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徹底解説ほつまつたえ講座 改訂版第104回 [2024.1.4]

第十九巻下 乗りの文 連栲の文 (2)

著者:おあずけ2号 (駒形一登)
著者HP:ホツマツタエ解読ガイド https://gejirin.com

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 のりのふみてるたえのあや (その2)
 乗りの文 連栲の文 https://gejirin.com/hotuma19-2.html
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 むまもちゆるは いなむしか ひみつのなせる わさはひも
 はやのりなして のそくなり もしのりおかす ものあれは
 てにはつるきお もつゆえに くつはのつなは あかるたえ

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 馬 用ゆるは 厭虫か 火水のなせる 災ひも
 速乗りなして 除くなり もし法犯す 者あれば
 手には剣を 持つゆえに 轡の綱は “別る栲”

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■厭虫 (いなむし)
イナム(辞む・否む)+ムシ(虫) で、「けがす虫・そこなう虫」 の意です。
「害虫」 をいい、“蝕虫” とも呼ばれます。辞書は “稲虫” と当てます。

 ★辞む・否む (いなむ)
 イヌ(往ぬ・去ぬ)+ナム の同義語短縮で、ナムは ナブ(靡ぶ)の変態。いずれも
 「離れる/離す・逸れる/逸らす・曲がる/曲げる・傾く/傾ける」 などが原義です。


■災ひ・禍 (わざはひ)
ワザ(災・禍)サハヒ(障ひ) の短縮で、両語とも 「障り・差し支え・障害」 などが原義です。


■轡の綱 (くつはのつな)・轡綱 (くつはづな)
轡に付ける引き綱”  ”手綱” と同じです。


■別る栲 (あかるたえ)・別栲 (あかたえ)
「左右2本に分れる手綱」 をいい、アカタエ(▽別栲)とも呼ばれます。 ▶栲(たえ)
後世これが “明栲” に誤解されたようです。

 ★別る・分る・散る (あかる)
 アク(空く・開く)+カル(離る) の短縮で、ワカル(分かる・別る)の変態です。

 

【概意】
馬を用いるのは、害虫の発生や 火災・水災の時、
いち早く乗り付けて被害を除くためである。
もし法を犯した者を追う場合は、手には剣を持つゆえに
手綱には “別る栲” を用いる。

 

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 きぬはもちひす ちちみぬの ちちめるゆふて やたふたつ
 そのみつつきお はにゆひて てつきおこしに はさみおふ
 このふたすちお みきひたり こしのひねりに つなおひく
 むまのこころに こたえてそ

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 絹は用ひず 縮み布 縮める木綿で 八尺二つ
 そのミツ継ぎを 端に結ひて 手継ぎを腰に 挟み帯ぶ
 この二筋を 右左 腰のひねりに 綱を引く
 馬の心に 応えてぞ

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■縮める木綿 (ちぢめるゆふ)
チヂメルはチヂム(縮む)の連体形で、ここでは 「すでに縮んだ布」 の意と思います。

 ★ゆふ・ゆう・いふ (▽結・木綿)


■ミツ継ぎ (みつつぎ)
手綱の 「馬に継ぐ側の端」 をいいます。
反対側の、人が手に持つ端は テツギ(手継ぎ)といいます。
後世は意味が少し変わっています。 ▶承鞚(みづつき)

 ★ミツ (▽回・▽廻)
 ミツは ミツ(▽回つ・廻つ)の名詞形で、「回り/回し」 が原義です。
 ですから コマ(駒)の換言です。
 相撲取りの まわし=みつ (前みつ・横みつ・立みつ) もこれです。


■端・派 (は) ■轡の端 (くつばみのは)
「生え出るもの・分れ出るもの・枝・穂・端」 などが原義です。
この場合は 「轡の端」 の略で、「手綱を結び付ける轡の引手」 をいいます。
後世は これを “承鞚” と呼んでます。 ▶図解


■手継ぎ (てつぎ)
テ(手)+ツギ(継ぎ) で、手綱の 「人の手に継ぐ側の端」 をいいます。
つまり “ミツ継ぎ” の反対側の端です。


帯ぶ (おぶ)
オフ(負ふ)と同じです。「合う/合わす」 が原義です。

 

【概意】
絹ではなく縮み布を用いる。縮んだ木綿で8尺の綱を2本造り、
その “ミツ継ぎ” を轡の引手に結び、“手継ぎ” を腰に挟み帯びて、
腰の左右のひねりに2本の綱をあやつる。馬の心に応じてぞ。

 

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 たえなるわさお なすたとえ あめつちつなく なかくしの
 いきにつきひの なかみちか はるあきとなす みをやかみ
 かくこしつかふ あかるたえ

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 妙なる技を なす喩え 『天地つなぐ 中串の
 息に月日の 長・短か 春・秋となす ミヲヤ神』
 かく腰使ふ “別る栲”

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■妙なる技 (たえなるわざ)
妙技」 の意ですが、これを “栲なる技” にかけます。 ▶妙(たえ) ▶栲(たえ)


■天地つなぐ中串 (あめつちつなぐなかくし)
泡泥の巡れる中の実柱” と同じで、“天地届く実柱”、
また “元元明の陽陰恵み届く柱” とも呼ばれます。

・初の一息 動く時 東上りて 西下り 虚空に巡り
 泡・泥の 
巡れる中の 実柱に 割けて陰陽生る 〈ホ14-2〉
・回る虚空の その中に 
天地届く 実柱を 回り分かるる 泡・泥の
 泡は清くて 宗陽神 泥は濁りて 鄙陰神 〈ミ6-2〉
元元明の 陽陰恵み 届く柱は 透き通る 中の管より 運ぶ息 〈ミ6-7〉

アメミヲヤの “初の一息” により混沌たる泡泥に回転が生じて、
天地創造が始まりますが、その 「回転の中心に立つ柱」 をいいます。
この柱は天界の陽層と陰層を貫通して、地上世界に連絡しています。


■息 (いき)
天界の陽層・陰層と地上世界を貫いて結ぶ上記の柱は、内部の管 (九の輪) を
通して “陽陰エネルギーの息” (精霧) を地上に運びます。
このエネルギーの陽陰バランスによって地上に季節の変化が生じます。

・元元明の 陽陰恵み 届く柱は 透き通る 中の管より 運ぶ
 車の腕木 九の輪の 響きて巡る 息の数 万三千六百八十 〈ミ6-7〉
・春秋の 
は管より 紗霧なす ‘ヱ’ に譲る霧 日を招き 冬 一陽還す
 ‘ト’ は夏に 月の陰還す 春秋ぞ  〈ミ6-7〉


■月日 (つきひ)
この場合は 「陰陽・暗明・夜昼」 を意味します。

 

【概意】
妙なる技を実現するなす喩え。
『天地つなぐ中串の 息に夜昼の長・短か 春・秋となすミヲヤ神』
このように腰を使う “別る栲”。


 “天地” を 「人と馬」 に、“中串” を 「手綱」 になぞらえています。
 “息” は 「往き来」 が原義で、ここでは 「手綱の引きと緩め」 に喩えます。
 つまりアメミヲヤが中串に運ぶ陽陰の息によって 季節を制御する如くに、
 手綱の陽陰(=引きと緩め)によって馬を制御すべし、ということです。

 陽陰の息は 4陽、3陽1陰、2陽2陰、1陽3陰、4陰 の5段階がありますから、
 妙なる技を実現するためには、手綱(=栲)のさばきも5段階ほどの微妙な
 シフト操作を駆使することが必要、という意味かと思います。

 

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 わさおおもはは くらしきて ゆきつもとりつ むそあゆみ
 あしとりおみて のちにのる

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 技を思はば 鞍 敷きて 行きつ戻りつ 六十歩み
 足取りを見て 後に乗る

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足取り (あしどり)
原義は アシ(足)+ドリ(▽躍り) で、「足のおどるさま」 をいいます。

 

【概意】
技を重視するならば、鞍を敷いて60歩ほど行きつ戻りつして歩ませ、
足取りを見た後に騎乗する。

 

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 ちみちのあふみ かなつくり かけはをさしの つりなわも
 ゐつきみしかく ちみちには はるひゆるくて ゐつゆひの
 とふるほとよし いつかけは はるひゆるめす ちとしめて
 しとなめきつな むなかひも しほてにそえて

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 地道の鐙 金造り 駆けは尾差の 吊り縄も
 五寸短かく 地道には 腹帯緩くて 五指の
 通る程 良し 厳駆けは 腹帯緩めず ちと締めて
 下嘗・絆 胸懸も 四緒手に添えて

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地道 (ぢみち) ■鐙 (あぶみ) ■駆け (かけ)

■尾差の吊り縄 (をさしのつりなわ)
「しっぽを吊る縄」 の意で、後世にいうシリガイ(尻繋・鞦)です。 ▶画像

 ★尾差 (をさし)
 「尻から突き出すもの」 の意で、今風に言えば 「しっぽ」 です。
 ヲ(尾)+サシ(射し・差し) で、ヲ(尾)は 「うしろ・尻・後方」 を表します。
 サシ(射し・差し)は 「差し出るもの・突き出すもの」 です。


腹帯 (はるび) ■厳駆け (いつがけ) ■下滑 (しとなめ)

絆・紲 (きづな)
この場合はたぶん 差縄(さしなわ) をいうのだろうと思います。 ▶画像


胸懸・鞅 (むながひ)
鞍を固定するための、「馬の胸から鞍に掛け渡す紐」 です。 ▶画像


四方手・四緒手・鞖 (しほで)
「胸懸(むながい)・鞦(しりがい)を結び留める紐と輪」 をいいます。 ▶画像
シホは シメ(締め)の変態、テ(手)は 「取手・引手」 を意味します。

 

【概意】
地道の鐙には金属製を用い、駆けの場合は 尻尾の吊り縄も5寸短かくする。
地道には腹帯は緩くて 5本指の通るくらいが良い。
厳駆けの場合は腹帯を緩めず 少し締めて、下滑・絆・胸懸も四方手に結ぶ。

 

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 くつはつな ひとたけむたの なかほとお きつなにそえて
 くつはみの はにゆふはしお まてにもつ
 あたはしりなき ひとぬきま

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 轡綱 一丈六尺の 中ほどを 絆に添えて
 轡の 端に結ふ 端を 両手に持つ
 熱走りなき “一貫間”

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轡綱 (くつはづな)

轡の派 (くつばみのは)

熱走り (あだばしり)

一貫間 (ひとぬきま)

 

【概意】
次に轡綱。
1丈6尺の中央部分を 絆と共に轡の引手に結び、両端を左右の手に持つ。
これ 暴走なき “一貫間”。

 

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 またてるたえは たけむたの そのみつつきお まてのはに 
 ゆひてなかもつ あかたえと ぬきまおかぬる てるたゑや

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 また “連る栲” は 丈六尺の そのミツ継ぎを 左右の端に
 結ひて中持つ “別栲” と “貫間” を兼ぬる “連る栲” や

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■連る栲 (てるたえ)
テルは ツル(連る)の変態です。 ▶栲(たえ)
ですから 左右2本に分れず 「環状に連なる手綱」 という意で、今日のスタンダードです。
後世これが “照栲” に誤解されたようです。

 ★テル (▽連る・▽釣る)
 テルは テフという動詞の変態ですが、テフ/テウ という動詞は現在辞書にありません。
 しかし テフ/テウの名詞形に、それは今は “チョウ” と発音しますが、『釣』があります。
 “釣る” の原義は “連る” です。


ミツ継ぎ (みつつぎ)
“連る栲” の場合には、その両端とも “ミツ継ぎ” になります。


■左右の端 (まてのは)
「左右の轡の端」 をいいます。 ▶まて


別栲 (あかたえ)

■貫間 (ぬきま)
ヒトヌキマ(一貫間)と同じです。

 

【概意】
また “連る栲” は、1丈6尺の綱の両端のミツ継ぎを 轡の左右の引手に結び、
中ほどを手に持つ。“別栲” と “一貫間” を兼ねる “連る栲” や。

 

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 むまのさためは めはなより おほねえやたの つつたちは
 ゐたゐきのりお はつきもち さつきゐつかの ことほきの
 のりにかけたは あやしあり
 たとえふとくと やつゐゐの わりあひかかゑ たまふへし

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 馬の定めは 目鼻より 尾骨へ八尺の “連”
 “立” は五尺五寸典を 八月十五日 五月五日の 寿ぎの
 典に掛けたは 怪しあり
 喩え “二と九と 八つ五五” の 割合考え 給ふべし

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  ここは五七調が少々いびつなため、言葉の区切りを調整しています

尾骨 (おぼね)

■連(つづ) ■立(たち) ■連立 (つづたち)
ツヅ(▽連・▽続)は 「馬の頭から尻尾のつけ根までの長さ」 をいい、
タチ(立・▽縦)は 「馬の背の高さ」 をいうようです。
8尺(約180cm)の “連” と 5尺5寸(約124cm)の “立” を、馬の鑑定の基準とする
ということでしょう。辞書の 寸(き) の項目には次の説明があります。

 き【寸】〈広辞苑〉
 馬のたけを計るのに用いる語。4尺を標準とし、それを超す高さを一寸(ひとき)・
 二寸(ふたき)…と数え、5尺を十寸(とき)という。9寸以上を「丈(たけ)に余る」という。

“5尺5寸” は 辞書の言う “4尺” と同じ長さをいうと思われます。
これは1尺が 22.5cmから30.3cm に変わったことによる修正と考えます。

 ★参考資料 http://blogs.yahoo.co.jp/w41dg2hb/11594942.html
 昭和28年(1953)、鎌倉の由比ヶ浜で、元弘3(1333)の新田義貞の鎌倉攻めの
 戦死者を葬ったとみられる遺跡が発掘された。556体の人骨の外に128本の
 馬の骨も出た。計測の結果、馬の体高は109〜140cmの範囲におさまると
 いう。最も多いのは126〜136cm。平均は129.5cmと推定されている。


典 (のり)

■八月十五日 (はつきもち)
陰暦8月15日の いわゆる 「十五夜」 の日です。
月に芋を供えるので 「芋名月」 ともいいます。


■五月五日 (さつきゐつか)
この日は 「サ月サの頃」 を代表する日で、後に言う 「端午の節句」 です。


怪しあり (あやしあり)
ここでは 「はっきりしない・疑わしい」 の意かと思います。


■二と九と八つ五五 (ふとくとやつゐゐ)
八つ五五は 「8尺と5尺5寸」 で、前述の通りですが、二と九は不詳です。
ニは “2尺” で、「馬の頭部の長さ」 でしょうか。
九は “9尺” で、「鼻先から最後部までの直線距離」 かもしれません。


給ふ (たまふ)

 

【概意】
馬の鑑定は、目鼻より尾骨へ8尺の “連”、“立” は5尺5寸の典型を、
8月15日と5月5日の祝典に掛けたと言うのは疑わしい。
“二と九と八つ五五” と喩える、馬のプロポーションをお考え下され。

 

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 ここにみまこの ちみちより のりなれねりて あれのりも
 ひつみつきへて つひにゑて またいつのりお としかさね
 わさゑたまへは みことのり ゐつのをしてお たまひけり

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 ここに御孫の 地道より 乗り馴れ練りて 荒乗りも
 日積み月経て ついに得て また厳乗りを 年重ね
 技 得給えば 御言宣 “逸” のヲシテを 賜ひけり

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御孫 (みまご)

荒乗り (あれのり) ■厳乗り (いつのり)

■逸・厳・稜威 (ゐつ・いつ)
イツノリ(厳乗り)の “イツ” と意味は同じで、またヲバシリが賜った 厳(いつ)の称号と
同じものですが、御孫ニニキネに対しての場合は、尊敬を添えて “ヰツ” と表記することが
多いです。そのため本講座でもそれに対して “逸” と当て字しています。

 

【概意】
ここに御孫は “地道” より乗り馴れ練りて、
“荒乗り” も日を積み月を経てついに得て、
また “厳乗り” を年を重ねて技を得たまえば、
<アマテル神は> “逸” の称号を賜るのであった。

 

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 たかひこねには ふたあれの をしてたまえは
 こもまこも むまのきみなり

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 タカヒコネには “二生れ” の ヲシテ賜えば
 子も孫も 馬の君なり

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■二生れ・再生れ (ふたあれ)
タカヒコネに賜った尊名で、「(ヲバシリの) 再生/再来」 という意です。
ヲバシリは馬術の技能を発展・完成させ、“乗り教人” に任命されて、85万人にその技を伝授、
アマテルより “厳” の称号を賜った、馬術における伝説的偉人です。

 フタアレは後に “二荒” と漢字が当てられて “にこう” の読みが生じ、
 それが ニッコウ(日光) という地名となります。


■馬の君 (むまのきみ)
馬屋治め” の換言です。 ▶君

 

【概意】
タカヒコネには “二生れ” の称号を賜えば、子も孫も “馬屋治め” なり。

 

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 くすりには ひとみこまひさ うはなくす
 つちひとゑはは まめはこそ

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 薬には 人身駒瓠 卯木・葛
 辻一重葉は マメハゴぞ

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■薬 (くすり・くす・くし)
「改めるもの・回帰させるもの・改善するもの」 などが原義です。

 クス+スル(擦る・磨る) の短縮の名詞形で、クス はコス(越す遣す) の変態。
 両語とも 「往き来させる・回す・還す・回帰させる・改める」 などが原義です。

 

【概意】
薬には 人身駒瓠、卯木、葛、また辻一重葉、これはマメハゴのことぞ。


 ここでは馬用の薬草が紹介されていますが、卯木のほかは不詳で、
 適当(いいかげん)な漢字を当てているにすぎません。

 

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 いつをはしりと たかこひね ふたあれかみと
 きさらしゑ まつるのりゆみ ならふころかな

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 厳ヲバシリと タカコヒネ “二生れ神” と
 二月シヱ 祭る 乗り弓 並ぶ頃かな

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厳ヲバシリ (いつをばしり)
「“厳” の称号を賜ったヲバシリ」 という意で、ヲバシリの尊称です。


■二生れ神 (ふたあれかみ)
これは 「はじめはヲバシリとして生れ、再びタカヒコネとして生れた神」 という意です。
つまり2人を同一の神霊の生れ替わりとみなしてます。
この神が祭られた地が 「二荒・日光」 となります。

 日光二荒山神社 (にっこうふたらさんじんじゃ)
 栃木県日光市山内2307。 
 現在の祭神:大己貴命、田心姫命、味耜高彦根命
  <筆者注> この神社は祭神の親子関係を正確に保存しています。
       大己貴命は父、田心姫命は母、味耜高彦根命は子。

 宇都宮二荒山神社 (うつのみやふたあらやまじんじゃ)
 栃木県宇都宮市馬場通り1-1-1。  
 現在の祭神:豊城入彦命、大物主命、事代主命
  <筆者注> 祭神については諸説あり。“馬場通り” という住所に注目。


■二月シヱ (きさらしゑ)
「2月最初のシヱの日」 という意です。この日に 「馬祭」 が行われました。 ▶初午
シヱは干支の サシヱ、ネシヱ、キシヱ、ツシヱ、ヲシヱ の日をいい、
いずれも 今日の干支では 午(うま) の日にあたります。

 生れ神を祭るがゆえに、月の午の日の祭としたわけです。


乗り弓 (のりゆみ)
馬祭(初午祭)には、この競技会が行われたのでしょう。


■並ぶ (ならぶ)
「合う/合わす・匹敵する/させる」 が原義で、ここでは 「並べる・比べる・競う」 の意です。

 

【概意】
厳ヲバシリとタカコヒネを “二生れ神” とし、二月のシヱ(午)の日に祭る。
それは乗り弓を競う頃かな。

 

 

本日は以上です。それではまた!

 

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