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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第46回 [2023.9.19]

第九巻 八雲打ち 琴つくる文 (4)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 やくもうちことつくるあや (その4)
 八雲打ち 琴つくる文 https://gejirin.com/hotuma09.html
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 たかまには ゆつうちならし うすめみの かなてるおみて
 ををんかみ くわもてつくる むゆつこと たまふわかひめ
 むつにひく かたふきかなて めかはひれ

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 タカマには 弦 打ち鳴らし ウズメ 身の 奏でるを見て
 大御神 桑もて造る 六絃琴 賜ふワカ姫
 六つに弾く カダ・フキ・カナデ メガ・ハ・ヒレ

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タカマ

■弦・絃 (ゆつ)
ユスフ(結ふ) の母動詞 ユス の名詞形で、「合せ・結び・つなぎ」 を原義とし、
「弦」 を意味します。これは ツル(連る) の名詞形である ツル(弦・絃) の換言です。

 「弓のつる」 をいう ユツ には 、「琴のつる」 をいう ユツ には と当て字しています。
 ここには両方出てくるからです。


■弦打ち鳴らす (ゆつうちならす)
「弓の弦をはじいて音を鳴らす」 ということですが、なぜこんなことをするかと言えば、
“打ち平す(うちならす)” の意を掛けているのです。つまり弓弦を打ち鳴らすことを以て、
ハタレ を “ぺちゃんこに打ちのめす” ことの モノザネ としているわけです。 ▶平す

 後の世にも 弦打ち弓弦打ち鳴弦 などと呼ばれるまじないが行われますが、
 おそらく “この時” のことが起源だと考えます。


ウズメ (渦女・渦侍)

■身の奏でる (みのかなでる)
カナデル は カナヅ(奏づ) の連体形で、「回す・往き来させる」が原義です。
ですから 「身をくねらす・身を振り回す・身を躍動させる」 ことをいい、つまり 「舞」 です。

 舞や演奏のことを 奏で(かなで) といいますが、これは 曲(きょく) と同義です。


桑 (くわ)
日月の運行に似た成長をする木であるため、「日月の加護がある」 と考えられていたようです。
そのため アマノカゴ弓 なども桑の木で造ります。


■六絃琴 (むゆつこと)
「六絃の琴」 をいいます。


ワカ姫 (わかひめ)
アマテルの姉 ヒルコ の別名です。
この姫は 歌の魔術師であると同時に、琴の名手でもありました。

 紀州こそ 妻を身際に 琴の音の 床に我君を 待つぞ恋しき 〈ホ1-5〉


■弾く (ひく)
この ヒク は ヒビク(響く) の母動詞で、また “笛を吹く” の フク の変態です。
「往き来させる・回す・めぐらす・伝える・鳴らす・響かす」 などが原義です。


■カダ・フキ・カナデ・メガ・ハ・ヒレ
大御神が桑の木で造った六絃琴の、「6本それぞれの絃が奏でる音階の名」 です。
これらはアマテルが 六ハタレ を打つ諸将に授けた まじないの種 に由来します。

 ★カダ (葛)
  カナサキ に授けた 葛末 をいいます。これで シムミチ の技を封じます。
 ★フキ (蕗)
  フツヌシ に授けたまじないの種です。これを焚き燻して ヰソラミチ を咽せさせます。
 ★カナデ (奏)
  タケミカツチ に授けた フトマカリ をいいます。
  カナデ は ここでは 「環・輪」 を意味します。これを貪らせて ヰツナミチ を打ちます。
 ★メガ (茗荷)
  カダ に授けた ミョウガ です。これを焚き燻して キクミチ を攪乱します。
 ★ハ (葉)
  サツサ餅飯(=チマキ) を包む 「笹の葉」 をいいます。
  チマキを貪らせ、それに付けた サツサツツ歌 で ハルナハハミチ を封じます。
 ★ヒレ (領巾)
  これを被って、アメヱノミチ の飛び道具による攻撃を防ぎます。

 

【概意】
タカマでは弓の弦を打ち鳴らし、それに合せてウズメが身を躍らすのを見て、
大御神は桑の木で六絃の琴を造り、ワカ姫に賜えば、
葛・蕗・奏・茗荷・葉・領巾 と6つに弾く。



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 そのことのねは いさなきの かきのかたうつ いとすすき
 これおみすちの ことのねそ 
 かたちははなと くすのはお かたかきとうつ

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 その事の根は イサナギの 垣の葛打つ 糸すすき
 これを三筋の 琴の根ぞ
 形はハナと 葛の葉を “葛掻き” と打つ

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■その事の根 (そのことのね)
ソノ は この場合は “琴の” です。
コトノネ(事の根) は 「事の起り」 という一般的な意味です。
ここではさまざまな “コトノネ” が出てきます。


■垣の葛 (かきのかだ)
「宮の垣にからまる葛のつる」 をいいます。
カダ は クズ/カツ/カド(葛) の変態で、「活」 が原義です。


糸すすき (いとすすき:糸薄)
「糸のように細いススキ」 をいいます。 ▶画像


■三筋の琴の根 (みすぢのことのね)
「三絃の琴の起り/起源」 という意です。

 ★筋 (すぢ)
 スツ(捨つ・棄つ) の名詞形で、「離れ/放ち・分かれ/分け・分割・分裂」 などが原義です。


ハナ (花・葉・菜)
「放つもの・出るもの・生えるもの」 が原義です。
ここでは 「糸すすきの茎葉」 をいい、これを琴の 「ネック」 になぞらえているようです。


■葛の葉 (くずのは)
この琴の 「胴の形」 を表します。 ▶画像


■葛掻き (かだかき)
この三絃琴の名です。琴の元祖なので、琴類の総称としても用いられます。
葛の葉のような胴+細いネックですから、「琵琶」 の形に近いものでしょう。 ▶画像
カキ(掻き) は 糸すすきが葛を「ひっかくこと」をいいます。


■打つ (うつ)
ウツは 「合わす」 が原義で、ここでは2又使用のようです。
一つは “ハナと葛の葉を打つ” で、これは 「結合する」 の意です。
もう一つは “葛掻きと打つ” で、これは 「銘打つ」 の意です。

 

【概意】
その事の起りは、イサナギの垣の葛を打つ糸すすき。
これが三絃の琴の起源となる。
形は細いネックと葛葉形の胴の合せで、“葛掻き” と名づく。



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 ゐすことは ゐくらにひひく ねおわけて
 わのあはうたお をしゆれは ことのねとほる いすきうち

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 五筋琴は 五座に響く 音を分けて
 地のアワ歌を 教ゆれば 言の根通る “濯ぎ打ち”

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■五筋琴/▽濯言 (ゐすこと)
ヰスヂ(五筋) の コト(琴) の略で、「五絃の琴」 という意です。
また ヰス(▽濯す)+コト(言) で、 「言葉の直し」 の意を重ねます。

 ★ヰス・イス (▽濯す・▽結す)
 イスグ(濯ぐ) の母動詞で、「まっすぐにする・直す・合わす・調える」 などが原義です。


■五座に響く音 (ゐくらにひびくね)
クラ(座) は ここでは 「一括り・区分・区画」 を表し、
ヰクラ(五座) は 「5つの括り・5区分・5種」 などの意です。
ネ(音) は ネコヱ(根隅) の “ネ” で、「母音」 をいいます。
ですから 「5種に響く母音」 という意になります。

 ★クラ (▽括・座・鞍・蔵・臓・▽位)
 ククル(括る) の母動詞 “クル” の名詞形で、「合わせ・結び・括り・固まり」 などが原義です。


地のアワ歌 (わのあはうた)

■言の根通る (ことのねとほる)
「言葉の根が通る・言語の基本が行き渡る」 という意です。

 
■濯ぎ打ち (いすぎうち) ■五濯ぎ (ゐすすぎ)
イスギ(濯ぎ) は この場合は 「言葉の濯ぎ・言葉の直し」 をいいます。
ウチ(打ち) は 「合わせ・当て/充て」 を意味し、同時に 「打ち鳴らすもの」 を意味します。
ですから イスギウチ は 「言葉の濯ぎに用いた琴」 という意です。
ヰススギ (五濯ぎ:‘五筋の濯ぎ’ の意) とも呼ばれます。

 

【概意】
5絃の琴は、5種に響く母音を分けて “地のアワ歌” を教えれば、
<民の言葉の濯がれて> 世に言葉の根が通ったため “濯ぎ打ち” とも呼ばれる。



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 むすちのことは ゑひねふる おろちにむつの ゆつかけて
 やくもうちとそ なつくなり
 かたふきかなて めかはひれ これもてたての なにしあふ

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 六筋の琴は 酔ひ眠る 折霊に六つの 絃かけて
 “八雲打ち” とぞ 名づくなり
 葛・蕗・奏 茗荷・葉・領巾 これも手立ての 名にしあふ

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■六筋の琴 (むすぢのこと)
今回 新たにアマテルが桑の木で造った ムユツコト(六絃琴) をいいます。


■酔ひ眠る折霊 (ゑひねぶるおろち)
ヱヒネブル(酔ひ眠る) は 「曲り低まる」 が原義です。 ▶酔ふ
オロチ(折霊) は 「曲った霊・邪霊・脱落した霊」を意味します。
ですからこの “ヱヒネブル” は オロチ(折霊) の意味の説明です。
この場合は ソサノヲの絞り酒に酔って寝た 八岐頭の蛇 ではなく、六つのハタレ を指します。

 ★眠る (ねぶる・ねむる)
 ネ(‘寝る’の連用形)+ふる(降る) で、両語とも
 「下がる・低まる・沈む・静まる」 などが原義です。


■八雲打ち (やくもうち)
「汚穢隈打ち」 の意で、ウチ(打ち) には 「打ち鳴らすもの=琴」 の意をかけます。
ですから 「汚穢隈を打つ琴」 という意です。

 ★ヤクモ (八雲)
 ヲヱクマ(汚穢隈)、ヨコマ(▽汚曲)、ヤヱグモ(八重雲) などの同義語で、
 「離れ・逸れ・曲り・外れ・異常」 などが原義です。

 イヤ(否・嫌・厭)+クモ(雲・曇) の短縮で、イヤ は イワ(▽忌) の変態、
 クモは クマ(隈・曲・阿) の変態です。


名にしあふ (なにしあふ)

 

【概意】
6絃の琴は、<6つのハタレに潜む> 曲り堕ちた折霊に、
6つの絃をかけて “八雲打ち(汚穢隈打ち)” と名づけるなり。
葛・蕗・奏・茗荷・葉・領巾、これも6ハタレを敗った手立ての名に合わす。



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 やまたあかたお もちたかに たまえはあわの いふきかみ
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 八岐県を モチタカに 賜えば阿波の イブキ守
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■八岐県 (やまたあがた)
四国 (ソアサ・阿波・伊予) は24の県から成っていますが、
その内の 「8つの枝県」 をいうと考えます。 ▶県

 かつて讃岐国に存在した 山田(ヤマダ)郡 は、“八岐県” の名残りなのかもしれません。


■モチタカ
イブキヌシ/イブキトヌシ の 斎名です。 ▶斎名


阿波 (あわ・あは)

■イブキ守 (いぶきかみ)
「イブキの国守・イブキ国の領主」 という意味で、イブキヌシ/イブキトヌシ の換言です。
彼はこれまでもずっと イブキヌシ/イブキトヌシ の名で呼ばれてきましたが、
実は、この時点で得た名なのだろうと思います

 この時に四国は4つの国に分割され、24の県もそれぞれに割り当てられたと推測します。
 そしてモチタカが賜った8県は あらためて “イブキの国” (後の 讃岐国) と呼ばれるように
 なったと考えています。これ以前は イブキ は 四国 (ソアサ・阿波・伊予) の別名でした。

 

【概意】
八岐県をモチタカに賜えば、“阿波のイブキ守” (四国の讃岐守)。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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