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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第92回 [2023.12.12]

第十七巻 神鏡ヤタの名の文 (5)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 かんかがみやたのなのあや (その5)
 神鏡ヤタの名の文 https://gejirin.com/hotuma17.html
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 をやこころ とけぬみほつめ こもりたら
 そのこにもとむ あらたけの こころもかなと こひけれは
 かみのみつけに

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 親心 解けぬミホツ姫 コモリ親
 「その子に求む 荒猛の 心もがな」 と 乞ひければ
 神の御告げに

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■親心 (をやごころ)
この場合は 「子に荒猛心を求める親の心境」 をいいます。


ミホツ姫 (みほつめ・みほつひめ)

■コモリ親 (こもりたら)
「コモリ尊 (斎名ミホヒコ) の親」 という意です。  ▶コモリ尊 ▶タラ


もがな

 

【概意】
親の心が解せぬコモリの母ミホツ姫が
「その子に求める荒猛の心を知りたし」 と乞えば、
神の御告げに、

 

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 あらたけは かせはけしくて にはかふり
 まつふしこふと わたかまり ちよおふるとも ましならす
 をやのこころも としはけし あえしのはすて にはかかせ

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 荒猛は 風激しくて にわか降り
 松 節・瘤と わだかまり 千代を経るとも ましならず
 親の心も 疾し激し あえ忍ばずて にわか風

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荒猛 (あらたけ)

にはか (俄)
ニフ/ニユ(煮ふ/煮ゆ)カ(▽如・▽然) で、「煮え立つ如き・沸き立つ如き」 が原義です。


わだかまる (蟠る)

千代・千節 (ちよ)

まし (増し)
「良くなること・改善」 をいいます。


■疾し激し (としはげし)
トシ(疾し・鋭し)ハゲシ(激し・烈し・劇し) で、「急で激しい」 という意です。
これは “荒猛” を換言したものです。

 ★疾し・利し・鋭し・敏し (とし:形容詞)
 トス(▽達す)+シ(▽如・▽然) の短縮で、トスは トツ(突・凸)、タス(達す)、タツ(立つ・逹)
 などの変態です。良くも悪くも 「突き出る如し・鋭利なる如し・敏捷なる如し」 などの意です。

 ★激し・烈し・劇し (はげし)
 ハケ+シ(▽如・▽然) で、ハケは バク(化く)の名詞形、バクは ワク(沸く)の変態です。
 「沸き立つ如し・沸いて昇華する如し」 などが原義です。


■あえ忍ばず (あえしのばず)
ここでは 「抑えられない・辛抱できない・我慢できない」 などの意です。 ▶あえ

 

【概意】
荒猛とは風は激しくて雨も急激なさまをいう。
この環境では松は節や瘤を作って曲がりくねり、千年を経ても良くならない。
親の心も急激(=荒猛)であるゆえに、抑えがきかず、急激な風を子に吹きつけてしまう。

 

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 おろかにくらく にふきこは
 そのあらかせに ふきうたれ いたみしのへは なおからす
 むちおのかるる はやききお ほめよろこへは
 すきねちけ はたれとなるそ

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 愚かに暗く 鈍き子は
 その荒風に 吹き打たれ 痛み忍べば 直からず
 鞭を逃るる 早利きを 褒め喜べば
 過ぎねぢけ ハタレとなるぞ

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■愚かに暗く鈍き子 (おろかにくらくにぶきこ)
「明敏さのない愚鈍な子」 の意です。
これはさきの 鈍(にぶ)・均(なれ)・鋭(とき) の分類の “鈍(にぶ)” にあたります。


■直からず (なおからず)
「直くない・まっすぐでない」 という意ですが、13アヤではこれを “人ならず” と評しています。

 直からざれば 人ならず 世にありながら その業に
 産める財を ただ乞ひて 競ぶ狗こそ 大の潰よ 〈ホ13-6〉


■鞭を逃る (むちおのがる)
「懲罰として受ける鞭打ちを逃れる」 という意です。


■早利き (はやきき)
「明敏で機転が利くさま/者」 をいいます。
これはさきの 鈍(にぶ)・均(なれ)・鋭(とき) の分類の “鋭(とき)” にあたります。
これも 「荒猛」 の換言です。


■褒め喜ぶ (ほめよろこぶ) ■過ぎねぢく (すぎねぢく)
根国のマスヒトのクラキネは、シラヒトコクミに対して、これをやっちまったわけです。

 法を誤る マスヒトの 褒め 過ぎねぢけ よこしまが 経を捩けて 〈ホ17-4〉


ハタレ
「曲って逸れて外れた者・曲者(くせもの)」 をいいます。

 

【概意】
愚かで暗く鈍い子は その親の荒風に吹き打たれても、
痛みをこらえて表に出さぬ (感情を押し殺す) ので素直ならず。
<鋭利な子は> 鞭を逃れるその機転を褒めて喜べば、
鋭利が過ぎねじけてハタレとなるぞ。

 

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 あやまるな をやつつしめよ
 くらきこも こまかにをしゑ ひおつみて すこしはとふる
 つきおへて あつくをしゑは にふさるる
 としとしまなふ あけほのの わさもはやきそ

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 誤るな 親 つつしめよ
 暗き子も 細かに教え 日を積みて 少しは通る
 月を経て 篤く教えば 鈍 更るる
 年々学ぶ 曙の 業も速きぞ

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つつしむ (慎む・謹む)

■更るる (さるる)
サル(更る) の連体形で、ここでは 「改まる・更新する・改善する」 などの意です。


曙 (あけぼの)
ほのぼの明け” の倒置で、「夜空がほのかに明るんでくる頃」 をいいますが、
あっという間に明るくなって朝が来ます。
その驚嘆すべき速さを 「暗き子が明るくなる速さ」 になぞらえます。

 

【概意】
誤るな。親は注意しろよ。
暗愚の子も細かに教えて日数を重ねれば、少しは通る。
幾月かを経て篤く教えれば、鈍さは改まる。
そうなれば年々に習得する速さも、曙の業の如しぞ。

 

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 はつよりも よからてわさお かえすとも
 ももちをしゑて おほゑすは しつむるつゑに またをしゆ
 ゑゑこはたのめ をしゑとの てもともまつの しもとつゑ

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 初よりも 良からで業を 替えずとも
 百千教えて 覚えずば しつむる杖に また教ゆ
 ええ子は頼め 教え人の 手元も松の 楉杖

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■業 (わざ) ■技・▽術 (わざ) ■▽災・▽禍 (わざ)
アハス/アワス(合わす)の母動詞 “ハス/ワス” の名詞形で、「合わせ」 が原義です。
ワザ(業)は 「身に合わすこと/もの」 を意味し、「する事・仕事・しわざ」 をいいます。

 「身に付けたもの」 の意もあり、その場合は “技・術”、
 また 「外からの触り・障り」 の意もあり、その場合には “災・禍” と当てています。


■しつむる杖 (しつむるつゑ)
シツムルは シツム(為集む・鎮む)の連体形で、「纏る・治める・調える」 などの意を表します。
この場合は 「しつける」 と同義です。
この杖は 「先生が悪さした手にぴしゃり打つ愛の鞭」 的なもので、いわゆる 「教鞭」 です。


■ええ子 (ゑゑこ)
ヱヱは ヱユの名詞形で、ヱユは ヲユ(老ゆ)の変態です。
ですから 「老いた子・熟した子」の意で、「年長の子・レベルの進んだ子」 などをいいます。


■松の楉杖 (まつのしもとつゑ)
マツ(松)は 「曲るさま」 が原義で、シモト(楉)は 「木の若枝の細長く伸びたもの」 をいいます。
ですから 「曲松(くせまつ)の若枝がまっすぐ長く伸びる」 ことを願うモノザネです。

 曲松を 引き植え 新木 培えば 直木となるぞ 〈ホ17-4〉

 ★
楉 (しもと)
 シモツ(下つ)の名詞形で、「下・末・先端」 などが原義です。

 

【概意】
初めから良くないといって業を替えなくとも、
百回千回教えて覚えなかったら、しつける杖にまた教えるのである。
進んだ子は頼って教え人とせよ。その手元にも松の楉杖を持たせて。

 

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 おゑるままにて つちかえは
 そとせになおる きさしおゑ みそとせややに のひさかゑ
 もものつくりき みものはり ゐもはむなきそ

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 生えるままにて 培えば
 十年に直る きざしを得 三十年ややに 伸び栄え
 百の造り木 三百の梁 五百は棟木ぞ
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■生えるまま (おゑるまま)
荒猛でない環境に植えた後は、「人の思わくを排して自然(陽陰)に任せる」 ということです。
人(親)の思わくは新たな荒猛環境となり得るからです。


■ややに
ここでは 「いよいよに・ぐんぐんと」 などの意です。


■造り木 (つくりぎ)
これは不祥ですが、「木工品の材として使用可能な木」 の意に解してます。
この場合は 「梁や棟以外の用途に使う材木」 をいうものと思います。
 
 ★つくる (作る・造る) ★つくり (作り・造り)
 ツク(付く・継ぐ)+クル(▽括る) の同義語短縮で、クルは ククル(括る)の母動詞です。


梁 (はり)

棟木 (むなぎ)
「家屋の棟(むね)に使う材木」 をいいます。 ▶画像

 

【概意】
生えるままに培えば、10年で直るきざしが現れ、
30年ですくすくと伸び栄え、100年では造り木、300年の梁、
500年では棟木の材として使える木となるぞ。

 

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 ひとのりも そとせほほなる みそのはり
 ゐそはむなきの いさおしも
 あつきめくみの ゆるのりお かならすうむな はやるなよ

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 人法も 十年ほぼ平る 三十の梁
 五十は棟木の 功も
 篤き恵みの 緩法を 必ず倦むな はやるなよ

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■平る・均る (なる)
ナラス(均す・平す)の母動詞です。
「凸凹/かたよりが平らになる」 という意で、「直る」 と同義です。


■篤き恵みの緩法 (あつきめぐみのゆるのり)
「温かくゆるやかな目でそっと見守り、倦まず たゆまず 急がず 教え育む法」 をいいます。

・ひめもす 倦まなくて 教えを常の 業となせ 〈ホ17-2〉
・屑を捨てなで 鈍・鋭を 均し用いん 和の心ぞ 〈ホ17-3〉
・人におけらば 限り無し 長く培ふ 教えなすべき 〈ホ17-4〉
・百千教えて 覚えずば しつむる杖に また教ゆ 〈ホ17-5〉


■梁 (はり) ■棟木 (むなぎ)
「家屋の梁や棟に使う木材」 を人材になぞらえてます。

 棟木は家屋の最高部に使われ、梁はそれに次ぎますが、これを人になぞらえて、
 高い位置にいる人を “棟梁” とか “棟梁之臣棟梁臣” などと呼びます。


倦む (うむ)


■はやる (逸る早る・流行る)
ハエル(栄える・映える)ハヤム(早む・逸む) などの変態で、
「高まる・勢いづく・急ぐ」 などが原義です。

 

【概意】
人の道でも、10年でほぼ直り、30年では梁、50年には棟木となる。
その成功も篤き恵みの緩法を以ってこそ。決して倦むな、また急ぐなよ。

 

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 はやきはたれに おもむかて やたのかかみの あやきけは
 よこかおさるそ わかこころ いれてゐやすく あめかまもるそ

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 早きハタレに おもむかで ヤタのカガミの 謂 聞けば
 汚曲を更るぞ 我が心 入れて気安く 陽陰が守るぞ

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■早きハタレ (はやきはたれ)
「早きが過ぎねじけて生れるハタレ」 という意味です。
ハヤキ(早き)は “早利き”  ”疾し激し”  ”荒猛” の換言です。▶ハタレ

 早利きを 褒め喜べば 過ぎねぢけ ハタレとなるぞ 〈ホ17-5〉


■おもむく (主向く・赴く・趨く)
オモ(主・表・面)+ムク(向く) で、オモ(主)は 「人の主体=心」 を意味します。
「心を向ける・顔を向ける」 などの意です。


謂 (あや)

■汚曲 (よこが・よこま)
ヨコ(横・▽汚)+ガ(▽曲) の連結で、どちらも 「曲り・逸れ・外れ・穢れ」 を意味します。
ヲヱクマ(汚穢隈)ヤクモ(八雲)ヨコシマ(邪) などと同義です。

 ★横・緯・▽汚 (よこ・よご)
 ヨク(避く)の名詞形で、「逸れ・外れ」 が原義です。転じて 「添え・副・從」 の意もあります。

 ★曲 (ま・が)
 マグ(曲ぐ)の名詞形 マガ(曲・禍)が略されて “マ” あるいは “ガ” となります。


更る (さる)

■我が心 (わがこころ)
日と月(=太陽と太陰)の神霊の顕現である 「アマテルの心」 です。 ▶我が上


■気安く (ゐやすく)
ヰヤスシ(気安し) の連用形で、ヰ(気・意)は 「心」 と同じです。
ヤスク(安し・▽和すし)は 「調和する如く」 が原義で、
「曲りなく・偏りなく・まっすぐに・すこやかに・やすらかに」 などの意を表します。
この場合は 「心を曲りなくまっすぐに」 という意味です。

 元来は ヰヤス(癒す)+シ(=如し) の連用形だったと考えますが、意味は同じです。


陽陰 (あめ)

 

【概意】
早利きのハタレに心を向けずに、ヤタのカガミのいわれを聞けば、汚曲が改まるぞ。
我が思いを受け入れて、陽陰が心を健やかに守るぞ。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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