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一から学ぶ ほつまつたえ講座 第28回 [2023.8.13]

第七巻 遺し文 清汚を直つ文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 のこしふみさがおたつあや (その2)
 遺し文 清汚を直つ文 https://gejirin.com/hotuma07.html
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 ねのくにの しらひとおめす たかまにて かなさきとわく
 ははおすて つまさるいかん こたえいふ
 おのれはさらす ははよりそ ゐゑすていつる ひめもまま
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 根の国の シラヒトを召す タカマにて カナサキ問わく
 「母を捨て 妻去る如何ん」 答え言ふ
 「己は去らず 母よりぞ 家捨て出づる 姫もまま」
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根の国 (ねのくに)

シラヒト

タカマ (高天)

カナサキ

問わく (とわく)

■母 (はは) ■妻 (つま)
母 は シラヒトがクラキネに推薦した サシミメ を指します。
妻 とは クラキネとサシミメが生んだ クラコ姫 です。
シラヒトは クラコ姫を妻にすることで、根の国のマスヒトの後継者となりました。


去る避る (さる)
ここでは他動詞で、「離す・放つ・避ける・遠ざける・拒む」 などの意です。


まま (儘・任・随)
マミル(塗る) の母動詞 “マム” の名詞形で、「合い/合わせ・似せ・対応」 などが原義です。
ここでは 「そのまんま・同じ・同様」 などの意です。

 

【概意】
根国のシラヒトを召す。
タカマにてカナサキが問うは、
「母を捨て、妻を避けたは何故か?」
答えて言う、
「自分は避けていない。母の方が家を捨てて出ていった。姫も同様。」



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 またもとおとふ こたえいふ
 よよのとみゆえ ことなせり はははたみのめ すすめてそ
 きみのつまなり をんめくみ なにわすれんと ゐゐなかす

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 またもとを問ふ 答え言ふ
 「代々の臣ゆえ 如なせり 母は民の女 進めてぞ
 君の妻なり 御恵み なに忘れん」 と 癒い流す

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もと (本・元・原・基)
この場合は 「今の立場を得た過去の経緯」 という意味でしょう。


■如なせり (ごとなせり・ことなせり)
コト/ゴト(如)ナス(為す)+ナリ(断定) の短縮で、
「如く為すなり・そのようにしたのである」 という意です。

 ★り
 “なり” の短縮形で、「断定」 の意を添えます。 ▶なり
 しかし今日の国文法では 「継続・完了」 を表す助動詞と説きます。 ▶り


■癒い流す (ゐゐながす)
「うまく調えて流す・取り繕って済ます」 というような意です。

 ヰヰ は ヰユ(癒ゆ) の連用形で、「合わす・調える・繕う・直す」などの意。
 ナガス(流す) は ノガス(逃す)ノカス(退かす) などの変態で、
 「どこかにやる・去らせる・逃がす・何もなかったようにする」 などの意です。

 

【概意】
また経緯を問えば、答えて言う。
「代々 根の国の君に仕える臣ゆえ、そのようにしたのである。
母は民の女なれば、我がお進めしたればこそ、君は妻となされた。
その御恩をどうして忘れようか」 と、うまく取り繕って流す。



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 かんみむすひの しかりてそ
 なんちかさりて まとわすや われよくしれり
 ともおこゑ ちからおかして ははかあけ
 まつりさつけて ことなすお ははにしたえは ひめかうむ
 かくさんために なかしやり たみのめうはひ
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 カンミムスビの 叱りてぞ
 「汝 飾りて 惑わすや 我よく知れり
 朋を越え 力を貸して 母が上げ
 政 授けて 殊成すを 母に慕えば 姫が倦む
 隠さんために 流し遣り 民の目奪ひ」
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カンミムスビ

■叱る (しかる)
「(曲り・逸脱を)しかるべき状態にする」 ことをいいます。
「まっすぐにする・直す・正す」 などが原義で、イサム(諌む)イマシム(戒む) などと同義です。


■朋 (とも)
ここでは 「同朋・同僚・他の臣たち」 をいいます。


政・纏り (まつり)
この場合は 「根の国の まとめ・束ね・治め」 をいいます。


■殊成す (ことなす)
「功を立てる・殊勲を上げる・出世する」 などの意です。

 ★こと  (異・別・殊)
 コス(越す) の変態 “コツ” の名詞形で 「往き来・回転・移動・変化」 などを原義とし、
 「変りあるさま・普通でないさま・並外れるさま・抜きん出るさま」 などを意味します。


■慕ふ (したふ)
シツ+アフ(合ふ) の同義語短縮で、「寄る・近づく・親しむ」 などの意を表します。

 ★シツ (▽知つ・▽仕つ・▽親つ・▽執つ)
 シツ は シッテル(知ってる)・シツケル(仕付ける)シタシム(親しむ)  などの母動詞で、
 「合う/合わす・添う(沿う)・付く・寄る・取る」 などが原義です。


倦む (うむ)
イム(忌む) の変態で、「離れる・それる・曲る・嫌になる」 などが原義です。


■奪ふ (うばふ)
イマフ(忌まふ) の変態で、「離す・そらす・ずらす・はずす」 などが原義です。
ヌスム(盗む)、スル(掏る)カスメル(掠める) などと同義ですが、いずれの場合でも、
「他人の金品を自分にそらす」 という行為は、派生する意味の1つにすぎません。

 いまう【忌まふ】〈広辞苑〉
 (イムの未然形に接尾語フのついた語) いみ嫌う。不吉としていやがる。

 

【概意】
カンミムスビが叱って言う。
「汝 言葉を飾って惑わすか。我はよく知るなり。
母が、他の臣以上に力を貸して盛り立て、
君が政を委ねて出世するを、母に寄れば姫が離れる。
それを隠すために母娘を宮津に流し遣って、民の目をそらし。」



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 ちからかす めくみわするる ふももくら さるもももくら
 ふむかゐそ つかむのむそて よもそくら これのかるるや
 こたえねは つつかにいれて

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 「力貸す 恵み忘るる 二百クラ 去るも百クラ
 踏むが五十 掴むの六十で 四百十クラ これ逃るるや」
 答えねば ツツガに入れて

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■踏む (ふむ)
ここでは 「踏み付ける・下に敷く・軽んじる・あなどる」 などの意で、
クラコ姫の面目を踏みにじった罪をいいます。ナイガシロ(蔑ろ) と同じです。

 “フム” は 広範な意味を持つ動詞ですが、現在はそれらすべてを
 たった1つの漢字 “踏む” で表記するため、解釈の難しい言葉です。


■掴む (つかむ)
「君クラキネの妻であり、母でもあるサシミメを、我が物として掴んだ罪」 をいいます。


ツツガ (恙)

 

【概意】
「母が力を貸した恵みを忘れる200クラ。母と姫を追い払うも100クラ。
姫を踏みつけるが50。母を我が物とするの60で、410クラ。」
「汝 この罪を免れるか?」 返答しないので、拘置所に入れて、


 以下は 延喜式巻八 の 六月晦大祓 (みなづきのつごもりのおほはらひ) と呼ばれる
 祝詞 (のりと) からの抜粋です。ここに “天のマスヒト”  “シラヒト”  “コクミ” 
 “母と子と犯せる罪” などの文言が現れます。

 天の益人(あめのますひと)等が 過犯けむ雑々の罪事は 天津罪と 畦放 溝埋
 樋放 頻蒔 串刺 生剥 逆剥 屎戸 ここだくの罪を 天津罪と法別て
 国津罪と生膚断死膚断 
白人(しろひと)胡久美(こくみ) 己が母犯罪 己が子犯罪
 
母と子と犯罪(ははとことおかせるつみ) 子と母と犯罪 畜犯罪 昆虫の災
 高津神の災 高津鳥の災 畜仆し蟲物為罪 ここだくの罪出でむ



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 ををんかみ もろとはかりて やそきねお ねのくにかみと
 いさなきの うふやにおちと おはなれは まつりたゑすと
 みことのり

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 大御神 諸と諮りて ヤソキネを 根の地守と
 「イサナギの 産野に叔父と 叔母なれば 政絶えず」 と
 御言宣

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大御神 (ををんかみ)

ヤソキネ

地守 (くにかみ)
シラヒト に代わる 「根の国のマスヒト」 をいいます。 ▶マスヒト


イサナキ ■タカヒト (斎名)
アマテル の父です。
イサナキ は 根の国サホコ国 を平定して治めた アワナキ の子です。


産屋 (うぶや)

■叔父と叔母 (おぢとおば)
叔父は、アマテルの母イサナミの、兄弟である ヤソキネ を指します。
叔母は、アマテルの父イサナキの、姉妹である ココリ姫 を指します。

 クニトコタチ─クニサツチ┐
   (I)     (II)  │
 ┌───────────┘
 ├トヨクンヌ─ウビチニ┬ツノクヰ─オモタル
 │ (III)    (IV) │  (V)   (VI)    ┌クラキネ
 │          │           ├ココリ姫
 │          └アメヨロツ┬アワナキ─┴イサナキ┐
 │          (養子)↑  └サクナキ   (VII) ├ヒルコ
 │             └─────┐       ├アマテル
 ├ハコクニ─東のトコタチ┬アメカガミ─アメヨロツ    ├ツキヨミ
 │      (初代)  │               ├ソサノヲ
 └ウケモチ       └タカミムスビ─トヨケ┬イサナミ┘
               (2〜4代)   (5代)├ヤソキネ─タカキネ┬オモヒカネ
                        │ (6代)   (7代) ├ヨロマロ
                        ├カンサヒ     ├フトタマ
                        └ツハモノヌシ   ├タクハタチチ姫
                                  └ミホツ姫

 

【概意】
大御神は諸と諮って、ヤソキネを根の地守となす。
「父イサナキの産屋に、叔父のヤソキネと叔母のココリ姫なれば、
根の国の政が絶えることはあるまい」 と御言宣。



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 もちてたみたす おちとおは しらやまかみそ
 いさなきは まつれとおとの くらきねは まつらす

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 以ちて民治す 叔父と叔母 “白山神” ぞ
 イサナキは 祀れど弟の クラキネは 祀らず

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■白山神 (しらやまかみ)
根の地守となった ヤソキネ&ココリ姫。この夫婦への贈り名です。 ▶贈り名
ここで初めて明かされましたが、ヤソキネとココリ姫 は夫婦だったのです。
白山 は 根の国のシンボルタワーです。 ▶白山

 白山比盗_社 (しらやまひめじんじゃ)
 石川県白山市三宮町ニ105-1。
 現在の祭神:白山比淘蜷_、伊弉諾神、伊弉冉神
 ・全国に2,000社以上ある白山神社の総本社。白山を神体山とする。
 <筆者注> 白山神は白山比淘蜷_となり、ヤソキネの存在は忘れられたようです。
      “しらやまひめ” は ココリ姫 の別名です。


祀る・纏る (まつる)
「神霊(みたま)を神社などにまとわせ、それに人々が心をまとわす」 という意です。

 

【概意】
それを以ちて根国の民を治める叔父と叔母。“白山神” ぞ。
イサナキは祀れど、弟のクラキネは祀らず。

 

本日は以上です。それではまた!

 

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