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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第72回 [2023.11.5]

第十四巻 代嗣祈る宣詞の文 (5)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 よつぎのるのとことのあや (その5)
 代嗣祈る宣詞の文 https://gejirin.com/hotuma14.html
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 たとえめあれと よつきなく ゑんとおもはは あくりしれ
 あさひのうるお みにうけて こみやにあれは
 よるなみと ともにめくれと

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 たとえ女あれど 代嗣なく 得んと思はば あくり知れ
 朝日の潤を 身に受けて 子宮にあれば
 夜潤波と 共に恵れど

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あくり (▽明くり)

■朝日の潤 (あさひのうる)
「朝の日の潤」 で、先出の 日の潤日の神霊男背の潤波父の波  と同じです。
朝日は 若くて元気な日のエネルギーを秘めているとして特に尊ばれました。
朝気”  “若日の霊”  “青き霊” などとも呼ばれます。

 我が上は 日月の潤を 下すゆえ 代嗣生まんと 思ふ時 目の垢濯ぎ 朝日祈り
 目より月日の 潤を得て とつげば男背の 潤波が 玉島川の 妹が霊と 孕む精髄
                                  〈ホ14-3〉


■子宮 (こみや)
子宮(しきゅう)です。
玉島川の内宮(たましまがわのうちみや)、子壺(こつぼ) とも呼ばれます。


■夜潤波・夜霊波 (よるなみ)
ヨ(夜)ル(潤・霊)ナミ(波)で、「月の潤波」 を意味し、
これも先出の 月の潤月神霊妹が霊、母の和霊 と同じです。


恵る (めぐる)
日月の神霊が 「巡る・回る」 ことをいいますが、ここでは そうしながら
「めぐらす・配る・影響する・恵む」 という意味から、“恵る” と当ててます。
これは 天の日月が空を巡りながら地球に影響を与えるのと 同じ理屈です。

 

【概意】
もし女の子はいても代嗣の男子がなく、得ようと思うなら あくり(テコ入れ)を知れ。
朝日の潤を身に受けて、それが子宮にあれば、月の潤波と共に恵れども、

 

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 をはさきに めおつつむゆえ せはめられ
 ついにほすゑの はせいてて みとりしちなる をのはしめ
 これをのこうむ あくりなり

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 陽は先に 陰を包むゆえ 狭められ
 ついに穂末の はせ出でて 充りシヂ成る 男の始め
 これ男の子生む あくりなり

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■陽 (を) ■陰 (め)
ヲ(陽)は 「日の潤・日の神霊」 をいい、“朝日の潤” の換言です。
メ(陰)は 「月の潤・月の神霊」 をいい、“夜潤波” の換言です。


■はせ出づ (はせいづ)
ハス(▽派す・発す)+イヅ(出づ) の連結です。
両語とも 「離れる・放つ・分れる・発する・出る」 などが原意です。


■充る (みとる)
ミツ(充つ)+トル(取る) で、トルは タル(足る)の変態です。
「充ち足りる・充足する・充実する・成長発展する」 などの意で、
“充る” は筆者の当て字です。


■シヂ
「ちんちん」 の古語のようです。辞書には 指似(しじ) で載ってます。
シツ(▽失つ)の名詞形で、「放ち・突出」 の意と考えます。
しっぽ(尻尾)の “しっ”、また 何かを追っ払う時の “しっしっ” と同源でしょう。

 余談ですが、penis の語源は 「尾」 だそうです。
 ヲ(尾)は ホ(穂・▽放)の変態です。

 

【概意】
日の神霊が先に月の神霊を包み込むため、陰は制限される。
ついには穂先が突き出し、成長してチンチンとなって男の始め。
これが男の子を生むあくり(テコ入れ)である。

 

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 めのこはさきに つきやとり のちひおまねく めははやく
 をはつつまれて しちならす たましまかとに いゑりなす
 これめのはしめ めのこうむ

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 女の子は先に 月宿り 後 日を招く 陰は早く
 陽は包まれて シヂ成らず 玉島角に 彫り成す
 これ女の始め 女の子生む

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■月 (つき) ■陰 (め) ■日 (ひ) ■陽 (を)
ツキ(月)・メ(陰)は 「月の神霊・月の潤」 をいい、「夜潤波」 と同じです。
ヒ(日)・ヲ(陽) は 「日の神霊・日の潤」 をいい、「朝日の潤」 と同じです。


■玉島角 (たましまかど)
タマシマ(玉島)は 「こんもり盛り上がった区画」 の意で、「恥丘」 をいいます。
カド(角)は この場合は 「一画」 の意です。


■彫り (いゑり)
イユ(射ゆ)+ヱル(彫る) の同義語短縮の名詞形で、ヱリ(彫)と同義です。
「掘り・えぐり・溝」 などを意味します。

 

【概意】
女の子は、先に月の神霊が宿り、後に日の神霊を招く。
陰は早く、陽は包み込まれるため、チンチンは成らず、
玉島の一画に溝を造る。これ女の始め、女の子を生む。

 

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 をのこほしくは あくりなせ わかみおそゑて ゑさしめん
 あまてるくには わかみたま ありとしるへし

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 男の子欲しくば あくりなせ 我が霊を添えて 得さしめん
 陽陰連る国は 我が神霊 ありと知るべし

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■我が霊・我が実 (わがみ)
ミ(霊・実)は 「核心部・本質・精髄」 などを意味し、「霊・神・中子・心」 の同義語です。
ここではアマテルのそれですから、「日月の太神霊」 をいいます。


■陽陰連る国 (あまてるくに)
アマテル(陽陰連る)アメナル(陽陰和る)と同義で、「陽陰を融和/調和する」
という意です。したがって “陽陰連る国” は 「和の国・調和の国」 を意味します。
これは ヤマトの国 と同義であり、すなわち 「日本国家」 をいいます。

 カンカセノ・イセノクニ(神和の妹背の国) も同じ意味です。


■我が神霊 (わがみたま)
“我が霊(わがみ)” と同じです。少し前には 我が上(わがかみ) とも表現されています。

 

【概意】
男の子が欲しいなら あくり(テコ入れ)をなせ。
我が霊(月日の太神霊)を添えて得さしめようぞ。
陽陰和合のヤマトの国には、我が神霊ありと知るべし。

 

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 われむかし ひのわにありて てらせとも ひとみおうけす
 みちひかす ふたかみために たらちねと なりてまねけは

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 我 昔 日輪にありて 照らせども 人身を受けず
 導かず 二尊 ために 父母と なりて招けば

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日輪・陽の環 (ひのわ)

二尊 (ふたかみ)

タラチネ (父母)

 

【概意】
我は昔 日輪にあって地を照らせども、
人の身を受けたことはなく、人草を導くこともなかった。
それゆえ二尊が父母となりて招けば、

 

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 ひとのみと なりてはらめと
 なかゐして こそむつきまて くるしむる
 ややうまるれと みひたしに ひとひもやすき こころなし

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 人の身と なりて孕めど
 長居して 九十六月まで 苦しむる
 やや生るれど 見養しに 一日も安き 心なし

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■九十六月 (こそむつき)
アマテルの妊娠期間です。今の常識からは考えられない数字ですが、
ホツマは他にも、タチカラヲの36か月、アマノコヤネの100か月、
サルタヒコの16年 という妊娠期間を語ります。

・孕めども 十月に生まず 年月を  経れどもやはり 病めるかと 心傷めて
 九十六月  やや備わりて 生れませる アマテル神ぞ 〈ホ4-3〉
・大御神 九十六月座す このコヤネ 百月座せり タチカラヲ 三十六月座す
 サルタヒコ 十六年居れど これはまれ 〈ホ16〉


やや

■見養し (みひたし)
ミル(見る)+ヒタス(養す) の連結 “ミヒタス” の名詞形です。
ミルは 「面倒を見る」、ヒタスは 「引っ付いて用を足す」 の意です。

 

【概意】
人の身となりて孕み宿れど、長居して96か月まで苦しめる。
ようやく生まれはしても、その世話に1日とて安まる心なし。

 

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 わかみはきみと なるとても
 をやのめくみお かえさんと ふしてをもえは
 こおさつく みちはめくみお かえすなり

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 我が身は君と なるとても
 祖の恵みを 還さんと 付して思えば
 子を授く 道は恵みを 還すなり

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■祖/親の恵みを還す (をやのめぐみおかえす)
「上流者の恵みを循環させる」 という意で、親が我が子を慈しむように、
上流にある者が 下流にある者を、我が子の如く慈しむ道をいいます。
恵みを受けた子や臣は、またその次の孫や民を恵むようになるため、
恵みが世代や身分を超えて永久に循環するという教えです。

 これは後のアヤにおいては “親心”  “御祖の心”  “御祖の道” などと呼ばれ、
 繰り返し表現を替えつつ説かれる 非常に重要なアマテルの教えです。
 この教えが絶えることなく受け継がれて、後の、また現代の日本人の、
 他の国にはない国民性を形成したと筆者は考えています。

 ・陽陰の生む民 子の如く 長生き見んと     〈ホ15〉
 ・鑑みて 助くる民は 子の如く ヤタは公    〈ホ17〉
 ・二尊受けて 親となり 民を我が子と 育つるに 〈ホ17〉
 ・臣・民 子・孫 隔てなく 慈く恵まん 思ひなり 〈ホ17〉
 ・親心 細々篤き 調の教え           〈ホ17〉
 ・この心 万の政を 聞く時は 神も下りて 敬えば 神の御祖ぞ
  この道に 国治むれば 百司 その道慕ふ 子の如く これも御祖ぞ
  この後末 民を恵みて 我が子ぞと なづれば還る 人草の 御祖の心 〈ホ27〉


■付して思ふ (ふしてをもふ)
フシテ(付して)は ツイテ(付いて)と同じです。
ですから 「〜について思う・〜について考える」 という意となります。
ヲモフの “ヲ” の表記は、アマテルに対する尊敬を表すものと思われます。

 

【概意】
我が身ばかりが君となっても、上流 (親・君) の恵みを
下流 (子・臣民) にめぐらせねばと、それについて考えてみれば、
子を授ける道は 上流の恵みを下流に 無限に循環させる道となるのである。

 

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 そのみなもとは とよけかみ かつらきやまに みそきして
 さわるよこかお のそかんと やちたひいのる

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 その源は トヨケ尊 桂来山に 禊して
 障る汚曲を 除かんと 八千度祈る

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トヨケ尊 (とよけかみ)

桂来山 (かつらきやま)

禊 (みそぎ)

■障る汚曲 (さわるよこが)

 ★障る・触る (さわる)

 ★汚曲・横曲 (よこが・よこま)
 ヨコ(横・▽汚)+ガ(▽曲・▽汚) で、両語とも 「汚穢・曲り・逸れ・外れ」
 などを原義とし、ここでは ハハイソラ などと呼ばれる 「邪霊の類」 を指します。


祈る (いのる・ゐのる)
何かに心を「合わす・結ぶ・交える・通ずる」などが原義で、
チギル(契る)・チカフ(誓ふ) の同義語です。

 

【概意】
その源はトヨケの尊であった。
障る邪霊を除かんと桂来山で自らモノ忌みを行い、
アメノミヲヤに8千度祈る。

 

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 にまぬけて あまかみひるお わけくたし
 わかこころうる みちなるは あさひのみやに かみまつり
 あめのみをやに こたふなり

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 和ま貫けて 陽陰神 日霊を 分け下し
 我が心得る 道成るば 朝日の宮に 神 纏り
 陽陰の上祖に 応ふなり

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■和ま貫く (にまぬく)
ニム(▽和む)+ヌク(貫く) の連結で、
トヨケの祈りが天に 「和して通じる・親和して通る」 の意に解しています。


■陽陰神 (あまかみ)
アメノミヲヤ(陽陰の上祖) を指します。


■日霊 (ひる)
語義は 日の神霊(ひのみたま) と同じですが、ここではその本霊である 「日の太神霊」 をいいます。


■我が心得る道 (わがこころうるみち)
「アマテルが人としての心を得る道」 という意です。

 普通の人間の心は、日の神霊(魂)と月神霊(魄) を結ぶことで生じますが、
 アマテルの場合は、日の太神霊月の太神霊 を結ぶ ということになります。


朝日の宮・朝日宮 (あさひのみや・あさひみや)

纏る (まつる)
トヨケの神霊を朝日の宮に 「まとわす・招き入れる・鎮座させる」 などの意です。


■陽陰の上祖に応ふ (あめのみをやにこたふ)
アウワ(陽融陰) を応用する」 という意味に考えています。

 アマテルを世に出した源であるトヨケの神霊を世に留めたのは、
 後の籠神社伊勢神宮に見られるように、外宮+内宮のセットとするためです。
 これについては36アヤで説かれますが、「外から内を守り、内を恵む」 という
 トヨケとアマテルの役割分担があります。国家の守りを盤石となすためには、
 外と内/陽と陰和して協調すること必要だということでしょう。

 

【概意】
<トヨケの祈りが> 和し通じて、陽陰神が日の太神霊を分け下し、
我が人の心を得る道が成ったがゆえ、朝日の宮にトヨケの神霊を纏って、
陽陰の上祖に応えるなり。


 ここでアマテルの言葉はいったん途切れます。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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