。
よって 「国家の離散・分裂」という意となります。


■西北隅の国 (つねすみのくに)
イヅモ(出雲) を指します。

 

【概意】
カシマ直ち 連り鯛の文
25鈴93枝、年はサアヱ(=37穂)の夏。
香の枝がしぼむためフトマニに占うと、
シチリ [国家の離散が激しい] と出たため、
西北隅の国を視察させる。

 

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 よこへかえりて もふさくは
 いつもやゑかき おほなむち みつれはかくる ことはりか
 ぬかおたまかき うちみやと これここのゑに くらふなり

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 ヨコベ帰りて 申さくは
 「イヅモ八重垣 オホナムチ 満つれば欠くる 理か
 額を “玉垣 内宮” と これ九重に 比ぶなり」

―――――――――――――――――――――――――――――

■ヨコベ/ヨコヘ (横綜・横侍)
横目(よこめ)の変態で、「監視役」 をいいます。
地方の国を治める長をツウヂ(=国造)といいますが、各国のツウヂには
10人のヨコベが添えられました。ヨコべはツウヂを補佐すると同時に、
行政の不正を監視する義務を負います。

 ツウヂもヨコベも元来は、織機を構成する部品の名です。ヲサ(筬/長)や
 アレヲサ(粗筬/粗長)
もそうですが、古代の日本は政治を機織りになぞらえます。


イヅモ八重垣 (いづもやゑがき)

■オホナムチ
ソサノヲの子で、斎名はクシキネ。この時点でのオオモノヌシです。
オホナムチはオオモノヌシですから、自領のイヅモを知行しながらも、
都の中央政府に身を置いて、国家の政務を司るべき立場にあります。

  ソサノヲ┐      
      ├──オホナムチ──┐┌─1.クシヒコ
  イナタ姫┘ (オオモノヌシ) ││(コトシロヌシ)
                ├┤
  アマテル┐         │├─2.タカヒコネ
      ├──タケコ────┘└─3.タカコ
  ハヤコ─┘


■満つれば欠くる理 (みつればかくることはり)
満ちれば欠ける月のように、万物万象は常に 生 → 盛 → 熟 → 衰 の循環の
途上にあるという “陽陰和る道” の理法をいいます。

 ★陽陰和る道 (あめなるみち)
 万物万象は、陽と陰の和合によって物質界に発現し、成長 → 成熟 → 衰退 の過程を経て、
 再び陽と陰に分解して非物質界に回帰する循環をいいます。陰陽和合、また諸行無常です。
 陽陰の道/和の道(あめのみち)、妹背の道(いせのみち)、和の道(やまとのみち)
 調の道(とのち) など、多くの換言があります。

 ★理・断り・判り (ことはり・ことわり)
 コトフの連体形 “コトフル” の名詞形で、コトフは コタフ(応ふ・答ふ)の変態です。
 「行き来・回り・返し・帰還」 などが原義で、「回帰する所・結局の所・帰結・原理/原則」、
 また 「伝え・告げ・申し出」 などの意を表します。


額 (ぬか)
ヌキ(貫)の変態で、門や鳥居などの2本の柱に 「貫き渡す横板」、
また 「それに掲げる表札」 をいいます。


■玉垣内宮 (たまがきうちみや)
タマガキ(玉垣)は 「尊い垣」 という意で、これはフトマニ図の中心宮を囲む
ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メの8神をいいます。
そしてウチミヤ(内宮)とは 8神が囲んで守る中心の “アウワ” の宮をいいます。
これは根源神アメミヲヤの坐所です。オホナムチは この宇宙最高位の宮を表す名を、
自分が知行するイヅモ国の宮/都の名として付けたのです。


■九重 (ここのゑ)
ココ(九・極・究) の ヱ(回・重)で、「九つの輪・究極の輪」 を意味し、
これも トホカミヱヒタメ8神が 中心のアメミヲヤを囲む構造を表したものです。
よって “玉垣内宮” の別表現です。

 “九重” は コクラ(九座)、コホシ(九星)、コヨノホシ(九節の星・九曜の星)、
 また アメトコタチ などとも呼ばれます。
 
 ★九曜の星 (こよのほし) ★アメトコタチ (▽天疾立)
 クニトコタチと総称される、ミナカヌシ+ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ8尊は、
 地上社会の基礎を整えた後に天に還りますが、アメミヲヤはこの9尊の神霊を
 星となして夜空に輝かせます。
 これを コヨノホシ(九節の星・九曜の星)、コホシ(九星) と呼び、アメトコタチの別名です。
 他にも アマカミ(天神)、アメミコト(天尊)、アマコノカミ(天九の神)などの別名があります。

コヨは コ(九)+ヨ(節) で、ヨは 「区分・区画・囲い」 を表します。
コクラ(九座)ココノヱ(九重) などとも呼ばれ、フトマニ図の中心の9宮です。
今でも 九曜(くよう) という紋所に その名前と形が残っています。

 天に還れば ミナカヌシ およびヱ・ヒ・タ・メ ト・ホ・カ・ミも
 天に配りて 星となす アメトコタチの 神はこれ 〈ミ6-4〉


■比ぶ・較ぶ・競ぶ (くらぶ)
「合わす」 が原義で、「並べる・匹敵させる・対抗する」 などの意を表します。

 

【概意】
ヨコベが帰って申すには、
「オオモノヌシのオホナムチ、満ちれば欠ける理か。
宮の名を “玉垣内宮” と額に掲げ、これ九重に比べるなり。」

 

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 さきにみこもり おもいかね しなのいなほら あちのかみ
 よりてななよの うなめこと
 たかきねやすの いまみやに たかわかみやの かふのとの

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 先に御子守 オモイカネ シナの辞洞 アチの神
 よりて七代の 大嘗事
 タカキネ ヤスの 今宮に タガ若宮の 代の殿

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■御子守・皇子守 (みこもり)
アマテルの皇太子オシホミミはヤスカワの多賀に住みますが、若年であり、
また虚弱な生れ付きのため、夫婦となったアチヒコ(=オモイカネ)とワカ姫
御子守(みこもり)という後見役に就き、皇太子の政務を補佐・代行していました。


オモイカネ
タカミムスビ7代目タカキネの子です。回り歌が縁でワカ姫と結婚します。
ワカ姫とはアマテルの姉ヒルコの別名です。
イサワの宮の建設を指揮したのはこの人でした。

                  ┌ソサノヲ
                  ├ツキヨミ
     イサナキ         ├アマテル
       ├──────────┴ヒルコ(ワカ姫)
    ┌イサナミ            │
 トヨケ┤                ├タチカラヲ
    │                │
    └ヤソキネ───タカキネ───オモヒカネ


■シナの辞洞 (しなのいなほら)
このシナは シナノ(信濃)と同じです。
イナホラ(辞洞)は 「この世を離れる時に入る洞穴・墓穴」 をいいます。
この辞洞の場所が “伊那” という信州の地名となったようです。

 ★シナ (▽凌・▽長・信)
 シノグ(凌ぐ)の母動詞 “シヌ” の名詞形で、「上にあるさま・長けるさま・
 勝るさま・越えるさま」 が原義です。つまり 「高地・高山の国」 を表します。
 よって “信濃” より 今の “長野” の方が原義に近い表記です。


■アチの神 (あちのかみ)
オモイカネの贈り名です。オモイカネは生前アチヒコとも呼ばれました。

 阿智神社 (あちじんじゃ)
 長野県下伊那郡阿智村智里。 
 現在の祭神:天八意思兼命、天表春命


■七代 (ななよ)
ここでは 「7代タカミムスビ」 という意で、タカキネを指します。

 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)    ┌クラキネ
 │          │           ├ココリ姫
 │          └アメヨロツ┬アワナキ─┴イサナキ┐
 │          (養子)↑  └サクナキ   (VII) ├ヒルコ
 │             └─────┐       ├アマテル
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ    ├ツキヨミ
 │      (初代)  │               ├ソサノヲ
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ┬イサナミ┘
               (2〜4代)   (5代)├ヤソキネ─タカキネオモヒカネ
                        │ (6代)   (7代)
                        ├カンサヒ
                        └ツハモノヌシ


■大嘗事 (うなめごと・おおなゑごと)
ナメゴト(嘗事)は マツリゴト(纏り事) の同義語です。
“大嘗事” は 「国家君主が行うまつりごと・中央政府の政治・大政」 をいい、
万機(よろはた)などとも呼ばれます。

 この時点での国家君主はオシホミミに代っており、御子守のオモイカネは世を
 去ったため、7代タカミムスビが君の代理として大政を執るということです。


■タカキネ・タカギ
7代タカミムスビの斎名で、オモイカネの父です。幼名をフリマロといい、
若きアマテルがヒタカミに滞在している間、常にそばに侍っていました。
タカギとも呼ばれ、日本書紀に高木神(たかぎのかみ)として登場するのはこの人物です。
また神社に “たかみむすび神” の名で祀られている大方は この人物の神霊と思われます。

 トヨケ┬ヤソキネ─タカキネ─┬オモイカネ
    │          ├フトタマ
    └イサナミ      ├クシタマ
               ├ヨロマロ
               ├アヒミタマ
               ├イクタマ
               ├アヨミタマ
               ├タクハタチチ姫 (オシホミミ内宮)
               └ミホツ姫 (クシヒコ妻)

 高天彦神社 (たかまひこじんじゃ)
 奈良県御所市北窪158。
 現在の祭神:高皇産霊神


ヤス (▽和)

■今宮 (いまみや)
イマ(今)は「改め・新た・更」 などが原義で、「新宮・新都」 という意です。


■タガ若宮 (たがわかみや)
近江の多賀に住んでいた時の、「オシホミミの通り名」 です。
今も滋賀県犬上郡多賀町には “多賀若宮” という名のバス停があります。

 近江のタガ(▽治曲・多賀)二尊の最後の宮があった場所です。


■代の殿 (かふ/かう/こふのとの)
カフ/カウ/コフは カエ(代え・替え・換え)の変態で、「代理の殿」 という意です。
タカキネは帰天したオモイカネの後継として、オシホミミの政務を代行しますが、
この時オシホミミは国君になっているため、“御子守” ではなく “代の殿” という
代理職に就任したわけです。

 この間ヒタカミは、子のヨロマロがタカミムスビの職務を代行していますが、
 タカキネが近江の多賀に来て中央の政務を取ると、入れ違いにオシホミミは
 タカキネの娘を娶って、ヒタカミのケタツボに遷都しています。〈11アヤ〉

 この時期の国家の政体は、国家元首のオシホミミはヒタカミの新都にあり、
 ヒタカミ国主のタカキネは代の殿となって、近江のタガで中央政府の君を代行、
 さらにアマテルはイサワの宮にて世を照らすという、複雑怪奇な状況にあります。

 

【概意】
先に御子守のオモイカネは 信濃の辞洞に入り アチの神となる。
よってその後継として、タカミムスビ7代タカキネが中央の政を執るため、
近江の新宮に入り、タガ若宮の代の殿となる。

 

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 たかみむすひの かみはかり いつもたたすは たれよけん
 ほひのみことと みないえは ほひのみことに むけしむる

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 タカミムスビの 守諮り 「イヅモ正すは 誰 良けん」
 「ホヒの尊」と 皆 言えば ホヒの尊に 平けしむる

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守諮り (かみはかり)

正す (ただす)

■誰良けん (たれよけん)
“良けん” は ”良からん” の簡略形で、今風には 「誰が良いかの?」 です。


ホヒの尊 (ほひのみこと)   ▶アマテルの妻子


■平けしむる (むけしむる)
「平定させる」 という意です。

 ★平く (むく)
 フク(葺く)の変態で、「合わす・覆う・包む」 などを原義とし、
 「平穏になる/する・治まる/治める・平定される/する」 などの意を表します。
 ちなみにフク(葺く)の名詞形が フク(服)です。
 辞書に ムケ(平) という言葉があるため、“平く” と当て字しています。

 ★しむる・しめる
 シム(締む)の連体形で、「締める・縛る」 という意です。
 今の国文法にいう 使役の助動詞 です。

 

【概意】
タカミムスビは諸守を集めて会議を開き、
「イヅモを正すのは誰が良いだろうか?」 と問うと、
皆 「ホヒの尊」と言うので、ホヒの尊に平定せしめる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――
 しかれとほひは くにかみに へつらいこひて みとせまて
 かえことあらて おおせいい みくまのやれと ちちかまま
 かえらねはまた かみはかり

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 しかれどホヒは 地守に へつらい媚びて 三年まで
 返言あらで オオセイイ ミクマノ遣れど 父がまま
 帰らねばまた 守諮り

―――――――――――――――――――――――――――――

しかれど (然れど)

地守 (くにかみ)
「地方の国を治める者」 をいい、この場合はイヅモ国を治めるオホナムチを指します。


へつらふ (諂ふ)
ヘス(圧す)
+ツル(連る)+アフ(合ふ) の短縮で、「付いて連れ合う」 が原義です。


媚ぶ (こぶ)
コフ(乞ふ・請ふ恋ふ)と同源です。


返言 (かえこと)

■オオセイイミクマノ
ホヒの子です。日本書紀には 大背三熊之大人 と記されます。

 アマテル┐     
     ├─ホヒーオオセイイミクマノ
   モチコ┘


まま (儘・任・随)

 

【概意】
ところがホヒは イヅモの地守(=オホナムチ)にへつらい媚びて、
3年たっても復命せず。ゆえに子のオオセイイミクマノを派遣するが、
これも父と同じ。帰って来ないため再び守諮り。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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