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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第62回 [2023.10.16]

第十三巻 ワカヒコ 妹背すずかの文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 わかひこいせすずかのあや (その2)
 ワカヒコ 妹背すずかの文 https://gejirin.com/hotuma13.html
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 めをとたかえと かみひとつ よをとはひなり よめはつき
 つきはもとより ひかりなし ひかけおうけて つきのかけ
 めをもこれなり

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 夫婦違えど 上一つ 夫は日なり 嫁は月
 月は元より 光無し 日影を受けて 月の影
 女男もこれなり

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■夫婦・女男・▽陰陽 (めをと)
メ(陰・女)+ヲト(陽・男) です。
ヲトは ヲツ(▽上つ)、ホツ(秀つ) などの名詞形で、ヲセ(▽男背)の変態です。


■上一つ (かみひとつ)
カミ(上)は ここでは 「上流・源流」 を表し、「源は一つ」 という意味です。
これはつまり “陰と陽とが分れた原因はアメノミヲヤにあり” ということです。


■夫・陽・男 (よをと・をうと・をと)
ウヲセ(▽背)、また ヲセ(▽背) の変態です。


嫁・陰・女 (よめ)

日影 (ひかげ) ■月の影 (つきのかげ)
それぞれ 「太陽の光」、「月の光」 です。

 カゲ(影)は ウツシ(移し・映し・写し)が原義で、「投射・投影」を意味します。

 

【概意】
夫婦(女男)違えど源は一つ。夫は日であり、嫁は月である。
月はもともと自ら光を発しない。日の光を受けての月の光。
女男もこれと同じである。

 

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 ひのみちは なかふしのそと つきはうち
 をはおもてわさ つとむへし めはうちをさめ きぬつつり

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 日の道は 中節の外 月は内
 男は表業 務むべし 女は内治め 衣綴り

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■日の道 (ひのみち)
「太陽の周回軌道」 をいい、アカキミチ(明き道・赤き道)とも呼ばれます。

 ホツマの宇宙観は天動説で、地球は動かず太陽や月が地球の周りを回っています。
 なお 月の軌道はシラミチ(白道)と呼ばれてます。現在は白道(はくどう)と呼んでます。


■中節 (なかふし)
宇宙の中心にある地球からトコシナエ(宇宙の果て)までの、
ちょうど中間の半径にある境目をいいます。ミカサの 「タカマ成るアヤ」 によれば、

 地球から宇宙の果てまでの距離 : 158,000トメチ (1トメチ=38里=約150km)
 地球から中節までの距離    :  79,000トメチ
 地球から太陽までの距離    :  80,000トメチ
 地球から月までの距離     :  40,000トメチ弱

したがって太陽の軌道は中節の外側、月の軌道は中節の内側にあります。


■表業 (おもてわざ)
「外に出て行う仕事・外界との交わり」 をいいます。“夫は日なり 嫁は月” なので、
中節の外を回る太陽と同じく、「男も外に働け」 ということです。


■女は内治む (めはうちをさむ)
“夫は日なり 嫁は月” なので、中節の内を回る月と同じく、
「女は内の面倒を見よ」 ということです。内とは、例えば 「家の内・家庭」 です。


■衣綴る (きぬつづる)
機織る” の換言です。機織りは重要な妻の家内職でしたが、
それだけでなく、「夫に一筋を通す」 ことを表す行為でした。

 

【概意】
日の道は中節の外に、月の道はその内にあり。
されば男も表業に務めるべし。
女は内を治め、衣を綴って男に一筋を通すべし。

 

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 いゑおをさむは あになれと やめるかをやに かなわぬは
 おとにつかせて あことなせ よおつくものは ゆつりうけ
 はしゑてとつき むつましく こおうみそたて またゆつる

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 家を治むは 兄なれど 病めるか親に 適わぬば
 弟に継がせて 上子となせ 代を継ぐ者は 譲り受け
 橋 得てとつぎ 睦まじく 子を生み育て また譲る

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■家 (いゑ・ゐゑ) ■家・屋・社・舎 (や)
イヱは 「結び・まとまり・連なり・つながり」 などを原義とし、
ここでは 「一家・ファミリー・家族」 などを表します。

 イヱ(家)は イユ(▽結ゆ)の名詞形で、イユは ユフ(結ふ)の変態です。
 いずれも 「合わす・結ぶ・つなぐ」 などの意を表します。
 イユの名詞形 “イヤ” の発音短縮が ヤ(家・屋・社・舎) です。


■上子 (あこ)
「上位にある子」 の意で、この場合は 嗣子(つぎこ) をいいます。


代・節 (よ)

橋 (はし)

睦まじ (むつまじ)

 

【概意】
家を治めるのは長兄であるが、病か、親の意に適わぬならば、
弟に継がせて嗣子とせよ。治めを継ぐ者は 親より譲りを受け、
仲介を得て結婚し、夫婦一体となって子を生み育て、また譲る。

 

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 めはよにすめる ところゑす うましみやひの ゑいにおれ
 たゑのことはに もとむへし をせのたらちは うみのをや
 あけくれむへに うましもて をいにつかえよ

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 女は世に住める 所得ず うまし・みやびの 英に居れ
 妙の言葉に もとむべし 夫のタラチは 生みの親
 明け暮れむべに うまし以て 老いに仕えよ

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■世 (よ)
ヨ(世)は 「下るさま」 が原義で、「天が下・下界・地」 を意味します。
ヨ(夜)も同源です。


■住める (すめる)
スム(住む)の連体形です。「終止形+える」 の形を取ります。
これは今でも “眠れる森の美女”  “悩める子羊” など、多用されています。


■うまし
これは形容詞の ウマシ(美し・甘し・旨し) が名詞化したものです。
形容詞のウマシは 「好む如し・親しむ如し」 という原義ですが、
名詞化して 「好意・親愛」 などの意となります。


みやび
ここでは 「協調・協和」 などの意です。


■英・栄 (ゑい・ゑゑ)
ヱミ(笑み)・ヲイ(老い)・ハヱ(栄え・映え)・ウヱ(上) などの変態で、
「高まるさま・栄えるさま・優れるさま・円満・至り」 などが原義です。
“英・栄” は筆者の当て字です。


■妙 (たゑ・たえ)
タマ(▽尊)の変態で、「高いさま・尊いさま・優れるさま・円熟・至り」 を表します。
ですから ヱイ(▽英・▽栄) と同義です。


■もとむ (▽回む・▽基む)
このモトム(▽回む)は モトオル(回る・廻る)と同じで、「回る」 を原義とし、
「ある所の周りをぐるぐる回る・よりどころにする・基づく・回帰する」
などの意を表します。


タラチ

■むべに (宜に)
「よく・うまく・よろしく」 などの意です。 ▶むべ・うべ (宜)

 

【概意】
女は世に住む所を得ず。親愛と協和の高みに居れ。
円満の言葉をよりどころとすべし。
夫の父母は生みの親に同じ。明け暮れうまく親愛を以って老いに仕えよ。

 

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 よをとには みさほおたてよ
 ゐものみは をせのおなかに おることく なせはみさほそ

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 夫には 操を立てよ
 妹の身は 夫の央中に 居る如く なせば操ぞ

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■操を立つ (みさほおたつ)
ミサホ(操)は 「他にそれないさま・一筋・一途」 などが原義です。 ▶操(みさほ)
タツ(立つ・▽達つ)は ここでは 「達する・つらぬく・通す」 などの意です。


妹 (ゐも・いも)

■央中 (おなか)
オ(央)+ナカ(中) で、「中・内・奥・心」 を意味を重ねています。
ですから 「中央・中心・内奥」、また 「心の中・心の奥」 を意味します。

 

【概意】
夫には操を立てよ。
妹の身は、‘夫の心のまん中に居る如くの存在’ となれば、これが操ぞ。

 

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 めはななし いゑにとつけは をせのなに たかうちむろと
 かるきみも みたれゆるせは たれうちそ

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 女は名無し 家にとつげば 夫の名に “誰が内室”と
 カル君も 乱れ許せば 「誰 内ぞ」

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■内室 (うちむろ)
「中心/内奥の区画」 を意味します。ですから オナカ(央中) と同義です。 ▶室
また 「内奥の区画に居る者」 をいいます。これが 内室内儀内君家内 であり、
また 奥方さん です。


カル君 (かるきみ)

 “カル君(=オホナムチ)の乱れ” とは、国家の政を預る身(オオモノヌシ)でありながら、
 自領イヅモ国を富国強大化して、中央政府に拮抗しようとした企てをいいます。
 ちなみにオホナムチの奥さんとは、アマテルの娘の タケコ(=オキツシマ姫) です。

 

【概意】
女は名無し。他家にとつげば、“◯◯の内室” と呼ばれる。
カル君も乱れを許せば、「奥さん誰ぞ?」
<と、夫の心のまん中に居る妻が引合いに出される>。

 

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 みやにのほれは うちつみや
 きみはめくみお くににのふ みやはおなかそ
 あかたもり さともるひこも それたけの むろもあらかも
 おなかなり たみはたはたお をさむれは やはをせのみそ

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 宮に上れば 内つ宮
 君は恵みを 国に延ぶ 宮は央中ぞ 
 県守 里守る彦も それ丈の 室も あらかも
 央中なり 民は田畑を 治むれば 屋は夫の実ぞ

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内つ宮 (うちつみや)

■県守 (あがたもり)・県主 (あがたぬし)・県司 (あがたし)
「県を治める役人」 をいいます。
アガタ(県)は クニ(国)の下に組み込まれる行政区画で、80のアレ(粗)から構成され、
クニ(国)は 80の県から構成されます。


■里守る彦 (さともるひこ)
「県の下の行政区画(=アレ)を治める役人」 をいいます。

 ★里 (さと)
 サト(里)は 「周辺・裾野」 が原義ですが、ここでは 「行政区画の裾野」 をいい、
 アガタ(県)の下部構造であるアレ(粗)をいうものと思います。後世の郷里制の基です。

 ★彦 (ひこ)


■あらか (殿・舎)
アラク(散く・粗く)の名詞形で、「分れ・分割・区分・区画」 を原義とし、
この場合は 各個人・各家族が 「住む区画・家・部屋」 をいいます、英語でいうアパート(apart)です。
辞書は “殿・舎” と当て字しています。


■夫の実 (をせのみ)
ミ(実)は ここでは サネ(実・核) の意です。
ですから 「夫の中心・夫の央中」 という意です。

 

【概意】
皇宮に上れば “内つ宮” と呼ばれる。
君は恵みを国家に延べる。皇宮はその “央中” ぞ。
県守や里を守る役人とて、それ相応の室も殿も “央中” なり。
民は田畑を治めるゆえ、その屋はやはり夫の “央中” ぞ。

<その央中 [宮・殿・屋] の、さらなる央中にあるのが 家内 [奥方・妻] なるぞ。>

 

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 ひはあめに つきはつちもる
 よめのみは よをとひとりに むかふひそ
 よろくにつとも うむうまぬ あれはめをとも くにつとそ

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 日は天に 月は地守る 
 嫁の実は 夫一人に 向ふ土ぞ
 万地苞も 生む生まぬ あれば夫婦も 地苞ぞ

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■日は天に月は地守る (ひはあめにつきはつちもる)
「日は 天(=陽) に恵み、月は 地(=陰) を守る」 という意です。

 日(太陽)と月(太陰)は それぞれ陽/陰エネルギーの本源であることをいいます。


■嫁の実 (よめのみ)
ミ(実)は サネ(実・核) の意で、ここでは「本質・本分」などの意です。


■土 (ひ)
ヒヂ(泥・土)の略形と考えます。ヒヂは ヒヅ(漬づ・▽卑つ・▽冷つ)の名詞形で、
「下る・沈む・劣る・衰える」 などが原義です。これは下降して 「地・水・埴」 となった
「陰」 を表すものです。


■万地苞 (よろくにつと)
ヨロ(万・▽色)は 「非常に多いさま・いろいろあるさま」 をいいます。
クニツト(地苞)は ここでは 「その地の産物・地場物」 の意です。 ▶苞 (つと)

 

【概意】
日は天に恵み、月は地を守る。
<“夫は日なり 嫁は月” また “日影を受けて月の影” なれば>
嫁の本質は、夫一人に向ふ土ぞ。(日の光を受けて木・実を結ぶ土ぞ。)
さまざまな農産物も <土との相性によって>、生む生まぬがあるが、
夫婦も子を生む生まぬがある。

 

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 うますはよその めおめとれ
 をせのおなかに ゐもありと はらあしことは なかるへし
 はらやめぬまに たえにさとせよ

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 生まずばよその 女を娶れ
 “夫の央中に 妹あり” と 腹悪し言葉 無かるべし
 腹 病めぬ間に 妙に察せよ

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■腹悪し言葉 (はらあしことば)
「心悪しき言葉」 で、具体的には 「妬み/羨み/恨みの言葉」 をいいます。

 ★腹 (はら)
 ウラ(裏・心)の変態で、「中・内・奥」 などを意味し、
 この場合は 「中子心(こころ)」 をいいます。


■腹病めぬ間 (はらやめぬま)
「中子/心まで病まない内に」 という意です。

 妬み/羨み/恨み の念を抱く、あるいはそうした言葉を吐いていると、
 ついには人の本質(こころ・中子)が病んでしまいます。これはホツマの
 メインテーマの一つと言って良いほどの重要事項で、これ以降 17アヤ
 あたりまで、さまざまな喩えや言葉でその理由が説かれていきます。


■妙に (たえに)
タエ(妙)は 「高いさま・尊いさま・優れるさま・円熟・至り」 を表します。
ですから “妙に” は 「賢く・うまく・巧妙に」 などの意となります。


■察す (さとす)
サトス(諭す)は 現在は他動詞の意味しか残っていませんが、ここでは自動詞で、
「悟る・察する」 と同義となります。そのため “察す” と当てています。

 

【概意】
生まないなら他所の女を娶れ。
“夫の心の中に別の女あり” などと、心悪しき言葉は無かるべし。
中子まで病まぬ内に賢く悟れよ。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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